当代最強にして最高峰の陰陽師、神代美影
彼女が狂気的な殺戮を起こすまでの話
参考文献

【本編完結済み】 ある少年少女達の怪奇譚 夢幻に生きる者たちよ

一章-2 不知火より

https://syosetu.org/novel/313142/

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当代最強にして最高峰の陰陽師、神代美影
彼女が狂気的な殺戮を起こすまでの話
参考文献

【本編完結済み】 ある少年少女達の怪奇譚 夢幻に生きる者たちよ

一章-2 不知火より

https://syosetu.org/novel/313142/


神代美影が狂うまで

陰陽師(おんみょうじ/おんようじ)とは、古代の律令制下において中務省の陰陽寮に属した官職の1つで、陰陽五行思想に基づいた陰陽道によって占筮(せんぜい)及び地相などを職掌とする方技として配置された者を指す。中・近世においては民間で私的祈祷や占術を行う者を称し、中には神職の一種のように見られる者もいる。

 

まぁ、これが具体的な陰陽師の表の姿だ。

しかしこれはあくまで仮の姿。

京都の陰陽師は古来より妖魔との熾烈な戦いを繰り広げ、国を守護(まもり)続ける人々を指す。

まるでフィクションの陰陽師そのものだ。

呪具に呪法、霊力を消費した技の数々を持って人々に被害を与える脅威を排除するのが主な役目だ。

そして、私の家系、神代の家系はその中でもトップクラスの陰陽師だった。

そして私、神代美影(カミシロミカゲ)は自分でいうのも何だが生まれついての天才だった。

普通なら何年もの研鑽を重ねやっとできるか否かの式神の使役を3歳にしてやってのけた。

両親はこれ幸いと言わんばかりに私に試練をいくつも課した。

双子の光美(ミツミ)は才がないとされのうのうとゆっくり鍛錬された。

だが、私は違った。

4歳の頃、両親の術式で身体を大幅に弄られた。

激痛で絶叫する中、得られたのは痛みすら感じない身体。

痛みという概念が私から消えた。

これはどれだけ命が削れても民を守るための措置だと伝えられた。

不服だったが人々を救えるなら悪くないと子供心に思った。

正義のヒーローになれる。

そんな陳腐な夢を見て。

次に霊力……魂の大幅な改変を受けた。

自我がぐちゃぐちゃになった。

それでも人々を救えるなら良いと考えた。

私一人で人々の安寧を守れるなら安い代償だと思った。

そこから地獄が始まった。

私には才能があった。

式神……蟲の式神を操るのが得意だった。

結界術式を使うのが得意だった。

両親はそこを限界まで伸ばそうとした。

血反吐を吐くような鍛錬、けれど身体は痛みを感じないからどこまでも続く無限の道。

いつも気絶して修行は終わっていた。

身体はぼろぼろのはずなのにずっと、ずっとずっとずっと鍛錬を繰り返した。

朝日がのぼり月夜に照らされるまでずっと。

それに対して妹の光美はのうのうとゆっくりと修行をしていた。

最初こそ才能に恵まれなかったからそういうものだと割り切っていた。

けど、途中から憎しみが増した。

何であいつだけはのうのうと修行をしている?

血反吐も吐かず、ただ鍛錬しているだけ。

式神もろくに呼べずにただただ一族の足を引っ張るだけの能無しが何故あんな楽な所業で済んでいる?

能無しなら能無しらしく肉壁にでもなっていれば良いのに。

そんな感情が湧いた。

そして5歳の時、私の救世主に出会った。

名を不知火雪奈(しらぬいせつな)

彼女もまた京都を守護する一族、不知火家の継承者だった。

不知火家は刃を持って妖魔を切り伏せる……いわゆる侍と言ったところか。

彼女もまた鍛錬を積み重ね音すら置き去りにする不知火の剣術……送火を手に入れていた。

そこに私はシンパシーを感じていた。

雪奈は修行を頑張っている。

だから『神代美影』も修行をこなしていった。

そうして6歳の時、私は正式に神代家の陰陽師となった。

そこからは他の陰陽師の家系に挨拶回りをして合同で修行をしたりもした。

どれも苦痛でしかない修行で年上の他の陰陽師でさえ根を上げるような鍛錬をただひたすらに繰り返した。

早く終わるように。

早く終われば雪奈に会えるから。

神代家と不知火家は代々互いを支えるパートナーだった。

神代家が後方支援をし、不知火家が前面で妖魔を切り捨てる。

それが一般戦術だった。

だからこそ連携の修行もした。

痛みを感じない身体の私を雪奈はいつも気にかけてくれた。

「無理をしてないか?辛くないか?弱音を吐いても良いんだよ」と、私を励まして、心配してくれた。

それが嬉しくてたまらなかった。

今まで神代家の次代最強の陰陽師としてしか見られてなかった『神代美影』ではなく一人の少女の『神代美影』として初めて私を見てくれたのが嬉しかった。

だからどんなに嫌な修行も耐えられた。

式神の複数行使の修行も。

結界術式の修行も。

バカみたいに霊力……命を使い続ける修行も耐えられた。

けれど、状況は少し変わった。

光美も私と雪奈と共に修行する様になった。

落ちこぼれの光美が私の唯一の救世主である雪奈と一緒に修行しているのがたまらなく不快でしかなかった。

今まで私だけを見ていてくれた雪奈が私以外を見るのが嫌だった。

それも相手が愚妹の光美だ。

なおのこと不快/憎い。

雪奈は優しいから光美にも優しく接していた。

勿論私にも同じく接していてくれた。

けど、愚妹がそうやってぬくぬくと成長していくのが気に食わなかった。

ろくに式神を呼べない、結界術式もまだまだ中途半端。

そんな足手纏いが私と同じ場所にいるのが不快で仕方がなかった。

そうして7歳の時、私は京都の陰陽師を統べる立場にいた。

歴代最年少にして時代の最高の陰陽師と皆が讃えた。

顔もろくに思い出せない、いや、覚える必要すらない連中に持て囃されたところで私の壊れた心は戻らない。

けど、雪奈だけは違った。

確かに褒めてくれた。

けど、神代家の『神代美影』ではなく一人の少女『神代美影』として私を認めてくれた。

やっぱり、それが嬉しかった。

雪奈は他の陰陽師や両親と違って、いつも一人の少女である私を見てくれていた。

ただの修行仲間ではなく『友達』として接してくれていた。

京都を統べる立場になってからはある程度余裕ができた。

だから私は雪奈と時間が合うたびに遊びに出かけた。

たった二人だけの……私の救世主と私だけの時間、それが愛おしくてしょうがなかった。

けど、そんな夢の時間も壊された。

愚妹の光美までその輪の中に入ってきたのだから。

最初こそ不快で仕方がなかったが、それでも我慢した。

雪奈に私の醜い部分を見られたく無かったからだ。

だから我慢した。

時折見せる光美の笑顔も雪奈と接する光美も殺したいほど憎かったが心の中に抑えた。

だって、雪奈に嫌われることだけは心底嫌だったから。

私の救世主が私から離れていくなんて死んでも耐えきれない。

だから我慢した。

いつしか私は雪奈を愛していた。

女の子が女の子に恋をする、なんて変だと言われるかもしれないけど、そんなこと知ったことじゃない。

私は雪奈を愛している。

素敵な笑顔も、まっすぐな信念も、苦痛で歪んでなおも立ち上がる強さも全てを愛していた。

彼女の喜怒哀楽全てが愛おしかった。

だけど、それは心のうちに秘めていた。

きっと、この感情を雪奈に打ち明けたら決定的な何かが壊れると思ったからだ。

だからずっと心に秘めていた。

そして8歳の時、全てが変わってしまった。

ある夜、ぼろぼろの身体で眠れなくて屋敷をぶらついて気を紛らわしていた時、両親の会話を聞いた「不知火との縁を断つ。あいつらはもう不要だ」、と。

あぁ、許せない、許せない許せない許せない!

私の救世主が不要?

ふざけたことを言うな!

雪奈がいなきゃ私は……

 

———不知火はもはや不要、我々には美影が居る。最強の陰陽師がいる!ならばこそ古臭い不知火など不必要、ならばこそ縁を切る。あいつらはただ邪魔でしかない。不知火の跡継ぎの誕生日にそのことを話す。

 

は?

ふざけているのか?

私の救世主の、それも誕生日に?

……ふざけるな!ふざけるなふざけるなふざけるな!!!

私を唯一『友達』として認めてくれた雪奈に対してそんなことをするな!

ここで私の感情は決まった。

私は両親を殺す。

愚妹の光美もだ。

作戦決行は雪奈の誕生日、みんな……雪奈以外のみんなを殺してやる。

そうして当日、私と愚妹と雪奈で裏の山にある白と黒の百合の花が咲き誇る花畑を見にいった。

きっと雪奈と会うのもこれが最後だから。

白い百合の花言葉は「純潔」「無垢」「威厳」、雪奈にピッタリだと思った。

対する黒い百合の花言葉は「呪い」「復讐」、今の私にピッタリの花言葉だ。

だからこそ私は雪奈の屋敷に帰って凶行に走った。

まずは両親を蟲の式神で喰い殺した。

次に雪奈の両親をなるべく綺麗に殺した。

最後に光美を殺そうとした時、半狂乱の雪奈に切り伏せられた。

あぁ……私には相応しい最期だ。

愛する人の心に癒えない傷をつけ、ずっと私のことを脳に刻まさせる。

そして、私は愛する人の殺意()の元殺される。

実に心地いい最期だ。

もう一度味わいたいくらいに。

だから私は8年かけて人々を喰らい、復活した。

待っていてね、雪奈。

また会いにいくから———


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