残響騎士:エコーナイツ - 2059 - 作:九十九 章
練習・試作を兼ねた短編です。
メインストーリーは、鋭意製作中です。
ー01ー
“ナイトスター”の名に恥じぬ漆黒の大型バイクが、陽炎の揺らめく道路を、小気味よいエンジン音と共に駆け抜けていく。
排気量1200ccの空冷V型エンジンが奏でる重低音と振動に身を任せ、ワイヤレスイヤホンを通じてスマホから野球中継を流していた年若い男は、中継を遮るように鳴った突然のアラートに眉を寄せ、AIに詳細を尋ねた。
AIからの返信内容は、上空を追従・先行偵察している観測ドローンからの危険信号で、種類(内容)は「歩く障害物」の報せ。
「(ッチ、またか)」
その情報に内心で小さく毒づき舌打ちを溢した男は、ハンドルから離した片手を背中へと回す。そしてそこに背負われた金属筒。60mm軽迫撃砲を極限まで簡素化した金棒筒を引き抜き(強化外骨格越しながら)肩に担いだ男は、ようやく視界に入った標的。道のど真ん中をふらふらと歩き続ける"生きた屍"に視線を合わせ、アクセルを捻った。
"ドドドドドドドドドッ!!"
大排気量空冷V型エンジンが絞り出す力強い鼓動感。そして増す空気抵抗を楽しむように、年若い男は大型バイクを加速し続け、それに追従するように速度計の針がぐんぐん右へ右へと跳ね上げられていく。
そして速度計の針が真上を通り過ぎた瞬間、男の肩に担がれていた砲身が弧を描くよう振るわれ、風を切った砲身が「歩く障害物」。その腐った頭部を完璧に捉えた。
"バキィッ!"
骨を砕いたような音と共に腐った頭部が勢いよく青空へと打ち上がる。
そして青空へと吸い込まれたソレを見送る様に見つめ砲身を背負い直した男は、耳元で鳴る実況とかぶせる様に大声で叫んだ。
『「
ー02ー
──合衆国。
その名を聞いて多くの者が脳裏に描くは、星条旗(ルビ:スター&ストライプス)を翻す超大国であろう。
しかしながら実際の彼の国の人口分布は、夜景写真が物語る通り。東西の海岸線に人口が極端に偏在する状態を形成し、左右をつなぐ中間地帯はほぼ無人と言って差し支えないほどに人口分布に大きな空白を描いていた。──史実以上に。
西部開拓の時代より変わることなく、中間諸州の人口を史実以上に削いでいた寄生体およびその変異体による禍。
人口分布のドーナツ化現象とまで揶揄される彼の超大国の左右を担っている彼の国の東西沿岸都市部は、その厄介な隣人によって史実以上に繋がりを希薄化させつつあり、若い世代に至っては、最早別の国として扱う程までに同族意識が希薄化。唯一、資本主義国家らしい経済合理性だけが両者の繋がりを強固に結びつけている有様であった。
だからこそ、左右をつなぐ中間地帯を渡るに足る力量と胆力を持つ配送屋は、其の合法非合法を問わず、極めて強力な売り手市場を形成していた。
故に一攫千金を夢見て開拓期最後のアメリカンドリームに手を伸ばす命知らずが誕生し、人々は彼らを、『ゴールドマン・トレイダーズ』と呼んだ。
ー03ー
一攫千金の為ならば大陸横断も辞さない大馬鹿者共。
その二つ名である、『ゴールドマン・トレイダーズ』。
しかしそのあだ名が、実のところそれぞれが別々の組織(および構成員)を指す名称である事は意外と忘れられている事が多い。
———現代におけるギルド。
つまりは中世的な同業組合ではない。信用管理付き国際ライセンスと人材流通網を基盤とする、半民半官の業界管理制度を有し、監督官庁による管理と認可の下、一部に法的拘束力を持つ、医師会や弁護士会にも似た巨大共同体。
特に化け物に纏わる保険・認証・契約仲介を担い、現代社会の物流と信用を下支えし、現代インフラの一翼を担っている”現代のギルド”。その中でも最も影響力を持つ金融・不動産を司る『ゴールドマン』と、物流・商隊業を担う『トレイダーズ』の二大巨頭。
大馬鹿者共が最も世話になる二大大手ギルド。其の名称。
其れを重ね合わせ生まれた二つ名は、同時に、かつてのゴールドラッシュにおける“億り人(ゴールドマン)”。彼等を夢見て走り続ける命知らず共(トレジャーズ)への期待と敬意、そして幾ばくかの嘲りを込めた渾名としての由来も持つ、実に富んだユーモアを併せ持つ二つ名であった。
———故に今日もまた1人。
両ギルドと併設した大型駐車場に、愛車共々全身真っ黒な男。
明らかに戦闘後と分かる血の付いた迫撃砲を背負った不審者が訪れる。
だが周囲の者は目配せこそすれ、騒ぎ立てる様な事はなく。
真っ黒なライダースーツに身を包んだ男は、愛車から降ろした荷物を抱え、ギルド施設へと踏み入れる。
男が向かう先、窓口に座るは、馬鹿どもの相手において海千山千の受付嬢。
モデルでも通る美貌を持ちながら、その目に一切の怯えを持たない彼女の前に、男が静かに荷物を置き生体認証装置に手をかざす。
営業用の笑みを浮かべ久々に顔を見せた男を迎えた受付嬢は、男の背から飛び出る迫撃砲には眉一つ動かさず、荷物に張られた伝票と男の情報をPC経由で本部へ送信。配送内容と配送物を確認し、慣れた手つきで受領確認と契約完了処理を進めていく。
周囲の者達もまた、その光景を騒ぎ立てる事はない。
見慣れた日常として受け流しながら談笑を続け、しかし合間合間には必ず“どこを通って、幾ら稼いだのか”を探る姿勢を崩さず、片耳を男へと向けていた。
そんな彼等ギルド内で屯する構成員(ギルドメンバー)達の様子に、受付嬢と共に苦笑しつつ僅かな談笑を交え報酬を受け取った男は、出口へと歩き出す。
その背中を襲うように影一つ。不意を突き背後から這い寄っては、その首筋に冷えた缶飲料を差し出す、あどけなさが抜けない少女が一人。
自身の恋人であるその少女から缶飲料を受け取った男は、男の腕を掴んで不満げにぶー垂れる2歳年下の彼女を抱き寄せると、
「……悪かった。化け物共が道譲ってくれなくてな。」
そう言って怠さの残る腕で抱きしめ、小柄な彼女を抱きかかえた。
だが、彼女は男の胸へむくれたまま額を押し付け、
「…おそい。」
と一言、切って捨てる。
「……迂回三回。橋梁崩落一件。寄生体群との接触二回。
挙げ句、州境検問所の連中が“安全確認中”とか抜かして道封鎖だ。……むしろ予定より頑張った方だ。」
男は未だ膨れ捏ねる恋人を宥める様に、抱き抱えたまま片手で缶を開け、炭酸の抜ける乾いた音と共に吹き出す泡を口に含み、そのまま缶の中身を飲み干す様に片腕を振り上げた。
同時に、火薬と血の臭いが微かに漂い彼女の鼻を刺激しその顔に一瞬、心配の色が浮かぶ。
しかし彼女はそんな匂いにも慣れ切った様子で鼻を鳴らすと、男のライダースーツを強く握りしめて上目遣いで頬を擦り付け、
「また無茶をしたのね。」
と少し怒りが混じった表情で男を見つめた。
「其処迄の事はしてねぇよ。今回は割と平和だった。」
そして僅かにたじろぎ言い訳をこぼす男の様子に、しかし彼女の指摘は続き、
「(背中の)迫撃砲に迄、血が付いてる。」
「返り血だ。」
「もっとダメじゃん。」
と呆れた様に呟き、彼女は男の腕を万力の様に掴むとそのまま離そうとはしなかった。
その様子を横目で眺めていた顔見知りのギルドメンバー達の何人かは、揶揄う様に口笛を吹くと、別の誰かが「次の便なら西側ルート空いてるぞ」と野次混じりに声を飛ばしギルド内が一層騒がしくなる。
其れに男は片手を軽く上げるだけで応じて、恋人を抱きかかえたまま出口へと向かうと、ご機嫌をうかがうように恋人へと視線を落とした。
「飯は。」
「まだよ。待ってたの。」
「……悪ぃ。」
「だから、"遅い"のよ。」
恋人はそう言って男の胸へ押し付けていた額を離すと、今度は苦笑するようにペットボトル飲料をもう一本突き付け、
「はい、水分補給。ちゃんと飲んでね。」
「お前、最近お袋みてぇな事言うな。」
「誰のせい。」
そんな心配混じりの笑顔を浮かべる彼女との短いやり取りに男は幸福を覚え、その何気ない会話こそが、中間地帯を越えて帰って来た証だと。男は幸福を噛み締める様に彼女を抱き寄せ、ダイナーへと向かうのだった。
主要登場人物の所有火器&乗り物
■若い男■
車両:
Harley-Davidson XL1200N - 別名「スポーツスター1200ナイトスター」
・サドルバッグサポート&ハンガーセット
・防刃革製サドルバッグ
・高性能バッテリー交換
メインウェポン1:
POF-USA Revolution DI SBR .308 win - 13.75"
・20rd MAGPUL PMAG
・Vortex StrikeFire II Red Dot
・Vortex VMX-3T Magnifier
・ウェポンライト
・二点式スリング
メインウェポン2:
Crye Precision SIX12 .12ga - 12.5" (アンダーバレル運用型)
・純正6rd 回転弾倉
・スタンドアローン運用用追加パーツ(銃床)
サブウェポン:
SIG 1911 Tacops 10mm auto Pistol - 5"
・純正8rd マガジン
・Defender-XL Micro Red Dot
・トリチウムロープロファイルナイトサイト
・ウェポンライト
特殊火器/機器1:
Norsk USA/DSG Technology iMortar (60mm Antos mortar)
・専用スリング
・GPS&レーザー誘導HE/HEI-T/照明弾
特殊火器/機器2:
携帯式自動追尾機能付きドローン
特殊火器/機器3:
単発中折れ式拳銃型照明弾
■少女(男の恋人)■
車両:
Kawasaki Vulcan S
・ヘプコ&ベッカー サイドバッグ/サイドケース用ホルダー「C-Bow / シーボウ」
・ヘプコ&ベッカー サイドバッグ / サイドケース
・ヘプコ&ベッカー エンジンガード
・社外製専用エンジンガード固定型Gunlock Rifle Scabbard (H10 Bear’s Leg Pistol用)
メインウェポン1:
Miroku / Winchester 1886 .45-70 Gov’t - 22in
・純正5rd チューブマガジン
・純正リコイルパッド付きストック
・社外製ライフル銃床用弾薬ホルダー
・社外製二点式スリング
・Barrel Threaded
・QD式サプ缶対応マズルブレーキ
・サプ缶(非常用)
・XS Lever Scout Mount
・Vortex AMG 1-10x24 FFP
・Vortex Precision Extended Cantilever 34mm Mount
・Vortex Low-Profile Design Bubblevel 34mm
メインウェポン2:
Miroku / Browning BPS Predator Hunter 12 Gauge (3 inch shell 対応) - 20 1/2 inch
・純正5rdチューブマガジン(2 3/4 shell時)
・Bailey Browning Shotgun Magazine Extension 12 Gauge +2 Rounds
・BaileyExtended Tubular Magazine Follower - 12 Gauge
・Bailey Tubular Magazine Springs
・Monstrum Shotgun Picatinny and Sling Mount I Compatible with Mossberg Shockwave Series
・社外製ショットガン銃床用弾薬ホルダー
・社外製二点式スリング
・Streamlight ProTac Rail Mount 1L-X
・Vortex Defender-XL Micro Red Dot
・Vortex Red Dot Picatinny Mount
サブウェポン1:
Miroku Liberty Chief .38spl - 2inch
・純正6rd 回転弾倉
・社外製専用ショルダーホルスター(右)
サブウェポン2:
Browning 1911-380 Black Label Medallion Pro with Rail Compact - 3 5/8 inch
・純正8rdマガジン
・Streamlight TLR-7 X
・社外製専用ショルダーホルスター(左)
サブウェポン3:
Henry Repeating Arms H10 Bear’s Leg Pistol .45-70 Gov’t - 13.8” (車載時運用前提)
・純正3rdチューブマガジン
・純正Belt loop holster (レッグホルスター)
余談:
恋人二人がBarで最も頼むカクテルは、マティーニ と ゴールドラッシュ。
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今回の様な短編を、これからもちょくちょく投稿するつもりです。
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次回投稿は来月17日の同時刻の予定です。