比翼の二人   作:暁悠

6 / 13
第五話 風と天使

 ジーンが、薄っすらと目を開けた。

 知らない天井。多少黄ばんではいるものの、清潔感を感じさせる、白い天井。

(ここは……?)

「おお、お目覚めになられましたか!」

 視界に飛び込んできたのは、紳士のようなハットを被った胡散臭い男──ニックだ。

「……ニック……?」

「ええ、そうでございます。森の一部が消し飛んだ後、貴方様が中心地に倒れておりました。濃霧も晴れておりましたので、私がアルバス帝国の病院まで運んだのですぞ」

 ニック曰く。

 目を覚ますと、ジーンがレッサーフェンリルと激しい戦いを繰り広げていた。なので、一目散にその場から離れた。そして、レアスキルを駆使してかなり遠くの方から俺の戦いを観察していたところ、ジーンを中心に超大爆発──実際には、エネルギーの解放──が起きた。そこでその場に出向いてみたところ、その場にぐったりとジーンがが倒れていたのだとか。

「その場にレッサーフェンリルの死骸は確認出来ませんでしてな。もしやもすると、消し飛んだのかもしれませんな! ワハハハハ!」

 そう言って、報告(はなし)を締めくくった。

 なんて事だ──と、ジーンは頭が痛くなる。

『覚えていないの? ジーン、もの凄く怖かったんだよ』

 思い出しただけで震えそう──と、イオフィエルが伝える。イオフィエルは、かなり頑張っていたのだ。ジーンの肉体の主導権をどうにかこうにか強奪しようと、何度も干渉を繰り返していた。

『怖かった?』

『うん。それに、強かった。ニックは超大爆発って言ったけど、実際には暴走するジーンが有り余るエネルギーを解放しただけだもの』

 そう伝えられて、ジーンは絶句する。

『待って待って。何が起こってるの?』

『私だって聞きたいよ』

 確かにそれもそうか──と、一旦は納得するジーン。だが、一番何が起こっていたのか聞きたいのもまたジーンだった。

(……どうしたんだろう、僕)

 知らぬ間に、自問を繰り返していた。

「おや、お目覚めですか。体調、どうですか?」

 白衣を纏った男が、病室に入ってきた。名前はシェード。今回、ジーンの主治医を務める医者だ。

「先生……大丈夫です。いつ、退院出来そうですか?」

「体調が良好ならいいのです。あと一日ぐらいは様子を見たいですが……仕方ないですね。明日にでも、退院の手続きを進めましょうか」

 シェードとジーンが話し込んでいる間、ニックはどこかに行っていた。

 

   ◇◇◇

 

 明くる日。

 無事に退院の手続きを終わらせたジーンは、外でニックと再会していた。

「おい、昨日はどこ行ってたんだよ?」

「ワハハハ、すみませぬな。この街の冒険者ギルドを探しておったもので……ささ、こちらへ。まだ、ジーン殿が仕留めた魔物の報告をせねばなりますまい」

「そうだな。案内してくれ」

 すっかり打ち解けていた二人は、共にアルバス帝国の街〝エイン〟の冒険者ギルドへと向かうのだった。

 

「おわあ!? アンタ、スゲェな。こんだけの魔物狩ってくるヤツ、そうそういないぜ」

 そう言って色々な手続きを進める青年は、冒険者ギルド〝エイン〟支部の受付、フウマだ。

「あ、鑑定済みも混じってんな。なあ。鑑定済みの魔物の屍は、サッサと売り払った方がいいぜ?」

「それですか。困った時の食料になるかなって」

「魔物の肉!? ゲェ──!!」

「あ、あはは……」

 フウマは人と打ち解けるのが早いらしく、ジーンとも直ぐに世間話を交わす仲になった。

「なあ、知ってるかい? 最近、雲海の森で大爆発が起きたそうじゃねーか。濃い霧に包まれていた筈なのに、爆発があったところだけ綺麗に〝穴が空いてる〟みたいなんだと。物騒な世の中だよな」

「そっ、そうですね。あはは……」

 ジーンとはしては頭が痛い問題だった。

 どうして、自分がそんな事をしてしまったのか? 何が暴走のトリガーなのか? 暴走中に発した力は何なのか? 疑問は尽きない。

「アンタの『格納空間』には巨剣背突竜(グレイブドラゴン)の死体もあっただろ。あれで作る武器は()えーんだぜ? アンタも作った方がいいんじゃねーの?」

生憎(あいにく)、僕って魔法タイプなんですよね。武器とは縁がないっていうか……」

「へえ。それでも作ったなら俺にくれよ」

「あげませんよ!」

「そうだろうな。あははは!」

 そんな、平和な会話を交わす。

 

   ◆◆◆

 

 路地裏。暗い、路地裏。

 そこには、緑色の皮膚を持ち、紳士のようなタキシードとハットを身に纏うドラゴニュートがいた。

「──召喚:黒妖犬(ヘルハウンド)

 その者──ニックは、バレないように魔物を召喚した。それも、人造魔獣。

「さて、ヘルハウンドよ。この街で、少し暴れるがいい」

 ジーンと接している時とは別人のような口調で、ニックは命ずる。

 全ては、ジーンを導くため──

 

   ◆◆◆

 

「それじゃ、依頼受けるんだろ?」

 その言葉には、受けるよな? ──という、半ば脅迫にも近い意思が籠もっていた。ジーンは少し苦笑いしながらも、受けるクエストを選ぶ。

「そうですね……これとか?」

 ジーンが指したのは、Bランク適正のクエスト──双牙刃虎(ブレードタイガー)の討伐依頼。

「……アンタ……やたら戦闘系ばっか選ぶんだな?」

「あはは……戦闘・討伐系は報酬がイイ傾向にあるので……」

「……意外と金なんだな。そんなナリして」

「そんなナリって……どんなナリですか」

「甘ちゃんそうじゃねーか。ま、討伐してきたモンスター見るに、そんな事はねーんだろうけど」

 ジーンは苦笑しながら、依頼を解決しに向かう事にするのだった。

 

 冒険者ギルドの建物を出ると……何やら、怪しい集団が目についた。

「勇者様万歳! 勇者様万歳! 勇者アギレラ様万歳!」

「「「勇者様万歳! 勇者様万歳! 勇者アギレラ様万歳──っ!」」」

 赤褐色のローブを身に纏った集団が、そんな事をいいながら街を闊歩していた。

『うげー、勇者教だ』

『勇者教?』

『知らないの!? 人間界で活躍したとされる勇者アギレラを信仰対象として信仰する宗教団体の事だよ。一週間に一回のペースで〝勇者試験〟っていうのを行うんだけどね? それに合格出来たら勇者だと認定するってヤツなんだけどさ。それがね、かなりハードなの。「炎に三十分間炙られて、火傷(やけど)一つなく生還しろ」とかが代表例』

 他にも代表例は挙げられたが、そのどれもが理不尽なものだった。勇者だろうが、人間である限りは耐えられなさそうなものばかり……。

『……何がしたいの、そいつら?』

『勇者を見つけたいんじゃない? 私も、アイツらが何したいのかなんて理解したくない』

 不思議な人達もいたものだ──ジーンはそれだけ思って、その場を後にするのだった。

 

   ◇◇◇

 

 さてさて、ジーンが来ているのは雲海の森。ここは人類未踏破の森とあって、珍しい魔物や、他では見られない凶暴で強力な魔獣も確認されている。それらの討伐依頼が、冒険者ギルドに集められるわけだ。

 その方法は至って単純。森の中を歩くだけである。普通はそう上手くいかないのだが、ジーン──というか、イオフィエル──には、『空間転移』というレアスキルがあった。これは、現在座標と向かいたい座標を行き来する事が出来るレアスキルだ。それには、諸々の座標計算や移動距離に見合った魔力(エネルギー)が必要なのだが、それらはイオフィエルが負担。多少迷っても森の入口に戻る事が出来るので、ジーンは気負いせず、サクサク進む事が出来るのだ。

 そうして、森を歩いて出会った魔獣・魔物を片っ端から殺していく。それだけ聞くと通り魔的存在に見えなくもないが、実際には襲いかかってきた魔獣を殺しているだけだ。無害な動物は殺さない。

 そして──

『わぁお、また巨剣背突竜(グレイブドラゴン)だ。しかも二体』

『…………』

 なんでそんな軽く言うのかな? ──と、ジーンは自分の耳を疑いたくなる気持ちを覚えた。イオフィエルは、グレイブドラゴンが二体というかなり絶望的な状況に対して、とても気楽そうだ。

『かなりヤバイんだけど。なんでそんな気楽そうなの?』

『ああ、ごめんごめん。人間の間では、結構強い魔物なんだってね?』

 やはり認識がズレているイオフィエルである。まあ、彼女は天使族(エンジェル)で、しかも智天使(ケルビム)という上位個体なのだから、戦力的認識に差異があるのは当たり前なのだが……。

『まあ二回目だし、問題なく対処出来るでしょ?』

 そう言われると何も言えないジーンである。実際、彼自身も二体ならまだイケるな、と思っていたりするから。

『それじゃあ、討伐開始!』

 イオフィエルの開戦宣言。かくして、戦闘が始まった。

聖閃光波(ホーリーレイ)!」

 ジーンが聖属性の波状攻撃を行うが、大したダメージは見込めない。ジーンも、それはわかっている。それでも行ったのは、不意打ちの先制攻撃によって相手を怯ませ(スタンさせ)るためだった。

 案の定、二体のグレイブドラゴンは怯み(スタン)の影響で動きがかなり鈍い。

「そこだ、神聖光槍(ホーリースピア)!」

 ジーンは神聖力で構成された魔法性の槍を手に持ち、一番動きが鈍い方のグレイブドラゴンの首に突き刺した。そして、それを足場にして跳躍。空中でもう一本、光の槍を生成。それをもう片方のグレイブドラゴンの腹に突き刺した。

 そして、両方の光の槍が消え、傷口が露出したと同時に──

聖閃光波(ホーリーレイ)!」

 聖なる光波を傷口から体内に流し込み、グレイブドラゴン二体を内部から破壊。そのまま、生命活動を停止させたのだった。

 

『凄いね。どんどん職人のような手捌きに……』

『こういうの〝慣れ〟って言うんだよ。慣れって怖いよね』

『うん……人間の視点からしてみれば、あんなに凶悪で勝てなそうな魔物だったのにね。今じゃ、結構簡単じゃん、って』

 そう言いながら、イオフィエルが笑う。

 それから、数十分歩いて……。

『ここは……』

 以前、ジーンによる大爆発が起きた跡地に辿り着いた。

『まだ禍々しくて怖いオーラが残ってる……』

 イオフィエルが呟いた。

『確かに……イヤな感じ』

 ジーンも概ね同意見である。確かに、禍々しくてイヤな何かを感じる。

『……なんだか、魔王のオーラみたいだ』

『魔王?』

『そうそう。この世界の最北端、氷の大陸に住まう悪魔の王。太古の(えん)()(じゅう)を封印した騒動の時に、熾天使長ミカエル様と共闘した御方だよ』

 イオフィエルが、そう説明した。

『その時は、聖なる力と邪悪の力、両方の太極を(あわ)せた力で、凶悪な(えん)()(じゅう)に打ち勝ったんだ』

『……もの凄く強いんだ、(えん)()(じゅう)って』

『強いなんてものじゃないよ。名前の通り、(えん)()(じゅう)は邪悪な者達を統べる王。アイツは、アイツ自身の力で、死んだ魔物を召喚(サモン)出来る』

『……つまり?』

『アイツがいる限り、敵が増え続ける。もしかすると、今まで殺された魔物や魔獣が全て復活して、地上──つまり人間界が、本物の地獄と化すかも』

 説明されたそれは、聞いた限りでもとんでもない事だった。もし封印に成功していなかったとなると……想像しただけでも震え上がるほどだった。

 と、その時。

『あ、いたよ、双牙刃虎(ブレードタイガー)

『え?』

 見てみると、空き地の中央にブレードタイガーが鎮座していた。

『なんか……凄い佇まいだな』

『だね。王様みたい』

 堂々とした立ち居振る舞い。この森の王なのか? それとも──

『とりあえず、討伐クエストなんだし──』

 そこまで会話したところで。

『ジーン避けて!!』

「っ!?」

 ジーンの目の前を、素早いナニカが通り過ぎる。それは、

「……殺人兎族(キリングラビット)!?」

 キリングラビットは、小柄で小さな兎だ。一見、無害そうにも見える。

 しかし、その本質は獰猛で残酷。発達した脚を利用した素早い動きと、額に生えた一本角で相手を素早く狩る。これを予知出来たのは、イオフィエルのレアスキル『危険感知』あってのものだ。レアスキル『危険感知』は、自身に向いた敵意や害意、殺意を察知するレアスキル。これ以上ないほど、キリングラビット相手には必須級のモノだ。何せ──

「ちょっ、速い!」

 キリングラビットが、自慢の高速移動でジーンを翻弄する。ジーンの神聖魔法は強力だが、当たらなければ意味がない。詠唱破棄があるとは言っても、一瞬のラグがある神聖魔法では、素早いキリングラビットを仕留める事は出来ない。

 それこそ、キリングラビットの移動先やそのパターンを分析して、予測地点に神聖魔法の罠を張らなければならなかった。

 そんな事、ジーンには出来ない──

『よし。私がキリングラビットの移動先を『予測演算』するから、ジーンは魔法発動に集中して』

 出来てしまった。数多のレアスキルを所有しているイオフィエルは可能だった。なんという事だろうか。

『それじゃあ、あそこに聖閃光波(ホーリーレイ)、あっちには聖光波弾(ホーリーブレッド)ね。キリングラビットを、向こうに出来るだけ誘導して』

 イオフィエルがジーンにテキパキと指示を出す。ジーンは、一体どうやってその計算をしているのか気になったが、聞いてもわからないと割り切っていた。イオフィエルの指示通りに、キリングラビットを牽制しながら魔法を放つ。

 結果、見事に予測地点に到達。事前発動し、罠として配置していた〝破邪の光(ディスインテグレーション)〟が命中し、キリングラビットは消滅──しなかった。やはり、激痛によるショック死止まりである。

『やっぱりまだまだ修行が足りないね』

『だから、消しちゃったらダメなんだって』

 少し呆れはするが、同時に、幾つレアスキルを持っているのか──底が知れないイオフィエルに、若干の恐怖を覚えるジーンなのだった。

 

   ◇◇◇

 

 キリングラビットは討伐出来たが、問題が一つ。

『気づかれちゃったね……』

 そう。今の戦いのせいで、ブレードタイガーにバレてしまったのである。

(思いっきり奇襲するつもりだったのに……くそう、キリングラビットめ! 許さない……)

 怨念を募らせるが、その矛先にあるきリングラビットはついさっき死んでしまった。呪おうとも、この状況はどうにもならない。

『今だよ、左に転がって回避!』

 ジーンは、言われた通りに回避する。

(イオフィエルの指示通りに動けば、死ぬ事はない……よね?)

 ジーンが先程まで立っていた地点は、ブレードタイガーの爪によってえぐれていた。

(…………アレ食らったらヤバイな)

 実際、ヤバイなんてもんじゃないだろう。防御系の神聖魔法を発動していたら話は別だが、鎧も着ていない今のジーンがマトモに喰らえば、一撃で絶命する事間違いなしであった。

『ボーッとせず走って! 追いかけてくるよ!』

 すかさず、魔法による強化(バフ)まで使って走るジーン。イオフィエルの予測通り、ブレードタイガーはジーンを追いかけてきた。

『どうすれば倒せる?』

『ええっとねえ……やっぱりマズイね。キリングラビットの時と同じ戦法で行こう。振り返ってホーリースピア!』

神聖光槍(ホーリースピア)!」

 ブレードタイガーに光の槍を放つも、肝心のブレードタイガーは身をよじって回避。また、ジーンに向かってきた。

『波状攻撃だ。ホーリーレイ』

聖閃光波(ホーリーレイ)!」

 すると、ブレードタイガーは跳躍して魔法攻撃圏外へ。

『そこだ。もう一度ホーリースピア!』

神聖光槍(ホーリースピア)!」

 すると、ブレードタイガーは空中で身をよじり、またも回避。

『避けられちゃったか……それじゃあ、これの繰り返しで──』

『僕の神聖力が底を尽きちゃうよ!』

『確かに!! どうしよう、打つ手ないよ?』

『どうしようって……』

 そんな事僕に言われても──とボヤくジーンだったが、確かにこのままだとジリ貧なのである。体力回復や身体強化にも魔力や神聖力を消費するため、このままだといつかは追いつかれて殺されてしまう。

(あーあ、ちゃんと筋トレとかしとくんだったな……)

 今になって後悔するジーンであった。が──

 

 ──ここで、彼の幸運が炸裂する──

 

「グガァウッ!?」

「えっ」

 ブレードタイガーの皮膚を、魔法性の手裏剣が切り裂いた。それが飛んできた方向には──

「おいおいアンタ、ピンチだったな! これだから、グレイブドラゴンの武器を作っとけって言ったのによ。さて、頼もしき助っ人、フウマ! 風と共に参上!」

「フウマさん!?」

 フウマだ。藍色の短髪に金色の瞳を持っていて、いかにも好青年。しかし、その口調は少し刺々しい。

「これでも元Sランク冒険者なんでな。助っ人にはちょうどいいだろ」

 丁度いいなんてものではない。Sランクといえば、冒険者の中でもかなりの上澄み(ベテラン)だ。極端な話だが、Sランク冒険者ならば、理論上龍族(ドラゴン)の単独撃破が可能である。それ程、強力な人材なのだ。

「Sランクって……聞いてないですよ!?」

「言ってないからな。それより、早くそこ退()け!」

 一応は接客業である冒険者ギルドの受付に勤める彼だったが、元来の性格は粗暴で乱暴。敬語は使えないし、それは冒険者ギルドの受付になっても変わっていない。ちょっとはマシになったかな、程度であった。

 そして、フウマが行った事は──

(コウ)()(シュ)()(ケン)

 フウマが、光で出来た手裏剣を飛ばす。その光景を見て、ジーン──ではなく、イオフィエルが叫んだ。

『嘘っ!? あの人、あれ、神聖魔法だ! 神聖魔法で作り出した手裏剣を飛ばしてる! どういう事!? 詠唱も何もしてないのに!』

 フウマは、神聖魔法で作り出した手裏剣を無詠唱で飛ばしていた。しかも、連続で八枚ほど。かなり(かわ)されてはいるが、三枚ほど命中していた。それも、皮膚を切り裂く程度のものだが……。

「チッ、すばしっこいな……ブレードタイガーってこんなんじゃねーハズなんだけど……。俺も腕が鈍っちまったかな」

 と言ってはいるが、かなり素早く、力強く動くブレードタイガーに遠距離技を三度命中させているフウマだ。

 イオフィエルが、むむむ……と(うな)る。すると──

『ねえちょっと、あの子に()いてる天使? ぼうっとしてないで、力貸してくんない?』

 イオフィエルに、『思念通話』が飛んできた。

『えっ、だれ?』

『ゼルエル! 有名でしょ? 失踪した権天使長の──』

『ああ、ゼルエルちゃんか! 私だよ、イオフィエルだよ』

『イオフィ姉ちゃん!? なんであの子に憑依してんの!?』

『ほら、私も運命の人を見つけたっていうか……』

『ウッソ、マジ!? あの出来損ないの姉ちゃんが!?』

『出来損ない言うなし!』

 ──とまあ、かなり平和な会話を繰り広げていた。ちなみにだが、イオフィエルとゼルエルは(にん)(きょう)映画でいう義兄弟……ならぬ義姉妹のような関係性だった。小さい頃から一緒であり、かなり親しい仲なのだ。

 ゼルエルは、天界でケルヴィエルと共に権天使長を務めていた。しかし、いつしか失踪してしまったので、イオフィエルはもの凄く……それはもう悲しんでいた。

 なので、こういう空気になるのも仕方ないというものだった。

 ちなみに。長々話し込んでいるように見えるが、お互い『超速思考』というレアスキルを駆使しているので、実際に流れた時間は一秒にも満たない。

『ねえジーン』

『何? 今結構集中してるんだけど──』

『フウマさん、だっけ。あの人の中に、天使がいる』

『えっ? それってどういう──』

『私達と同じって事。元Sランクなのも納得だ』

 確かに、イオフィエルとジーンの関係のように、フウマも天使の力を借り受けていると考えれば、神聖魔法の無詠唱発動や連続発動にも頷けた。

『連携は私達で繋ぐから、ちゃんと従ってね』

『はいはい……』

 もうツッコむのにも疲れたのか、ジーンは何も聞こうとしない。

 そうして幾度か攻防を繰り広げ──

『今だよ!』

聖光波弾(ホーリーブレッド)!」

(コウ)()(シュ)()(ケン)!」

 ジーンが頸動脈に価する部分を撃ち抜き、フウマが首を切り落とす。

 あっという間に、ブレードタイガーの討伐に成功したのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。