今日も快晴。太陽は、ボクの心を映したかのように、どこまでも鮮やかなオレンジ色で世界を照らしている。この街は、いつだってエネルギーに満ちている。もちろん、そのエネルギーの大部分は、狂気と破滅という名のスパイスが効いているんだけどね。それがまた、ボクの食欲をそそるんだ♡
朝食は、いつものように、街外れの古い洋館のテラスで。ボクが優雅に紅茶を啜っていると、眼下では、毎日のように小さなサーカスが繰り広げられている。
「うおおおお! 神よ! 私は光だ! 昇天だぁぁぁ!」
けたたましい叫び声と共に、一人の男が建物の屋上から飛び降りた。彼は、全身に油彩画のような鮮やかな模様をペイントし、頭には鶏の羽根を飾っている。彼の中の何かが限界を超えたんだろうね。きっと、ボクの気まぐれなオーラに触れたか、あるいは単に昨晩のギャンブルで全財産を失ったかの、どちらかだろう。まぁ、どっちでも構わない。大事なのは、その結末さ。
地面に叩きつけられる直前、彼の体がキラキラと光を放ち始めた。そして、まるで魔法のように、彼の肉体はバラバラに分解し、トランプの束となって大空に舞い上がったんだ! 赤と黒のエース、キング、クイーン…彼の人生のすべてが、風に踊る紙片になった。ああ、なんて芸術的な散り様だろう。まるでボクの『伸縮自在の愛(バンジーガム)』で作ったシャボン玉みたいに、儚くて美しい。
ボクは、ひらひらとテラスに舞い降りてきたハートのクイーンをそっと掴み、紅茶に添えた角砂糖の隣に置いた。
「ふふ、ロマンチックだね。今日のラッキーカードはクイーンか。悪くない♤」
少し離れた路地裏では、別のドラマが進行中だ。
「やめろ! やめてくれ! これが最後だ! 次こそは勝てるんだ! 頼む! もう一度、もう一度だけ…!」
ギャンブル中毒者の阿鼻叫喚が、まるでBGMのように響いてくる。地面には、血のついたトランプが散乱している。キングのスペードが、一人の男の額に深々と突き刺さっていた。どうやら、イカサマがバレて、処刑されたみたいだね。彼の目からは、恐怖と後悔、そしてなにより渇望が溢れ出していた。彼は、『運命』という名のディーラーに、自分の命を賭けて負けた。そして、その『運命』を引いたのは、きっとボクの気まぐれな予感に突き動かされた誰かだろう。
いいんだ、いいんだ。この街は、常に選別を行っている。『強度』を持たない人間は、自ら崩壊していく。その崩壊の仕方が、こんなにもカラフルでエキサイティングだなんて、ボクはなんて幸運なんだろう。
ボクは、目を閉じ、深く息を吸い込んだ。空気は、血と硝煙、そして破滅の甘い香りがする。
さて、こんな素敵な日常の中で、ボクがちょっかいを出したくなる獲物は、そう多くはない。だけど、彼女だけは特別だ。ボクの『ターゲットリスト』の、永遠に『赤い糸』の項目に載っている、ボクの可愛いマチ♡
ボクは紅茶を飲み干すと、テラスからひらり、と身を翻した。向かう先は、街の北側にある、彼女の滞在先。
マチはいつも、まるで誰にも触らせたくない宝石のように、静かに、そして鋭く座っている。今日のアジトは、廃墟となった時計台の中みたいだね。
「やあ、マチ♡ 今日も一段と鋭利な美しさだね。まるで、ボクの『薄っぺらな嘘(ドッキリテクスチャー)』でも貫けそうな、そんな純粋なナイフみたいだ♤」
ボクは、彼女の背後からそっと近づき、彼女の長く美しい銀色の髪を一房、指に絡めて匂いを嗅いだ。シャンプーの匂いに混じって、わずかに血の匂いがする。ああ、なんて刺激的な香りなんだ。
彼女はピクリとも動かない。
「…ヒソカ。勝手に触るな!」
彼女の低い声は、いつも通り、感情を凍らせた湖の表面のようだ。でも、ボクは知っている。その冷たい氷の下には、マグマが流れていることを。
「そんなこと言わないでよ。ねぇ、マチ。ボクの今日のラッキーカードはハートのクイーンなんだ。知ってる? クイーンは愛と受容の象徴。つまり、君がボクの愛を受け入れるべき日だってことさ♡」
ボクは先ほど拾ったハートのクイーンを、彼女の耳元でひらりと舞わせた。
「ボクの獲物、いや、恋人として、少しだけ遊んでくれないか? 君のその美しい糸で、ボクを優しく絡めとってくれるだけでいいんだ。ねぇ、ボクのフィアンセさん♡」
その言葉が、彼女の中の引き金を引いたらしい。
「フィアンセ…?」
彼女の顔が、一瞬、赤く染まったように見えた。それは怒りか、それとも照れか…? どちらにせよ、ボクにとっては最高の反応だ!
次の瞬間、彼女は文字通り爆発した。
彼女は稲妻のような速さで立ち上がり、ボクに背を向けたまま、強烈な足蹴りを腹の底に叩き込んできた!
ドゴッ!
「ぐっ…!」
さすがはマチ。『念』の込められたその一撃は、ボクの防御を嘲笑うかのように、肋骨にヒビを入れた。痛み? もちろん、あるさ。だけど、この痛みこそが、彼女の本気の証。彼女の純粋な拒絶、そしてボクへの興味の裏返しだ。
ボクは吹き飛ばされ、時計台の壁に叩きつけられる。崩れた瓦礫がボクの上に降り注ぐ。
「バッカじゃねーの!?キレる前に消えて」
彼女は、氷のような冷たい視線をボクに投げかけ、再び静かに座り直した。その手は、すでに『念糸』を構えている。
ボクは、壁からゆっくりと滑り落ち、ニヤリと笑った。
「ああ、なんて最高の乙女なんだ!♡ その痛みが、ボクのマゾヒズムをくすぐる! 蹴られた瞬間、ボクは確信したよ♢ マチはツンデレなんだってね! 本気の拒絶の裏には、本気の愛情が隠されている! そうだろう、マチ♡」
ボクは立ち上がろうとする。しかし、その時、ズバッ! と、ボクの頬を銀色の糸が掠めた。頬から血が流れる。
「うっさい! 次にその言葉を口にしたら、首吊る」
ああ、冷たい! 刺激的! たまらない!
ボクは、心から愛おしそうに彼女を見つめた。
「ふふふ…。マチ、君はボクの最高の獲物だよ。その冷酷なツンと、繊細なデレのバランスが、ボクの『玩具箱』に欠かせない。ねぇ、そんなマチも素敵♤」
ボクは、彼女に聞こえるよう、心からの賛辞を口にした。その瞬間、彼女の顔が最大限に引きつり、再び凄まじい勢いでボクの顎に蹴りが飛んできた!
ゴン!
今度こそ、脳が揺れた。だけど、ボクの心は歓喜で満ちていた。
ボクは満面の笑みを浮かべ、崩れ落ちた瓦礫の上で、まるでトランプを撒くように、自分の血をまき散らしながら言った。
「ああ、最高だ。大満足だよ♢ ありがとう、ボクの可愛いツンデレさん♡ また、遊ぼうね♤」
ボクは、彼女の殺意と愛情が詰まった、この最高の痛みを抱えて、軽やかにアジトを後にした。
時計台を飛び降り、再び街の喧騒の中へ。
相変わらず、ボクの周りでは、狂乱した人々がトランプの束となって舞い上がり、地獄絵図が繰り広げられている。誰かが叫び、誰かが死に、誰かが狂い、そして誰もがボクの退屈を打ち破ってくれる。
そんな中、ボクは一人、満ち足りた笑顔を浮かべている。
ボクにとって、この狂った日常は、まるでサーカスだ。危険で、不確実で、そして予想外のエンディングに満ちている。そして、ボクはその唯一の観客であり、時には気まぐれな団長さ。
マチの暴力的な愛情。街の住人たちの破滅的な熱狂。
ボクの人生は、いつだって『幸福のカード』で満たされている。ボクに実害はない。いや、むしろ、ボクの魂を震わせる最高のスパイスだ。
ボクは、ポケットからハートのクイーンを取り出し、そっとキスをした。
「さてと。次は、どの獲物と遊ぼうかな? それとも、またマチを怒らせるとしようか♡」
ボクの愉悦に満ちた日常は、これからもずっと、続いていくんだろうね。
『伸縮自在の愛(バンジーガム)』のように、どこまでも伸びて、そして最高の獲物を捕まえるために、いつでも準備万端でね♤