妖刀六工が一振り、「飛宗」の異界録。


※注意!※

:原作世界とは異なる異世界モノです!
:妖刀が異世界に現れます!
:原作の妖刀契約者とは異なる契約者が現れます!
 端的に言ってオリ主が妖刀振るいます!
:刀はいつも使い手を見ているそうです!
:妖刀のオリ解釈・オリ『本領』が出ます!
 逆に原作での解釈や『本領』が出ない場合もあります!
:原作ネタバレの可能性があります!
:以上を踏まえてよければご覧ください!



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風切

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふんふふふふ〜ん」

 

 

 

 

 呑気な鼻歌を歌いながら、片手でスクールバッグを担ぎ、襟付きの白いワイシャツを着て、チェックのスカートを履き、その上から腰にセーターの袖を巻く。

 その姿は正しく帰宅途中の女子高生だった。

 

 

 

 

「んふ〜、ん。んふ〜、ん」

 

 

 

 

 だが、彼女が歩く風景は明らかにその気楽な雰囲気にそぐわない。

 瓦には苔がむし、廊下には埃が積もり、その礎さえ軋んでいる。

 朽ちた伽藍、いわゆる廃寺というものだった。

 ……しかし廃寺としてもおかしい。

 

 

 

 

「ふふふふっふっふふー」

 

 

 

 

 空は黒く、風は吹かず、木々も苔も生い茂っているのに、何故かそれに命が無いと分かってしまう。

 現実では、……人界(じんかい)では有り得ぬ異様な光景。

 ……だが、もう片手で両刃の直剣を握り、足元を頑丈かつ足首の動きを阻害しない特注の戦闘装靴で踏みしだき、全周囲を広く、目・鼻・耳・肌・勘・経験で探る彼女にとっては、幾つかは似たものを見た光景だ。

 

 

 

 

「ふんふー、ふ。ふんふーふ、ふー」

 

 

 

 

 鼻歌もまた動きを固くしない為の単独“異界行(いかいこう)”のルーティーンだ。

 後輩の一人に『セリさんにそれ意味あります?』と言われてしまってはいるが。

 

 

 

 

「ふ、ふ、ふー。…………おー」

 

 

 

 

 そうして辿り着いたのはこの廃寺の中心であろう、巨大な仏像が座す仏堂。

 顔だけで人より大きいその仏像は、大仏と言っても遜色は無い大きさだ。

 

 

 

 

「なむなむ。……おっ?」

 

 

 

 

 最もその仏様にも、経を読む度打ち鳴らされていただろう木魚にも埃が積もり、供えられていた花も萎れ、うら寂しいものだ。

 思わず念仏……と言うには適当過ぎる何かを呟いた所で、彼女は何かに気が付いた。

 

 

 

 

「……ふーんぅ」

 

 

 

 

 それは仏前に置かれた、……否、落とされたように見える和風の木箱。

 金具は黒く、蓋と底には千切れた鎖が付いている。

 

 

 

 

「ふむふむ」

 

 

 

 

 “異界(いかい)”でこういった形で道具が見つかる事は珍しくない。

 それらは時に人界では作れない、特異で役立つ機能を備えているし、そうでなくても高く換金して貰える。

 それらをいち早く入手できるのは“異界行”に臨む妖術師の特権だ。

 ……ただし、迂闊に持ち出したもので大変な事になるのは多々有る。

 “異界行”に臨み、宝物を望むのならば鑑定や分析・検査の妖術資格が必須だ。

 

 

 

 

「よーし」

 

 

 

 

 ……しかし、それら資格も代用は出来る。

 高額で取引される術具や異界具、または高位の妖術師免許。

 ()()()()()()()()()()()()彼女は妖術師用スマートフォンで鑑定と現場撮影を済ませ、木箱に手をかける。

 

 

 

 

「おー……?」

 

 

 

 

 木箱の中に入っていたのは刀、打刀(うちがたな)だった。

 黒く、飾りっ気の無い、質実剛健そうな作り。

 簡単に描いた雷のような……、……否、簡略化した翼を二つ点対称に並べたような形の鍔だけが特徴らしい特徴だろうか。

 

 

 

 

「ふむ」

 

 

 

 

 彼女はそれを手に取った。

 箱の中に転がっていた紙片が表すのがこの刀の名であるのなら、

 

 

 

 

 

 

 

 

 「飛宗(とびむね)」と、この刀は言うらしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【トビムネ異界録】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 世界は、幾つもの世界を内包している。

 人が暮らす、人にとっての基準となる世界を人界(じんかい)と呼び、それ以外の世界を大別して異界(いかい)と呼ぶ。

 異界にも種々様々あり、人ではない住人が住まう事もザラにある。

 

 

 

 

「ギャギャーッ‼︎」

 

「壊セ壊セ!」

 

 

 

 

 大阪府・真田市の住宅街に現れた一群は“鬼界”と区分けされる世界の住人達だ。

 異界の住人や生物、兵器や道具や物質や法則や術が人界に侵入して害を齎す事態は日本国内に於いて年間百件を超えるとされる。

 

 

 

 

「はいアウトー‼︎」

 

「ゲギャッ⁉︎」

 

 

 

 

 それらへの対処が、妖術師の主な仕事だ。

 ロケットのように飛んで来た蹴りが、小鬼の首を吹き飛ばす。

 

 

 

 

「小癪ナ……!」

 

「アンタが大将(たいしょ)ーね?とっとと退かないと皆殺しにしちゃうよ?」

 

 

 

 

 “鬼界”の住人達はその姿勢が人界に齎した被害故、特例以外は常に討伐対象だ。

 一群の長は筋骨隆々の巨体に、剣を持った四つ腕の如何にも強力な個体だ。

 

 

 

 

「大口ヲ叩イタナ……!オ前、見覚エガ有ルゾ……‼︎我ラガ軍勢ニ止メラレテモタモタ戦ッテタナ……!」

 

「ありゃ、知られてたかー(あたし)

 

 

 

 

 相応の経験も有るのか、()()()()()学生服の妖術師はその鬼にとって見覚えがある女だった。

 それ程強くない奴が来た、と嘲笑う四腕鬼に彼女はあっけらかんと返す。

 

 

 

 

「でも、変わるもんだよ?色々とね。「飛宗(とびむね)」」

 

 

 

 

 そして、腰の後ろに提げた刀と剣に手をやり、

 

 

 

 

 

 

 

 

(からす)

 

 

 

 

 

 

 

 

 黒羽が舞った。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

「何ッ……⁉︎」

 

「ギャッ‼︎」

 

「ギャゲッ⁈」

 

「ギッ……!」

 

 

 

 

 四腕鬼が振り返った瞬間、()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

「ナッ……‼︎」

 

「しっ」

 

 

 

 

 目にも止まらぬ速さだ。

 現れたと思えば消え、消えたかと思えば現れる、その度に小鬼が斬り倒される。

 

 

 

 

「っ‼︎」

 

「グッ……⁉︎」

 

 

 

 

 そして、蹴りが飛ぶ。

 辛うじて四腕鬼は受け止めたが、一発で腕が軋み、たたらを踏んだ。

 

 

 

 

「言ったでしょ?皆殺しだって」

 

「コノッ……!」

 

 

 

 

 口に違わず、強敵に成長していた彼女に四腕鬼は術を切った。

 

 

 

 

「あれ」

 

「……ッ」

 

 

 

 

 赤い光を放って鬼界の一群が消えてゆく。

 真田市の住宅街に彼女は取り残された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 異界の住人は人界では真似出来ない技術を持っている事が有る。

 

 

 

 

「……グゥ……ッ‼︎」

 

「大将ゥ……」

 

「半分ハヤラレチマイマシタ……」

 

 

 

 小規模な異界創造などその極地だろう。

 人界では結界術に長けた妖術師でも世界を創る事など出来ていない。

 しかし鬼界を始めとした異界ではそれを簡単に行える者がそれなりに居て、他世界侵入への拠点として使う事がある。

 

 

 

 

「ヨクモッ、アノ女……!」

 

 

 

 

 そうして人為的に作られた世界には入り口が空き辛く、撤退されると中々反攻出来ないのが現状であった。

 手勢を理不尽に殺され──自分達が理不尽に殺し、奪おうとした事は都合よく忘れ去っている──四腕鬼も己が異界で報復を考える身だ。

 

 

 

 

 ただしそれは、

 

 

 

 

「よっ」

 

「ギャッ⁉︎」

 

 

 

 

 そういった異界が絶対に安全であると断言する理由にはならない。

 舞う血飛沫を躱すのは──、──現世に居る筈の妖術師の女。

 

 

 

 

「⁉︎ドウヤッテ……⁉︎」

 

「羽一枚、挟んでおいたんだ。逃がさないよ?」

 

 

 

 

 そうして指差すのは挨拶代わりに切り捨てた小鬼の腰帯。

 ばら撒いた黒羽をそっと挟み、斬殺からわざと残して撤退させ、異界に転移する道標として彼女はやって来たのだ。

 最もそれだけではいくら転移の術があろうと異界へは侵入出来なかったろうが……、……「(ふくろう)」の目がそれを可能としていた。

 ──全ては妖術師として、軍勢を鏖殺する為に。

 

 

 

 

「ダッ、ダガ、ココハオレノ世界ダ!負ケル訳ガ……!」

 

「だから全力で行くね。「(からす)」」

 

 

 

 

 尚も喚く四腕鬼を殺すべく、彼女はこの世界に二つと無い『妖刀』に玄力を込める。

 

 

 

 

 黒羽が腕を覆って行く。

 

 

 

 

(いちろ)

 

 

 

 

 刀諸共前腕は消え去り、生え揃った黒羽が彼女の前腕を烏の翼に変えた。

 

 

 

 

 

「……?」

 

「油断してると」

 

 

 

 

 自ら武器を捨てたようにしか見えず、困惑する四腕鬼の元に、

 

 

 

 

「すぐ終わっちゃうよ?」

 

「ッ⁈」

 

 

 

 

 ──鋭く、空を切り()()()襲い掛かる。

 

 

 

 

「ナ、ナンダ、ソレハ……⁉︎」

 

 

 

 

 剣で止めたそれは、黒い刀と古風な剣、

 

 

 ……を手にした()()()()()()()()()()()()

 

 

 

 

「グガッ⁈」

 

 

 

 

 すかさず蹴撃が飛んで来る。

 防げずに吹き飛ばされた目の前で全貌が明らかとなる。

 

 

 

 

 彼女は『烏』で武器を握った前腕だけを転移させ、眷属のように従えている。

 その境目は翼となり窺えない。

 そしてすげ変わった翼は人の手腕では起こし得ない推進力を与えるのだろう。

 ──このように。

 

 

 

 

「たあっ‼︎」

 

「グア、ァアアアアアア‼︎」

 

 

 

 

 それは豪雨伴う嵐に似ていた。

 翼はためき、剣刀舞い、足音は高らかに。

 四腕鬼に反撃も許さず、武装諸共切り刻み、蹴り砕いていく。

 秀でた脚力と『妖刀』を生かした変速自在二刀二足流、それが彼女の本領だった。

 

 

 

 

「コノ、ォオオオ‼︎」

 

「!」

 

 

 

 

 瞬く間に追い詰められる四腕鬼はその手に残る“異界具”を振るい空間衝撃波と瘴気の大雲を撃ち放つ。

 それは大多数の妖術師を一掃出来る、異界を創る程の鬼の大将に相応しい強力な武具の力であった。

 

 

 

 

「──(からす)

 

「⁉︎ブグ、ッ!」

 

 

 

 

 ──ただし、『妖刀』は決してそれらに劣るものではない。

 腕を斬られた驚きに思わず振り返った次の瞬間、四腕鬼は()()()()()()こみ上げる血反吐を吐き出した。

 見れば瘴気の大雲は綺麗さっぱり消え去っている。

 

 

 

 

「……‼︎小サクシタ、羽ヲ、体内ニ潜マセタカ……‼︎……ゴボッ、ゴボッ‼︎」

 

 

 

 

 四腕鬼を侵す瘴気の正体は「(からす)」によって転移させられた、その大雲。

 剣を取り落とし、膝を付く鬼はこれ見よがしに撒き散らしていた黒羽は、それらを一見して分からない程小さく出来ると気付かせない為のブラフだと気が付いたが……、……もう遅い。

 

 

 

 

「これで終わりだね?「飛宗(とびむね)」──」

 

 

 

 

 

 

 

 

「──(すざく)

 

 

 

 

 無慈悲の炎が、放たれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日、一つの異界が焼滅した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい加納ですー。異界一つ消しましたー。よろしくでーす」

 

 

 

 

 ガチャリ。

 コインロッカーが開けられる。

 適当過ぎる報告を上にスクールバッグが取り出される。

 ──黒羽が一枚、地に落ち散った。

 

 

 

 

「さーて、アイスアイスー!」

 

 

 

 

 学生らしい喜び──、──実際は一仕事終えた後の喜びを口にしながら彼女は()()薔薇宿(ばらじゅく)の街に繰り出す。

 名を加納(カノウ)乱競(ランセ)

 世界に二つとない『妖刀』を振るう妖術師だ。

 

 

 

 

「アイスアイスアイスー‼︎」

 

 

 

 

 三日後、討伐件数五位に入った事で『日本対界会議』への参加を許される凄腕の学生妖術師である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……なお、大人気の薔薇宿アイスは売り切れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






加納(カノウ)乱競(ランセ)(加納ランセ)】
…学生妖術師。
 別の世界から切り離され、異界となった『ナントカ寺』(※名前が掠れたりして分からなかった。調査を適当に済ませた訳ではない)に落ちてた『妖刀』「飛宗」を拾い契約者となった。
 凄腕。

【飛宗】
…『妖術』を刻まれた刀。
 故に『妖刀』。
 今まで類似の“異界具”が発見されていない唯一無二である“異界具”の一つ。
 転移の「(からす)」、感知の「(ふくろう)」、治癒の「(すざく)」の三つの力を持つ。
 ランセによってその本領を引き出されるのと同時にランセの殻も破った。

【無慈悲の炎】
…ランセが引き出した『妖刀』の本領。
 エゲツない。


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