中谷秀和の飯テロ生活   作:藍色 紺

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66 芽吹きの代償(フライドポテト)

 食品棚にしているメタルラックの前で、うぅむと唸る。

 新じゃがから芽が生えている。あまつさえ、白いカビがついている。

 

 買ったのは2週間前。

 年度末に、忙殺されながらどうにか生き延びた。正直、じゃがいもをどうにかできるような状態じゃなかった。

 

 その間に、おまえは、劣悪な環境で、しっかり新しい芽を出したわけだ。

 育つこともできず、食われることもなく。

 

 申し訳なさに、唸りながら、食べたいもんを考える。

 

 しょっぱめで、あっさりしすぎず――。

 

 煮物じゃない。

 ポテサラでもない。

 もっと、じゃがいものポテンシャルを引き出すような――。

 

「フライドポテトだな」

 

 声に出すと、嬉しくなる。

 うん、フライドポテトだ。

 

 フライドポテトっていいよね。

 マクドナルドの細長いポテト。

 ティラリ、ティラリ、ティラリ。

 もはや、揚げ終わりの音を真似できる。

 

 あれを家で食べられるように、冷凍のフライドポテトを買ったこともある。

 揚げたてはかりっと、放っておいてしなしなになったのもうまい。

 ケチャップをつけるか、BBQソースをつけるか。

 今では、ナゲット用のソースを別売りで買えるが、以前はそうではなく、ソース欲しさにナゲットを頼んだこともある。

 

 太いフライドポテトも好きだ。

 皮がついているのもうまいし、ホクホク感も食べてる感があっていい。

 初めて太いフライドポテトを食べたのは、モスバーガーだった。何もかもが斬新だった。

 素材のうまさを引き出しているのは、やはり太目だろう。

 

 

 居酒屋で、ほろ酔いになりながら、同僚の話にうんうん頷きながら、頬張るのもフライドポテト。

 ロクに話を聞かず、アルコールに揚げ物を摂取するダブルの背徳感が、うまさを後押しする。

 

 

 

 フライドポテトに正解はない。

 人の数だけ、うまいがある。

 

 俺は、どうするか?

 今回は、カビが出ているので、皮は剥いた。

 そして、太めに切った。

 水にさらすのを兼ねて、雪平鍋で少しだけ茹でる。

 

 まだ表面しか茹でられてないじゃがいもを湯から出して、熱い内に、大匙1のオリーブオイルと混ぜる。

 230度のオーブンで30分放置。

 

 いわゆる揚げ焼きというやつだ。

 油の量はかなり少なく済むし、揚げなくていい。

 

 表面が茶色になりつつあるところで、オーブンから取り出す。

 眼鏡が曇る。

 わずかにバターと塩を絡ませる。

 

 高みから、青海苔をふぁさ~。

 

 家でないと食べられない。

 どこかで食べてうまかったのを合体させた、青のりバターフレンチフライ。

 こいつが俺の最適解である。

 

 

 いそいそと、こたつへ持っていく。

 

 座るのが待ちきれず、指でつまむ。

 外はカリッと、中はじゅわっと。

 

 目が細まる。

 

 わざわざ茹でたのは、この食感を出すためだ。

 バターとじゃがいもの黄金タッグに、青のりの香りがたまらない。

 

 暑くて、こたつ布団から足を出した。

 この間まで、出るのも惜しかったのに、今じゃ邪魔だ。

 

 そうか。じゃがいもも芽が出るくらいだ。

 そろそろこたつ布団も片付けねば。

 

「とりあえず、今は――」

 

 プシュっと音を立て、喉を潤す。

 

 目の前のフライドポテトに、集中するとしよう。

 

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