よくわかる日本の歴史 ~ただし、原始時代から日本にのみダンジョンがあったものとする~【第三部完】   作:Mr.ティン

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おかしな動物たち

これも、縄文時代の頃の話だ。

 

「やっぱり変だよな、アレ」

 

海底の火山を繋ぐダンジョンコアのネットワーク拡大にいそしむ中、気晴らしがてらに魔力が及ぶ領域内を見ていて、俺は首を傾げた。

意識だけの状態で首をかしげると言うのもおかしな話だが、流石に長年ダンジョンコアの意識なんてものをやっていると、肉体のイメージ的なモノを作れるようにもなってくる。

コレはハルカも同じで、首を傾げた俺の意識に意識を寄り添わせてきた。

 

「どうしたのアナタ」

「いやな、動物たちの変異が、妙過ぎないかと思ってな」

 

俺が見ているのは、とある森だ。

様々な野生動物が生息する中、木々の合間を枝にぶら下がる様に、動き回る影がある。

例の、角を腕のように動かせる鹿だ。

雲梯のように角で枝にぶら下がり、何故か前足を腕組みするような形で胸部の前で組み、無表情の筈が妙にどや顔に見える姿。

余りにも、突っ込み処の塊だ。

何をどうしたらそう言う生態になったのか、不思議でしょうがない。

魔力とは出鱈目すぎやしないだろうか?

 

「あと、むやみやたらと巨大化するのは何故だ……」

「……お父さんの仇のあのドウクツグマも、大きかったわね」

「それもそうだが、最近の巨大さはどうかしているだろう……」

 

コアとしての感覚が、とある山並みの一角に動く物をとらえる。

まるで、山が動いているかのような巨大なそれは、大型の熊だ。

四つ足状態で、全高10mに届くほど。

後ろ足で立とうものなら、20mを遥かに超えるだろう。

まさしく、動く山だ。

 

「アレも、親父殿に傷を負わせたような、質の悪い生体をしているな」

 

とあるダンジョン前にあった集落が、その熊に食い殺されていく様子が見えた。

それどころか、他のまだ常識的な大きさの熊さえも捕食し始めている。

 

「なんて、酷い……」

「……もしかして、暴走しているのか? それとも、意図的なモノか?」

 

どうも、一種の知性を得ているようだ。

魔力を帯びたものを捕食すると、己の力を伸ばせると察しているのだろう。

遂には、動物の血肉だけではなく、モンスターの体内にある魔石も食らうようになってきた。

 

そして魔力を求めた末に、その時が来る。

 

「アナタ、アレは流石に止めないと」

「……そうだな。あの様子は、拙い」

 

その巨大なクマが、ダンジョンそのものを食い始めたのだ。

山の中腹にあるダンジョンの入口。

その周囲を掘り起こしながら、ダンジョンの石壁や床などを破砕音と共に食らう。

生前の工事現場のような騒音が、山々の間に響き渡った。

このままだと、何れコアにまで届き、コアを捕食してしまうだろう。

それは、流石に見過ごせない。

 

「ちょっと、行ってくる」

「ええ、アナタ。気を付けて」

 

俺は急遽アバターを作り出し、この化け物熊の前に降り立った。

だが、熊はこちらを見向きもしない。

ダンジョンを構成する建材の捕食に夢中なのだ。

 

「無視するなよ。悲しくなるだろう?」

 

ゴッ!! と重い打撃音で、地面が僅かに揺れる。

俺は軽く飛び上がって、この熊を横合いから蹴り飛ばしたのだ。

 

「グオオァ!?」

 

熊は自分自身に比べ、余りに小さく見える俺の事は、取るに足らないと認識していただろう。

しかし、このアバターの基本性能と、膨大な魔力による補正が合わされば、この程度は容易く出来る。

結果、虫程度に思っていた筈の俺に一撃受けた衝撃で、熊はあっさりと逆上した。

後ろ足で立ち上がり、まだ空中に居る俺に、前足を振り下ろしたのだ。

 

「これだ」

 

だが、コレは俺が望んだとおりの展開だった。

俺は空中に立ち、その前足を抱え込む。

魔力の扱いに慣れれば、空中に疑似的な足場を作ることなど容易い。

そのまま熊の腕に、ある方向への力を加えていく。

 

熊の身体が、浮かんだ。

魔力の足場は、想像以上にしっかりとしていて、熊の勢いを乗せても崩れる事が無い。

そのまま、立ち上がったが為の高さから、熊を投げ飛ばす。

その落下地点にあるのは、魔石で出来た岩だ。

それも、膨大な魔力を宿すことで強度などを強化した特別製。

三角錐に近い形状は、即興で作り出したにしては、良い出来だった。

その岩に、熊が額から激突する。

20mを超える巨体の体重と、その高さからの高低差。

そして、強固な魔石の岩。

その全てが、熊に牙をむいた。

 

「ゴッ!?」

 

最早、絶叫すらできない。

岩に激突した瞬間、鋭い先端がクマの眉間の骨を砕き突き破り、頭蓋を破砕したのだ。

もちろんそれで中身の脳も無事な訳がない。

つきぬけた岩の先端と共に、脳漿が方々に巻き散らかされる。

もちろん即死だった。

 

「……案外、いけるものだな」

 

後の弥生時代にとある王子に披露した技。

その本質は、魔力によるベクトル操作だ。

触れた相手の魔力に干渉し、その身体に好きな方向のベクトル荷重を付与できる。

これは一切の筋力的な力を伴わない、まさしく魔法じみた技だ。

だからこそ、どんな相手ですら投げ飛ばせる。

この、熊のように。

 

「……コアを食おうとしなければ、お前の存在も自然の一部として放置も出来たのだけど……許せよ」

 

そう呟きながら、俺は熊の死体を魔力へと返した。

今回、ダンジョンも少なからず損傷した。

これを修復するには、相応の魔力が必要だ。

熊の死体を魔力に還元するのは、その補填の為だ。

 

溢れる魔力でダンジョンを修復しながら、俺は願った。

こんな化け物が他にも出ないようにと。

 

もっとも、そんな俺の願いは叶えられず、珍妙なモノや強大な変異動物が、今後も生まれていくのだった。

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