絶対勝利の脚(一回限り)を貰ったモブ子ちゃんの苦悩   作:散髪どっこいしょ野郎

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ああ神様、さようなら

「卒業おめでとう、ソコラ」

 

「うん。今までありがとね、トレーナー」

 

 

 学友、そして恩師との別れ。

 

 私は今日、卒業する。

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

「なあソコラ、写真撮らないか?」

 

「え?もちろんいいけど……なんでこんなにいるの?」

 

 

 カツラギエースから誘われて写真撮影をすることになったのだが……

 

 背後にいる人数が多い!集合写真でも収まらないぐらいだぞ!?

 

 

「ここにいる奴らはみんなソコラと走ったウマ娘だ。みんなみんな……あんたとは戦友なんだよ」

 

「戦友」

 

 

 オウム返しに呟き、反芻する。なるほど、戦友と来たか……

 

 ……改めてだけど、私は孤独じゃなかったんだな。

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

 大学費用をあの有で稼げたので、私はそのまま進学して地方のトレセン学園のトレーナーになった。なんやかんや言いながら、私はレースを愛していたのだ。

 

 

「……空、綺麗だなぁ」

 

 

 胸に光るトレーナーバッジ。今日から私も、ウマ娘を導く大人なんだ。

 

 深呼吸を一回して、私は歩き出した。

 

 

▫▫▫▫▫

 

▫▫▫▫▫

 

▫▫▫▫▫

 

 

 目覚まし時計の音が部屋中に鳴り響く。朝に弱い私はぐちぐち口の中で呟きながら身を起こした。

 

 朝食は昨日の残り物を手早く炒めたものを白米と共にかっこむ。

 

 それからはいつも通りシャワーを浴び、身だしなみを整え、寮の自室を出た。

 

 

「おはようございます、トレーナー!」

 

「うん、おはよう」

 

 

 あれから50年くらい経った。私もすっかり腰が曲がり、髪も白い部分が増えだしている。

 

 若い頃は実際に走って教示することもできたが、今の体たらくでは流石に無理だ。……ある、秘密を除けば。

 

 

「それじゃあ軽く流しで走ってみなさい」

 

「はい!いっくぞー!」

 

 

 多くのウマ娘を見てきたが、現在の担当はかなり素直な子だ。私がこの子ぐらいの歳だった時は度重なる敗北でひねくれていたのに、この子はいつも明るかった。

 

 

「フー……」

 

 

 私も歳だ。あと数年もしたらトレーナー業からも退いてしまうだろう。その前に、一回だけあれを……。 

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

「「いただきます」」

 

 

 この学園の食堂は中央程ではないにしろ結構美味い。

 

 昼食は必ず担当と摂ることにしていた。いつぽっくり逝くかも分からない身だ。思い出は多い方が良いだろう。

 

 ……お、廊下を走る音が聞こえる。この走り的に誰が来るのかは想像がついていた。

 

 

「ソコラトレーナー!聞いてくれよー!」

 

「廊下は走らなさんな」

 

「うっ、ご、ごめんなさい……。そ、それよりも聞いてくださいよ!」

 

 

 ドタバタ走りながらやってきた子は現在の担当とそれなりに交流があるウマ娘。話す内容も大いに想像がついていた。

 

 

「あいつ、酷いんすよ!自分が強いからってコース独占して!」

 

 

 あいつ、というのは今この学園で最も油が乗っている選手。ビッグマウスな口ぶりだがちゃんと能力も備わっている。

 

 

「ソコラトレーナーからも言ってくださいよ!コースはあいつのためだけにあるわけじゃねぇって!」

 

「はぁ……はいはい、今行きますよ」

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

「おいテメー!コースを独占するんじゃねー!」

 

「ワタシに勝てないくせして意見する気か?なんならもう一度力の差を示してやろうか?……へぇ、ソコラトレーナーも呼んだのか」

 

「……あんまり説教なんてしたくないけどね、君はいささかワガママが過ぎる。学校生活を送るには周囲との迎合も大事だよ。……これは個人の意見だけど、ウマ娘は一人じゃ輝けない」

 

「じゃあ、それだけのことをしてみろよ。ワタシに勝てるウマ娘を連れてこい。そうしたら考えてやる」

 

「──言ったね?」

 

 

 ふふ、フッフッフ!いやー待ち焦がれた。この時のために私は溜めに溜めていたんだ。

 

 

「じゃあ、私が勝ったら態度を改めること。いい?」

 

「ハッ、GⅠウマ娘つったってアンタもうおばあちゃんだろ。大人しく隠居しとけ」

 

「……フ。吠えるのはターフの上でだけにしなさい」

 

 

▫▫▫▫▫

 

 

「距離は1000m。これでワタシが勝ったら……アンタは何をしてくれるんだ?ソコラトレーナー」

 

「なんでもいいよ。それこそ、トレーナーを辞めてもいい」

 

 

 私がそう呟くと心配そうに見ていた担当の子は焦ったように口走った。

 

 

「な、何を言ってるんですかソコラトレーナー!私との、契約は……!」

 

「大丈夫。──絶対負けないから」

 

「クックック、アーッハッハッハ!いいねえ!じゃあ、アンタが負けたらトレーナーを辞めてもらうぞ?二言はないな?」

 

「私が勝ったら、態度を改める。それもいいんだね?」

 

「クククク……ああ、アンタの靴を舐めたっていい」

 

 

 ……舐め腐っている。いいね。私の初めてにして最後の相手にはちょうどいい。

 

 並んでターフの上に立つ。合図は担当に任せてある。

 

 

「よ、よーい……!」

 

《絶対勝利の脚を使いますか?》

 

《はい》 《いいえ》

 

「YESだ」

 

「どん!」

 

 

 私は駆け出した。空模様は青。今日は良い日だ。

 

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