比翼の二人   作:暁悠

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幕間 影に生きる者

 恐ろしいものだ──それが、闇に潜む〝彼〟の偽らざる本音である。

 魔王軍に生きる彼。

 大いなる北の地にて、氷の城を築く魔王に仕える、彼。

 知的好奇心や任務のままに、残酷に動く。発明した魔獣……又は、地獄から蘇らせた魔獣を使い、幾度となく悪事を働いていた。

 今回も、その例に漏れない。

 魔国〝ツェペシュ〟──その北西魔都(クリシュナ)南西魔都(オルテミア)にそれぞれ、魔獣──三頭黒妖犬(ケルベロス)と、死霊巨竜(デスドラゴン)──を放った。

 ケルベロスなんかは、配下として、無数の黒妖犬(ヘルハウンド)をほぼ無制限に解き放つ事が出来た。対象に纏わりつく厄介者を始末するにはもってこい。

 それに、デスドラゴンは強大だ。対象とぶつかり合う事で、対象が大きく成長出来る事が見込まれた。それか、あの森のように──。

 しかし、その結果はなんとも悲惨なものだったのだ。

 まずはケルベロスだが、対象に纏わりつく邪魔者──フウマが、凶悪過ぎた。彼が持つ刀は、恐ろしいまでの力を秘めていた。推し量るに、伝承級(レジェンド)レベルの武器──。

 そして、最悪なのがデスドラゴンだ。この街の主であるカーミラはとても怠惰で、常に楽をしていたい性格。なので、対象が「やる」と申し出れば、直ぐに退()くと思っていた。

 しかし、その結果は真逆。恐ろしくも美しい──夜叉姫としての姿に変貌したカーミラによって、デスドラゴンは一撃で葬り去られてしまった。

 大失態。

 このままでは、幹部の座を降りる事になってしまう。

 どうすればいいのか?

 何か、手立ては?

 何も思いつかぬまま、その者は思考に(ふけ)る──のだが。

「キサマ、何者じゃ」

「っ!?」

 背後に、カーミラが立っていた。

「何者じゃと問うておる。答えよ。それとも、わたしに言えぬのか?」

「いえいえ、とんでもない……カーミラ姫……」

「何やら怪しい匂いがするのう。それにキサマ、珍しいな。龍人族(ドラゴニュート)か」

「は、はい!」

 チッ、()(ざと)い奴め──と、内心で舌打ちする彼。

「お主、名は?」

「名前、ですか……私なんて下級の魔物に、名前などあろうはずが──」

「違うじゃろう?」

 カーミラは鋭いのだ。特に、解析などは使っていない。

 ただ、使()()()()()()だけで使()()()のだ。ここに解析系のレアスキルや解析魔法(アナライズ)まで使われたならば──

 絶対にそれだけは避けなければ──と、彼は思う。

「や、やはり隠し事はよくありませんな! こ、コホン! (わたくし)めの名前は〝ニック〟と申します。しがない道化(ピエロ)でして、どうにか見逃してもらえはしないでしょうか」

 得意の手品で手の上に一輪のバラを出現させ、カーミラに渡す。

「ほう、道化師と申すか。まあ……怪しい者じゃが」

「そこをどうにか……」

「フンッ、まあ仕方あるまい。しかし……わたしが接する者に対して、決して危害を加えるでないぞ?」

 本当に目聡いカーミラである。

「接している者? ちょっと、わかりませんな。言ったように、(わたくし)めはただの道化(ピエロ)ですから……」

「……まあ良い。最低限、そこだけ尊守されるのならば、な」

 そう言うと、カーミラはどこかに『転移』してしまった。

 いやはやまったく──と、ひとまずはそっと胸を撫で下ろすニックであった。特徴的な緑色の鱗に覆われた尻尾を揺り動かす。そして、思案する。

 対象──ジーンの成長の上で、強過ぎる者は邪魔(ノイズ)でしかない。となれば、消すしかない。

(かくなる上は……この国ごと……)

 ニックの翡翠の宝玉のような瞳が、一瞬──怪しげに光った。

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