ニャースの寿命は人間より長い説を小耳にはさみ、妄想しました。
「世界は変わり続けているけれど、今夜も月は丸いのニャー」
「またニャースの哲学が始まったぁ」
その少女は特に気にもしていないような口ぶりで、焚火の傍で暖を取っている。
少女と喋るニャースは旅の途中であり、月と星が見える森の中で休息をとっていた。
「こんなの哲学の中にも入らないのニャー……おミャー、哲学の意味知ってるのかニャ?」
「知ってるよ! えーとえーと、とにかく、なんか難しいことを考えること!」
「わかってないのニャ」
ぴしゃりと言われ少女はむーっと頬を膨らませる。
「おミャーはまだまだ酸いも甘いも知らないジャリンコだニャー」
「もう! バカにして! そんなニャースは何歳なのよ!?」
「それは、」
ニャースの言葉が一瞬詰まる。
「それは……オイラも忘れてしまったニャ」
「……そうなんだ、ごめん。確か、あなたは私が生まれるずっとずっと前から生きてるんだったね、ばけねこポケモンだから。そりゃ忘れちゃうよね」
申し訳なさそうに少女は言う。
「まあ、細かいこと気にすんなニャ」
「……あのさ、ニャース」
一息ついて、彼女はニャースに問いを投げかける。
「どうして、私の旅に着いてきてくれるの? あなたが得することなんか、何も無いはずのに……。私は、ニャースがポケモンの通訳をしてくれて、とっても助かってるけどさ」
「得とか損とかは特に関係ないニャ。旅は道連れ、世は情けニャー」
「……そっか、それもそうだね! 明日も良い出会いがあると良いな! なんだかとってもいい感じー!」
おやすみニャース、と彼女は言って寝床に着いた。ニャースはまだ起きていて、夜空に浮かぶ満月を眺めていた。
「……本当は、ムサシとコジロウの面影を感じるおミャーを、ずっと見守っていないと、ムサシとコジロウが本当にオイラの中から消えてしまうような気がするから、だなんて言えないニャ」
……いつのまにか辺りは明るくなりつつあった。
白い明日が来るというのに、ニャースにはもう仲間の二人はいない。
哲学の相手である満月も隠れ、ニャースは孤独を感じた。
「……ニャ!! 何くよくよしてるニャ! 二人が残した宝を、ニャーが守らないでどうするニャ」
ニャースは自分の目に流れた涙を拭い、パッと〈彼女〉の方を見た。
「ニャー! 起きるニャー!!」
「むぅ……どうしたのニャース、まだ日が上ったばかりじゃない、もう少し寝かせて……ぐー」
「ニャー!寝るニャー!! 食べ物探さニャいと、今日の朝ごはんが無いニャー!」
ニャースと〈彼女〉の旅は、これからも続くったら続く。
pixivにあがっていたものをそのまま載せようとしたら、字数が足りないと言われてしまったので加筆しました。