とある女子高生のダイエット日記 ~シンデレラは目指さないけれど~   作:クリリ☆

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糖質制限編
1kgの重み


翌朝、幸子はいつもよりも早く目が覚めた。というのも、昨晩ご飯を豆腐に置き換えた事で、その時は食事で十分な満腹感が得られたが、白米よりも腹持ちが悪く、夜に空腹を覚えたため、それを誤魔化すために早く寝たためであった。

 

目が覚めるとさっそく空腹感があった。

 

「ああお腹すいた」

 

幸子はトイレを済ませると、脱衣室に向かい、そこの設置されていた体重計に乗る。そこにはデジタル表示で『90.80』と表示される。

 

「むむ、少し増えてるような気がする」

 

これも先日京加賀からアドバイスされた事で、毎朝排泄後に必ず体重を測定するように言われていたためである。

夜間は水分量などの誤差が大きいが、朝の排泄後の体重は比較的誤差が少ない。とにかく可能な限り同じ条件で体重を測定するように言われていた。幸い自宅に50g単位で計測できる体重計があったため、これからは毎朝その数値を日記帳に記録する事にした。

 

目を覆いたくなるような結果だが、今はそれに向き合うしかない。いつかきっとこの体重が減っていく事を期待して。

 

幸子は体重を記録し、着替えると階段を下りてキッチンに向かう。そこには母が弁当の準備などをしていた。

 

「おはようお母さん」

 

「おはよう幸子。あら、今日はいつもより早いわね」

 

「ちょっとお腹空いちゃってね」

 

「無理はしないでよ」

 

「大丈夫。お腹は空いてるけど、不思議と気分はいいんだ」

 

そう言いながら幸子は冷蔵庫を開け、納豆と豆乳を2種類取り出した。無調整豆乳とバナナ味の豆乳飲料である。豆乳飲料の方には『低糖質1.2g』、『カロリー50%オフ』などとデカデカとアピールされている。

幸子はとりあえず無調整豆乳の方をコップに1口分だけ注いで飲んでみる。

 

「うーん、何だか味のない豆腐みたい」

 

「そりゃそうでしょ。豆乳ににがりを加えて固めたのが豆腐なんだから」

 

「えっ、そうなの?」

 

「そうよ」

 

「うっ、知らなかった」

 

幸子は無調整豆乳を飲み干しながら苦笑いを浮かべる。続けてバナナ味の豆乳飲料を、これまたコップに一口分だけ注ぎ入れて飲んでみる。

 

「あ、結構甘い。すごく美味しい」

 

それから今度は無調整豆乳1、豆乳飲料3の割合で二つをミックスして一口飲んでみた。

 

「無調整豆乳を少し混ぜただけなのに結構甘さが控えめになるね。確かに、これくらいの甘みの方がちょうど良いかも」

 

そうして今度はご飯をよそって、納豆をかけていく。ちなみにタレは半分ほど入れ、余りは醤油つぎに入れてみた。母は味の変化に気付くだろうか、あえて秘密にして様子を見てみようと思い至る。そうしてまずご飯を一口食べた。

 

「美味しい。白米ってこんなに美味しかったっけ。昨晩一回抜いただけなのに、何だかとてもご飯が尊く感じる」

 

幸子にはお米の一粒一粒が、まるで宝石のように輝いて見えた。いつもご飯など何も考えずに掻き込むように食べていたが、改めて白米を味わって食べると空腹のせいか、いつも以上に美味しく感じた。

 

「ご飯って美味しいなあ。勿体ないから味わって食べないと」

 

何だか掻き込んで食べるのが勿体なく感じられ、いつも以上に時間をかけて納豆とお新香をおかずにご飯を完食する。そして味噌汁を飲み干し、朝食を終えた。

 

「そう言えば、無調整豆乳をそのまま飲むのはキツいけど、もしかしたら納豆をおかずにすれば無調整豆乳をストレートで飲めるかも知れない。明日試してみようかな」

 

「そんなに飛ばして大丈夫なの? 夜だってまたご飯の代わりにお豆腐にするんでしょ?」

 

「大丈夫大丈夫」

 

そう言いながら、残ってた豆乳も飲み干し学校へ出かけた。

 

 

そうして半日が経過し、昼ご飯。

お弁当の中身は冷凍食品が半分、それに昨晩の残りの鳥の照り焼きと玉子焼きも入っていた。幸子は玉子焼きを一口食べ、味付けが変わっている事に気が付く。

 

(あれ、この玉子焼き甘くない)

 

いつも母の作る玉子焼きは砂糖が入っていて、甘い味付けがなされていた。しかし今日の玉子焼きは砂糖が抜かれ、代わりに醤油がかかっていた。

 

(美味しい、ご飯に合う。ありがとうお母さん!)

 

おかずに砂糖を使わない母の心遣いに幸子は嬉しくなった。

 

 

そうして翌朝、体重を測ってみると、『90.65』と表示される。

 

「あ、昨日より150g減ってる。と言っても、トイレ一回分でひっくり返るから誤差の範囲かなあ」

 

そう思いながら、再びキッチンに行き朝食の準備をする。

今日は朝ごはんも抜き、納豆と無調整豆乳にしてみる事にした。納豆を一口食べ、続けて無調整豆乳をご飯代わりに一口飲む。

 

「普通に合う。これなら普通に無調整豆乳だけでいけちゃうね」

 

「そんなにご飯抜いちゃって大丈夫なの?」

 

「分かんない。でもそんなにキツくないよ。それに、一つ策を思いついたし」

 

「策?」

 

「うん。やっぱご飯がないと途中でお腹がすいちゃうんだ。だから、今日は水筒に豆乳を入れて行こうと思うんだ」

 

「豆乳を?」

 

「うん。豆乳は結構お腹にたまるから、お腹が空いたら豆乳を飲んで誤魔化そうと思って」

 

そう言うと幸子は水筒の中におおよその目分量で、無調整豆乳1,バナナ味の豆乳飲料3の割合で注ぎ入れる。

 

「それにしてもこれすごいよ。100g当たり糖質1.2gって、確か角砂糖1個4gだからコップ2杯分飲んでもようやく角砂糖1個分ちょっとの糖質だから、かなり自由に飲んでも良さそう」

 

「まあ、どんな食品も取り過ぎはバランス悪いから注意よ」

 

「うん大丈夫」

 

朝食を終えて、学校に行くまでに10分ほど時間があったため、幸子はふと低糖質について調べてみる事にした。幸子はスマホを取り出し、人口AIの『双子ちゃん』のアプリを起動した。

 

「ふうちゃん、ふうちゃん、低糖質ってどれくらいを指すの?」

 

幸子は、双子だからふうちゃんと呼んでいた。すると数秒で双子ちゃんは回答を表示させた。

 

『食品の中の糖質の含有量が少ない状態。一般的には100g当たりの糖質5g以下を低糖質というケースが多いです。』

 

「なるほど、5g以下かあ。これから5gを基準にしよう」

 

そうして学校に出発する。

すると11時頃、3時限目の終わりくらいに強い空腹感が襲ってきた。幸子はすかさず水筒の中の豆乳を飲む。バナナの甘みがあり美味しくごくごく飲めた。それでいて腹に溜まり、空腹感が落ち着いていく。

 

(早弁してるみたいで、ちょっとした背徳感)

 

そうして、豆乳をうまく活用し毎日を終える。そして体重を測定すると毎日150~300g程度が着実に毎日減っていく。そしてダイエットを始めて6日目、土曜日の朝に体重がついに『89.75』と表示された。

昨日は『90.05』だったため、ついに初の80kg代、そして1kgの減量に成功した。

 

「やった、80kg代、そして1.05kgの減量に成功だ!」

 

嬉しさもあり、幸子は勢いで京加賀と瑠奈のグループラインに報告ラインを送る。

 

『ついに1kgの減量に成功しました!!』

 

が、送ってすぐに恥ずかしくなった。90.8kgが89.75kgになったって、差はあってないようなもの、誤差程度の差しかない。

 

「ああ、取り消したい。恥ずかしい」

 

そうは思ったが、すぐに既読が付き、瑠奈から『やったぁ、おめでとう』と返信が届く。そして京加賀からも、『よくやったな』とコメントが届いた。

 

『いえいえ、でもまだまだ誤差の範囲ですから』

 

と返信する。すると京加賀から『太田、何か何でもいいから家で1kgの物を見つけて持って来い』と返信がくる。

 

「1kgの物?」

 

よくは分からなかったが、幸子は言われるまま1kgのものを探す。そして未開封の豆乳の1000mlのパックがあったため、それを持ってきた。

 

『これでいいでしょうか?』

 

『持ってみて、そいつの重さをどう感じる?』

 

『まあまあずっしり来ます』

 

『そうだ。1kgはお前の中ではたかが1%強程度のものかも知れない。しかし誤差で片付けられるほど軽い物ではないんだ』

 

京加賀にそう言われ、幸子はそのまま豆乳のパックをお腹の肉に押し当ててみた。この重たい塊が、たった数日で自分の身体から消えた。そう思うと、震えるような感動が込み上げてきた。幸子は初めて自分の努力を褒めたくなった。

 

『ありがとうございます。二人のおかげです。何だかやる気が出てきました』

 

『いいか、やる気のない者がやる気になるまでが一番難しいんだ。一般には百里を行く者は九十を半ばとす、などと言うが、ダイエットは違う。最初の1kgが一番難しいんだ。最初の1里を行くのと、1里行ったものが50里行くのとどっちが難しいかと言うと、最初の1里を行く方が難しいと俺は思う』

 

画面越しに、京加賀のぶっきらぼうだが温かい声が聞こえた気がした。90kgの自分にとっては、1kgはパーセンテージで見ればわずか1%強。けれど、その1%を変えるために費やした葛藤と、先輩と友人の励ましとアドバイスは、数字以上に重いものだった。

 

『それじゃ、先輩の理論を否定されないよう、最低50里は行けるよう頑張ります』

 

『まあ、そういう問題でもないんだが。まあ頑張れ』

 

そうして1kgの減量に成功した幸子。彼女の快進撃はここから始まるのだった。

 

 

 

続く☆

 




【豆乳の注意】
ここまでお読みいただきありがとうございます。作中で触れきれなかった分を補足させていただきます。

今回のバナナ風味の豆乳のモデルになった商品は『marusan カロリー50%OFF バナナ』豆乳飲料です。糖質は100g当たり1.2g。
ちなみに麦芽コーヒー味(1.1g)と紅茶味(1.0g)があります。気まぐれで色んな味を飲んでいますが、バナナ味がお気に入りで10本あれば5本はバナナ味を選んでます。

一方で、他社(キッ〇ーマン)のバナナ味の豆乳飲料は、糖質が100g当たり9.5gと、その糖質の含有量はmarusan製のおよそ8倍。普通のジュースと変わりませんので、購入の際は間違えないように注意してください。
ダイエット目的で豆乳を購入して、かえって高糖質で太ってしまっては本末転倒です。

それと、水筒に豆乳を入れていくのは腐敗しやすいため注意です。保冷が効く水筒や、あるいは水筒を冷蔵庫に入れるなどの対策をした上、1日で全て飲み切るようにしてください。


それと体重測定ですが、夜入浴した時に衣服を着けずに体重を計測します。それから服を着てもう一度体重を測ると、着ている服の重さが分かります。
翌朝は服を着たまま体重を測り、着ている服の重さを引けば現在の体重が分かります。
 例)脱衣50.00kg、着衣50.95kg:服の重さ0.95kg
  ⇒翌朝:着衣50.25kg ⇒0.95kgを引き、49.30kg という次第です。


余談ですが、豆乳豆知識を一つ。
牛乳パックは三角屋根になってるけど、豆乳は長方形で屋根がない形のパックになっているのは保存期間を延ばすためという理由だそうです。
牛乳より需要がないため保存期間を延ばすために屋根の部分を作らず空気に触れないようにし、パック内にアルミニウムを張って劣化を防止しているそうです。
そのため、未開封の豆乳は常温で半年ほど持ちます。ただし開封後は空気と接触するため、できるだけ早く飲み切りましょう。

あなたのダイエット事情はいかがでしょうか?

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  • これからやろうと思っている
  • やった事はないが興味はある
  • やるつもりはない
  • 過去にやって無事に成功した
  • 過去にやってうまくいかなかった
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