バットを召喚してヴィランを殴ることができます!!!   作:ヴィラン・エネミー

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パンダヒーロー

「ありがとう!!ここまで運んでもらって」

 

少女がいるのは上空5,000m。直下には最終決戦に相応しい空中監獄。雄英高校を模した要塞にして死柄木弔を閉じ込め、個性を地上に伝播させないことを目的とした『天空の棺』。現在進行形で死柄木弔とヒーローが交戦しているのが見える。

少女は自身が乗っている戦闘機のパイロットに挨拶をする。特異な形状の、まるで上に人を乗せるために存在するような戦闘機。少女がそれに出会えたのは幸運という他になかった。天空の棺にどう侵入しようかと街を歩いているうちに彼らに出会った。曰く、緑谷出久をここに運ぶために今から飛び立つのだそう。少女はそれに無理を言って、1人だけ借りてこの場所にいる。

 

『本当にここでいいんだな!?』

 

流暢な英語がスピーカーから流れる。高度5,000m地点を指定してきた少女に対してパイロットは心配の籠った言葉をかける。あの天空の棺を目指すのならもっと近いほうがいいのだが、少女はここを指定した。少女には秘策があるのかもしれないが、それはそれとしてパイロットは非常に心配をしている。みんながみんな、あのスターのように動けるわけがないのだから。

 

「大丈夫!!なんてったって、私はヒーローだから(I AM A HERO)!!」

『そうかい!!』

 

少女の快活な声に呆れたパイロットが反応する。

この無駄なほど自分に自信を持つ少女を彼はスター以外に見たことがなかった。故に、どこまでも世話を焼きたくなる。

 

『これからどうするかとか、プランはあるのか?』

「あそこに突っ込んで、大元をぶっ飛ばす!!ね、簡単でしょ!?」

『ああ、簡単だな』

 

もうすでに戦闘機は天空の棺の上空に滞空している。あとは、少女が飛び降りるだけ。簡単だ。

彼は過去の幻想を振り払うように少女に告げる。

 

『頼むぜ。スター…いや、キャシーのためにもあいつを倒してくれ』

「…任せて」

 

少女は飛び立つ。翼なんて便利なものはない。たった1人の少女は重力に身を任せ、空中に躍り出る。瞳には天空の棺、壊れた街が映し出される。そして、最後に、パイロットと目が合った。

少女は微笑む。

 

「─────Good luck. Morituri te salutant」

 

古代ローマにおける。一つのセリフ。死にゆく者から、生きる者への餞別の言葉。

 

少女が落ちる。ただひたすらに重力に身を委ねながら。

 

「ガキがそんなセリフ使うんじゃねえよ。……Good luck」

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

ここは雄英敷地内の避難所。誰もがテレビやスマホをつけて中継映像を食い入るように見ている。

敵連合とヒーローとの最終決戦。誰もがこの行く末を固唾を飲んで真剣に見ている。

 

少年もまたこの広場に立っていた。興味がありませんと言うようにイヤホンを耳に当て、何故か流れてきた大昔の音楽を垂れ流す。

機械的で無機質な合成音声、ボーカロイドの声で紡がれるのは誰かが望んだヒーローの唄。

 

爆豪勝己が倒れる。死柄木弔にその命を奪われようとする。誰もが悲鳴をあげた。こんな若い人まで死んでしまうのか。まだ未来がある子供なのに。

少年もまた、自分より何歳も年上の爆豪勝己の行く末に目が奪われていた。

 

誰か助けて!!少年はスマホを握りしめて目を瞑る。そして────────

 

 

りならばあいつ!!

 

送電塔むグラウンド

 

メロディーが流れる。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

風が少女の肌を撫でる。落ちるにつれて天空の棺との距離も近くなる。天空の棺には死柄木弔を閉じ込めるために電磁バリアが張られている。それは内から外への脱出を拒むだけでなく、外らか内への侵入も拒む。少女がなんの計略もなくバリアにあたれば、簡単に弾かれてしまうだろう。

しかし少女には秘策がある。確実に成功すると確信するほどの秘策を持っていた。

 

少女は頭を下にただひたすら力をこめることなく落下をしている。

 

「こい、バット」

 

少女の言葉と共に6本のバットが宙に浮かび上がる。少女を囲むような位置で並走するバット。天空の棺との距離が残り200mを切った頃、勢いを増して電磁バリアへと突き進んでいく。

バットは当たり前のように電磁バリアに突き刺さる。このバットは元々この世には存在しない物質によって作られている。それは、原子構造から全くの未知であり、科学者すらも根を上げるもの。そして、それは少女の思うがままに変貌する。荒唐無稽な効果でない限り、少女の思った通りな効果を発する。

 

例えば、電磁波に干渉する効果とか。

 

6本のバットが電磁バリアに干渉し、六角形の穴を開ける。人1人入れるほどの小さな穴。少女はそれに吸い込まれるように入る。少女が電磁バリア内部に侵入するとバットはその場から消失した。

 

「さ〜て!!やりますか!!いくよ、バット!!!」

 

少女の手元にバットが現れる。少女がそれを握るとバットは形状を変化させ、エンジンのマフラーを模した部品が現れる。それは、火を噴き少女に推進力を与える。目下戦闘中の死柄木弔とヒーロー。そこに少女は乱入する。

 

「はぁ!?」

 

死柄木弔の焦った声が聞こえた。しかし、それはすぐさま少女が隕石のように落ち、死柄木弔へとバットを振り下ろした轟音にかき消された。

 

ドゴンッ!!!という音が鳴り響き、天空の棺がぐらりと揺れる。少女が降ってきた部分は砂煙が舞い、クレーターができている。そのクレーターの中心、砂埃の中から少女の姿が現れる。

 

「あれ?手応えないな〜」

「お前!?なんなんだよ!!」

 

ポリポリと頭をかきながら少女は呟く。死柄木弔はすでにその場から離れており、攻撃が通ることはなかった。唐突な乱入者に酷く狼狽える死柄木弔。

 

「おおっと!!まだ口上をしてなかったね!!私はメラノレウカ!!ちゃんと憶えてから死んでね」

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

中継カメラが空から降ってくる物体を映す。それは人間だ。否、少女だ。

パンダのお面をつけた特徴的な少女が空から天空の棺へと降ってくる。少女は電磁バリアをするりと擦り抜けると天空の棺内部に登場した。

 

画面が砂埃で見えなくなる。

しかし、それは数秒で消え去りその正体を映し出す。

 

誰かが呼んだ。誰かが呟いた。その特徴をとって、空から降ってきたヒーローの名を。

 

「…パンダ、ヒーロー?」

 

 

曖昧正義のヒーロー!!

 

左手には金属バット!!

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「邪魔すんな!!お前も殺してやるよ!!」

「握手か?仕方ないな。ほら、握ってやるよ!!」

 

少女は死柄木弔の手を握る。瞬時に『崩壊』が発動するも少女は崩壊しない。罅は入るがそれが全身に周り砕ける様子は一向にない。

「はぁ!?」と死柄木弔が唸る。「ほら、握ったな?じゃあ死ね」と少女は死柄木弔を手を起点に空へ飛ばし、バットを振り抜く。バットは死柄木弔の背中に命中し死柄木弔は吹き飛ぶ。

 

「爆豪勝己、大丈夫?」

「テメェか。なんで今更」

「ミルコだってベストジーニストだって、みんな死にかけでしょ?助けはいる?」

「助けさせてください。だろぉ?」

「死にかけなのによく言えるよ。じゃあ、勝手に助けるね」

「かはっ。精々吠えてろ。さっさと傷治してやるからよぉ」

「喋るな!!今から縫合する!!」

 

少女は爆豪勝己からゆっくりと死柄木弔に視線を移す。手元には一本のバット。ラスボス戦には心許ないがなんら問題ない。何故なら、絶対に勝つんだから。

少女はニヒルに笑ってバットを肩に担ぐ。

 

 

 

さぁ、ラスボス倒して世界を救いに行こう。

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

「一むぜ。おいだ

カラカラ林檎して

 

でもないような愚図って

 

 

さぁ、何処にもけないな!!

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

バットが飛ぶ。空中を縦横無尽に飛び交い死柄木弔に逐次襲来する。少女はそれに合わせるように死柄木弔に接近してバットを振り抜く。少女は死柄木弔に触られることなど気に求めずに何度も何度も攻撃を仕掛ける。死柄木弔に触られたところは僅かにボロボロと崩れるもそれが致命傷になるようなことはない。少女は何度も死柄木弔の手を掴む。それは攻撃にためだ。自分か崩れて死んでしまうことなどまるであり得ないかのように手を掴む。

 

「なんで死なねぇんだよ!!おかしいだろ!!」

「私は崩れない!!当たり前でしょう!?このバットが崩れない限りある私が崩れることはない!!」

「ならバットから壊してやるよ!!」

「バットだって、私が死ぬまで壊れないよ!!」

「なんなんだよお前はぁァァ!!!」

「ヒーローだよぉぉぉ!!!憶えてから死んでよねぇぇぇ!!!」

 

死柄木弔は自身の中にある集めた個性を発動する。手のひらから旋風を発動すると身の軽い少女は簡単に飛ばされてしまう。しかし、少女は空中に浮かんだバットを掴むと体操選手さながらの動きで体を制御し、その勢いを用いて死柄木弔へと強襲する。死柄木弔は自身から指を増やし続け、波のように少女を襲うも意図も容易く一点集中で突破されてしまう。

 

「あぁ!!もう!さっさと死ねよ!!」

「お前を殺してからならいいよぉォォ!!キャハハハハハ!!!」

 

お面の上からでもわかる悪辣な笑顔。ヴィランよりもヴィランらしい。いや、少女も一応はヴィランか。

ヴィラン(ヴィラン)対ヒーロー(ヴィラン)の攻防も激しくなっていく。少女はハッと何かに気がつき足を止める。

 

「そうだ!!今ならできそう!!!」

「死ねぇぇ!!」

「『千本ノック』いくよぉぉぉぉ!!!」

 

少女が空に手を伸ばすと空には幾本ものバットが召喚される。それらは少女を中心に何周も円を描くように全て上向きに整列する。

 

「天気は、曇り時々バットの嵐でしょう!!!さぁ、落ちよ!!『千本ノック』ッ!!!」

 

バットの先が全て中心を向いたかと思うと、真下の死柄木弔を狙う。たった今、空から質量攻撃が開始される。バットは当たり前のように電磁バリアを擦り抜け、死柄木弔の元へと殺到する。避けることなど不可能だ。「くそっ!!」死柄木弔は咄嗟に自身から増殖させた指によって自分を守るが、そんな守りは意味をなさない。百のバットは守りを削り、さらに百のバットが死柄木弔に到達する。そして、残り八百のバットは死柄木弔が逃げられないように周囲を削り取る。

 

そして、1分にも満たない間に天空の棺の表層は地獄絵図と化す。たった一度の質量攻撃によってその高度は100mも低下し、今は飛んでいるのもやっとのようだ。それほどまでに少女の攻撃はヤバかった。

 

その少女とは言うと、「キャハキャハ」と子供が悪戯が成功した時のように笑っている。前の戦いで倫理観や死への恐怖といったありとあらゆるタガが外れてしまったのだろう。今まさに個性のイかれた使用によって脳味噌が茹だり、鼻から血が垂れ流れているにも関わらず笑っている。

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

誰かが叫ぶ、彼女の名前を。

 

パンダヒーローと。

 

がんばれ。まけるな。声が増える。

 

少年の聞く音楽も、佳境を迎える。さらにテンポが上がっていく。

 

 

 

パッパッパラッパパパラパラ

 

 

 あれは きっと

 

 

パッパッパラッパパパラパラ

 

 

 さ

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

死柄木弔は逡巡していた。このままここで戦っていればいずれ殺されると確信めいた予感があった。あいつはヤバい。そう身体が悲鳴をあげていた。あいつと戦うと、自分のこれまで培ってきた戦闘能力が意味をなさない。今みたいに、唐突に編み出したような技で殺されてしまう。あれほどまでにイかれたやつは見たいことがない。

逃げる?どこに?戦う?どうやって?殺す?崩壊も効かないのに?死柄木弔の脳髄はありとあらゆる可能性を生み出してはすぐさま却下する。これでは奴に勝てるヴィジョンが見えない。このままジリ貧じゃあ、緑谷出久がきたら⒉対1でやられてしまう。いや、それどころか爆豪勝己まで復活するかもしれない。あぁ、考えれば考えるほど負け筋ばかり思い浮かぶ。

あぁ、そうだ。頭のネジを外してしまおう。壊すことだけを思い浮かべよう。あいつを壊し切るまで!!!

 

「まだ生きてる!?ひゃっほぉ!!殺し放題!!」

「壊す壊す壊す壊す壊す!!!」

 

死柄木弔は超再生を終えると即座に少女に肉薄する。少女の喉に五指を掛けるとそのまま個性を使う。少女の喉が少しだけ割れる。しかし、致命傷にはなり得ない。だが、これでいい。

 

「無駄ってことがわからないの!?」

「いいや、これでいい!!お前の耐性より、俺の個性の方が上回ったらお前は壊れるだろ!?」

「それはそう!!」

 

少女がバットを振るもそれは宙を切る。死柄木弔の動きがさらに機敏になったのだ。しかし、少女も負けてはいない。10本を超える量のバットを操り、死柄木弔に攻撃を与える。

 

「ギャハハハハハッ!!!!もっとだ!!もっと早く気づけばよかった!!!さぁ!壊し合おうぜ!!」

「キャハハハハハッ!!!!私のバットであの世にさっさと行けばいいんだよ!!!!」

 

死柄木弔は超再生を駆使して少女へと何度も肉薄し、個性を使用する。その度に少女の耐性は減り、少しずつだが崩壊の予兆が見え始める。

 

「ほらほらぁ!!私のためにさっさとくたばれよ。ラスボス!!!」

 

少女は吠える。自身の意志を強めるために。少女は自分の意志が強い限り、折れることはないと確信している。それでも、今ここで吠えなければ心に黒い影ができてしまう。そうなれば、いつか心が折れ壊れてしまう。そうならないための必要な応急処置。

 

「緑谷出久がくる前に壊してやるよ!!!!ヒーローォォォォ!!!」

 

死柄木弔もまた吠える。自分が信じたこの作戦が正しいと思い込むために。死柄木弔は信じている。どれだけ強い個性。例え、スターの新秩序であっても自分の崩壊は止められない。それほどまでに強い個性だと。そうしなければすぐさま手が止まり、あいつにやられるだろう。それを防ぐための鼓舞。

 

死柄木弔の崩壊はだんだんと少女を蝕み、少女の攻撃はだんだんと死柄木弔を追い詰める。

 

そして─────────────

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

きっとわれてんだ

ヒーロー

 

 

 

 

きっとまれてんだ!!!

ほら、ヒーロー!!!

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

緑谷出久が、たった今、到着する。

 

誰もがやってきた救世主に目が向く。少女ですらも。

その瞬間を捉えた死柄木弔は自身の両手を床へと叩きつける。ぐらりと天空の棺自体が揺れる。そう、たった今死柄木弔の崩壊が天空の棺を伝播する。

 

「ちっ!!」

 

イレイザーヘッドだろうか、少女だろうか、はたまた外様のヒーローだろうか、誰かの舌打ちが鮮明に聞こえる。

そうして次の瞬間、天空の棺はその性能の殆どを失い倒れる。空中を飛び続けることも電磁バリアを貼り続けることも不可能になり、その鉄の塊は地面への落下を開始した。

ヴィラン、ジェントル・クリミナルが必死に個性を用いて天空の棺を持ち堪えさせようとするも、最早飛行性能が0に等しい瓦礫は飛ぶことはできない。ただ、気持ちばかりゆっくりと地面へと不時着する。

 

さて、第2ラウンドの始まりだ。

 

「死柄木ィィ、弔ァァ!!!」

「ウルセェなぁ!!聞こえてるよ!!」

 

緑谷出久が吠える。目の前のラスボスを、この惨状を作り出した張本人を倒すために。死柄木弔は歯牙にも掛けない勢いでその両手を地面へと付けようとする。目的はこの地球そのものの崩壊。死柄木弔が崩壊させるものは物から物へと伝播することを利用した。

 

「!?あぁ!?」

「ッ!『ニ速(セカンド)』」

 

死柄木弔が一瞬固まる。その瞬間を見逃すはずもなく、緑谷出久は『変速(2代目)』を用いて疾走する。『黒鞭(5代目)』が緑谷出久の体を支え、『危機感知(4代目)』を全身に張り巡らせ緑谷出久は強襲する。

 

「チッ!!ジジィめ。逝った癖に、俺の心に住みつきやがって」

 

死柄木弔は頭をボリボリと掻き、強襲する緑谷出久を見る。

 

「そう思うよなぁ!!緑谷出久ゥ!!!」

 

死柄木弔の両手からジェット噴射が飛び出す。『危機感知』が酷いくらい警鐘を鳴らす。緑谷出久はそれに合わせて『発勁(3代目)』で溜めた力を右脚で使って横にかっ飛ぶ。あまり溜まっていなかったためかそこまで緑谷出久の体に悪影響を与えることはない。そして今度は左脚で『発勁』を使って推進力を得て、死柄木弔に拳を叩き込む。

 

「あめぇ!!これならまだ、あのバットの方が痛えぞ!!」

「なっ!?」

 

死柄木弔はお返しと言わんばかりにありったけの個性を使う。『身体強化』*3、『肉体強化』*2を用いて拳を強化し、それを緑谷出久に叩き込む。緑谷出久は咄嗟に両腕をクロスして受け止めるも、勢い余って後ろに吹き飛ぶ。

両足で地面を擦りながら緑谷出久は100mほど飛ばされたのち止まる。緑谷出久の心の中で歴代継承者が声を上げた。

 

(本来ならAFOの方が自我が強くなると思っていたのだが)

「あれは違うと?」

(あぁ、最早あれの中のAFOの自我なんぞ雀の涙ほどだ。死柄木弔の自我の方がよっぽど強い。恐らく、バットの少女との戦闘で自我が強まったのだろう)

「じゃあ、作戦は」

(変わらない。死柄木弔に私たちをぶち込む。そうして内側から倒す)

「了解!!!」

 

緑谷出久は立ち上がる。こんなところで止まっていられるわけがない。緑谷出久は歴代個性を使用して死柄木弔へと立ち向かう。

 

 

 

 

そして、少女はと言うと。

 

猫熊汐梨は今まで浮いていた瓦礫の上に立っている。いや、瓦礫に寄りかかるように座っていた。体は崩壊寸前、やはり何度も触られたことが仇となったか。

猫熊汐梨は考えていた。これでお姉ちゃんの名声は広まったのか。死柄木弔とここまで戦ったんだ。広まらない方がおかしいだろう。それならよかった。さぁ、いつでも死んで問題ない。

 

目下ではA組が緑谷出久の手助けをしている。死柄木弔のものへと戻った自我に最後に一度オール・フォー・ワンを叩き込むためにみんなが手助けをしている。

 

あぁ、そうか。もう一度だけ少女に。いや、最期に一回だけ()()()()のやるべきことがある。

 

 

よーく狙って、ホームランで送り出そう。さぁ、最後の1発。気前よく行こうぜ。バットが振られ、ボールは死柄木弔へと向かう。その一撃は最後の足掻きをしようとした死柄木弔を止めることができただろう。

 

空が晴れる。青空が見える。あぁ、よかったよかった。

 

褒めてほしい。よかったね、頑張ったよと。

 

『頑張ったね。えらいよ、汐梨』

 

お姉ちゃんの声がした。

 

 

 

 

カツンとお面が地面を跳ね、そして消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

 

青年がイヤホンを片方外す。街の喧騒が停めどなく青年の耳をつんざいた。

数多の喧騒の中に、一つの悲鳴が混じる。

 

「わかった」

 

耳の良い青年はイヤホンをもう一度装着すると懐から一つのお面を取り出し装着する。

これが青年のコスチューム。誰かに憧れた青年はその人物と同じ道を歩む。彼女の思いはわからないが、彼女の道筋を辿ることはできた。

 

路地裏へと足を踏み入れた青年は収納バッグからバットを取り出す。人より何倍もの聴覚を得た青年にとってこれは唯一と言っていい武器。手に馴染んだグリップを握り、青年は路地裏を駆け出す。目指すは悲鳴の聞こえる方。

 

「さぁ、ヒーローのお出ましだ」

 

青年の耳には今も憧れのヒーローの名を冠する音楽が流れていた。




駆け足に終わってしまった。もう少し描写を増やしたかったので加筆するかもしれないです。

たった4話でしたが楽しんでいただけたでしょうか?楽しんでいただけたのなら幸いです。

使用させていただいた楽曲は

ハチ
『パンダヒーロー』

です。ありがとうございます。


2026/01/11 改稿しました。
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