宙の果てより、燃えよ太陽   作: 燃える空の色

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第3話 太陽ーー原理解明

□導竜王について

 

 

 

 【導竜王 ドラグコンダクション】が頂点として君臨する導竜種とは本来、天竜王統でも低い位に位置する種だった。

 

 導竜種の能力特性は「リソースの支配」。

 

 自然に還元され、誰の物になるでもなく循環を続けるリソースをその身に取り込み、大気中の魔力を行使する術を持つ種族である。

 

 大抵のマスターはこれを聞いて、「チートじゃねぇか」と口にし、その暴威を恐れることとなる。

 

 けれどこの世界において、個人が受け入れられるリソースには限界がある。

 それは生まれ持ったリソースの器と言う才能であり、生まれながらの格差である。

 つまるところ、たとえどれだけその身にリソースを取り込もうと、器から溢れてしまえばなんの意味もないのだ。

 

 そしてここで一つ。

 導竜種には、大きな欠点があった。

 

 導竜という種は、全体として生まれ持った才能、つまりリソースの器が極端に低いのだ。

 これは自然と流れるリソースに干渉するという離れ業を、産まれ持って使用していることによる代償のようなものなのだろう。

 

 

 自然に巡るリソースを取り込めるとして。

 けれど、それは受け入れられる器がなければ意味がなく。

 それでいて【地竜王】のように大規模な吸収もできず、他の活用法なども持ち合わせていない。

 

 大気中の魔力を利用できるとして。

 けれど、それを出力するだけの術を持たない以上、結局のところは宝の持ち腐れである。

 

 周囲のリソースを支配できるとして。

 けれど、それは大気に飽和しているものだけの話。

 既に誰かの支配下にあるものを奪うことは、ほとんどの導竜には不可能だ。

 

 

 

 そう、ここまで言えばわかるだろう。

 導竜種とは、進化に失敗した、【地竜王】の下位互換にも及ばない種族なのだ。

 

 だからこそ、彼らは【天竜王】の庇護の下で、低い立場を甘んじて受け入れていたのだ。

 

 しかし、そんなある日。

 彼らに、転機が訪れた。

 

 彼らが緩りと絶滅へと向かっていった中で、彼らの中でも特に才能を持っていた異端児と他種族の【竜王】との間に、新たなる子が誕生したのだ。

 

 その子こそが、今の【導竜王 ドラグコンダクション】―――真名を、アルマレギルと名付けられた竜だった。

 

 アルマレギルは生まれながらに多大な才能を持ち、導竜種としての特性を存分に生かせるだけの器をも持ち合わせた天才だった。

 

 加えていえば、通常なら不可能とされる、他者の支配下に置かれている魔法――それも、魔法系超級職に就いたティアンのものやスキルでさえも操作権を強奪し、その力を己が物とすることさえもできる才をも持っていた。

 

 故、アルマレギルは生まれて直ぐに【導竜王】の冠を戴き、同種を従え、天竜王統での立場を上げるまでに至った。

 ―――けれど、彼を除いた導竜種とは、負け犬に甘んじ、その立場に生きてきた者たちだ。

 突如として、圧倒的な才能と力を持って生まれ、自分たちの頂点に君臨したアルマレギルを、彼らは恐れた。

 アルマレギルもまた、自分よりも劣り、自身を恐れる彼らに、慈悲と哀れみをかねて、自身の庇護下に置きながらも、直接は関わらないことを選んだ。

 

 そんなアルマレギルに、【天竜王】は餞別も兼ねて、<境界山脈>より離れた王国南部の山地を守護する任を与え、アルマレギルはそれを受け入れた。

 

 

 それより、凡そ数十年に渡って、アルマレギルはこの地を守護し続けた。

 

 

 そして今日、この時。

 アルマレギルは、その任を解かれることとなる。

 

 最後の最後に、魂まで焼き尽くすような炎に包まれて。

 

 

 

 

 

 

□【■■■■】■■■■

 

 

 

 【<UBM>【導竜王 ドラグコンダクション】が討伐されました】

 【MVPを選出します】

 【【⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎】がMVPに選出されました】

 【【⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎】にMVP特典【導竜心核 ドラグコンダクション】を贈与します】

 

「――――……なるほど」

「『―――』」

 

 燃え尽き、リソースとなって消えていく【導竜王】を背に、立ち上がった炎は強く揺らめく。

 その炎は見境無く周囲の全てを燃やし尽くし、尚も熱を強めようと昂る。

 たった今手に入れたリソースを、全て炎に捧ぐ薪として、ただ熱を。

 世界に灼熱をもたらそうと、炎はより燃え盛り―――。

 

「落ち着け、軟弱者」

 

 それを制する声が一つ。

 声――フュエルは臆することなく、その炎へと枯れた右腕を放り込み――そして、握る。

 それは無造作に吐き散らされた魔力の掌握であり、放たれた熱量の凝縮。

 一連の動作と共に、フュエルをも燃やし尽くさんとする炎の魔力を完全に支配し、人型を超過して溢れ出していた炎が収縮する。

 瞬きのうちに、炎は人の形を取り戻し、最後に残った炎の膜から、青年の肉体が再び世界に晒される。

 

「……」

 

 産まれたままの姿で出現し、地面に倒れ込んだ青年の姿を見下ろしながら、フュエルは僅かに炭化した右腕を握りしめ、先程青年の炎を制した時の感覚を思い出していた。

 

 

(―――呑まれかけた…?)

 

 

 それは、青年の炎に干渉しようとした、その時。自らの魔力を炎に浸透させ、あとから発生させたより大きな炎によって無秩序の炎を呑み込み、強引に支配下に置こうとした時だった。

 全体に浸透し、徐々に支配下に置かれて言ったはずの(魔力)―――その支配権が、逆流するように奪われていたのだ。

 それは、些細な抵抗に過ぎないことかもしれない。

 けれども確かに、何の制御もされてないはずの炎が、フュエルの、炎に全てを捧げた男(【炎王】)の炎と魔力を辿り、喰らおうとしていたのだ。

 それは、単純な魔力から生ずる炎の性質ではない。

 であれば、到達する結論はただ一つ。

 それこそが、青年の<エンブリオ>の力の一端であるということ。

 

 炎さえも侵食する炎。

 けれど、フュエルは火属性魔法の頂点に君臨する【炎王】。

 大自然を焼き焦がす炎と言えども、太陽の熱を呑み込む事など有り得ない。

 ライターの小火も同然に、簡単に呑み返されて終いだ―――そして実際に、フュエルは、少なくとも傍から見ればいとも容易く青年の炎を制して見せた。

 

 けれども、それは相手がフュエルだからのその話。

 

 万物を蝕むその炎は、フュエルのように炎に親和性の高い者でも無ければ簡単に燃やし尽くし、その全てを自らの薪とすることだろう。

 

 であれば、先程の《恒星》すら掌握して見せた【導竜王】が対処できなかったことが説明が行く。

 【導竜王】は炎と化した青年に呑み込まれた際、たしかにその炎を制御し、抵抗しようとしていた。

 けれども、【導竜王】は恐らく「リソース・エネルギーの支配」を主な能力とした【竜王】であり、その本質は炎とは異なるもの。

 そして何より、彼の竜王は、あの炎に直接燃やされてしまった。

 火属性魔法のエキスパートであるフュエルでさえ、僅かな接触による抵抗により、本体にダメージを負う結果となったのだ。

 直接、それもあれだけの火力と時間を浴びてしまえば、【竜王】であれど絶命は必至。

 そして結果として、【導竜王】はあっけない死を迎えた。

 

 その恐るべき事実を前に、フュエルは未だ倒れたままの青年に言葉を投じた。

 

「"万象を蝕む炎”への変身。それがお前の力の一端か。……そして」

 

 言葉を切ったフュエルは、その事実でさえ、まだ自身の考えうる範疇にあると思っていた。

 何故ならば、何よりも、信じられないものは――、

 

 

「……どうなっている」

 

 そう言って、フュエルは抱えていた水晶に目を向ける。つい先程、炎と化した青年に作動した水晶に表示された数値に、フュエルは思わず眉を吊り上げた。

 

 

 

 レベル:◾︎(合計レベル:◾︎)

 職業:【■■■■】

 HP(体力):1500(-1500+ 741500)

 MP(魔力):32000(+191500+550523)

 SP(技力):1000(-1000+741500)

 

 STR(筋力):53(-53)

 END(耐久力):8(-8)

 DEX(器用):48(-48)

 AGI(速度):72(-72)

 LUC(幸運):8(-8)

 

 

 

 

 MPを除いた全てのステータスが等しく0になるまでに減少し、ジョブとレベルの表示が塗りつぶされたように見えなくなっていた。

 そして何より―――上乗せされた魔力と、それと全く同じ数値が重なった魂力と生命力。

 超級職でもなければありえないほどの、圧倒的な数値。

 そしてそれを実現させるための手段と言えば、たった一つしかない。

 

「これも含めて、全てが貴様の持つエンブリオの力というわけか」

「………………そう、です。」

 

 フュエルの言葉に、床に伏せていた青年が答える。

 覚束無い足さばきで何とか立ち上がった様子の青年は、けれどもすぐに調子を取り戻したようで、快活に声をあげる。

 

「――そう!!!!これこそ僕の<エンブリオ>、【炎星転身 クトゥグァ】のスキル、《生ける炎(リビング・ファイア)》!

僕が炎になっている間、僕の持つほぼ全てのリソースを魔力(火力)に捧ぐスキルです!!」

 

 大袈裟に両腕を振り上げ、その瞳はキラキラとフュエルを貫く。

 

「その代わり、制御は完全に僕次第!そして僕は魔力操作とか全然分からない!無駄に有り余った火力に振り回されて何もかもを燃やすばかり!!ど〜言うわけかMPとHPとSPは同じになったり、結構盛り沢山なスキルです!!ちなみに、ジョブスキルとかもあらかた燃やし尽くしちゃうので、僕にとって大半のスキルはただの魔力タンクにしかならないんですよね!!」

「……なるほど。どうやら、思いの外良い拾い物をしたらしい」

 

 対するフュエルの反応と言えば、青年に向けて初めて見せる笑顔であった。

 

 青年の言っていることが本当ならば、この青年は、ジョブスキルの恩恵やパッシブスキルによる補正こそ受けられないものの、鍛えれば鍛えるだけ、その全てが炎の火力《魔力》に直結するらい。

 初めての弟子としては些か癖が強いが、しかし、【炎王】として、一人の天才として。

 これ程までに面白いことはそうは無い。

 

「いいだろう。おい、さっさと装備し直せ。今から貴様に、魔導の何たるかを教えてやる。……丁度、都合のいい道具も手に入れたようだしな」

 

 普段は全く浮べない笑顔を、しかし隠すこともしないまま、【炎王】は目の前ではしゃぐ太陽へと手を伸ばした。

 

To be continued




【炎星転身 クトゥグア】
(´・ω・`)<スキルとかTYPEの解説は次回やるつもりなので省略。
(´・ω・`)<《生ける炎》発動時のステータスは、MP以外の全てのステータスを0とした上で、
(STR〜LUCの基礎ステータスの合計値×10000)+HP+SP+(ジョブレベル×10000)+その他(ジョブやジョブスキルなど)
という感じで計算してます。
(´・ω・`)<つまりめちゃくちゃ適当です。倍率も【クトゥグア】が進化する度に増えてくので、今後こういった細かい数値は出しません。
(´・ω・`)<基礎ステータスが完全に死に、特にLUCとAGIが0になる為、《生ける炎》発動時の主人公の視点だと世界の進みがとても早いし、助けてくれる人とか都合のいいエンブリオを持ったマスターなんかも現れてくれませんでした。
(´・ω・`)<ちなみに裏設定のようなものですが、フュエルと主人公が出会えたのは偶然ではなく、管理AIに意図的に誘導されています。
理由としては、
1.まだゲーム開始から時間が経っておらず、現段階では第六形態に到達してるエンブリオどころか、そもそものマスターの絶対数が少ないことからトリガーを引ける可能性が低く、むしろ引退の原因になってしまう可能性が高いこと
2.キャタピラーが悲鳴をあげたこと。
3.このままでは主人公は誰かに討伐されて監獄送りになり、恐らく<超級>に至る可能性が無くなってしまうと判断されたこと。
(´・ω・`)<などを考えています。無理があるところもあるかもしれませんが、都度指摘して頂ければ頑張って考え直します。
ご拝読ありがとうございました。
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