ウマ娘メタモルダービー   作:星乃 望夢

1 / 8
 
頭を空っぽにしてその場の勢いで書いているので、「細けぇことは気にすんな」というゴルシちゃんみたいに細かい事はスルーして下さると幸いです。

その辺気になって仕方ない方はブラウザバックを推奨します。




第1話 トレセン学園の噂

 

実は最近、トレセン学園の担当を持つトレーナーの間で密かに流行っている?物があるんだ。

 

アグネスタキオン謹製、ウマ娘に成れる薬、という物らしい。

 

アグネスタキオンは以前、彼女自身のトレーナーに実験としてとある薬を投与した。

 

それは身体能力を一時的にウマ娘並にするものだったらしい。

 

今回はそれを更に改良したもので、人間が服用すると一時的にウマ娘に成る事が出来る、という触れ込みだった。

 

既に身近な所だと、シリウスシンボリのトレーナーが服用して、彼女との一騎打ちの結果、ハナ差で勝ったという。

 

その話で学園のトレーナー陣やシリウスの舎弟たちから一部生徒までに至るまで話題は持ち切りだよ。

 

ただ一時的なものではなく、ウマ娘である事が恒常化している。

 

これは薬の副作用ではなく、薬との相性が良過ぎた、という報告をタキオンから受けている。

 

他にも、ドリームジャーニーのトレーナーが服用してウマ娘となって、今はトゥインクルシリーズを走っている。

 

君はこれをどう思う?ルドルフ

 

 

◇◇◇

 

 

君からの報告、確かに拝聴した。これは…断じて看過できない、極めて重大な事案だ。

 

アグネスタキオンの探求心が、また一つ新たな扉を開いた、ということか…。彼女の才能は疑いようもなく、その輝きはトレセン学園の宝だ。私自身、彼女の類稀なる才覚を高く評価している。だからこそ、これまでも彼女の研究活動には一定の理解を示してきたつもりだ。

 

しかし、今回の件は次元が違う。

 

『ウマ娘になる薬』。その言葉の響きは甘美かもしれんが、その実態は未知数。我々ウマ娘が持つこの身体、この魂が、後天的に、しかも薬物によってもたらされる…。それがどれほどの負荷を心身にかけるのか、誰にも予測がつかない。

 

報告にあった二人のトレーナーの件だが、「薬との相性が良過ぎた」というタキオンの見解は、あまりに楽観的、いや、無責任に過ぎるだろう。恒常的な変化が本当に副作用ではないという保証はどこにもない。長期的に見て、彼らの身体にどのような影響が出るのか。これは徹底的に調査する必要がある。

 

そして、シリウスのトレーナーが彼女との一騎打ちで勝利した、という点。これも聞き捨てならない。それは純粋な実力による勝利だったのか、それとも薬によって得た未知の力が作用した結果なのか。もし後者であれば、それは我々が誇りとしてきたレースの公平性、神聖さを根底から覆しかねない、極めて危険な兆候だ。

 

私の願いは、ウマ娘も、トレーナーも、このトレセン学園に関わる全ての者が幸福である世界だ。トレーナーがウマ娘の視点を得たいと願う気持ちは、理解できなくはない。だが、その手段が安全性を度外視したものであってはならない。軽率な流行が、取り返しのつかない悲劇を生まぬとも限らないからな。

 

直ちに行動に移そう。

 

まず、生徒会としてこの薬に関する事実関係の徹底的な調査を開始する。エアグルーヴ、ナリタブライアンにも協力を要請し、アグネスタキオン本人から直接、詳細な話を聞く必要がある。

 

並行して、理事長やたづなさんとも連携し、全トレーナーに向けて公式な注意喚起を行うべきだろう。

 

新たな可能性の芽を、いたずらに摘むつもりはない。だが、そのための礎となる安全と秩序が疎かになっては本末転倒だ。

 

…まさに、木に縁りて魚を求む、といった愚を犯すわけにはいかないからな。まずは足元を固め、慎重に進むべきだ。君も、有益な情報をありがとう。引き続き、何か分かれば報告してほしい。

 

 

◇◇◇

 

 

では二次報告として、僕もタキオンからその薬をひとつ譲り受けた。

 

ああ、大丈夫。まだ服用はしていない。

 

ただ、全てのウマ娘の幸福を願う君のトレーナーとして、僕は僕自身、ウマ娘の視点を持つことも大事なのではないのかと思った事がないと言えばウソになる。

 

でなければこんな話題を君に持ち掛けたりはしないだろう。

 

薬の可能性と副作用。

 

それが如何に人体に影響を及ぼすのかという治験も必要だ。

 

ドリームジャーニーのトレーナーは担当の彼女とは正反対のかなりの恵まれたバ体になった。

 

しかしシリウスシンボリのトレーナーは、シリウスシンボリと瓜二つの姿になったらしい。

 

そして両者共に目を見張る身体能力を持つに至った。

 

G1ウマ娘のシリウスに勝てる。

 

ある意味ロマンであり、そして担当ウマ娘を持つトレーナーなら誰もが考えるだろう。

 

この薬は、担当とのトレーニングに活かせるかもしれないと。

 

自分の担当するウマ娘と同じ身体になれば、担当に施すトレーニングがどの様に作用し、そして負荷を掛けているのかを実感として感じられる

 

寝ても覚めても担当の事を考えている僕たちトレーナーにとって、この薬の存在はまさしく蒼天の霹靂。

 

ウマ娘であり、トレセン学園の生徒会長である君は、薬の危険性と、そしてウマ娘の走るレースの神聖さが失われると危惧するのも重々承知している。

 

でも、僕は思う。

 

この薬を飲めば、僕は今よりも更に君と近しい視座で、君の掲げる理想の路を歩めるのではないかと、ね。

 

 

◇◇◇

 

 

…君の言葉、一つ一つが私の胸に深く突き刺さるようだ。

そうか…君は、そこまで深く、私の、そして我々ウマ娘のことを考えてくれていたのだな。

 

トレーナーとして、担当ウマ娘の全てを理解したいと願うその情熱。同じ視座に立ち、同じ苦しみや喜びを分かち合いたいというその純粋な想い。それは、トレーナーとして最高の献身であり、君が私のパートナーであることを、私は改めて誇りに思う。

 

だが、だからこそ、私は言わねばならない。

 

君の言う通り、ウマ娘の身体を得ることで、トレーニングの負荷を実感し、より精緻なメニューを組めるようになるかもしれん。私の走りに対する理解も、今より深まるのかもしれない。

 

しかし、だ。君が失うものを考えたことはあるか?

 

君がウマ娘になるということは、君が今まで培ってきた『人間としての視点』を失う可能性を意味する。レースを俯瞰で捉え、冷静にデータを分析し、時に私の昂る感情を鎮めてくれる、その客観性こそが、私にとって何物にも代えがたい羅針盤なのだ。同じ身体、同じ感覚を持つことが、必ずしも最善の結果に繋がるとは限らない。

 

そして何より…私は君の身を案じている。

 

タキオンの研究は素晴らしいが、常に危険と隣り合わせだ。シリウスのトレーナーたちの例が、君にも当てはまる保証はどこにもない。もし、君の身体に取り返しのつかない変調が起きたら?もし、君が君でなくなってしまったら?

 

そうなれば、私の目指す『百駿多幸』の世界から、最も大切な一人を失うことになる。それは私の理想の完全なる敗北だ。

 

君は、私の理想の路を共に歩むために、と言ってくれたな。その言葉、本当に嬉しく思う。

 

だが、共に歩むというのは、必ずしも同じ姿、同じ歩幅で進むことではないはずだ。

 

ウマ娘とトレーナー。異なる存在だからこそ、互いに支え合い、足りない部分を補い合い、一人では到達できない高みへと至ることができる。私はそう信じている。

 

君と私の理想は同じはずだ。だが、そのための手段が違えば、それは同床異夢に他ならない。

 

私は、君に危険な賭けをしてほしくない。

 

だから、頼む。その薬を飲むのは、やめてくれ。

 

私を理解したいのなら、言葉を尽くしてくれ。私も君に応えよう。これまでもそうしてきたように、これからも対話を重ね、互いの理解を深めていこうではないか。

 

それこそが、我々が築き上げてきた絆の在り方のはずだ。

 

君の視座は、今の君のままで、私の隣にこそ必要なのだから。

 

 

◇◇◇

 

 

確かに、君の言う通りだルドルフ。

 

ただ、こうも捉えられる。

 

人の視座を持ちながらも、ウマ娘の視座も持てる稀有な体験でもある、と。

 

確かに僕と君の目指す先は同じだ。

 

でも、そこに衝突が一切ない関係は、果たして対等と呼べるのだろうか?

 

それは君の理想に僕がただ追随しているだけのものでしかないのではないか?

 

そも、何も衝突もなく掲げられた理想は健全と呼べるのだろうか?

 

君に正義がある様に、僕にも正義がある。

 

君が僕の身を案じてくれた様に、僕は君が普段どんな負担を抱えているのかを知りたい。

 

今後増えるだろう薬の服用者のトラブルを減らす為の治験者は多い方が良い。

 

そしてそれは、トレセン学園の生徒会長であるシンボリルドルフのトレーナーである僕も成すべき義務だと考えている。

 

何故なら僕は君のトレーナーだから。

 

だから僕には必然として学園のトレーナーの代表者として身を振る舞う事も要求されるし、それをして来たつもりだ。

 

だから今回も、それを成すまでだよ。

 

もしそれで何か危険な事が発覚すれば、今後薬の服用を公的に禁止する事も出来る。

 

人がウマ娘になるなんていうデリケートな問題だ。

 

だからこそ、僕がやらなければダメだと考えるけれども。

 

ルドルフは、僕が間違っていると思うかい?

 

 

◇◇◇

 

 

君が間違っているか、か…。

 

その問いに、単純な『是』か『否』かで答えることは、私にはできない。

 

君が抱く、トレーナーとしての責務。担当ウマ娘の負担を理解しようとする真摯な姿勢。そして、未知の薬がもたらすであろう混乱を未然に防ぐため、自らが礎石たらんとするその覚悟。

 

そのどれもが、決して間違いなどではない。むしろ、誇り高く、尊いものだと私は思う。君が私のトレーナーであることを、心から誇りに思うよ。

 

だが、だ。

 

その崇高な目的を達成するための『手段』として、君自身が危険な被験者となること。

 

それだけは、断じて容認できない。

 

君は、生徒会長のトレーナーとしての責務を口にしたな。ならば、私にも言わせてもらおう。

 

私には、トレセン学園生徒会長としての、そして何より、君の担当ウマ娘シンボリルドルフとしての責務がある。

 

それは、この学園に関わる全ての者を守り、その未来を輝かせることだ。その『全て』の中に、君が含まれていないとでも思ったか?

 

君が私の知らない負担を知りたいと言うのなら、私は全てを語ろう。隠すことなど何もない。

 

衝突のない関係が対等ではない、と言うのなら、喜んで君と意見を戦わせよう。それこそが、我々の絆をより強固にするはずだ。

 

だが、君が自らの身を危険に晒すことを、この私が黙って見過ごすことだけはできん。それは私の理念の、そして君と築いてきた信頼関係の、完全な否定に他ならない。

 

君の正義は、君の肉体を危険に晒すことでしか証明できないほど、脆いものだったか?

 

いや、違うはずだ。

 

治験が必要だという君の意見は正しい。だが、その方法は他にいくらでもあるはずだ。

 

まずは、アグネスタキオン本人に薬の全成分と臨床データを提出させる。生徒会、理事会、そして君を代表とするトレーナー陣による合同の調査委員会を立ち上げ、安全性を徹底的に検証する。それが筋道というものだろう。

 

君のその勇気と正義感は、危険な自己犠牲としてではなく、皆を正しい方向へ導くための叡智として振るわれるべきだ。

 

君は間違ってはいない。だが、君が選ぼうとしている道は、最善ではない。

 

私は、君にそんな悲しい路を歩ませるために、君の隣にいるわけではないのだ。

 

さあ、その薬は私に預けてくれ。

 

そして、共に考えよう。トレーナーとウマ娘として、それぞれの立場でこの難局を乗り越えるための、最善の一手を。

それこそが、我々が目指すべき、真の二人三脚の姿ではないだろうか?

 

 

◇◇◇

 

 

君はいつも正しいな、ルドルフ。

 

正しすぎて、時折眩しく思えてしまう。

 

いや、だからこそ、三冠ウマ娘となり、7つの栄冠を手にする事が出来た最強のウマ娘だと言える。

 

でもね、ルドルフ。

 

君の言葉を借りるのならば。

 

トレーナーを無礼るな、と言わせてもらうよ。

 

さっきも言ったけれど、トレーナーは四六時中年がら年中365日寝ても覚めても担当の事を考えてばかりなんだ。

 

その異常とも言える精神性を見縊っては困る。

 

この僕もまたそうだ。

 

いつもルドルフの事を考えている。

 

だからこそ、僕は僕自身を証明しなければならない。

 

知っているかい?ルドルフ。

 

未だに僕は、ただ勝ち鞍に乗れた運の良い新人トレーナーという事を言われる事もあるんだ。

 

メディアはそう扱う事はなくても、ネットの世界は広い。

 

その分、その闇も暗くて深い。

 

ルドルフの理想の為に、僕は誰が見ても「皇帝」の隣に立つのは運でも何でもなく、実力で君の隣を歩んでいるのだと、目に見えるカタチで証明しないとならないんだ。

 

 

◇◇◇

 

 

…そうか。

 

君は、そんな心ない言葉に…ずっと、苛まれていたというのか。

 

そして私は、君のその苦しみに、今まで気づくことすらできなかった…。

 

『トレーナーを無礼るな』。

 

その言葉、まさしくその通りだ。君の覚悟を、その異常とも言えるほどの献身を、私は見縊っていたのかもしれない。いや、それ以上に…君という人間の誇りを、私が誰よりも信じて支えるべきだったのに。

 

すまない…。君に、孤独な戦いを強いていたのだな。

 

だが、これだけは言わせてくれ。

 

私が君を選び、君が私をここまで導いてくれた。そこに、運などという不確かなものが介在する余地など、一片たりともないと断言しよう。

 

ネットの闇が何と囁こうと、それが真実だ。

 

しかし、君が求める『目に見えるカタチ』での証明が、君自身の心身を危険に晒すことだというのなら…私はそれを、断じて認めるわけにはいかない。

 

聞かせてくれ、トレーナー君。

 

君の隣に立つ資格を、この私が認めなければ、一体誰が認めるというのだ?

 

世間の雑音と、私の言葉と…君は、どちらを信じる?

 

君が証明すべき相手は、ネットの向こうにいる顔も見えぬ者たちではない。この私だ。

 

そして君は…とうの昔に、それを証明し尽くしている。

 

私が独りで全てを背負い込み、倒れそうになった時…『どうもしなくていい』と、ありのままの私を肯定し、支えてくれたのは誰だ? 君ではないか。

 

あの時、君は私に『皇帝』ではなく、ただのシンボリルドルフとして傍にいることを許してくれた。

 

あの瞬間に、君は私の唯一無二のトレーナーになったのだ。

 

それ以上の証明が、どこにあるというのだ!?

 

もし君が、そんな雑音を払うためにその薬を飲むというのなら、それは私との信頼関係を、我々が共に歩んだ軌跡を、君自身が否定することに他ならない。

 

それは、私にとって何よりも辛い背信行為だ。

 

だから、頼む。

 

他者の評価のために、君と私の築き上げてきたものを揺るがせないでくれ。

 

君は、私のただ一人のトレーナーなのだから。

 

その事実に、いささかの揺らぎもない。

 

 

◇◇◇

 

 

背信、か。

 

そうだ。

 

僕は君の信頼を裏切ろうとしている。

 

でもね、ルドルフ。

 

君が認めても、世間が認めてくれなければ、君の掲げる全てのウマ娘の幸福という理想に影を落としてしまうんだよ。

 

その影はなに?

 

もちろん、世間を認めさせ切れていない僕自身の存在だ。

 

トレーナーとして、僕は君と共に歩んだ足跡に7冠を戴いた。

 

でも、それでも、まだ足りないというのならば。

 

世界を、僕自身の力で絶対的に認めさせる必要があるんだ。

 

君が僕の身を案じてくれる事はとても嬉しいよ、ルドルフ。

 

けれども、この僕自身が、君の理想に影を落とすと言うのならば、僕は人であることを辞めても構わない。

 

そして、誰が見ても最も分かる方法で、世界に僕を認めさせる。

 

治験なんてただの口実だ。

 

トレーナーとして世間を認めさせる実力が足りないのなら、僕は僕自身をプロデュースして、もう一度、世界を認めさせる為に走ってみせる。

 

それが、僕の、僕なりの一つの覚悟だ。

 

 

◇◇◇

 

 

…覚悟、か。

 

君が口にしたその言葉の重みを、私は今、痛いほどに感じている。

 

私の理想に、影を落とす…。

 

君が、私の隣に立つ自分自身を、そのように捉えていたとは…。

 

ならば、今こそはっきりと言わねばなるまい。

 

君は、根本的な、そして致命的な過ちを犯している。

 

私の理想は『全てのウマ娘の幸福』だ。

 

だが、その理想を支え、共に目指すパートナーである君が、その幸福の輪の外にいていいはずがないだろう!

 

君が『君』でなくなること。人としての君を捨て、その身を危険に晒すこと。それこそが、私の理想にとって最大の汚点となり、未来永劫癒えぬ傷となるのだ!

 

世間を認めさせる…?

 

そのために、君は走るというのか…?

 

……馬鹿なことを、言うなッ!!

 

君は、私のためにと言いながら、私を最も深く傷つけようとしている。

 

君が証明すべきは、君の脚の速さなどではない。君というトレーナーの指導力、その慧眼、そして、私の心を支えるその魂の在り方だ。

 

そしてそれはッ! 君が私を七冠へと導いた、その事実をもって、既に証明され尽くしている!

 

それでもまだ足りないというのなら、それは世間の見る目がないだけの話だ。

 

私が証明しよう。君が立派なトレーナーであることを。

 

これから先、私が走り続けることで、勝利を重ねることで、『シンボリルドルフの隣には、彼以外のトレーナーなどあり得ない』と、世界中の誰もが認めざるを得ない状況を、私が創り出してみせる!

 

だから、君は君のままでいてくれ。

 

トレーナーとして、私の隣にいてくれ。

 

私の理想は、ウマ娘とトレーナー、その二人三脚の先にあるのだ。

 

君という片翼を失って、私という皇帝が、一体どこへ飛べるというのだ…?

 

これは、生徒会長としての命令ではない。

 

君の担当ウマ娘、シンボリルドルフとしての…心からの、願いだ。

 

その薬を、捨ててくれ。

 

そして、もう一度、私と共に歩むと、誓ってくれ。

 

 

◇◇◇

 

 

っ、ルドルフの分からず屋!!

 

7冠を得ても、トゥインクルシリーズを征して数年。

 

それでも世間はルドルフの栄冠を称えても、僕の事は添え物程度の扱いだった。

 

君が僕の事を認めてくれているのは嬉しい。

 

でもその度に、運の良い新人トレーナー、勝ち鞍に乗っただけのトレーナー、シンボリルドルフが強いだけで、僕でなくともルドルフは勝てた。

 

さっきはネットの海を例に上げたけれども、バラエティには映らないだけで、君が勝利する度に、幾つかの雑誌でも未だそう取り上げる事もある。

 

僕自身、色んな努力をした。

 

認めてもらおうとした。

 

でも、それももう八方塞がりだ。

 

もう考えられる手は尽くした。

 

後やっていないことは、この薬を飲んで僕自身の力を証明するか、君と契約を解消して、君の理想をこれ以上傷つけない事くらいしか残されていないんだ……。

 

ルドルフ、君は僕の行いが背信行為とまで言った。

 

君は全てのウマ娘の幸福を願う皇帝だろう?

 

なら、ウマ娘になった僕の幸福を願ってはくれないのかい?

 

僕にはもう、これしかないんだッ。

 

そう身を裂くような叫びと共に、僕はピンク色に光る試験管のコルクを開けて、その中身を一気に飲み干した……。

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。