恐ろしいものだ──それが、闇に潜む〝彼〟の偽らざる本音である。
魔王軍に生きる彼。
大いなる北の地にて、氷の城を築く魔王に仕える、彼。
知的好奇心や任務のままに、残酷に動く。発明した魔獣……又は、地獄から蘇らせた魔獣を使い、幾度となく悪事を働いていた。
今回も、その例に漏れない。
魔国〝ツェペシュ〟──その
ケルベロスなんかは、配下として、無数の
それに、デスドラゴンは強大だ。対象とぶつかり合う事で、対象が大きく成長出来る事が見込まれた。それか、あの森のように──。
しかし、その結果はなんとも悲惨なものだったのだ。
まずはケルベロスだが、対象に纏わりつく邪魔者──フウマが、凶悪過ぎた。彼が持つ刀は、恐ろしいまでの力を秘めていた。推し量るに、
そして、最悪なのがデスドラゴンだ。この街の主であるカーミラはとても怠惰で、常に楽をしていたい性格。なので、対象が「やる」と申し出れば、直ぐに
しかし、その結果は真逆。恐ろしくも美しい──夜叉姫としての姿に変貌したカーミラによって、デスドラゴンは一撃で葬り去られてしまった。
大失態。
このままでは、幹部の座を降りる事になってしまう。
どうすればいいのか?
何か、手立ては?
何も思いつかぬまま、その者は思考に
「キサマ、何者じゃ」
「っ!?」
背後に、カーミラが立っていた。
「何者じゃと問うておる。答えよ。それとも、わたしに言えぬのか?」
「いえいえ、とんでもない……カーミラ姫……」
「何やら怪しい匂いがするのう。それにキサマ、珍しいな。
「は、はい!」
チッ、
「お主、名は?」
「名前、ですか……私なんて下級の魔物に、名前などあろうはずが──」
「違うじゃろう?」
カーミラは鋭いのだ。特に、解析などは使っていない。
ただ、
絶対にそれだけは避けなければ──と、彼は思う。
「や、やはり隠し事はよくありませんな! こ、コホン!
得意の手品で手の上に一輪のバラを出現させ、カーミラに渡す。
「ほう、道化師と申すか。まあ……怪しい者じゃが」
「そこをどうにか……」
「フンッ、まあ仕方あるまい。しかし……わたしが接する者に対して、決して危害を加えるでないぞ?」
本当に目聡いカーミラである。
「接している者? ちょっと、わかりませんな。言ったように、
「……まあ良い。最低限、そこだけ尊守されるのならば、な」
そう言うと、カーミラはどこかに『転移』してしまった。
いやはやまったく──と、ひとまずはそっと胸を撫で下ろすニックであった。特徴的な緑色の鱗に覆われた尻尾を揺り動かす。そして、思案する。
対象──ジーンの成長の上で、強過ぎる者は
(かくなる上は……この国ごと……)
ニックの翡翠の宝玉のような瞳が、一瞬──怪しげに光った。