残響騎士:エコーナイツ - 2059 -   作:九十九 章

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練習・試作を兼ねた短編です。

メインストーリーは、鋭意製作中です。

予定より数日遅れの投稿となりましたことをお詫びいたします。


短編:ボルトボーイ&ナットガール 其の弐

-00-

 

男ってすっごくバカで窮屈な世界で生きてる。

 

16歳の誕生日の翌日、寝室で首を吊った(ソレ)を前にして、アタシはそう思っていた。

 

 

-01-

 

某動画サイトを始め、交際経験を重ねた女性側から語られる、

 

「女と男の考え方の違いとモテる男の正しい対処法」。

 

所謂、

男は女の愚痴を否定せず受け止めろ。

相談には答えを出すな。

共感しろ。

傾聴しろ。

癒せ。

 

ともすれば、”都合の良いサンドバッグ”へと作り変えたいヘラ女の我儘。

そんな悪意ある見方が可能な其の文言に、アタシは冷ややかな目で返す様になっていた。

 

特に彼女等が口にする事の根底にある、

 

”他人に甘える事が人としての当然(必然)

 

とする思考回路。ソレを恥ずかしげも無く常識の様に振り回し、挙句男性にまで求める痴態に、嫌悪感さえ覚えるようになっていた。

 

だからだろう。アタシは彼女等を反面教師にすると同時、

 

「(彼の前では)こんな女にはなりたく無い。」

 

とそう考えるようになっていた。

 

 

-02-

 

ーーー嘗ては向こう側だったアタシ。

其れが異なる考えに至ったキッカケは、やっぱりアタシの父親にあったと思う。

 

物心付く頃には凡そ父親しかいない家庭。

所謂、男で一つの家庭で育ったアタシは美人な母の面影を色濃く残していたらしく、幼い頃から父に溺愛されていた。

 

其れこそ、当時の幼いアタシとって”父さん”というものが、”魔法のランプに棲む妖精”とほぼ同義の認識となる程に。

 

だから当時のアタシは、父に甘え倒した結果。其の末路を自身の父親の自殺という形で迎え、社会に放り出され父の苦労を疑似体験する(罰を受ける)事で、初めて理解する事となった。

 

 

-03-

 

事の始まりは、父さんが死んでまもなくの事。

保険金や遺族年金等を元手に、父さんが残したマンションの大家を続け、変わらず私立学校に通い続けていたアタシは。

しかして、父さんとは真反対な程に小煩く煩わしい叔母を名乗る後見人に、遅めの反抗期を迎えていて。遊び金欲しさも相まって、無断で休日に日払いの単発アルバイトを始めていた。

 

其の当時、叔母を嫌ったアタシは、叔母の目と校則からの目眩しも兼ねて、父の私服を借りて男と偽ってアルバイトする事が多々あった。

そして其処での経験は、ワタシの中での男という生き物思想、価値観を根底から覆す激毒となった。

 

 

-04-

 

如何に世間一般の”男”という生き物が、女社会とは根本的に異なり、社会的に孤独で、抑圧的で、救いが無いのか。

其れを理解させられるキッカケとなる出来事。

 

そう大仰に言えば、何か特別な仕事と考えるかもしれない。だが其の実態は、別に世間一般仕事からすればさして珍しくない代物だった。

 

だからこそ。当時、アタシは、其のあまりに自身の知る世界と異なる世界に当初は怒りと困惑を。

ついで疑問を抱き不信感とも違和感ともつかぬ言いしれぬ何かに取り憑かれ、其れから暫く、突如死んだ父を真似る様に、父のフリを続け定期的に日雇いバイトをする様になる。

 

 

其処で得られた遅めの社会体験は、ともすれば”姦しい”と表現される程、口数が多く”感情表現”が豊かである事が当たり前とされた女の世界とは、悉く価値観を異とするが故に何処か新鮮で。故に『男社会の常識』足り得ない其の場所・空気感で育ったアタシを当初こそテーマパークの様に思わせた。

 

が、直ぐに其れがひどくつまら無い酷く苦く、又旨味のない現実である事を仕事場で叩き付けられたアタシは。

そこで文字通り、“弱音を吐いた瞬間に価値を失う”何処までも生存競争じみた男社会という名の現実(地獄)を体験し、如何に今迄後アタシが世間知らずで良識が狭かったのか。認識を改める事となった。

 

 

ソレからのアタシは、単発アルバイトを続ける理由に、父が最後まで何も言わなかった理由の解明。或いは、父の思想・思考の追想・考察を含める様になり、楽しい反面、当初の想像を超える男と女の生きる世界の差異。

余りの思想格差に唖然・愕然し、時に手間取りながら、約一年半程そんな日々を過ごし、3回忌を迎えていた。

 

その日は何故だか無性に父さんの声が聴こえた気がする日で、3回忌とも知らず父さんが眠る墓へと自然に足が向かっていた。

 

そして其の道中、父さんがいた日々を思い出し、同時に父さんのフリをして生きた日々と其の始まりとなったあの日の寝室を思い出したアタシはいつの間にか大雨の中を走っていて。

 

 

いつの間にか目の前にあった父の墓石の前で、アタシは初めて、

 

「◻️◻️◻️◻️◻️」

 

と口から零し、人目も憚らず初めて声にならない涙声で枯れるまで泣いた。

 

雨降り頻るその日、アタシは初めて父を父として認識した。

 

 

-05-

 

其れからまた暫くの後の事。

仕事先で彼と出逢い、付き合い出す様になったワタシは、其の頃にはすっかり己自身の内面を良く観る癖を上手く利用して関係改善に努める狡猾さを手に入れていた。

 

例えば、(ホルモンバランス故に致し方無い事ではあるが)時折現れては強固に自己主張する女としての己を前に、必ず一呼吸する癖と分かりやすい素振りする癖を付け彼に意思疎通を測る事。

例えば、彼に負担をかける時、必ず「甘えさせて(愚痴を吐き出させて)」などと一言つけて分かりやすくアピールする事。

 

そんな酷く分かりやすい仕草。ともすれば子供っぽいとすら言える癖を敢えて残すことで、「女」の思考の複雑さと地雷を回避する方法。

 

アタシ専用マニュアルとも言える見分けと対応のし易さを原因(仕組み)と共に彼に共有し、都度感謝する事で、男女間での常識の隔たりによる拗れ・喧嘩を抑制。

 

当初こそ戸惑っていた彼も、次第に理解を示し習性を利用する所まで解像度を上げ、其の仲を凡そ順調に深めていった。

 

かくして、アタシと彼の初恋は、アタシの方からも彼が棲む男社会の現実に一歩寄り添った結果、”初恋は叶わない”なんてジンクスを笑い飛ばし、今も不器用なりに蜜月な関係を続けている。

 

 

ーーーだから

 

「……悪かった。化け物共が道譲ってくれなくてな。」

 

仕事帰りの彼の声。彼の大きな腕の中に身を預け甘えるアタシにだけ聴こえる其の声と体温に、私は安堵を感じて彼の心臓の鼓動に耳を澄ます。

 

 

 

 




今回の様な短編を、これからもちょくちょく投稿するつもりです。
お楽しみ頂けたなら『お気に入り登録』の方、宜しくお願いします。

次回投稿は来月17日の同時刻の予定です。
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