よくわかる日本の歴史 ~ただし、原始時代から日本にのみダンジョンがあったものとする~【第三部完】   作:Mr.ティン

199 / 199
日付変わる前に更新できませんでした……


後三年の役により、武士の独立性が高まった

【源義家】

 

前九年の役が終わり、某は父・頼義と共に都へと戻った。

父は長い戦いを経て、疲労の色を隠せなかったが、某の胸には戦いの興奮がまだ残っておった。

 

(某は、あの戦場で多くを学んだ)

 

某は、そう思った。

父の背中を追いながら、某は武人として成長してきた。

石清水八幡宮で元服した時から、某は八幡太郎と称されるようになった。

八幡大菩薩の加護を受けし者として、その名は東国に響いておる。

 

だが、父が某に語った言葉は、某の心に重くのしかかった。

 

「義家、清原氏が巨大化しすぎた。某は……不安を感じておる」

「父上、それは……」

「安倍氏を倒すために清原氏と手を組んだが、今や清原氏は東北を支配する巨大勢力となった。これは、いずれ新たな火種となろう」

 

父の予感は、的確だった。

清原氏は、前九年の役後、陸奥・出羽の広大な地域を支配し、朝廷からも「俘囚長」として認められ、半独立的な権力を持つに至っておった。

まるで一つの国のように、清原氏は東北に君臨しておったのだ。

 

やがて、某は陸奥守として東北へと赴任することになった。

父の後を継ぎ、この地を治めるのだ。

 

「義家、気をつけよ。清原氏は、安倍氏よりも強大だ」

「承知しております、父上」

 

某は、父の言葉を胸に、陸奥の地へと向かった。

陸奥守として赴任した某は、清原氏の動向を注意深く見守っておった。

清原武則、武貞、真衡ら一族は、表面上は朝廷に従順だったが、その実、東北の支配者として振る舞っておった。

 

(父上の言う通りだ。この者たちは、いずれ朝廷に牙を剥くやもしれぬ)

 

某は、警戒を怠らなかった。

そして、ある日、事態は急変した。清原真衡が急死したのだ。

 

「真衡殿が……急死?」

「はい、義家様。病が原因とのことですが……」

 

配下の報告に、某は眉をひそめた。

真衡の死により、清原氏の後継を巡って、一族内に対立が生じ始めたのだ。

その対立の構図は、まるで嵐の渦のように複雑だった。

 

清原清衡は、母が安倍氏出身であるため、清原氏内部で立場が弱い。

清原家衡は、真衡の従兄弟で、強い反清衡派。清原武衡は、一族の長老格で、家衡と協力している。

この三者の対立が、まるで干し草に火を放つかのように、東北を揺るがし始めたのだ。

 

そして、遂に家衡が動いた。家衡が清衡の館を襲撃したのだ。

 

「義家様! 大変です! 清衡殿の館が襲撃されました!」

「何だと!?」

 

某は、すぐに詳細を確認した。

家衡の軍勢が清衡の館を襲い、清衡の妻子を殺害したという。

清衡は辛うじて逃れ、某のもとに救援を求めてきたのだ。

 

「義家様……どうか、お助けください……」

 

清衡が、まるで嵐に打たれた木の葉のように、弱々しく某に頭を下げた。

清衡の目には、深い悲しみと怒りが宿っておった。

 

「清衡殿、落ち着かれよ」

 

某は、清衡を落ち着かせた。

 

(某は……介入すべきか?)

 

これは清原氏の内部対立であり、某が介入する理由はない。

だが、某は陸奥守として、この地の治安を維持する責任がある。

 

「某は、陸奥守として、この地の治安を維持せねばならぬ」

 

某は、決断した。

 

「清衡殿、某は貴殿を助ける。国司としての治安維持を名目に、家衡殿らに対処する」

 

某の言葉に、清衡は涙を流して頭を下げた。

 

「ありがとうございます、義家様……」

 

こうして某は、後に後三年の役と呼ばれる戦いに介入することとなったのだ。

だが、この戦いは、前九年の役以上に厳しいものとなった。

家衡と武衡の連合軍は、まるで岩のように堅固で、某の軍は決定打を欠いた。

 

「くっ……押せ! 押せ!」

 

某は、戦場で叫んだ。

だが、家衡らの軍勢は、地の利を活かして巧みに戦った。

冬季の豪雪が、某の軍を苦しめた。

雪が、まるで白い壁のように視界を遮り、補給路を断った。兵たちは、寒さと飢えに苦しんだ。

 

「義家様、このままでは……」

「分かっておる……だが、引くわけにはいかぬ」

 

某は、歯を食いしばった。

戦線は、まるで凍りついた川のように、停滞した。一年、二年と時が過ぎても、決着はつかなかった。

 

(某は……父上と同じ過ちを犯しておるのか?)

 

某は、自問した。父は前九年の役で、軍の指揮の拙さから大敗を喫した。

某も、同じ道を辿っておるのではないか。

 

だが、某は諦めなかった。

 

(某は……必ず勝つ)

 

某は、固く決意した。

そして、遂に決戦の時が来た。

家衡と武衡が、金沢柵に立てこもったのだ。

金沢柵は、まるで鉄の要塞のように堅固な防御を誇っておった。

 

「全軍、金沢柵を包囲せよ!」

 

某の号令で、義家軍が金沢柵を包囲する。

だが、柵は容易には落ちなかった。

某はやむなく、長期包囲を決断したのだった。

 

「兵糧攻めだ。柵を包囲し続け、敵の兵糧が尽きるのを待つ」

 

不幸中の幸いは、金沢柵の中に魔穴の一口などが無い事であった。

仮にあったのなら、兵糧攻めなどそもそも成立しないのだ。

そして某の策は、まるで氷が溶けるように、じわじわと効果を現した。

柵内の兵糧が尽き始めたのだ。

家衡らの兵たちは、次第に弱っていった。

 

そして、遂に金沢柵は陥落した。

 

「総攻撃、開始!」

 

某の号令で、義家軍が一斉に柵に攻め込んだ。

柵内の兵たちは、もはや抵抗する力も残っておらなんだ。

家衡は逃亡したが、追っ手に討たれた。武衡は捕らえられ、京都へ送られ処刑された。

 

こうして、清原氏は滅亡し、清衡が東北の支配者として台頭したのだ。

 

「義家様、ありがとうございます……」

 

清衡が、深々と頭を下げた。

 

「某は、ただ国司としての務めを果たしただけだ」

 

某は、そう答えた。

 

後三年の役は、こうして終わりを告げた。

某は、都へと戻り、朝廷に報告した。

 

「某は、陸奥の乱を平定いたしました」

 

某の報告に、朝廷の者たちは頷いた。

だが、某が恩賞を求めると、朝廷の態度は一変した。

 

「義家殿、今回の戦いは、私戦である」

「私戦……ですと?」

「清原氏の内部対立に、貴殿が勝手に介入したに過ぎぬ。故に、恩賞は出せぬ」

 

朝廷の言葉に、某は愕然とした。

 

「某は、陸奥守として治安を維持したのです! それが私戦だと!?」

「そのように判断した」

 

朝廷の冷たい返答に、某は怒りを覚えた。

某は、私財を投じて兵を動員し、長い戦いを戦い抜いたのだ。

それなのに、恩賞は一切なしだと。

 

「……分かりました」

 

某は、それ以上何も言わなかった。

だが、某の心には、深い失望が刻まれた。

 

(朝廷は……武士を、ただの道具としか見ておらぬのか)

 

某は、そう感じた。

だが、某には従ってくれた兵たちがおる。

彼らに報いねばならぬ。

某は、私財をなげうって、兵たちに恩賞を与えた。

 

「義家様……ありがとうございます……」

 

兵たちが、涙を流して某に頭を下げた。

 

「某と共に戦ってくれた者たちだ。当然のことだ」

 

某の言葉に、兵たちは深く感謝した。

この出来事は、東国の武士たちの間に広まった。

 

「義家様は、朝廷から恩賞を得られなかったのに、私財で我らに報いてくださった」

「義家様こそ、真の武士の鑑だ」

 

某の名声は、まるで炎が広がるかのように、全国に広まった。

八幡太郎義家の名は、武士の理想像として語られるようになったのだ。

だが、某が得たものは、名声だけではなかった。

某は、一つの真実に気づいたのだ。

 

(朝廷は……もはや武士を正当に評価せぬ)

 

某は、そう悟った。

朝廷は、武士を利用するだけ利用し、恩賞は出さぬ。

ならば、武士は自らの力で報酬を得るしかない。

 

(武士は……もはや朝廷に頼らず、自らの力で生きていくべきなのだ)

 

某の考えは、まるで種が芽吹くように、東国の武士たちの間に広まっていった。

武士たちは、朝廷ではなく、源氏を頼るようになった。

源氏こそが、武士の利益を守ってくれる存在だと。

 

こうして、武士の独立性は、まるで川の流れが大きくなるように、強まっていったのだ。

 

某は、空を見上げた。空には、まるで未来を照らすかのように、美しい月が浮かんでおった。

 

(某が築いたこの基盤は、いずれ武士の世を創るであろう)

 

某は、そう確信した。

いずれ朝廷の時代は終わり、武士の時代が始まる。

その時代の礎を、某は築いたのだ。

後三年の役は、ただの奥羽の乱ではなかった。

それは、武士が朝廷から独立し、自らの力で世を治める時代への、大きな一歩だったのだ。

 

某、源義家は、その歴史の転換点に立っておった。そして、某の子孫たちが、その道を進んでいくであろう。

 

(某達の戦いは、終わらぬ)

 

某は、そう心に誓った。

武士の時代は、今、確実に近づいておる。

そして、源氏は、その時代を切り開く運命を背負っておるのだ。

某の歩みは、まるで歴史を刻むかのように、力強く響いておったのだった。




以下のXアカウントで告知や更新のアナウンスをしています。
https://twitter.com/Mrtyin
日々、皆様のお気に入り登録や評価などが更新の励みになっております。
誠にありがとうございます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

賢者の石を手に入れた在宅ワーカーだけど、神様って呼ばれてるっぽい(作者:パラレル・ゲーマー)(オリジナル現代/冒険・バトル)

フリーランスのWebデザイナーとして、都心のマンションで静かな日々を送る橘栞(たちばな しおり)。彼女の趣味は、複雑なルールのゲームを解析し、最適解を導き出すこと。そんな彼女の日常は、ある日、目の前に現れた【スキル『賢者の石』を入手しました】というウィンドウによって、静かに終わりを告げる。▼万物を対価(コスト)に変え、新たな能力を獲得できるその力に、栞は恐怖…


総合評価:5359/評価:7.2/連載:278話/更新日時:2026年05月13日(水) 21:22 小説情報

ゲーム世界転生〜現代ダンジョン世界かつ1900年開始で生き残るには〜(作者:星野林(旧ゆっくり霊沙))(オリジナル現代/冒険・バトル)

現代ダンジョン立志伝〜大戦の軌跡〜▼……というゲームをプレイしていたプレイヤー達は、プレイヤーとしての知識を活かして成り上がりを目指すようです。▼2度の大戦以外にも日ノ本を狙う国はわんさかおりますが、プレイヤー達は生き残れるのでしょうか!


総合評価:5130/評価:8.59/連載:103話/更新日時:2026年05月12日(火) 19:51 小説情報

【目指せ】Stellarisで生き抜くスレ【大日本宇宙帝国】(作者:ヒャル)(原作:Stellaris)

Stellaris世界に転生させられた転生者たち。▼他の星間帝国やいずれ来る危機に立ち向かうべく、彼らは遥かな宇宙へと雄飛する――▼その過程で戦争したり弱者をヒャッハーしたりするだろうけど仕方ないよね、パラドゲーだもの(▼参考にする為に実際にStellarisをプレイしながら執筆しています。


総合評価:3703/評価:8.44/連載:108話/更新日時:2026年05月16日(土) 20:00 小説情報

現代ダンジョン発生初日。世界がパニックになる中、俺だけが攻略wikiの知識で最強ビルドを試している~将来のSSS級探索者? ああ、全員俺の弟子です~(作者:パラレル・ゲーマー)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

ある日の朝、世界各地に「ダンジョンゲート」が出現した。 自衛隊が出動し、人々がパニックに逃げ惑う中、35歳の社畜サラリーマン・八代匠(やしろ たくみ)だけは、震える手で歓喜していた。▼「間違いない。ここは、俺が死ぬほどやり込んだ神ゲー『ダンジョン・フロンティア』の世界だ!」▼初期の混乱期(黎明期)こそが最大のチャンスだと知る彼は、すぐさま会社を辞め、脳内の「…


総合評価:5882/評価:7.63/連載:149話/更新日時:2026年04月05日(日) 22:42 小説情報

祖父の遺品整理をしていたら封印AIが起動したので、地球中の異星遺産を回収して成り上がる(作者:パラレル・ゲーマー)(オリジナル現代/冒険・バトル)

三十五歳、売れないフリーライターの久世恒一は、親に頼まれて東京にある祖父・久世宗玄の家を整理することになる。▼変人扱いされていた祖父の家で彼が見つけたのは、封印された異星文明の管理AI《イヴ》と、現代ではチート級の価値を持つ超技術だった。▼最初の遺産《セル・チューナー》は、地球のバッテリーを桁違いの高性能品へ変質させる基幹技術。▼スマホは一ヶ月充電不要。死に…


総合評価:2429/評価:8.02/連載:45話/更新日時:2026年04月21日(火) 16:38 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>