食品棚にしているメタルラックの前で、うぅむと唸る。
新じゃがから芽が生えている。あまつさえ、白いカビがついている。
買ったのは2週間前。
年度末に、忙殺されながらどうにか生き延びた。正直、じゃがいもをどうにかできるような状態じゃなかった。
その間に、おまえは、劣悪な環境で、しっかり新しい芽を出したわけだ。
育つこともできず、食われることもなく。
申し訳なさに、唸りながら、食べたいもんを考える。
しょっぱめで、あっさりしすぎず――。
煮物じゃない。
ポテサラでもない。
もっと、じゃがいものポテンシャルを引き出すような――。
「フライドポテトだな」
声に出すと、嬉しくなる。
うん、フライドポテトだ。
フライドポテトっていいよね。
マクドナルドの細長いポテト。
ティラリ、ティラリ、ティラリ。
もはや、揚げ終わりの音を真似できる。
あれを家で食べられるように、冷凍のフライドポテトを買ったこともある。
揚げたてはかりっと、放っておいてしなしなになったのもうまい。
ケチャップをつけるか、BBQソースをつけるか。
今では、ナゲット用のソースを別売りで買えるが、以前はそうではなく、ソース欲しさにナゲットを頼んだこともある。
太いフライドポテトも好きだ。
皮がついているのもうまいし、ホクホク感も食べてる感があっていい。
初めて太いフライドポテトを食べたのは、モスバーガーだった。何もかもが斬新だった。
素材のうまさを引き出しているのは、やはり太目だろう。
居酒屋で、ほろ酔いになりながら、同僚の話にうんうん頷きながら、頬張るのもフライドポテト。
ロクに話を聞かず、アルコールに揚げ物を摂取するダブルの背徳感が、うまさを後押しする。
フライドポテトに正解はない。
人の数だけ、うまいがある。
俺は、どうするか?
今回は、カビが出ているので、皮は剥いた。
そして、太めに切った。
水にさらすのを兼ねて、雪平鍋で少しだけ茹でる。
まだ表面しか茹でられてないじゃがいもを湯から出して、熱い内に、大匙1のオリーブオイルと混ぜる。
230度のオーブンで30分放置。
いわゆる揚げ焼きというやつだ。
油の量はかなり少なく済むし、揚げなくていい。
表面が茶色になりつつあるところで、オーブンから取り出す。
眼鏡が曇る。
わずかにバターと塩を絡ませる。
高みから、青海苔をふぁさ~。
家でないと食べられない。
どこかで食べてうまかったのを合体させた、青のりバターフレンチフライ。
こいつが俺の最適解である。
いそいそと、こたつへ持っていく。
座るのが待ちきれず、指でつまむ。
外はカリッと、中はじゅわっと。
目が細まる。
わざわざ茹でたのは、この食感を出すためだ。
バターとじゃがいもの黄金タッグに、青のりの香りがたまらない。
暑くて、こたつ布団から足を出した。
この間まで、出るのも惜しかったのに、今じゃ邪魔だ。
そうか。じゃがいもも芽が出るくらいだ。
そろそろこたつ布団も片付けねば。
「とりあえず、今は――」
プシュっと音を立て、喉を潤す。
目の前のフライドポテトに、集中するとしよう。