ダンジョンはつらいよどこまでも   作:たっぷり

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 高評価や感想、ここすき、誤字報告、いつも感謝しております。



・031 敗け(少女)

────

 

 

 

 

 

 全身を傷だらけにしながら立つ少女がいる。

 

 目前には牛頭人身の筋骨の塊────ミノタウロス。

 

 およそ3メドルを越える巨体を誇り、その半分未満の身長しか持ち得ない小柄な少女を相手に、もはや天井まで届いているのではないかと思わせる威圧感を放っていた。

 

 両者の間には確かな距離があるにも拘らず、ベルは既に見上げる事しか出来ない明確な実力差を悟る。

 

 まるで要塞。

 

 10発以上の【クロスボルト】を直撃させてもなお、片角のミノタウロスは五体満足。巨躯のどこにも目立った外傷は見当たらず、上層で必殺を誇っていたベルの【魔法】は眼前の猛牛相手では大したダメージも与えられないことが証明されていた。

 

 相対してから5分も経ってない。だというのにベルの心臓は全力疾走を続けさせられたかのように激しく脈打ち、肺も脳も酸素を求めるように悲鳴を上げている。それでも小剣(ショートソード)を構えることで、戦意を示すしかない。敵にであり、自分にでもある。

 

 そうしなければ、死ぬ。それだけが理解出来ていたから。

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

 余りにも開いた彼我の実力差。感覚的にも論理的にも理解できてしまった所為で戦意が失われていく。そんなベルを見ていた片角のミノタウロスもまた、実力差を確りと理解していた。

 

 ゆえの雄叫び。ビリビリと空気を振動させる轟音にて鼓膜が破られそうになる。見えない圧力に()され身体が無理矢理押さえ付けられてしまう。

 

 僅かでも反逆の意志を見せているベル(エサ)への苛立ち。そして反抗心を折るべく上げられた咆哮を前に、ベルは────

 

 

 ────

 ──

 

 

「…………お祖父(じい)ちゃん」

 

 祖父の顔を、見たくなった。

 

 両親のいなかったベルの、名実ともに育ての親である祖父。

 

 しわだらけの顔をいつも笑うことで更にくちゃくちゃにしていた祖父。「可愛い子を助けたくなるのは男の性質(サガ)じゃから責めてはイカン」とか、「ハーレムを否定してはならん、それはロマンを否定することと同義」とか、「一瞬の(きらめ)きこそ英雄(ヒーロー)の所作よ」などなど、よく意味不明なことばかり言っていた記憶が殆どだが、とにかく愉快な人。

 

 それがベルから見た祖父の印象だ。

 

 英雄譚が好きで、毎日のように様々な英雄の逸話を聞かせてくれた。

 

 自分よりも強大な相手に立ち向かう勇敢な者たち。英傑を越えた『英雄』。

 

 まるで自分の目で見てきたかのように語るベルの祖父は、そんな英雄たちを称えていた。「儂には絶対無理じゃあ!」や「あんな真似したら死んじまうわいっ」などと口にしながら。楽しそうに。嬉しそうに。

 

 でも、とベルは思う。英雄みたいなことが出来ないと、お道化(どけ)るように笑っていた祖父だが、幼いベルが危険な目に遭いそうな時は誰よりも速く駆けつけてくれた。まるで雷霆の如き速さで、両手に持った物干し竿を「ケラウノスゥッ!」と、必殺技でも放つように叫びながら、村の中に入ってきたゴブリンたちを一網打尽にしていく。

 

 いつも農作業服に隠れていた体は戦士のように逞しく、丸太のような腕はモンスター達を一匹だって寄せ付けない。

 

 大きな手はベルの頭を片手で掴めるのではないかと思わせ、一見怖く思えるそんな手で優しく頭を撫でてもらう。もう危険は去ったのだと教えるように。

 

 そんな祖父をカッコいいと思った。誇らしいと思った。……憧れた。

 

 色んなことを教えてくれた祖父。しかしそんな彼でも死んでしまうようなことが村の外にはありふれており、村の中に入ってこないなんてことはないと知ってしまっていた。

 

 そんな事実が怖くて、恐ろしくて、なにより独りぼっちになってしまった家の中が寂しくて……ベルは泣いて泣いて、泣き続けた。

 

 でも、残された物も確かにあったのだ。

 

 書斎代わりに使われていた空き部屋の棚に整理された色んな英雄譚。背表紙をなぞるだけでそれを読み聞かせしてくれていた時の事が思い出せる。心の側にずっと残り続けていた祖父の教え。

 

『一番恥ずかしいことは、何も決められず動けないでいることだ』

 

 唯一無二の親族を失い、悲嘆に暮れていたベルを一大決心させた祖父の言葉。

 

 忘れたことはない、オラリオへ送り出してくれたその言葉を。

 

 かつての光景を、ここ最近は何度も思い出せる。ダンジョンから家に帰れば、棚に整理された英雄譚があり、その背表紙を見るだけで祖父との記憶が蘇ってくるから。

 

(────えい……ゆう…………?)

 

 祖父との記憶を想起すれば、必ずと言って良いほどに多くの英雄たちの名前や彼らが成し遂げた功績や冒険が脳裏を駆け巡る。

 

 そんな彼らの中にはベルを助けようと駆ける祖父の姿もあり、全員が全員、勇猛果敢にモンスターたちへ立ち向かっていく。

 

 ────ちり、と一瞬だけ、誰よりも速く駆けていく()()がいた。

 

 今のベルよりもずっと幼い男児が、村人と変わりのない装いで、見すぼらしい木の槍を持って。数多の英雄たちよりも速く。

 

(────だれ……だっけ……? ────)

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

「──────……ッ?!」

 

 そんな英雄が居ただろうか、聞いたことがあっただろうか。僅かに逸れた思考が生んだ疑問。

 

 だが、戦場で行われていた無駄な思考を吹き飛ばす猛牛の咆哮が鳴り響く。迷宮全体を揺らしているのではと思わせる大叫喚を前に、ベルは己の思考の無駄さを強制的に理解させられる。

 

「フゥゥーッ」

 

 そしてその咆哮が開戦の合図となった。片角のミノタウロスはその手に持った巨大な大剣を軽々と振り上げると、地面を踏み砕きながら一直線にベルを目指す。

 

 この場に残った唯一の生存者。しかし、同時に餌でもあるゆえに。事切れた小竜(インファント・ドラゴン)のように、意識を飛ばした小人や只人のように。

 

 同じ末路にしてやろうと振り下ろされた大剣が、凄まじい風切り音を奏でながら地面に激突する。衝撃波が発生して砕かれた岩肌が石片を撒き散らし、幾つかが全力で横に飛んだベルの後を追い、その体に打ち据えられた。

 

「────ぁっ……ぐぅ…………っ」

 

 ダメージは少ない。しかし既に全身に痛痒を奔らせているベルにとって、その小さな衝撃すら激痛の後押しをする要因と化す。

 

 吹き飛ばされ、それでもギリギリ脚から着地出来たベルだが、ミノタウロスを見ても勝機など見付けられない。

 

(勝てない……)

 

 真に絶望を前にした人間は涙を流せないのだと、ベルは知ることになった。

 

 引き攣る顔面の筋肉が勝手に口角を上げ、傍から見れば笑顔のような形を作る。不細工な笑みだった。油のような大粒の汗が滴っている分、余計惨めに映るだろう。

 

「ブゥゥ……!」

 

「ッ!?」

 

 そんな状態でも猛牛への恐怖で体が反射的に動いてしまう。一挙一動にビクビクと、地面に3割程が埋まった大剣を引き抜くといった動作でさえも、恐ろしく感じて仕方がない。

 

 視界の中で行われたたった一つの動作と、その後に向けられた鋭い視線の切っ先が、ベルの首筋を凍り付かせる。

 

 本能が逃げろと大声を発していた。脚も腕もまだ動く。

 

『逃げ足だけなら』

 

 以前上層で追い掛け回された際にも、意外なほど長い時間逃げ続けられた、生き残り続けられたのだ。であれば、【アビリティ】がその時とは比べ物にならない今であれば、と。そんな言葉がベルの生存本能から発され続けていた。

 

「…………ダメだ……っ」

 

 もしかしたら、運が良ければ。それらが重なれば確かに逃げられるかもしれない。

 

「リリ……ヴェルフ…………」

 

 だが、逃げれば確実にリリルカたちが死ぬ。それだけは駄目だった。許せなかった。

 

(動かなきゃ……、戦わなきゃ…………ッ!!)

 

 地面から大剣を引き抜き、再度ベルへ向けて切っ先が向けられる。しかしベルの顔は恐怖に引き攣った表情から一変、奥歯を噛み締め視線を鋭くさせて猛牛を睨み付ける。

 

 諦念に支配され始めた自分の意識を振り払うべく、逃走を選べと宣う本能を否定する様に。死にたくないし、死なれたくもない。

 

 だからベルは、《聖火の刃(ヴェスタ)》を握る右手にあらん限りの力を込めて、叫ぶ。

 

「こっちだぁッ!!」

 

「ブゥゥ、モォオオオオオオオッッ!!!」

 

 己への宣誓と、敵への注意。リリルカたちのいる場所から少しでも遠くに誘導すべく発した言葉は他に誰もいない9階層には良く響く。同時に目前に立つ猛牛の耳にも一切の減退も無く届き、血のように赤い瞳がベルを捉えた。

 

 迷うことはない。ただ殺すだけ。

 

 ミノタウロスは────理性無き獣は、ただ本能に従い白髪の少女へと突進し始めた。

 

 

 

 

 

────

 

 

 

 

 

「ハァ──……、ハァ──……、────ッ!」

 

 行きつく暇があることが幸運だろうか、耳元で鳴り響く風切り音がベルの長い頭髪の一部を切り払い、宙へ飛ばす。ダンジョン内の淡い光を細い髪が乱反射させることで、まるで幻想的な光景を生み出した。

 

 ────ヴォンッ!!

 

 が、それも一瞬の出来事に過ぎない。即座の追撃。横薙ぎに振るわれた大剣が強風を生み出し、髪をいずこかに飛ばした。

 

「ぐぅ……早い……」

 

 リリルカたちのいない方向へ、その上で広いフィールドが必要だ。ベルよりも2倍近い巨体の突進。細長い通路、直線状で狙われれば一溜りも無いのだと、考えるまでもなく理解できた。

 

 背中を向ければ放たれる死の気配だけで足に力が入らなくなる。だから牽制目的でも良いからと小剣(ショートソード)を向けたままギリギリ間合いに入らずに済むようにと距離を取ろうとするが、それもお見通しとばかりに大きな歩幅と共に振り払われる大剣によって背後への跳躍を強制された。

 

 適度な距離間。保たなければならなかったその彼我の距離を開いたことで、ミノタウロスに突進のための助走距離を与えてしまう。鼻息荒くミノタウロスが息を入れ、胸部が膨張する場面を見れば、なにが来るのかなんて迷うはずもない。

 

「クソっ!!」

 

 即座に脚に力を込めて大地を蹴り付ける。ドゴンッドゴンッドゴンッと、3メドルを越えた肉厚の巨体が床を踏み荒らしながら猛スピードで迫ってくるのを視界の端で捉え、ギリギリで横に飛ぶことを成功させなんとか回避を果たす。だが、猛牛はその速度に見合わぬ急カーブを描き、ベルの近くを通る際に今度は急ブレーキ。そのまま構えた大剣に遠心力を乗せて振り下ろしてきた。

 

 体勢が体勢であったことから、右上から左下への袈裟しかないという直感に従って、ベルはミノタウロスの右脚方向へと無様にも転がり込む。

 

 大地を揺らすほどの轟音と共に地が砕け、石片が散らばるが、それに痛がっている場合ではない。即座に距離を取れば、ガリガリガリッ! という音と共に大剣が弧を描くように地面を()いた。

 

 先程までいた場所の地盤がめくれ上がり、強制的に見せられる光景がベルを更に追い詰める。

 

(……変異種なんてモンじゃない……きっと、強化種だ!)

 

 担当アドバイザーであるエイナや、訓練をつけてくれるベートからも聞かされていた、ダンジョンの異常事態(イレギュラー)の1つ。迷宮内で生まれてくるモンスターには極稀に同族の魔石を食することで飛躍的に強くなった強化種と呼ばれる存在がいるのだと。

 

 目の前にいるミノタウロスがまさにソレ。元よりLv.2の上位にカテゴライズされている怪物が、更に強化されたとなればもはや勝ち目など無い。

 

 逃げる。生き残る方法はもうそれしか残されていない。

 

「ヴムゥンッ!」

 

「──ぐっっ!?」

 

 ミノタウロスがダンジョンの床を蹴り砕き、土煙を上げながら一気に跳躍。空中で構えた大剣を重力加速度で威力を引き上げ、豪快に振り下ろす。

 

 ベルも跳躍を果たして何とか間合いの外へと脱出するが、眼前の空間が抉り抜かれたのではないかと錯覚させられる剛撃がダンジョン内を爆砕音で支配した。鳴り響く音響が静まり返るより早く、ミノタウロスはベルへ追撃を開始する。

 

 バックステップの瞬間を狙った横薙ぎのフルスイング。早く足を地面に着かせるためにと浅く跳んだベルの頭部を目掛けて(はし)る大鉄塊だが、ギリギリのところで《聖火の刃(ヴェスタ)》を差し込むことで斬り飛ばされることも砕かれることも防いだ。

 

「ぐぅ……ぁあっ…………」

 

 代わりに(はし)る痺れと激痛。受け流すことの出来なかった代償を払うしかないベルへ、再度降り掛かる絶望的な一撃。直撃すれば確実にひき肉になるであろう斬撃の嵐を、ベルは紙一重で躱してく。掠めれば皮膚どころか肉がごっそり持っていかれそうなほどの攻撃が1つ、2つ、3つと振るわれる。

 

 紙一重で躱せば攻撃に、なんて甘い考えは捩じ伏せられてしまった。回避行動に全力を注いでいるからこそ今もまだ生きていられる。地面に転がり続けたことで衣服が吸収した汗に土や泥が付いて気持ち悪い。足取りもまた、重くなってきた。

 

 しかしそんな弱音を言ってる場合はベルにはない。ミノタウロスの猛攻は一切の衰えを見せず、大剣が地面を抉ったと思えば今度は横薙ぎの一閃が放たれる。大上段からの叩き付けるような攻撃と違い、横に振るわれる一撃は範囲が広く間合いの外へと脱出するしかない。

 

 だがそれで距離を開けすぎれば今度は止められない突進が待っている。武器で直撃を回避しても腕が死に、そして体は吹き飛ばされてミンチになるだろう。

 

 大力を以って振り回される血塗れの鉄塊が大気を唸らせ、抉りとる。長いリーチを誇る剣撃はベルをどこまでも追跡し、逃さない。時折織り交ぜられる拳打や蹴りが体のすぐ側を通過する度に、寿命が削り落とされていく感覚がベルの神経を凍り付かせる。

 

 強要される際どい回避の連続が、ベルの余裕を許さない。一歩でも間違えれば即座に死に絶えるであろう状況が思考を狭めていくのだから。

 

 脳髄で鳴り響く警鐘。鼓膜を破ろうとする轟音。

 

「……がぁ、……ぐ、ぅ!?」

 

 戦闘衣(バトルクロス)はいつの間にやらボロボロで、インナーが顔を覗かせている。ミノタウロスの攻撃を必死に避け続け、床の突起など関係なしに転げまわった代償だ。余裕などありはしない。満身創痍一歩手前の状態で何とか持ち堪えていた。

 

 だが、もしこのまま攻撃が続けられてしまったら────。そんな未来のイメージが濃い色を持ち、ベルの頭の中にちらつく。凄惨な真っ赤な末路。

 

 ジリ貧。生き永らえたとしても、生還は不可能。

 

 だから逃げたい。だが、────

 

「グブゥゥゥ……」

 

 眼前で悠然と歩みを進めて迫る巨躯から逃げられる気がしないのだ。

 

 たとえ何もかもを投げ捨てて逃げたとしても、助かることはないだろう。背中を見せたら最後、死ぬまで追い続けられ、そして死ぬ。

 

 だから立ち向かっているのに、その先にも生存の未来が見えてこない。

 

 ()に染まった未来がドスン……ドスン……と言う足音と共に迫ってくる。

 

「……ッ、────────ッ?!」

 

 次の瞬間、ミノタウロスの頭部に火球が着弾した。

 

 

 ────

 ──

 

 

 ミノタウロスの顔が、僅かに横へ傾く。飛んできた火球によるものだ。

 

 視界の隅で小さな影が動いている。

 

 リリだ。どくどくと頭髪に隠れた場所から流れ出る赤い血を止めることなく僕へ、いやミノタウロスへと視線を向けている。

 

 意識がまだはっきりしていない所為か、それとも流れ出る鮮血が目に入った所為か、それは分からないけど……リリはグラつく身体を支えるために膝立ちのまま、それでも僕を助けるためにナイフをミノタウロスへと向けていた。

 

 リリが握っているそれは、柄頭から切っ先まで赤一色で構成されたナイフ。発言()らずで魔法を放つことが可能な武器────『魔剣』。

 

 以前リリと共に10階層にて怪物の宴(モンスター・パーティー)に遭遇した際、襲撃してきた人たちによって一度は奪われた道具の1つ。

 

 僕たちが疲労なんかで意識を失っている間に襲撃犯たちから回収して来たらしいソレを、リリは殆どの物品を換金していた。換金用の宝石や見るからに高そうな懐中時計などを。

 

 「今まで奪ってきた道具そのものを返還することはもう不可能だから、せめてその分の金額だけでも」、と。

 

 結局手元に残ったのは十数ヴァリスと、最終手段用の『魔剣』。

 

 ここ最近はヴェルフが魔剣を見て嫌な顔を浮かべることや、基本的に僕たちの純粋な力だけで11階層でも戦えていたこと、そして7階層で行うリリ単独での経験値(エクセリア)稼ぎ中に頼らずに済む精神力を持つためにと、リュックサックの中に仕舞われていたはず。

 

 それが、先ほど目前のミノタウロスに吹き飛ばされた時にリュックサックが破れ、他の道具と一緒に転がっていたのだろう……リリの近くに。

 

 運の悪いことに。

 

「ヌブゥゥウウ……」

 

 不意の攻撃を受けたことで片角のミノタウロスが視線を巡らせてリリを視界に入れる。そして咆哮。口から漏れ出た大粒の唾液を飛ばしながら、邪魔者の排除をすべくリリの(もと)へと近付いていく。

 

 一歩……二歩……、歩みは遅い。しかし着実に距離が詰まる。リリとミノタウロスとでは能力値(アビリティ)に差が有り過ぎて、どうしたって逃げれらない。

 

 その上、リリはミノタウロスの咆哮(ハウル)(じか)に浴びた所為で、強制停止(リストレイト)を引き起こされている。それは僕も変わらないけど、この戦闘中に何度か浴びていた分、リリよりもずっとマシな状態だった。

 

 だから、僕は走る。

 

 僕に背中を見せるようにして、敵では無いと断じたミノタウロスが初めて見せた明確な隙を確実にモノにするべく……。いや、そんなんじゃない。

 

「──────ッッ!!」

 

 勢い良く跳び上がる。冒険者となってから、エイナさんより教えられた恩恵(ファルナ)の上限である999という数値。聞けば、そこまで上昇させるのには才能のあるモノでも1年以上もの時間が必要で、本来は1つでもあり得ないと言われるような数値を、僕は『耐久』『器用』『敏捷』……この3つの【アビリティ】で実現している。

 

 自分に才能があるかどうかはこの際どうでも良い。しかし、もしあるのならば届いてくれ、と胸の内で叫ぶ。右手で握った《聖火の刃(ヴェスタ)》を逆手に持ち替え、重力をも味方につけた加速を以って、背後を晒したミノタウロスへと、その常人よりもはるかに大きな背中へと突き刺した。

 

「ブムッ?!」

 

 猛牛が受ける、初めての負傷を。そして確かに、鮮血が舞った。

 

 上半身が僅かに前方へ傾く。だが、それが決定的な一撃になることはない。

 

(……魔石に、届かないッ!?)

 

 鎧のような猛牛の厚い広背筋。それが《聖火の刃(ヴェスタ)》の切っ先をモンスターの核である魔石にまで届かせてくれない。しかし同時に初めて与えた確かな一撃により、柄頭を伝って赤い血が流れてくる。

 

 負傷。初めて出来たその切創を広げるべく腕に力を込め始めた僕の耳に、小さな声が入った。

 

「ベル……様ぁ…………」

 

 リリの声だ。ミノタウロスの咆哮(ハウル)による強制停止(リストレイト)から帰って来たのだろう。

 

「リリッ、逃げてッッ!!」

 

 だから僕は叫ぶ。悲鳴に近い声に反応したのはリリだけじゃない。ミノタウロスも誰が自分の背後から身体を刺しているのかを理解すると、腕を僕のいる背中に伸ばしてくる。それを《聖火の刃(ヴェスタ)》を持った手を軸に何とか躱しながら、必死に叫び続けた。

 

 逃げてくれ、と。訴え続ける。

 

 だけどリリは動いてくれない。頷いてくれない。そこに立ち尽くしたまま、眦に涙を溜めて、掴むことを()め体を大きく振り始めたミノタウロスに振り落とされそうになってる僕を見ていた。

 

 なんで────

 

「逃げて……逃げてよッ!!」

 

 そんな僕の慟哭(こえ)にも、

 

「いや、……いやぁ…………」

 

 リリは泣きながら頭をぶんぶんっと振った。意識が定かではないのか、子供が我儘を言うみたいに駄々をこねて言うことを聞かない。

 

 かあっっ、と頭に血が上った。

 

 リリがいたら逃げられない。近くには未だ意識を失ったままのヴェルフがいる。そんな状態で僕1人が逃げられる訳がない。

 

 2人が離れてくれれば僕だって逃げ出せるのに。

 

 だけどそんなことを説明できる状況じゃなくて────

 

「……ッ、足手纏いだって言ってるのが……分からないのッ!!」

 

 そんな心にも無いことを言ってしまった。

 

 怒鳴り声はリリを突き飛ばす。彼女の愛らしい顔を溢れるように流れる涙でぐしゃぐしゃにしながら、それでもリリをこの場から離れさせていく。

 

 ヴェルフを背負い、邪魔な荷物は全部捨てて。伸びて来ていたと自慢してくれた『力』の【アビリティ】を最大限使いながら、たったったっという足音と共に通路の奥へ消えていった。

 

 これで僕も逃げられる。漸く……やっと、逃げ出せる……────

 

「わけっ、ないでしょッ!!」

 

 背中に小剣(ショートソード)を突き刺され、今も暴れまわるミノタウロス。今もこうして僕が生き残っているからコイツはこの場に残っているだけ。

 

 誰もコイツの相手をしなくなったら、広間(ルーム)から出してしまったら、リリが、ヴェルフが死ぬ。

 

「ブゥ、ヌゥゥゥゥッ!!」

 

 暴れまわられたことでミノタウロスの毛を掴んでいた手にまで何度も血が飛び散った所為で、とうとう握りが甘くなり猛牛が体を振ったタイミングで振り払われてしまった。

 

 背中から落ちた僕は地面を転がりつつ、それでも足を地面につけてブレーキを掛ける。そのまま勢い良く頭を上げ、ミノタウロスの様子を窺った。

 

「グゥゥッ、ヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!」

 

「ッッ!!?」

 

 会敵してから最も強烈な咆哮。僕へ向けられた血のように赤い瞳は激怒の色を映している。

 

「──────ッ、ナインさん……」

 

 怖くて足が震える。逃げ出したい気持ちで一杯だ。だけど、ここで僕が逃げたら誰がリリを、ヴェルフを守るんだ? 僕が守らないと、僕が戦わないと、僕が助けないと。

 

 ここに居ない、憧れの英雄に祈るようにして。

 

 悲壮な決意を胸に、迫りくるミノタウロスと一方的な戦闘を開始した。

 

 

 

 

 

────

 

 

 

 

 

 ダンジョンの上層、更に浅い層域を2つの影が疾走していく。

 

 灰色の狼と金色の剣士。

 

 【ロキ・ファミリア】の精鋭中の精鋭であるベート・ローガとアイズ・ヴァレンシュタイン。この両名は現在、他派閥も巻き込んだ『遠征』の先行部隊として組み込まれていた。

 

 しかし、ダンジョンに侵入してから一層、二層と降りている途中、ダンジョンの奥から鳴り響いた激しい足音に警戒し、足を止める。都市でも最大派閥の看板を欲しいままにしている【ロキ・ファミリア】は敵も多く、『遠征』を台無しにしてやろうと考える者はそこそこいる為だ。

 

 だが現れたのは上層を稼ぎ場にしている下級冒険者が複数。1人だけ上級冒険者が混じっていることから、中層か中層に近い上層でも深い層域でモンスターを狩ろうとしていたことが分かったが、同時におかしいともフィンは考えた。

 

 ならば異常事態(イレギュラー)でも起きたか、そう思い何があったのかを聞いてみれば────

 

『ミノタウロスがいたんだ』、と答えられる。

 

 中層出身、Lv.2にカテゴライズされるモンスターだが、場合によってはLv.3の冒険者すら屠りかねないミノタウロスが浅い上層に出没したとなれば、大問題だ。『遠征』を滞りなく進めるべく、先行部隊としての面目躍如とばかりに排除しておこうと考えたフィンが、未だ呼吸の整わない冒険者たちへ詳細を聞こうとした。

 

 だが、────

 

 「そのミノタウロスを見たのはどこだッ!!」と、ベートが鬼気迫る勢いで怒鳴り声をあげる。冒険者の1人が口にした『白髪の少女』という言葉(ワード)を聞いた瞬間に、だ。

 

 普段とは違い焦燥に満ちた表情を浮かべるベートに【ロキ・ファミリア】の面々も驚愕しており、冒険者たちに詰め寄るベートを止められなかった。

 

 続いて問われる『白髪の少女』がいるであろう場所。そして一緒に居る筈の漆黒髪の男。

 

 前者は9階層と、そして後者に関しては見てない、と言われたことで歯をギリと鳴らしたベートは周りが制止する間も無く全力で駆け出した。その後を追い始めるアイズ。彼女もまた、ベルとは多少の縁があるがゆえに。

 

 6、7、8と階層を一気に下っていく2人。異様なほどモンスターの姿が無く、静まり返った通路に2人分の足音と風を切っていく音だけが木霊する。そんな空間に猛牛の咆哮が(とどろ)いた。

 

「チッ──、咆哮(ハウル)か」

 

 聞いたものの戦意を砕くミノタウロスの咆哮、それに僅かに混じった人の悲鳴にベートは更に速度を上げる。

 

 自分が回復薬(ポーション)を必要とする程に苛烈な訓練を付けたことで、下級冒険者の中では頭一つ分程度には成長しただろうと思わせる少女。だがそんな彼女でも、ミノタウロスに襲撃されれば一溜りもない。ベルの実力を本人以上に知っているだけあり、ベートは最悪の結果を脳裏に浮かべていた。

 

(クソがッ……! アイツはなんで居やがらねぇんだッッ!!?)

 

 だが、それ以上にベートをイラつかせたのは、そんな下級冒険者の時でもミノタウロスを屠ったというベルの先達たるナインがその場にいないらしいという事実。

 

 先程遭遇した冒険者から聞き出した限りでは、その場で戦っている『白髪の少女』以外に居たのは2つの影。小さい方はフードで頭が見えないが、身長的に子供か小人族(パルゥム)、そしてもう1人いたらしい只人(ヒューマン)も赤髪でベートの思い浮かべていた相手とは一致しない。

 

「クソがァッ!!」

 

 感情が荒れ狂う。随行しているアイズはもう4年以上の付き合いだ。しかし彼女でさえ見たことの無いベートの激情に染まった表情に、事の重大さを感じ取った。

 

 そこへ、前方より人影が現れる。ベートはそれを視界に捉えたことで、その人物の近くで足を止めた。それは小さな体を血に塗れさせ、自分よりも背の高い只人(ヒューマン)を背負った小人族(パルゥム)の少女。

 

 一週間前から、ベルとベートの訓練に見稽古ということで付いてきた少女。参加もしない、だが邪魔もしないなら回復薬(ポーション)をかける役をやれと言い渡し、その場に居ることを許可した。

 

 最初は雑魚だと侮ったが、小人族(パルゥム)特有の鋭敏な視覚を用いて、その日分の体力を使い切るのではと思わせる程の集中力の乗った瞳を見て、心からの侮蔑を向けなくなった少女。

 

「ぼう……けんしゃ、さま……っ、ベート……さまぁ! どうか……どうかお助け下さい……ッ!!」

 

 そんな彼女がいま、栗色の髪を赤く染め、その下から流れる鮮血を拭うことも処置することもせずに、ただ叫んでいる。

 

 眼前で行われる理不尽に、ベートは全身の血が沸騰したような錯覚を覚えた。

 

「場所はどこだッ!」

 

「正規ルート、E-16の、広間······」

 

 彼女の血が導のように延々と続いた通路の先。その方向を震える指で示し、リリルカはそのまま力尽きたように倒れ込む。彼女を受け止めたベートは奥歯を噛み締める。時間が惜しいとばかりに、小さな体躯を抱え上げ、共に居たヴェルフは適当に小脇に抱え走り出す。

 

 アイズも明確な被害者を目前にしたことで、焦りの色を浮かべていた。先に走り出したベートはアイズの様子を確認することも無く9階層へ。アイズもそれ以上何も言わず、無言のままベートに並走した。

 

 

 ────

 ──

 

 

 2人が通り過ぎた後、その通路を走る影が4つ。

 

 ティオナとティオネのヒリュテ姉妹がベートたちの後をついていく。

 

 少し遅れて出発したリヴェリアとフィンが8階層に出来た血の痕跡を見つけ、そこを辿ろうとした時、フィンが立ち止まった。

 

「…………」

 

「フィン。どうかしたのか?」

 

「……、いや、なんでもないよ。先に進もうか」

 

 一瞬だけ疼きを増した親指だったが、即座に収まる。不可解ではあるが、自分たちにこれ以上の影響はないだろうと感じ、リヴェリアと共にティオナたち同様、9階層へ向かった。

 

 ……………………

 ………………

 

 フィンが一瞬だけ視線を向けた先に、大柄な武人がいた。

 

 

 

 

 

────

 

 

 

 

 

「ハァ──、ハァ───ッ」

 

 白髪の少女が全身を傷だらけにしながら震える足を叱咤して何とか動き続ける。胸部鎧(チェストアーマー)が無くなったことで多少の軽量化が図れていたとしても、目前の片角のミノタウロスは速い。

 

 轟音と共に振り下ろされた大剣が地面を砕く度、周囲に散弾のような石礫が襲い掛かる。蒼白くなっている肌や、未だ無事だった戦闘衣(バトルクロス)の布地を叩き、幾らか露出し始めたインナーすらもボロボロに傷付けていった。

 

 全身が痛めつけれる度に意識が飛びかけるが、それでも必死に耐えて大剣の連撃を躱し、受け流し続ける。

 

 金属の擦れる音が鳴る回数に比例して削られていく体力と気力。ベルは落ちそうになる頭と瞼を奥歯を噛み締めることで持ち上げて敵を見据え続けていた。

 

 荒れるミノタウロスの呼吸。いくらやっても捉えられないベルに業を煮やしたのだろう。

 

 だが、ベルの呼吸はそれ以上に乱れていた。全身汗まみれになり、それでも《聖火の刃(ヴェスタ)》と《両刃短剣(バゼラード)》を手放さないように握りに力を込めて、必死に足を動かし続ける。少しでもミノタウロスから距離を取るべく。少しでも長く生き延びられるように。

 

 繰り出される左ストレートを《バゼラード》で横に叩く。

 

 すぐに後退。詰められる。

 

「フウッ……ゴォオオオオオオオオオオッ!!」

 

 するとミノタウロスが怒号をあげる。まるで「逃げるな」と一喝されているように。

 

(いき……のびるんだ……ッ。リリにっ、謝るんだッ!!)

 

 酷いことを言った。自分から約束をしておきながら、どこかへ行けと、言ってしまった。

 

 それがリリルカのことを思っての発言だったとしても、この危機的状況に陥ってるのは自分の実力不足だと、ベル本人は感じている。

 

 だから生き残らなければならない。リリルカを傷付けた自分は、彼女に謝らなければならない。

 

 だけど、────ヴォンッ! と耳元で鳴り響く破滅の風切り音に体の熱が奪われていく。足が竦む。恐怖心が膨張していく。

 

 前に出れない。無様に後退し続ける。もはや逃げ回るしか生き延びられる方法が見付からない。

 

 この瞬間を切り抜けられれば、それで良い。

 

(──────はずなのに……ッ)

 

 どうしようもない違和感がベルの胸中を駆けていく。

 

「ヴゥウウウウウウウウッ!!」

 

 だが、そんな一瞬の隙を見逃してもらえるほど、片角のミノタウロスは甘くない。

 

「────ッ?!」

 

 大剣の無い方へと走り込んでいたベルを突如として伸びてきた左腕によってガシリと掴まれる。今までは反応されなかった速度で駆けていたベルだが、強い緊張状態での戦闘によって走力を維持できなくなったのだ。加えて意識が僅かにでもそれてしまった。

 

 無理な体勢から伸びてきた腕であっても、強化種となった片角のミノタウロスが誇る『力』はベルの【アビリティ】を余裕で超えている。

 

「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

 振りほどけるはずもなく、ベルの細腕を掴んだミノタウロスは勢いよくベルを引き寄せたと思いきや、オモチャでも振り回すかのように頭上でブンブンと回し始めた。ベルの視界が激しく揺れる。

 

 抵抗しようにも《両刃短剣(バゼラード)》を握った左腕は掴まれており、どうしようも出来ない。右手に持った《聖火の刃(ヴェスタ)》でミノタウロスの腕を斬ろうにも、遠心力に引っ張られて上手く動かせない。

 

 されるがままの状態が続き、体内がシェイクされる。全身の関節が悲鳴を上げる。骨が軋む音を聞くしかない状態の中、ベルは激痛に喘ぐ声しか出せないでいた。

 

 そしてミノタウロスは速度を維持したまま、ベルを思い切り投げ飛ばす。浮遊感は1秒か2秒か、最後に訪れた壁面との衝突による衝撃がベルの全身を巡った所為で、彼女には分からない。

 

 ダンジョンの頑丈な壁に亀裂を入れるほどの衝撃と激痛で口から血が噴き出す。

 

 重力に従うようにして落ちる血の雫とベル本体。

 

(………………リ、リぃ……)

 

 生き延びねばならない。なのに体が激痛に絶叫を上げ続けていて言うことを聞いてくれない。うつ伏せのまま視界に入った左腕はかつてエイナから貰ったプロテクターの無残な姿と、割れた破片が裂いたのだろう流血の様子が窺える。

 

 喉が喘ぐように酸素を求めていた、肺の中が強制的に吐き出されたからだ。

 

 身動きが取れない。血という現実が近付く死を暗示する。無理矢理封じ込めていた、考えないようにしていた恐怖はいとも簡単に増大し、ベルの胸中を支配した。

 

ナイン……さん、…………たす……けて

 

 歯が、かち……かち……、と鳴り始める。瞳が揺れて潤み始め、もうどうしようもないと誰かに助けを求め始めた。

 

「ゥゥ……!」

 

  ────ドシンッ! ドシンッ!! ドシンッッ!!!

 

 地響きが徐々に近付いて来るのが分かり、身の毛がよだつ。

 

 もう、腕が動かない。

 

 だから、上体を起こして前を見ることも出来ない。

 

 ミノタウロスの顔も見えないし、距離も測れない。予想するだけ。

 

 でも、死ぬんだってことだけが分かって、諦念が、強く、精神を汚染していった。

 

 発狂してしまえば、壊れてしまえば、いっそそうなってしまえば楽なのかもしれない。彼女を照らすダンジョンの天井からの燐光に目を焼かれ、涙腺が静かに砕け散った。

 

(────もぅ、無理……か)

 

 ミノタウロスの視線は見なくても分かる。殺意の乗ったソレはいまもベルを捉え続け、そして殺そうとしているのだから。

 

 乾いた笑いも出ない。ここまでか、と心の中で呟いた時、ベルの前に2つの影が躍り出た。

 

……まだ、ギリで生きてやがンな

 

よく、頑張ったね……

 

 そんな声を聴いたベルの胸中を占めたのは安堵。

 

(……たす、かるんだ…………。よかった────────)

 

 ゆっくり。

 

 ベルの意識が、ゆっくりと沈んでいく。

 

 瞼は下がっていき、少女の意識が────闇の中に沈んでいった。

 

 ………………

 …………

 ……

 

『────きみ()が英雄を好きになったのって、いつだっけ?』

 

 ────えっ?

 

 ……

 …………

 ………………

 

 瞼を開く。誰かの声に導かれるように。

 

 黄金色。

 

 少女の目の前に広がるのはどこかの田舎にある麦畑。

 

 夕暮れの空が照らし、穏やかな風が吹くことで齎される────地上に許された幻想的な畑の波。

 

 大きく取られた敷地面積同士の間には、人が通るための道が用意されており、少女はそこに立っていた。

 

 ……ここって、僕の────。

 

 そこは、少女が育った村だった。

 

 

 

 

 


 

 ──────次回、『■■(憧憬)

 




 同性だからこそ言葉使いが荒くなる。ついでに言えば遠慮も少なくなる。
 あると思いませんか? 私はあると思います。

 現在のダンジョン見取り図
・9階層:ベル VS ミノ
 ベートがアイズと共に先行。8階層にてリリたち拾って先へ。
 ヒリュテ姉妹と少し遅れてあーるゔとフィン。

・8階層:隠れオッタル フィンに感づかれる可能性にドキドキ。

・1~7階層のどっか:ナイン疾走中 レフィーヤは…まぁ、うん

 そういやオッタルが中層でミノの鍛錬していた時に襲い掛かった戦闘娼婦(バーベラ)って小樽サンかミノにやられて数人死んだ疑惑あるけど、今作のミノ強化されてるからもうちょい逝ってそう……ま、いっか、アイシャは死んでないだろうし。

 というよりLv.7に最大でLv.5、大半が3か2の集団って……オッタル(都市最強)が居るって情報はSOでフィン達が遠征前の会議で言ってたし、神会でも言及してたからイシュタルFも知ってたはずでしょ……。アホなんかな? それとも1週間籠りっぱなしで流石のオッタルでも隙が出来るとか思ったんかな……無謀すぎん。
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