Re:ゼロから始める陰の実力者になりたい異世界生活    作:零月隼人

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#6 待ちかねた試練

ともかく僕は、挨拶を返す。

「やあ、こんな天気の良い一日に、一体どうしたんだい?」

そう言いながら、僕は白髪の女性━━エキドナへと近づく。

彼女は肩をすくめる。

「全く、こんな無警戒に近づいてくるとは意外だったね。ボクはこれでも、名の通った魔女の一人なんだよ?」

「どんな相手にも、まずは対話が必要だ。話を聞き、拳を交えばこそ、真に相手のことが理解できる。」

「なるほど。それは確かに。」

僕は、エキドナの向かいの席に座る。

目の前の机には、一杯の飲み物が置かれていた。

僕は、そっとカップを持ち、優雅に口をつける。

水でも、お茶でも紅茶でもない。不思議な味の飲み物だ。

「なかなか美味な味わいだ。実に興味深い。」

すると、エキドナは初めて驚いたように目を丸くした。

「これを飲んでそう言うのは君が初めてだよ。そもそも、魔女の出したものを一飲みか。勇敢だね。

━━それはここで生成したもの、言ってしまえばボクの体液だ。」

思わず僕は口に含んだ紅茶を吹き出した。

なんてもん飲ませてんだ、てめぇ!?

僕はギリギリ本音を心の中で抑え、モブの口調に戻して続ける。

「それで、僕に何の目的があって招待したの?」

すると、エキドナは可笑しそうに笑う。

「やはり君は不思議な人物だ。」

「そうかな?」

「いやね、普通の人ならボクの前に立つと吐くんだよ。

ただ━━」

エキドナは、僕の顔をじっと見つめていた。

僕も改めて、目の前の魔女の姿を見た。

その瞳には、何か別のものを捉えているようであった。

「なるほど、”君”ならばその反応も納得できる。

・・・・・・目的、と言ったね。もっとも、勝手に入ってきたのは君の方だ。帰りたいなら帰らせてあげるけど━━君はそれでいいのかい?」

ほう。目の前の相手は、一体何を求めているのだろう。

「強欲の魔女に話を聞ける機会なんて、君以外の誰が求めてもほとんど得られるものじゃないんだ。問答を交わすのに必要なのは、互いの存在だけ。」

「道理だな。」

次の瞬間、大気が歪み、周囲の草原の景色が崩壊していった。

「言葉だけあればいい。君の知りたい欲を、好奇心を━━強欲を、ボクは肯定しよう。

・・・・・・さあ、君は何が聞きたい?」

何が聞きたい、か・・・・・・

ならば僕の答うことは一つしかない。

「━━最強を、教えてくれ。」

すると彼女は、表情を曇らせた。

「最強、か。それはそう易々と口にできるものではないね。」

そう言ってエキドナは、淡々と過去の魔女達のことについて語り出した━━━━━━━━

 

聞きたいことを聞き終え、僕は席を立つ。

エキドナもまた、僕と話せて満足そうな笑みであった。

エキドナが口を開く。

「━━さて、魔女の茶会から帰るんだ。最後に対価をいただこうか。」

その瞬間、僕の全身に緊張が走った。

(僕の財産は、全て僕の盗賊狩りや這い蹲って集めた資金だ。一文たりとも、渡すわけには行かない・・・・・・ッ)

僕の気配を察してか、エキドナは若干狼狽しながら続ける。

「・・・・・・いや、安心したまえ、魔女の対価だ、金貨じゃない。ボクが君に求めるのは、誓約だ。この茶会の出来事の口外禁止、それが条件だ。同じような契約に縛られている君には簡単だろう?」

なるほど、エキドナよ、よく分かっているな。

そう、僕は陰の実力者、この事実は、誰にもバレてはいけないのだ。

「それと、君にも最後にお土産を持たせてあげよう。」

お土産?

何かくれるなら、ありがたく貰っておこう。

「君に、この『聖域』の試練に挑む資格を与えよう。」

「試練?」

「今はまだわからなくても、いずれその価値が分かるだろう。期待しているよ。」

まあ、貰えるものは貰っておこう。

双方やり取りが終わり、夢から覚める時間が来た。

僕はエキドナに一言残す。

「ありがとう、君と話せて楽しかったよ。」

するとエキドナは、薄い笑みを浮かべていた。

 

 

気づいた時には、僕はまた遺跡の中の暗闇に戻されていた。

とりあえず、正面から光が見えたため、外に出る。

(━━━誰かに何か言われたような気がするけど、何だったかな・・・・・・?)

なぜそのようなことを思ったのかは謎だったけれど━━

外に出ると、竜車があり、御者は倒れていた。

うーん、どうしたものかな?竜車の制御自体は、僕でもできそうだけど・・・・・・

そんなことを考えていると・・・・・・

「━━よォ。そんなッとこから堂々と、いい度胸してんじゃァねえか、余所者!」

「お?」

突然、僕は何者かに掴まれ締め上げられた。

金髪で、鋭い牙を持った獣人みたいな少年であった。

「穴だらけのマグマリンが笑うってやつか?」

そのまま階段下の竜車まで投げ飛ばされる。

「うわあああ(棒)」

スタッ

僕は地面に叩きつけられるふりをしながら舞い降りる。

「いたたたた(棒)」

「ハッ、どんな奴かと思えばただの腰抜けか?アァ?」

金髪の少年はゆっくりと近づいてくる。

さて、どうするか。モブとしてやられ役に徹するか、それとも陰の実力者としての力を見せてやるか。

そんなことを思案をしていると。

「ボスー!」

突然、聞き覚えのある少女の声が遠くから聞こえた。

次の瞬間。

なじみ深い獣人の少女が僕に飛びかかってきた。

・・・・・・

先ほどの金髪の少年の投げがまるでそよ風であったくらいに、その少女━━デルタの飛びかかってきた衝撃は痛かった。

「・・・・・・何やってんだ? コイツ」

 

「デルタはどうしてここにいるの?」

「デルタは狩りをしていたの!」

「何を狩っていたの?」

「魔獣!!」

デルタは元気よく答えた。

なるほど、魔獣狩りをしていたら、僕を見つけたってわけね。

さて、どうするか・・・・・・

目の前には狂犬の少年、後ろにはもっと狂犬の犬耳少女。

前後を挟まれた。

・・・・・・なら、こういうのはどうだろうか。

「デルタ、僕から任務を与えよう。」

するとデルタは、尻尾を大きく振って、嬉しそうにした。

「任務⁉デルタ、するー!!ご褒美はー!?」

「ご褒美?そうだなあ、今度こそ、任務が終わったら、何かあげるから」

「ご褒美!ボスが何でもする!」

「何でもはしない。

前にも言った範囲で、前向きに善処するだけだ」

デルタの尻尾の振りが激しくなる。

「ボスが言うこと聞く!」

「前に言った範囲でね」

「何でも言うことを聞く!」

「前に言った範囲でね」

「やったー!任務する!」

やる気全快のデルタに、金髪の少年の方を向かせる。

「じゃあ任務を伝えるね

あそこにいる、悪い半獣人のチンピラを狩っておいで。」

すると、その少年も僕らの方を見た。

「ずっと俺様ぁを無視して好き勝手ほざくっとはいい度胸っじゃねーか。テメェもそこのバカ犬も、ブチのめしてやらあー!!」

少年の生意気な発言に、デルタが応酬する。

「ただのチビ猫の癖に生意気なのです!今すぐ狩るのです!」

「あぁ⁉」

次の瞬間、デルタの魔力が爆発した。

その様子を見て、金髪の少年の顔にも緊張が走った。

僕は巻き込まれないように、そっと竜車の御者台のところに乗る。

再び二人の方を振り返ると。

「聖域の超最強の盾 ガーフィール・ティンゼルだ」

「デルタはデルタ、お前、狩るのです!」

名乗りを上げ、その直後、互いにぶつかり合った。

僕は二人に気づかれないように竜車を起こし、走らせる。

聖域の方向へ進路を進めながら、時折振り返り、二人の戦闘の様子を確認する。

あのガーフィールって子もそこそこ強そうだったけど、デルタの前では遊びにもならないだろう。

すぐに消し炭となる姿が目に浮かぶ。

どんまいガーフィール君、君の有志は忘れない・・・・・・

 

長く続いた深い森を抜けると、一つの集落にたどり着いた。

そして集落の奥へ竜車を進めていると、ある建物の目の前に、見覚えのある人物が佇んで控えていた。

━━━━ロズワール邸の(・・・・・・・)双子(・・)メイドの妹(・・・・)、レムで(・・・)あ(・)った(・・)。

僕は、意識を取り戻したサテラと共に、レムへと近づく。

「シド君、それにエミリア様、ようこそいらっしゃいました。奥でアンネローゼ様がお待ちですので、レムがご案内します。」

「レム!無事だったのね⁉」

サテラは、感動の再会のように、レムへと駆け寄った。

しかし、彼女の魔力の流れから、僕は彼女の正体に気がついていた。

サテラが先にアンネローゼがいるというレンガ造りの家に入り、周りに誰もいなくなると、僕はレムに声をかけた。

「ベータ」

「はい、シャドウ様。」

レムの姿が、ベータへと変化する。

「こっちの世界でも、お世話係はベータがやってくれるの?」

「はい。全てはシャドウ様の御心のままに。」

「それでアルファは?」

「すでに聖域内に入り、潜伏中です。後ほどアンネローゼ氏からも説明があるかと思われますが、魔女の記憶を探るため、試練に挑戦するかを検討中です。」

試練、ね。

なかなかワクワクする響きだ。

そのアンネローゼって人とサテラをあまり待たせるわけにはいかないから、僕とレムの姿に戻ったベータは、建物の中へと入った。

 

「ようこそお越しくださいまぁーした、エミリア様、それに、シド君、ですか?」

部屋に入ると、そこには10代にも満たないような幼い少女が寝台に横たわり、その体中に血の滲んだ包帯を痛々しい姿で、僕とサテラを出迎えていた。

しかし、たしかにロズワールの血族らしい。喋り方がそっくりだ。

僕の隣で、サテラも目を丸くしていた。

「どうしたの、アンネローゼ?こんな大ケガ・・・・・・

それにその喋り方・・・・・・前会った時はそんなロズワールにそっくりじゃ・・・・・・」

それに対し、アンネローゼも肩を竦めて、言葉を探した。

「どこから話したものですかーぁね。」

サテラも、問いを進める。

「まず、ここは何なの? ここに着いて・・・・・・ううん、結界に触ってからだと思う。ずっと胸がざわついて落ち着かないの。”聖域”なんて呼ばれ方なのに、むしろそれよりも・・・・・・」

「魔女の墓場━━そう呼んだほうがずぅーと納得できると?」

「━━━っ!」

その言葉に、サテラが目を見開く。

サテラはなんとか言葉を振り絞る。

「どういう意味?」

アンネローゼが続ける。

「意味もなにも、言葉通りですよ。ここはかつて、強欲の魔女と呼ばれた存在━━━魔女エキドナの最期の場所であり、私にとって”聖域”と呼ぶべき土地です」

「魔女、エキドナ・・・・・・」

僕は思わず、その名を呟いてしまった。

どこかで聞いたことがあるような・・・・・・

「シド?大丈夫?」

サテラが僕の顔を心配そうに見つめていた。

「ううん、何でもないよ。」

サテラは、アンネローゼの方に向き直る。

「それで、『強欲の魔女』とメイザース家には、どんな関係が・・・・・・」

「エキドナ。

どーぅぞ 彼女の名前を呼ぶときは名前を。」

サテラの言葉を、アンネローゼは遮った。

その言葉の強さに、サテラは圧倒される。

「・・・・・・それでその、貴方の身体は、どうしてそんなに傷ついて・・・・・・?」

すると、アンネローゼの代わりに、レムが答えた。

「エミリア様は不思議に思われませんでしたか?」

「え?」

「アンネローゼ様が、わざわざミロードの屋敷の方へ招待せず、この場を会談の場所に指定したことを。」

「あ、それは・・・・・・」

「━━今わぁーたしたちは全員、この聖域に軟禁されている状態なんだよ。私もレムも、そしてここに入った時点で君達もねーぇ」

「え!?」

アンネローゼが告げた真実に、サテラは呆気に取られた。

なるほど、この結界には、そんな意味があったんだ。

「それじゃまさか、アンネローゼのそのケガって・・・・・・」

そしてサテラは、先の発言と負傷からの想像で、絶句する

そこへ。

「・・・・・・はあ、はあ、な、なんだおめぇ、逃げたと思ったら、そこにいたのか・・・・・」

聞き覚えのある声がした。

「え、えぇ⁉」

僕は一応、モブのリアクションをしておいた。

それは、先ほどデルタの狩りの犠牲になったはずの金髪の少年、ガーフィールであった。

彼もアンネローゼと同様、全身包帯ぐるぐる巻きの姿であったが、なんとかギリギリ立っていた。

「はあ、はあ、なんっなんだあの獣人の女はよぉー・・・・・・なんとか逃げるのが精一杯だったぜ・・・・・・」

おぉ!デルタ相手に逃げ延びてきたのか!!

このガーフィールという少年、思った以上に強いのかもしれない。

一方、サテラはガーフィールに詰め寄る。

「軟禁って、アンネローゼのケガ、まさか・・・・・・!」

「違ぇよ・・・・・・そいつの傷は試練に拒否された結果だ。」

試練。そういえば、さっきベータが言ってたな。

「どういうこと?」

「結界の中に入った混血は、外へ出られなくなる。当然、てめえもだ。結界を解くには墓所の試練に挑むしかねえ。だが混血以外のヤツが試練に挑めば・・・・・・」

そう言ってガーフィールは、アンネローゼの方を見、ニヤリと笑う。

そして再び、サテラの方に向き直った。

「俺様達からの要求だ。この聖域を囲む結界を解け。そのための試練をてめえが受けろ。それが解けなきゃ、今避難してきた村の連中は誰も外にゃあ出さねえ。」

サテラは絶句し、沈黙した。

 

その後サテラは、講堂に軟禁された村の人達と会話していた。

終始厳しい視線を向けられていたサテラであったけど、一方でサテラに頼る以外、彼らに再び自由が訪れることはない。最後は渋々サテラを送り出していた。

そして彼女は、落ち着くためか、微精霊との対話を行っていた。

それを終えると、こちらを振り向く。

僕は、無難に一声かける。

「落ち着いた?」

「うん、大丈夫。

・・・・・・私、シドのためにも頑張るからね。」

僕は適当に微笑を浮かべておく。

サテラは、そんな僕の様子を確認すると、墓所へと向き直り、入口の階段に足をかけた。

それに呼応するかのように、その建物は光輝いた。

「試練に挑む資格ありって認められたってことだ。」

燐光に包まれる墓所を見上げ、ガーフィールが教えてくれた。

サテラが覚悟を決め、力強く言った。

「いきます!」

そして再び、一歩一歩進んでいき、そのまま姿が見えなくなった。

・・・・・・ふと気になったので、僕はガーフィールに聞いた。

「ところで、君は試練に挑まないの?」

すると、ガーフィールは苦虫をかみつぶしたような表情で呟いた。

「チッ、やれんならやってんだよ。」

どうやら、ガーフィールでも力不足だった様子だ。

彼もそこそこ強かったと思うけど、それでもクリアできなかったのか。

はたしてサテラに攻略することができるのか、見物だ。

そんなこんな考えていると、突然、墓所の光が消失した。

なぜか、ベー・・・じゃなかった、レムとガーフィールが驚きの表情を浮かべた。

「どういうこった⁉試練が続く限り、光が消えるなんて・・・・・・⁉」

その言葉に、僕の頭の中の何かが閃いた。

「なるほど・・・・・・呼んでいるな。」

そして僕もまた、聖域へと悠然と足を進める。

「おい、何を勝手なこと言ってんだ!」

「シャ、シド君━━!」

ガーフィールとレムの声が後ろから聞こえる。

一方、前方の建物は、僕が階段に足をかけた瞬間、再び緑の燐光が灯り、輝きだした。

「どうして・・・・・・?」

困惑するレムの声に、僕は振り返り言う。

「待ってて、僕がサクッと試練をクリアしてくるから。」

僕はそのまま、ゆっくり階段をのぼり、墓所へと入った。

墓所内部の通路も外と同じく緑色の燐光に照らされており、その通路をずっとまっすぐ行くと、一つの小部屋へ通じる扉が見えた。

僕はすでに半ば開かれた扉の中へ、ゆっくりと入る。

━━そこには、当のサテラが倒れていた。

「あれ?到着そうそうギブアップ?」

僕が彼女へゆっくりと歩み寄った瞬間。

僕の視界が大きく歪んだ。

 

「まずは、己の過去と向き合え。」

 

ピピピ、ピピピ

僕の耳に、微かにアラームのような音が聞こえてきた。

「ふああ」

僕は欠伸をしながら、ゆっくりと起き上がる。

こんなに睡眠を行ったのはいつ以来だろうか。それははるか昔であったような感覚に陥る。

ゆっくりと目を開ける。

そこには、どこの家庭にもあるような、一般的な洋室が広がっていた。

━━否、それは僕、影野実の自宅の部屋だ。

シャワーを浴び、朝食を食べ、学校の制服に着替える。

いつも通りの、退屈な一日の朝を迎えた。

 

学校に着き、下駄箱を開ける。

そこで、毎朝同じように、クラスメイトとばったり会う。

「おはよう、影野君」

隣の席の、西村さんだ。

僕は挨拶を返す。

「おはよう、西村さん」

すると彼女は、やや不服そうな顔をした。

しばらくの沈黙の後・・・・・・

「あの、影野君」

「何かな、西村さん」

「私の名前、西村じゃないんだけど。」

なんて言っているか、聞こえなかった。

まあ、一応ネームドキャラクターとはいえ、別に友達でもないし、彼女の発言に興味はない。

僕はそのまま、クラスの教室へ移動した。

 

特に変わりばえのしない平凡な一日を、モブとして過ごす。

そして放課後は、皆が下校する中、音楽室で一人、ピアノを弾く。

空が暗くになり、僕は屋上へと登る。

夜、それは陰の実力者が映える時間。

僕はスタイリッシュ暴漢スレイヤーとして、日々町を騒がす暴走族や、盗賊などを相手に、ただ一人孤独に戦っていた。

━━しかし今宵は、何か特別なことが起きる気がする。

そう思い、屋上から正門のところを眺めていると。

一人の女子生徒が下校するところであった。

こんな時間まで残ってるなんて、一体どんな生徒か・・・・・・と思ったら、それは隣の席の西村さんであった。

何を思ったか、僕は彼女の後ろを、こっそり尾行した。

すると案の定、彼女は薄暗い通りのところで、暴漢二人に襲われ、気絶させられていた。

彼女は、強引に男達の車へ乗せられた。

これは、陰の実力者的においしい場面だ。

僕は、暴漢達との車の後をつける。

(・・・・・・あれ?前にもこんなことがあったような・・・・・・)

 

暴漢、もとい誘拐犯達は、工場跡地のような場所へ西村さんを連れ去った。

僕は、黒服に覆面を被り、タイミングを図る。

そして━━

バリンッ

僕は建物の天井のガラスを突き破り、地面へと舞い降りる。

「クソッ なんだお前!」

男のうちの片方━━チンピラ風の男が僕に問う。

僕は、陰の実力者らしく答える。

「我が名はシャ━━いや、ただのスタイリッシュ暴漢スレイヤーだ。」

「スタイリッシュ・・・」

「暴漢スレイヤー?」

二人は僕の答えを反芻する。

やがて、その内の一人が、僕に拳銃を向けた。

「スカしてんじゃねえぞ こら!」

そして、一発の弾丸を放った。

僕(・・)は(・)難なく(・・・)避ける(・・・)。

(・・・・・・あれ?)

さらに、二発目を撃つ隙を与えず、急速接近して銃を撃った男に腹パンを一発加えた。

「ギャッ」

これにて、チンピラ風の男は沈黙。

一方、もう一人のガタイのいい男は、その様子を見てニヤリと笑みを浮かべていた。

「なるほど、それなりに━━」

そんな彼にも、腹パンを一発プレゼント。

ガタイのいい男も沈黙した。

・・・・・・

あれ、僕ってこんなに強かったっけ?

 

その後、僕は西村さんの拘束を解き、そのまま姿を消した。

たしかに僕は強くなった。だが、まだまだだ。

いくら鍛えても、武装した軍隊には勝てないし、頭上に核が落ちてきたら蒸発する。

それではダメなのだ。

ならば必要なものは何か。

答えとしてたどり着いたのが・・・・・・魔力であった。

しかし、魔力の習得方法は、未だ分かっていない。そのため僕は、あらゆる修行を試し、続けた。

そしてある日、森の中で修行をしていると・・・・・・

ついに、揺らめく光を見たのだ。

それが探し求めたものだと確信した僕は、その光の元へ駆け出した。

「ヤッター魔力だ!!!」

━━しかし、実際に僕が目の当たりにしたものは・・・・・・

魔力ではなく、ただのトラックのライトであった。

(なん、だと・・・・・・)

僕は呆然と立ち尽くした。

そして運転席には、どこかで見覚えのある白髪の女性が座っていた。

トラックは、僕に衝突するわずか数センチのところで急停止する。

白髪の女性は、ゆっくりと車を降り、僕の方を見て言い放った。

「さて。━━自分の過去と向き合う時間は君に何をもたらしたかな?」

 

僕は改めて、トラックを見つめた。

・・・・・・いや、そんなはずはない。

僕は、あの時、たしかに魔力の光を見たはずだ!

断じて、トラックに引かれて、死んだわけではない!!!

・・・・・・

あの時・・・・・・?

「なんか、前にも同じような経験をした気がするんだけど、どういうことなのかな?」

「それはそうさ。

何せ資格を持つ君が、墓所に入った。だから『試練』が始まった。聞こえなかったかい?まず、過去に向き合えと。」

だんだん思い出してきた気がする。

僕は、今日あった一部始終を一度体験しており、この直後異世界へと転生し、その世界で陰の実力者となり、また別世界へのゲートに入ってしまい、気づいたときにはこの世界の王都におり、またこの世界でも陰の実力者となり、そして現在は、『聖域』の『試練』に挑戦中だということだ。

「君は、僕に何をしたんだい?僕は君のことを、この『試練』を受けるまで完全に忘れていたんだけど。」

「君の口の堅さを信用するより、記憶に干渉するほうが手っ取り早かったからね。」

なるほど。

僕も彼女の立場であれば、同じことをしただろう。

「それで僕は、試練にクリアしたってことでいいのかな?」

「ああ。今まさに、君は君の前世での死の真実を知った。それだけで僕は、十分な結果を得られたと思っているよ。」

たしかにこの真実には、僕も幾年ぶりかに激震が走った。

だが、何も変わらない。

僕はただ、陰の実力者への道を突き進むだけだ。

僕の様子を見て、彼女は満足そうな笑みを浮かべた。

「本当の意味で、この『試練』は終わりだ。次の設問にも期待したいところだね。」

次の設問?

なるほど、試練は一つではなかったのか。

「墓所の『試練』は全部で三つ、『聖域』の開放はその突破が条件だ。」

その言葉が終わるやいなや、周囲の世界が大きく歪みだした。

これは一度、元の世界に戻ることになるのかな。

ならば最後に、エキドナに意味深な言葉でも残していこう。

「あーそうだ。君はどうも僕がこの先の”試練”に挑戦するのを望んでいるみたいだけど、その期待には応えられないかもね。僕はただのモブ、”試練”をクリアするのは、”主人公”の役割だ。」

「”主人公”?」

「君の期待は、”主人公”たる、サテラが叶えるよ。」

するとエキドナは、露骨に嫌そうな顔をした。

 

再び意識が飛び、元の聖域の建物の中へ戻ってきた。

「ここは・・・・・・」

僕は周囲を見回す。

隣には、相も変わらず倒れたままのサテラがいた。

「うぅ・・・・・・」

サテラは、うなされているようであった。

う~ん・・・・・・

とりあえず、一旦外に出すか。

外の方が気分もよくなるでしょ。

僕はサテラを右肩へ担ぎ上げ、そのまま建物を出る方角へゆっくりと歩いていった。

途中、サテラも目が覚めたようである。

「いや!私・・・私じゃないの、違うの!なのに、違うって言ってるのに!」

何か譫言のように、叫んでいる。

もー、寝起きの悪い子だな~

まあでも、ジタバタする子を捕まえるのは、昔からデルタを筆頭によくやってきたことだ。今さら特に苦労もない。

僕は片手でサテラを拘束し、強引に連れだした。

「助けて、パック、パック・・・・・・」

 

その後、墓所から出た僕は、入口で控えていたレムにサテラをぶん投げ、その場を後にした。

レムは、サテラをアンネローゼの寝泊まりしているのと同じ建物の一室まで運びこみ、寝かせた。その疲れた様子には、中がどれだけ大変だったかが思い知れる。

よし、以後の看病も、レムことベータに任せることとしよう。僕が世話するのは、御免蒙りたい。

「あの子、どうだった?」

「やっと落ち着かれて、今はお休みになられたところです。それでシャドウ様、聖域内では一体何が・・・・・・?」

う~ん、説明するのが面倒だな。

「別になんてことない、凡庸な試練だったよ。でも、まだ試練は終わりじゃなくて、続くみたいだけど。」

「承知しました。アルファ様への指示は、いかが致しましょうか?」

「まーアルファの判断に任せるかな~ 下手に手を出すと、簡単に出てこられない可能性もあるし。」

僕の楽しみは、奪われたくない。

「承知しました、アルファ様には、より注意して事にあたるよう、進言して参ります。」

そう言って、ベータは部屋から出て行った。

・・・・・・大丈夫かな、ちゃんと伝わっているといいけれど。




急きょですが、この作品の投稿を一旦ストップします。
理由についてはくわしくはTwitterの方で述べますが、一言で言うと・・・・・・
リゼロのアニメ4期の部分を原作小説の方で先読みして、その展開のヤバさに筆が止まりました。
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