オラリオの黄金鳥   作:逆戲愛薙

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久々のお休み。
話数を重ねる毎に書くのが難しくなっていく。
小説書いてる人達の尊敬が日に日に強くなりますね。
若かりし頃の私は続きを早く出せと思っていてすみません( ᵕ̩̩ ᵕ̩̩ )

それと同時に一体私は何連勤していたんだ。

もぉ、何も見たくねぇ……

それではお暇な時にでもどうぞ。




12話

 

遠い記憶だ。砂嵐のように荒れた映像に、在りし日の日常がそこにはある。

 

 

「師匠!」

 

 

「あら、フェリアじゃない。どうしたの?」

 

 

 

小さい少女が私の前を通り過ぎる。

 

師匠と呼ばれた異様にスカートの短い着物に羽織には杖と女神のエンブレム。

 

 

 

「師匠って英雄なの?!」

 

 

「え?」

 

 

そう聞かれた女性は少し困惑した表情を浮かべた。

 

 

「だってね。リヴェリア達が師匠達は英雄だって」

 

 

「、、、そう」

 

 

そして、そう問いかけられた女性は少女の頭に手を置きながら少し間を開けて口を開く。

その視線は幼き少女に向けられず、今も私を見つめているような気がした。

 

 

「私は、英雄なんかじゃないわ」

 

 

「なんで〜?」

 

 

不思議そうに見つめる少女に柔らかな表情で女性はこう答えた。

 

 

「私はね。ーーーだから。他のみんなと違ってズルをしているの。だから私は英雄なんてものじゃないわ」

 

 

「んー難しくてよくわかんない」

 

 

「ふふ、そうよね。でも、本当の英雄はきっとフェリアなら見れば分かるわ」

 

 

頭を撫でられている小さな少女は、嬉しく目を細める。

 

 

「そう、、、自身の運命を切り開いた貴方もまた……」

 

 

その声は少女には聞こえないほど。細く小さなものだった。

 

 

 

 

人々は言う。

 

 

苦難な道に果てがあるのならば。

 

 

英雄とは、、、そこへ導く救世主なのだと。

 

 

なら何故、、、私の手の中から零れ落ちていくのだろうか。

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

「僕は!もう!」

 

 

 

少年は立ち上がる。

 

 

あらゆる障害を乗り越えようと、試練の業火に身を投げ打って先へ進み続けようと。

 

 

「アイズ・ヴァレンシュタインに!!」

 

 

弾かれた手が宙を舞う。

 

止められた時の中で、その瞳は相対する敵に向けられている。

 

 

立ち止まるな、少年。

 

 

見失うな、少年。

 

 

自らの意思で一歩を踏み出した、その決意こそが何よりも尊ぶべきものなのだから。

 

 

アイズ・ヴァレンシュタインは知っている。

 

 

漆黒のナイフを片手に今も走り出そうとする少年の背中を、自身よりも強大だと分かりきっている敵に臆せずに。

 

 

その意志を、、その意地を貫き通さんとする背中に。

 

 

少女は、、彼がただの少年であることを。

 

 

 

知っている。

 

 

 

間違っても冒険者の『器』ですらないことも。

ましてや、英雄の『器』など到底比べ物にならないほどに。才能のない彼が。

 

 

どうやって?!

 

どうして!?

 

 

疑問が埋め尽くす。

 

 

今も身体中から血が滴り、限界だと震える体を律し今も尚奮い立つ少年を。

 

 

 

止めなければ。

 

 

無謀な戦いに、勝ちの目すらない自殺行為を。

 

 

アイズが口に出そうとした時。

 

 

その瞳に『英雄』と少年が重なる。

 

 

「ぁ、、」

 

 

漏れ出た声が、アイズをその場に縫いとめる。

 

 

 

「もう助けられるわけにはいかないんだ!」

 

 

 

 

 

ようこそ、少年。

 

 

 

 

歩き出す。運命の道のりはもう変えられない。

 

これから様々な苦難と試練が待ち構えることだろう。

 

時には死にたくなってしまいそうな程の絶望が少年の魂を覆うことになるかもしれない。

 

 

暗闇の中で誰も行き着いたことのない答えを探し出すことを求められる日が来るかもしれない。

『英雄』に求められることは常人では不可能なことを可能にすること。

 

 

大切なものを天秤にかけなければならない時が来るかもしれない。

 

 

だからこそ、その時は、、、

 

 

『数多の『英雄』が、子の前に立ちはだからんことを』

 

 

壁を乗り越え、選んだ道こそが尊い物だと。

 

 

「あぁ、、、アルフィア姉さん。ザルド兄さん」

 

 

アイズやベート達の背を、後方から見つめるフェリアはそっと一粒の涙を流す。

 

 

「メーテリア姉さんの子が、、来たよ、、この英雄の都に」

 

 

近くで見て、、やっと確信に変わった。

 

あの日、何故があの白髪に惹かれたように瞳が追った。

 

 

「望まれるべくしてではなく、自らの意思で、、登ったよ英雄への階段を……」

 

 

簡単だ。姉さん達の子だからだ。

 

だからこそそっとこの事実は胸にしまった。

 

 

そして、私もまた、、

 

 

『英雄』の超えるべき壁になろうと。

 

 

「でも、その前に」

 

 

「追いついておいで、早くしないと終末は待ってくれないよ」

 

 

軌跡は示されている。

 

 

数多の英傑達が通った道が。

 

 

でも、願わくば、、

 

 

「君自身の道を見せて欲しいな」

 

 

 

 

*

 

 

深層 37階層。

 

真の死線、それは迷宮の最大危険領域。

 

 

白宮殿 玉座の間。

 

 

「うん、少し見てて欲しい」

 

 

「分かった。僕達だけは近くにいさせてもらうよ」

 

 

「うん、、ありがと」

 

 

フィンに了解をへて、私は一歩前に踏み出す。

 

 

「チッ、いいのかよ?」

 

 

「フェリアだけずるーい」

 

 

ベートとティオナの声が聞こえる。まぁ、気持ちは分かる。あんなものを見せられたんだ。気持ちがたけってしかたないのだろう。

 

 

「ウダイオスと単独で戦うなんて正気じゃないわよ?」

 

 

「危ない、、、私も一緒に」

 

 

「アイズも一人で戦ったでしょー?フェリアのこと言えないじゃん」

 

 

グサッ

 

鋭いナイフが少女の胸に突き刺さる。

 

 

「そうね、アイズの方がよっぽど危ないわよ」

 

 

グサッ

 

 

「あぅ」

 

 

「おめぇが言うな」

 

 

グサッ

 

 

「うにゅ」

 

 

特大の言葉のナイフが刺さり数歩後ずさる。

 

震える足で何とか持ち堪えながらリヴェリアを見る。

 

 

「自業自得だ」

 

 

シュン……と悲しみを宿したアイズは体育座りで外壁の隅に行ってしまう。

 

 

「あの、、アイズさん」

 

 

「放っておけ」

 

 

レフィーヤがアイズに近寄ろうとしてリヴェリアに止められる。

 

 

「まぁ、僕達も近くにいる。ここより安全な所はないんじゃないかな?」

 

 

それはそうなのだ。

 

今この場には、フィン、リヴェリア、アイズ、ベート、ティオネ姉妹が同伴している。

 

そして、第二部隊より連れてこられたレフィーヤだ。

 

ガレスとその他第二級冒険者はこの玉座の間と本隊の後方に続く通路を守護してもらっている。

 

万が一にも危険になることはない。

 

 

「いい機会だ。見ておけレフィーヤ、フェリアが剣神といわれる由縁を」

 

 

共に戦う上でその者の実力を知っておくことは有益だ。

 

前衛と後衛の動きにそのまま反映される。

 

特にレフィーヤの目の前でフェリアが戦うことはあまりない。

【ロキ・ファミリア】の対階層主戦の陣形は前衛のガレス、中衛のフィン、後衛のリヴェリア、その護衛のフェリアとなっている。

 

遠征であってもその夜刀が抜かれた回数はレフィーヤの記憶の中でも数える程しかない。

 

ましてや戦闘と呼べるものはほとんどない。

 

だからこそ、フェリアの実力を見るチャンスだとフィンが連れてきたのだ。

 

 

「はい!」

 

 

 

と、後方で繰り広げられているが一旦無視することとする。

 

 

 

幅も高さも凄まじい、一際大きな広間。

 

 

その中心にそれは、上半身のみで存在している。

下半身が今も地中に埋もれた巨大な骸骨。

 

 

37階層の迷宮の孤王

 

『ウダイオス』

 

推定潜在能力(ポテンシャル)はLv6以上。

 

その一撃をまともに受ければ第一級冒険者でさえも致命傷を避けられない。

 

今も眼窩の奥、揺れる怪火がフェリアを見据える。

 

 

「少しいつもより強いかな?」

 

 

多分Lv6よりは確実に上。

いつもは後方でリヴェリア達を守る事に専念している為、意外とウダイオスと正面で戦うことは初めてだったりする。

 

 

それに、、、

 

 

「ここに立つと懐かしい記憶が蘇るね」

 

 

 

『城だろうが巨人だろうが斬り落とす。それができずして剣士を名乗るなよ、餓鬼共』

 

 

ボロボロになって全身を血塗れに変えた冒険者が二人。

それとは対極にかすり傷一つない漆黒の鎧を纏う武人。

 

 

「でも、私も強くなった」

 

 

目の前の懐かしき幻妖を置き去りにして前に出る。

 

進む歩みが過去を未来に、現在(いま)に届けさせる。

 

 

咆哮が鳴った。

 

 

歩みを進めるフェリアの距離が20Mを切る。

 

 

 

「故に、捧ぐこの一撃を持って」

 

 

少しの加速、それが引き金。

 

 

『オオオオオオオォォォォ!!!』

 

 

今まさに王の御膳で行われる蛮行を骸の王は許さない。

 

前後左右、ありとあらゆる方向から射出される逆杭。

 

 

「【運命の歯車、壊れゆく世界(ゆめ)】」

 

 

それとほぼ同時に紡がれる歌。

 

そして、空間に軌跡を残す漆黒の剣閃がフェリアを串刺しにしようと放たれる逆杭を両断する。

 

 

スカル・シープが放つ骨の突起物などおもちゃに感じられてしまうほどの威力と圧倒的なまでの硬度を誇るはずのそれは、まるで豆腐を切るようにツクヨミがなんの抵抗もなく吸い込まれその全てが両断されていく。

 

 

レフィーヤにはもはや黒の線が空間に現れると同時に逆杭が切断されるようにしか見えない。

 

フィン達でさえもその極技に目を見張る。

 

 

「【亡骸(わたし)はここに。死に(消え)ゆく運命(わたし)に錆びた楔を打ち付ける】」

 

 

絶え間なくフェリアを襲い続ける逆杭を平行詠唱を途切れさせることなく紡ぎながらその全てを撃ち落とす。

全てが鋭く最短で最高効率をもって身に降りかかる火の粉を払い除ける。

 

 

「【どうか縋る私を許して欲しい。英雄に至るその時まで】」

 

 

決意が、あの日歩き出した私の『時』が今、形になる。

 

 

「【運命踏破】(ルベリオル)」

 

 

フェリアの速度が一段階、いやそれすら超えた速度で一瞬にして逆杭を切断する。

速くなると同時にフェリアの体から蒸気のような煙が立ち上る。

 

 

少し離れた場所にいる。フィン達でさえゾクリと背筋が震えた。

器を昇華させたことによってフェリアの魔法の出力もその力を増している。

それはもはやステイタスの激上を超え昇華(ランクアップ)のそれに匹敵する。

 

フィンとリヴェリアの目には在りし日の『英雄』達の背が、そしてアイズ達の目には雄々しき『英雄』の姿に、心が震える。

 

それは今も紺碧の瞳を見開くレフィーヤも同じだった。

 

 

「この一撃をもって、現在(いま)は過去を置き去りにする」

 

 

王の死刑宣告を圧倒的なまでの剣と技で取り除く。

 

あの日の屈辱を、失わぬと決めた『誓い』を過去の彼等に送るように。

 

漆黒の大剣がそれを迎え撃つ。

 

振り下ろされる剛腕がフェリアの誓い事砕かんと迫る。

 

 

 

迎え撃つは居合。

 

 

 

まるで、先程までの喧騒はどこえ消えたのか分からないほどにフェリアの周りから音も、時すらも止まってしまったかのように静かだ。

 

 

「まずは、竜を斬る前に、、お前を斬る」

 

 

抜き放たれた一閃は、その場の誰も知覚すること叶わぬほどの絶技であった。

 

 

「『残光』」

 

 

漆黒の極光が視界を覆い尽くす。

 

全てを黒く塗りつぶす漆黒の奔流は細く、そして鋭くウダイオスの体を貫通する。音も、いや時すらも置き去りにしてそれは全てを貫く。

 

フェリアとの距離は少なくとも20Mほど離れているが関係はない。

 

距離を殺し、振り下ろされる剛腕をすり抜けウダイオスの体を一刀の元に寸断する。

それだけでは飽き足らず空間そのものが縦にズレる。

 

アイズ達の視界がその特異的な現象を目の当たりにする、あの日見た食人花を消し去った極光。

 

 

『ーーーーーーー!!!!』

 

 

叫び声など上げさせない。全てを突き詰めて削ぎ落とし階段を登り続けた剣士が行き着く最果てにして神の領域に手をかけた神時代始まって二人目の眷属。

 

 

フェリアの斬光(ざんこう)はウダイオスの時を静止させたままだ。

 

振り抜いた夜刀ツクヨミをそっと鞘にしまう。

シューと鞘の中で滑るツクヨミの刃から振り抜かれた勢いで熱され音を立てる。

 

 

キン

 

 

その音と共にサラサラとウダイオスの体が自壊を始める。

その一撃は留まるところを知らず奥の外壁にまで一閃は続いてる。

 

 

「一撃ぃいいいいいい!?」

 

 

「嘘でしょ!?」

 

 

ティオナとティオネの叫び声が広間全体に轟く。

 

啞然と立ちつくアイズの側で、打ち震える胸を押さえるレフィーヤ。また、離されたと舌打ちと共に視線を逸らすベート。

 

ははは、と笑うフィンと笑みを浮かべるリヴェリア。

 

 

階層主を一撃。

 

 

その快挙に第一級冒険者の全員が少なくない驚きと歓喜を顕にした。

 

 

これが、『今代の英雄』

 

【ナイト・オブ・ナイト】 【猛者】に続く世界に三人しかいないLv7。

 

 

その出鱈目さを目の当たりにした瞬間だった。

 

 

 

「追いつきましたよザルド兄さん。そして、雪辱と屈辱の中で過去を現在に変えたよレオン」

 

 

 

降り積もる灰の中で中心に突き刺さる黒剣を見ながら。

 

そして、今も私の後ろで腕を組み。

 

 

『まだまだだ、糞餓鬼』

 

 

そう口を動かす彼に私はそう呟いた。




また、頑張って続き書きます!
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