よくわかる日本の歴史 ~ただし、原始時代から日本にのみダンジョンがあったものとする~【第三部完】   作:Mr.ティン

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執筆中に寝落ちして、今起きて、即更新という泥縄具合……


伊豆に流刑となった源頼朝は、以仁王の令旨を受け、挙兵した

【源頼朝】

 

平治の乱が終わった時、拙者はまだ幼かった。

父・義朝が尾張で討たれ、兄・義平が斬首された。

拙者もまた、死を覚悟していた。

だが、平清盛は拙者を処刑しなかった。

 

「頼朝は、伊豆へ流罪とする」

 

清盛の言葉に、拙者は命を救われた。

だが、それは同時に、全てを失うことでもあった。

 

拙者は、伊豆の地へと送られた。

都から遠く離れた、この東国の地で、拙者は流人として生きることになったのだ。

 

(拙者は……源氏の嫡流でありながら、このような境遇に……)

 

拙者の心には、深い屈辱があった。

だが、拙者は耐えた。生きていれば、いつか機会が来る。

拙者は、そう信じた。

 

伊豆の地で、拙者を庇護してくれたのは、地元の土豪である北条氏だった。

北条時政殿が、拙者を受け入れてくださったのだ。

 

「頼朝殿、拙者の館で過ごされよ」

「ありがたき幸せ」

 

時政殿の言葉に、拙者は深く頭を下げた。

拙者は、北条氏に感謝した。

だが、拙者は幼いながらに理解していた。

北条氏は、拙者を利用しようとしているのだと。

 

源氏は、前九年の役と後三年の役で東国に名声を築いた。

源義家公の武名は、今も東国の武士たちの間で語り継がれている。

拙者は、その源氏の嫡流だ。

北条氏にとって、拙者を庇護することは、源氏の名声を利用する手段なのだ。

 

(拙者は……利用されているのだな)

 

拙者は、冷静に分析した。

だが、拙者は北条氏を責める気にはなれなかった。

むしろ、拙者を匿うことは、北条氏にとって危険なことでもあった。

平家の目を気にしながら、流人を庇護する。

それは、並大抵の覚悟ではできないことだ。

 

(時政殿は……拙者に賭けてくださっているのだ)

 

拙者は、北条氏に深い恩義を感じた。

 

 

時政殿には、政子という娘がいた。

拙者と同じくらいの年齢の、聡明な娘だった。

政子が、拙者に食事を運んでくれた。

 

「頼朝様、これをどうぞ」

「ありがとう、政子殿」

 

拙者は、政子に礼を言った。

政子は、まるで太陽のように明るく、拙者を励ましてくれた。

 

時政殿は、拙者と政子を、幼い頃から近づけた。

これもまた、打算だろう。

いずれ拙者と政子を婚姻させ、北条氏と源氏の結びつきを強固にする。

そのための布石だ。

 

拙者は、それを理解していた。

だが、拙者は政子との時間を嫌だとは思わなかった。

むしろ、政子との会話は、拙者の心を和ませてくれた。

 

一方で、拙者は各地の源氏勢力との接触が少なかった。

平家の勢力が強大で、源氏は各地で押されていた。

連絡を取ることも、会うことも、ままならなかった。

 

拙者には、弟がいた。

九郎義経という名の弟だ。

だが、拙者は義経と会ったことがなかった。

義経は、奥州の藤原氏のもとで育っているという噂を聞いただけだ。

 

他にも、木曽に義仲という従兄弟がいると聞いた。

だが、彼とも面識はなかった。

 

(拙者には……源氏の親族という実感が、あまりないのだな)

 

拙者は、そう思った。

拙者にとって身近なのは、北条氏だった。

時政殿、政子、そして北条一族。

彼らこそが、拙者を支えてくれた人々だった。

 

 

歳月が流れた。

 

拙者は青年となっていた。

身体が成長した後、拙者は東国の各地にある魔穴で修練を積んだ。

刀を振るい、気を練り、己を鍛え上げる。

拙者は、いつか源氏を再興する日のために、力をつけねばならなかった。

何故ならば、源氏は武によって成り立つ家門であるからだ。

源氏は、かつて多くの怪異を打倒し、または従えたという。

東国での名声もまた、武によって乱を収めたからに他ならない。

であるならば、源氏の嫡流である拙者が腕を磨かぬ理由は無かった。

 

だが、同時に拙者は武力のみを重視する気は無かった。

個人の武が通用するのは、精々将までだろう。

その上、多くの武人をまとめ上げ、更には領地を治めるのは、それだけでは足らぬ。

人の上に立つ者として、統率力と仕組みづくりが必要だと、拙者は理解していた。

 

(武力だけでは、人は治められぬ。仕組みが必要なのだ)

 

拙者は、恩賞と奉公を組み合わせた制度を考え始めていた。

武士たちに土地を与え、その代わりに奉公を義務づける。

そうすれば、武力と軍事力を統治の仕組みに直結させることができる。

 

拙者は、伊豆で静かに準備を進めていた。

そんな拙者に、北条氏は遂にある提案をしたのだ。

拙者と政子との婚姻。

その日、来るべき時がきたと、拙者は知った。

政子が、まっすぐに拙者を見て言った。

 

「頼朝様、私は貴方の妻となります」

「拙者も、政子殿を妻として迎えることを、誇りに思う」

 

拙者は、心からそう思った。

この婚姻は、政略結婚の色が強いことは、十分に承知している。

北条氏と源氏の結びつきを強固にするための婚姻だ。

だが、拙者はこの婚姻を喜ばしいものと感じていた。

 

政子は、拙者を理解してくれた。

拙者の野心も、拙者の苦悩も、政子は全て受け入れてくれた。

 

「頼朝様、私は貴方と共に、源氏を再興します」

「ありがとう、政子」

 

政子の言葉に、拙者は深く頷いた。

 

拙者には、政子という強い味方ができた。

さらに拙者は、東国での基盤を固めていった。

三嶋大社や伊豆山権現に参拝し、宗教勢力との関係を築いたのだ。

神仏の加護は、武士にとって重要なのは言うまでもない。

そして、宗教勢力の支持は、民衆の支持にも繋がる。

 

密かに拙者が重視したのは、他の同年や若い武士たちとの関係だった。

伊豆での狩猟や宴席を通じて、若手武士と縁を結んでいく。

 

 

「頼朝様、拙者らは貴方に従います」

「拙者は、お前たちの忠義に必ず報いる」

 

その結果、若手武士たちが、拙者に忠誠を誓ってくれた。

更に彼らが属する家門もまた、援助を約束してくれた。

拙者は、彼ら若い武士たちを通じ、彼らの家である土豪たちとの繋がりを得たのだ。

 

拙者は、約束した。

恩賞と奉公。それが、拙者の統治の基本だ。

拙者に従えば、必ず恩賞がある。

その信頼こそが、武士たちを結びつけるのだ。

かつて私財を以て部下に恩賞を果たした源氏、その嫡流である拙者の言葉は、何よりも説得力を持っていた。

 

こうして拙者は、静かに、だが確実に、源氏復権の日に向けて準備を整えていった。

 

(いつか……必ず、その日が来る)

 

拙者は、固く信じていた。

 

 

そして、遂にその日が来た。

 

使者が、慌てて駆け込んできた。

 

「頼朝様! 大変な報せです!」

「何事だ?」

「後白河院の皇子である以仁王様が、平氏討伐の令旨を発されました!」

 

使者の言葉に、拙者は息を呑んだ。

 

「令旨……だと?」

「はい、摂津源氏の源頼政殿と協議され、諸国の源氏や寺社に蜂起を促されたとのことです!」

 

拙者の心臓が、激しく鼓動した。

 

(遂に……その時が来たのか)

 

拙者は、深く息を吐いた。

長い、長い時間だった。

平治の乱から、拙者はこの時を待ち続けてきた。

拙者は、北条時政殿と政子を呼んだ。

 

「時政殿、政子、拙者は決断する」

「頼朝様、遂にその時が……」

 

時政殿が、緊張した面持ちで言った。

 

「そうだ。拙者は、挙兵する」

 

拙者の言葉に、時政殿は深く頷いた。

 

「拙者らも、頼朝様に従います」

「ありがとう、時政殿。拙者は、必ず平家を倒し、源氏を再興してみせる」

 

時政殿の言葉に、拙者は深く頭を下げ、固く誓った。

 

拙者は、すぐさま伊豆の土豪たちに声をかけた。

これまで関係を築いてきた者たちだ。

 

「拙者は、平家打倒の兵を挙げる。拙者に従ってくれぬか?」

「頼朝様、拙者らは貴方と共に戦います!」

 

拙者の呼びかけに、多くの武士たちが応じてくれた。

若手武士たちが、声を上げた。

 

「ありがたい。拙者は、お前たちの忠義に必ず報いる」

 

拙者は、約束した。

恩賞と奉公。

それが、拙者の武士統制の基本だ。

拙者に従えば、必ず土地や官位が得られる。

その信頼が、武士たちを結びつけるのだ。

 

そして、拙者は軍勢を整えた。

 

(拙者の挙兵は、平家にとって大きな脅威となるだろう)

 

拙者は、確信していた。

東国にさえも、平家が公卿化しているとのうわさが伝わって来た。

公卿に代り権勢をふるい続けた事で、いつしか公卿と変わらぬようになり、武家としての力を失いつつあるのだという。

一方、拙者は東国の荒武者たちを率いている。

この差が、勝敗を分けるだろう。

 

だが、拙者だけが動いているわけではなかった。

 

「頼朝様、木曽でも源氏が挙兵したとのことです!」

 

使者が報告した。

 

「木曽……義仲か」

 

拙者は、従兄弟の名を呟いた。

義仲もまた、令旨に応じて挙兵したのだ。

使者は続ける。

 

「さらに、奥州でも源氏の動きがあるとのことです!」

「奥州……義経か」

 

拙者は、弟の名を呟いた。義経もまた、動き始めたのだ。

 

(源氏が……各地で立ち上がっている)

 

拙者は、感慨深かった。

だが、同時に拙者は冷静だった。

 

(義仲も、義経も、拙者にとっては協力者だ。だが、拙者が最も信頼するのは、北条氏だ)

 

拙者には、明確な優先順位があった。

源氏の親族よりも、北条氏。

血縁よりも、恩義と利害。

それが、拙者の現実的な判断だった。

 

「全軍に告ぐ! 拙者は、平家打倒の兵を挙げる!」

 

拙者の号令が、伊豆の地に響いた。

 

武士たちが、まるで嵐のように集まってきた。

源氏の旗が、風になびいている。

白地に赤の丸、それが源氏の旗印だ。

 

拙者は、馬に跨った。

 

「拙者は、源頼朝。源氏の嫡流として、平家を倒し、武士の世を創る!」

 

拙者の声が、武士たちの隅々にまで響いていく。

武士たちが、歓声を上げた。

 

「源氏万歳!」

「頼朝様万歳!」

 

拙者の心は、まるで炎のように燃え上がっていた。

長い忍耐の時は終わった。

今こそ、拙者が動く時だ。

 

(清盛……拙者を生かしたことを感謝しよう)

 

拙者は、心の中で呟いた。

清盛が拙者を処刑せず、伊豆へ流したこと。

それが、清盛の最大の過ちだったのだ。

 

拙者は、軍勢を率いて進軍を開始した。

東国の地が、まるで蜂の巣をつついたかのように騒がしくなった。

源氏の挙兵の報は、瞬く間に広がっていった。

 

平家は、これにどう対応するのか。拙者は、それを見定めるつもりだった。

 

(拙者の戦いは、今、始まったのだ)

 

空には、美しい青空が広がっていた。

まるで、新しい時代の到来を祝福するかのように。

拙者の旗が、風に大きくなびいた。

源氏の旗が、東国の空に高く掲げられた。

 

そして、拙者の軍勢は、まるで奔流のように進んでいくのだった。

 




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