可愛い女の子の「汗、かいちゃった、、、」にたいして「かいてかいて〜」と言って気持ち悪がられた大学生。月日が経ち、81歳になり、その女性が死んだ今でも、周りからイジられまくるおじいさんの悲しい人生相談のお話です。


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大学生の頃のことをイジられるおじいさん

ラジオの人生相談で「史上最もヤバい相談」「これ聴いた瞬間鳥肌立った」「放送事故レベル」とリスナーが総ざわした伝説の回、覚えてる人はいるだろうか。

 

忘れられない人生相談の中でも、僕の中で、燦然と輝くのが次のような相談だった。多分有名なやつだ。

 

『いつも、ラジオの人生相談のコーナーを楽しみにしています。僕の相談を聞いて、もしよろしければアドバイスをお願いできないでしょうか?僕は、女の子が「汗かいちゃった」と言った時に、「かいてかいて〜」と返事をして、気持ち悪がられたことがあります。

 

ふざけたつもりだったんですが、気持ち悪かったということで、今では反省しています。

 

しかし、それは大学生の頃の話で、今、僕は81歳なのに、まだ周りからそのことをイジられます。

 

大学生の時に、「汗かいちゃった」に対して、一度だけ「かいてかいて〜」と言っただけなのに、こんなにも言われるものなのでしょうか?

 

ちなみに、もうその女の子は去年亡くなりました。もういじられるのはイヤです』

 

もうこのハガキの段階でかなり面白いのだが、そこからの電話相談がまた空気感がすごかった。

 

「もしもし、ラジオ人生相談のコーナーの片岡です。佐々木さんですか?」「あー、もしもし、そうです」「えーと、おハガキ読ませていただきました」「あー、どうも。いや、お恥ずかしいんですけども、昔のことを、もう反省してるのに、まだ言われるんですよ」「今、ちなみに81歳ということですよね?」

 

「あ、えーと、実は今日、誕生日ですので、えーと、82歳になります」「あー、そうですかあ。それはおめでとうございます。で、なんで、そんなこと言ったんですか?」「いや、それは、ホントに若気の至りで、可愛らしい女の子で、みんなが好きな雰囲気の子だったんですね。それで、『汗かいちゃった』って言うもんですからね」「えーと、それが気持ち悪いってことはわかりますか?」

 

「はい。もう、今は、わかってます」「じゃあ、なんでそんなことを言ったんですか?」「いやー、ちょっとふざけて言ったんですよ。それを、もう82歳になるのに、まだ言われるんですよ。周りの友だちから」「なんで、周りはまだ言ってくると思いますか?」

 

「いやー、ちょっと私が嫌がるリアクションが面白いんじゃないかなと思ってます。ただ、私としては、もう、82歳なんで、大学生のころ、一回だけ言ったことを、いつまでも言われるのは厳しくて」「でも、言ったんですよね?『汗かいちゃった』にたいして『かいてかいて〜』って。どんな感じの言い方だったんですか?ちょっと今、やってもらっていいですか?」

 

「いや、でも、それは…。昔のことですしね」「向こうにとっては、昔のことじゃなかったのかもしれませんよ」「…」「じゃあ、私が、一応ね、その方より美しくないかもきれませんけども、女性なんで、『汗かいちゃった』って言いますから、どんな感じで言ったのか、やってみてもらえますか?」

 

「いやー、ちょっとそれは」「いや、それをやってもらわないと、周りがなぜイジってくるか、わからないですから。ちゃんと正直に、その時の言い方で、やってくださいね。誕生日に嘘つきたくないでしょう?」

 

僕はとても勉強が手につかなくなった。このおじいさん、まだ詰められてる!!!

 

「えーと、じゃあ、できるだけその時の言い方をします」「はい。詳しい状況も教えてください」「えーと、大学生四人で、ワゴンを借りて、旅行した時のことなんです。暑い夏が続いてましたから、避暑地の軽井沢に行こう、となりまして」

 

「それで、どこで、そのシチュエーションになったんですか?」「えー、軽井沢で、バドミントンをして遊んだんですね。みんなで。その時に、僕とその女の子がペアだったんです」「なるほど、続けてください」「で、バドミントンで僕らのチームが勝ったんです。その時に『イェーイ、勝ったね』って私が言いました」

 

「続けてください」「はい、えーと、そしたらその子が『汗かいちゃった』って言ったんで、そこからそうなりました」「わかりました。じゃあ、あなたのセリフの『イェーイ、勝ったね』からやってください。どんなニュアンスで言ったのか、知りたいので」「うーん、そんなんしたくないんですよ。わたしはね、いつまでも、ひきずられるのがイヤで、相談したいんですよ」

 

「いや、だからこそ、あなたの味方をするために、必要なんです。どんな感じか知る必要がありますよ。もう、引き下がれないですよ?これは、あなたが始めた物語です。走りだした物語はもう止まらないんです」

 

「う、う、う(泣)」

 

おじいさんが泣かされてるのを聞いて、僕は完全に勉強の道具を全部片付けた。そして、ユンケルをグビグビと飲み干した。

 

「では、やりましょう。あなたから、です」「う、う(泣)、イェーイ、勝ったね。う(泣)」「汗、かいちゃった」「かいて、かいて〜(泣)」

 

「いや、そんなんじゃなかったはず!もっと気持ち悪かったはず!!まずは泣き止んでください!」

 

もっと気持ち悪かったはず、ってなんやねん。僕は、“学校の勉強よりも大切なものがある、このラジオだ!”と思いながら、ゲラゲラ笑っていた。

 

「あの、も、もういいです!こんな人生相談!バカにしてるだけじゃないですか!」「あっ!!」

 

プープー、という電話の切断音が流れていた。

 

【追いかけろ!!そのジジイを逃がすな!そいつを中途半端に逃したら、また同じことをやるぞ!!!!】

 

僕は番組あてにこんなメールを急いで送った。

 

パーソナリティの女は、電話を切られたあと、リスナーに向けて、こう言った。

 

「リスナーのみなさん、大丈夫です。カチカチ山のタヌキを逃がしはしません」

 

カチカチ山のタヌキ?こいつ、ジジイの味方する気ゼロやないか!いいぞ!もっと追い詰めろ!!

 

僕は興奮して、ユンケルをもう1本飲んだ。

 

電話のコール音が鳴り響く。

 

ガチャという音がしてから、すぐにプープーという切断音にまた変わった。

 

「あくまでも電話に出ないつもりみたいですが、おじいさん、このラジオはまだ聴いてるだろう!!!自分がそのあと、なんて言われてるか、気になるのが人間というやつだからね!!!!お前の送ってきたハガキに、ご丁寧に住所が書いてあった!!!!そして本名もな!!!私は、お前が電話に出ないなら、住所と本名をバラす!!!!電話に出るんだ!!!!!!」

 

いいぞ。もう“お前”って言っている。すごい!!勉強なんかしてられるか!俺はこれを聴くために生まれてきたんだ!!このジジイは、このラジオを聴かせるために生まれてきたんだ!このラジオに電話出演するまでのジジイは、お腹の中にいたようなもんだ!!!!

 

82歳ではなく、今日はお前の0歳の誕生日なのだ!!!!

 

パーソナリティの女が電話をまたかけている。「カモーン、出てこいよ、こねこちゃーーん」

 

タヌキなのか子猫なのかどっちなんだ。どっちにしろ、この女はトチ狂っている。

 

「はい、もしもし。何回もかけないでくださいよ。それになんですか!!誕生日に、住所と本名をさらすって!!」「いいですか?わたしはあなたの味方になりたい!だから、わたしには嘘をつかないでください。あとから振り返った時に、最高の誕生日になります!!!」

 

「わ、わたしは、一体、何をすれば」「続きからです。あなたが、『イェーイ、勝ったね』と言うところから、です」「どうしても、そこをそんなにリアルに再現しないと、いけないんですか?」「早く、してください!!」

 

「ふぅーーーー…。イェーイ!勝ったね!!」「でも、汗、かいちゃった」「えへへへー、かいてかいて〜」「きもっ!」

 

僕はラジオの前で爆笑していた。きもっ、て言われている!!こんなにもおじいさんなのに!!!!

 

「きもい、とかひどくないですか!?」「いや、ひどいのはあなたです。もっと気持ち悪かったはず!!本気で、ちゃんと再現してください!」

 

それから、何度も何度もこのやりとりが続いた。おじいさんは、住所をさらされるのを恐れたのか、どんどんどんどん殻が破けていった。

 

take25「汗、かいちゃった…」「えへへへへ。かいてかいて〜。におわしてにおわして〜」

 

take 56「汗、かいちゃった…」「うひょーっ!かいてかいて〜!飲ませて飲ませて〜」

 

take165「汗、かいちゃった…」「うひひひーっ!!!汗、かいてかいて〜!かいてかいて〜!!それをボクちんちんが、ゴックンゴックン飲む方向性でオッケー?」

 

その時、女性リスナーは叫んだ。「気持ち悪いんじゃあああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」

 

すごいラジオだ。お菓子のスポンサーがついているとは思えない。

 

おじいさんは黙りこくっていた。そして、絞り出すようにこう言った。

 

「これで、味方、、してくれるんですよね」

 

まるで、脅迫されていた人間が「本当にもう今回のお金で、最後にしてくれるんですよね?」と聞いている時のような真剣さだった。

 

僕は胸が締め付けられるような思いがした。このおじいさんは、味方をしてもらえると信じて、ここまで頑張ってきたのだ。

 

女性リスナーは声を詰まらせながら、こう答えた。「あなたは、本当によく頑張りました。でも、味方は、、できない。わたしだって、つらい!お願い!わかって!気持ち悪いの!」「そ、そんな、そんな!!」

 

僕はラジオを前に泣いていた。あまりにもおじいさんがかわいそうである。

 

「わたしだって、味方してあげたい。でも、あなたは、これから、死ぬまで、イジられる。だって、気持ち悪いんだもん!!」「わたしの、実際のセリフは、あそこまで気持ち悪くなかった!!でも、アンタに気に入られようと、思って、もう、実際よりも、ひどく変態みたいな言い方と、表現に変えたんだ!!!!!」

 

パーソナリティの女は泣いていた。

 

「分かってる!!でも、それが気持ち悪いの!!それが、気持ち悪いの!!」「わたしは、、、気持ち悪い、、のか?」

 

僕は飽きてきた。いつまで続くねん、これ。

 

「そろそろ、リスナーが飽きてきたと思うの。わたしは、ここで、あなたの住所と本名を、さらします!!あなたの住所と、名前をさらすこの番組は、ブルボン!!松下電気!!タニタの提供でお送りします」

 

この女は今日で辞めるつもりなんだ。僕は全てを理解した。俺も、大学を辞めよう。このヤケクソパワーを見せつけられたら、影響を受けない人間なんていない。

 

そのあと、女パーソナリティは、おじいさんの本名と住所をさらし、「緊張して、本当に汗をかいちゃった!」と叫び、おじいさんは、それにたいして、「かいてかいて〜」とまるで調教された犬のように、叫んだ。

 

クリスマスの日の出来事でした。

 

キリストと同じ日に、生まれとんかーい。

 

メリークリスマス。


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