夫婦が飯を食べるだけ

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なんか適当に書き置いてたものがちょうど良かったので短いけれど……どぞ


第1話

土曜。

 

テレビの雑音が耳に入ってはすり抜けてゆく。

2人でのんびりと座るだけで何もしない。

時計を見るとだいたい夜の8時を指していた。

隣から気の抜けそうな腹の音。

外はもう暗いからか、虫が窓際にたくさん集まってくる。

 

 

「ねぇ、ラーメン食いに行こ?」

「ラーメンなぁ〜……行くかァ……」

 

 

よっこらせと立ち上がり、カーテンを閉めて薄い上着を羽織った。

どうやらこいつはマスクだけして外出するらしい。

メイクめんどくさいつってたもんな……。

 

 

「私が車出すからあんたの奢りね!」

「へーへー、お姫様のお気に召すままに」

 

 

アパートから出て鍵を閉め、車の助手席に乗りこんだ。

しっかりとシートベルトをして、エンジンがかかるのを待つ。

 

 

「よし、しゅっぱーつ」

「安全運転でお願いします……」

「任せなさい」

 

 

ふふんと胸を張りハンドルを握りエンジンは始動した。

妻の愛車である四駆の軽が、夜の街へ飛び出した。

 

 

「ラーメン屋ってどこだっけ?」

 

 

スマホを取り出して近場の美味そうなラーメン屋を探す。

 

 

「あー、あそこの交差点左折して……右折」

「おっけー」

 

 

夜の街は車も人も田舎だからかかなり少ない。

崩壊した世界でたった2人、最後のドライブしているみたいだ。

 

 

「あ、あの店じゃない?ほら」

「ん〜?あ、そうそうそう!そこだ」

 

 

駐車場に車を停めて、2人でラーメン屋に入った。

5000円を食券機に突っ込んで妻に言った。

 

 

「どうぞお嬢様。お好きなだけご注文いただけます。」

「……うむ。苦しゅう無いぞ。」

 

 

お互いがお互い冗談めかすもんだから、後ろで待っていた人が吹き出した音が聞こえた。

 

妻はチャーハン、餃子、塩ラーメン。俺は味噌ラーメン。

 

適当に席について、大将に食券を渡し、しばらく無言で店内を見ていた。

すると妻が口を開いた。

 

 

「ラーメン屋とかファミレスとかさ」

「うん」

「なんで無言になっちゃうんだろうね。不思議」

「あー……確かに……居酒屋だと喋れるのにな……」

 

 

そんな会話をぽつりぽつりとしていると料理が運ばれてきた。

先ずは卵で閉じた中華スープに餃子、チャーハンだ。

 

「きたきた……」

 

「おー!うまそぉー!」

 

まずは熱々のスープを飲み込む。

それから一口サイズに切り分けられたちまこい餃子を頬張る。

パリッとした皮の中に野菜多めの優しい味付けでとても美味しい。

続いてパラパラのチャーハンだ。

1口食べたら止まらない。箸休めにスープを啜れば完成された味わいが広がる。

 

まさに至福だ。その横では妻が必死で餃子を頬張っている。餃子のタレにつける間もなく、餃子と米粒が舞った。それを飲み込み、水をごくりと飲んでから息を吐いた。

 

「最高だねぇ」

 

「だな……」

 

ラーメン屋特有のこの緊張感を伴う静かな時間の流れはいつ来ても慣れない。

でもそれが心地良いのだ。まるで時間が止まったようなこの空間が好きだった。

 

そうこうしているうちにラーメンが到着した。

 

「きたぁ〜〜……」

「おーっ来たか……!」

 

早速ラーメンをズルッと啜る。

口の中に入れた途端広がる味噌の香り。

 

スープを飲むと、麺では伝わらなかった旨み成分が一気に押し寄せて来るのだ。

そしてまた一口。さらにまた一口。

気がつけば丼の中身が減っていて、ついには完食してしまっていた。

 

「ぷはぁ……満足」

 

「僕も満足かな」

 

「「ご馳走様でした〜」」

2人で笑顔になりながら店を出た。

 

 

 


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