無限列車編のその先に。
※本作は『鬼滅の刃』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。
◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。
18抑止力編1〜5
●1 プロローグ
『やあ、久しぶり。元気にしてたかい?
この間はボクとの会話を思い出してくれたようで良かったよ。
おかげで夢の中とはいえ、少し君と話しをすることが出来るみたいだ』
『ボクは君の心の中に間借してる、ボクの力の一部だよ。ユリちゃんと再会するまでは彼女との記憶を、君の無意識下に残しておくために送り込んだものだ。
だから今頃また別の生徒たちを学園で相手にしているボクとは同期しているわけでもなく、別の存在ってことになる。
当然、永続するものでもないから。そろそろ消える頃かなとも思っていたし、こうして機会を作ることが出来て良かった』
『ユリちゃんとは仲良くやってるのかな?
あの頃と比べて、満たされることも足りないこともあるだろうが。君たちならきっと上手くやっているとボクは思っている』
『ところで、彼女に力は使わせてないだろうね?
もし使っていたらどうなるか。ボクは君にちゃんと説明したけれど。君の世界の事情は聞いてるから、どうせ頼りにしてしまっているんだろうね。
そういうことだと──
おそらくもうすぐ抑止力に気付かれる。
戦いは避けられないだろう。
まぁユリちゃんには龍脈や並行世界を使うことで極力、自身の力だけで済ませないようにとはボクも助言していただろうけど。それにしても時間稼ぎだ。
ひとつの世界にとどまるということは、それだけ危険が増す。
君はどれだけ強くなった? 煉獄杏寿郎』
『抑止力と戦ってもなお、無事でいられるかな?』
『もし戦って無事でいられたなら、ユリちゃんと一緒に子供の顔でも見せにきてくれ。きっと学園にいるボクも喜ぶだろう』
『しっかりと覚えておくんだよ?
抑止力は、君の住む世界が作り出すもの。
ユリちゃんと共にいるための代償はあまりに大きいのだから──』
『それはそれとして、これだけは言っておかないといけないね。
結婚おめでとう!』
◼️ ◼️ ◼️
──と、まぁ夢での出演はこれぐらいにして。
本編だけを楽しみたい方は、ちょっと下までスクロールして●2のところまで飛んでほしい。以降は読んでもらわなくて大丈夫だよ。
やぁ、この語り口でボクがわからない人はどれだけいるんだろうか。誰だかわからんという人は是非、出逢い編を1から読んでみてくれたまえ。一気見というも用意していたから、集中して読みたい人はそちらをオススメしよう。
わかる人は最初から読みに来てくれている人たちだろうか? いつもありがとう。
書き手も日々ブックマークとかいいねを貰えると励みになると言っていたから。今後も積極的にしてもらえるとボクも嬉しい。
それから続けて読んでくれている人で、もし出逢い編1(一気見じゃない方)をブックマークしていない人がいるようなら出来ればしてもらえると助かると言っていた。気が向いたらでいいので頼んだよ。
物語はこれからいよいよ原作の展開へと近づくわけだけど。漫画の内容をベタ打ちというのも好みではないというので、色々こちらの設定だからこそ出来る流れにこだわっていくみたいだよ。
読んでもらう用に普段脳内補完しているところまでアウトプットしてるものだから、複雑なシーンとかは特に苦戦しているようだけどさ。
頑張ってはいるみたいだから生温かく見守ってあげてほしい。
それでは、引き続き 旅する物語 をヨロシク!
貴方が読んでくれるから、貴方と共に杏寿郎少年と異世界人少女の物語は続いていくよ。
●2
白無垢を着たユリが隣に座っている。
視線を向けると、気付いたユリがこちらを見返して柔らかい微笑みを浮かべてくれた。
お館様管轄のお屋敷の一角をお借りして、俺とユリの祝言を挙げることになった。
柱が祝言を挙げる場合は、仲人をお館様がされることもあるそうで今回は体調のこともあるし良ければ使ってほしいと頼まれお願いすることとなった。
もちろん御三家の手助けもあり、飲食の準備や片付けはこちらで行うことになっている。当然のように夏火が動き回り的確な指示を出して使用人たちを働かせているようだ。
幸いこの日は急な任務も入らず、非番の隊士たちも時間を作って会いに来てくれた。
柱たちも昼の間はゆっくりするつもりでこの場に来てくれている。
「煉獄さん、ユリさん、この度はおめでとうございます。婚約者として紹介していただいた時は疑ってしまって申し訳なかったです。どうかお幸せに」
胡蝶が俺たちに声をかけていると、
「しのぶちゃん! ご挨拶は一緒に行こうってさっき話したじゃない!」
蜜璃がしのぶに抱きつくようにやってきた。
「あら、伊黒さんと楽しそうに話されていたようだったので伊黒さんとされるのかと思ってしまいました」
「確かに伊黒さんとは楽しくお話ししていたけれど! 煉獄さん! ユリさん! ご結婚おめでとうございます! おふたりを見習って、次は私がお嫁に行けるように頑張ります!」
「ですって、伊黒さん」
音もなく伊黒が近づいてくる。
「胡蝶、なぜ俺に言う。
煉獄……おめでとう。末長い幸せを願う」
「あぁ、胡蝶甘露寺伊黒ありがとう!」
「お料理もとっても美味しくていくらでも食べられそうです!」
「それは良かった! 俺もたくさん食べるからな! 食事は大量に用意してもらっている! いくらでも食べてくれ!」
甘露寺は嬉しそうに表情を輝かせた。
その後も入れ替わり立ち代わり、沢山の人々が俺たちの結婚を祝いに来てくれた。
「──ユリ」
名を呼び手を握る。微笑み返してくれる彼女と、ようやくここまで来た。
あの時、出逢い、別れ、そして再会したこの軌跡を、俺はもう決して忘れず必ず守り抜くのだと改めて心に誓った。
○ ○ ○
翌朝。
──昨夜は夢の中に管理人が出てきた。
横で寝ているユリを見ると、既に起きていて俺の方を見ていたようだった。
「「おはよう」」
お互い照れたように笑って。
「管理人が夢に出てきたよ」
「私も。なんだか懐かしかった」
「子供の顔でも見せに来いと言っていたが、そんなこと出来るんだろうか」
「やろうと思えば出来ると思うけど」
「あの場所には2度と行けないかと思っていたが、いつか行けるならそれは楽しみだな」
ユリの頭に手を置く。
「──そろそろ気付かれるとも言っていた。
気をつけよう」
「うん」
「まだ寝るか? なんならこれからもう一度──」
抱き寄せようとするが、ユリは俺の胸に手を置いて抱き寄せられまいとする。
「あ、あのね」
「?」
「いつか話さないといけないとは思っていたのだけれど」
「どうした?」
「私、ここに来てからずっと……」
ユリは非常に言いづらそうにしている何か悪いことだろうか。俺の考えに気付いたのか彼女は少し慌てて言葉を続け、
「月のものがきてないの!」
「!? ……ここに来てからというと?」
「あの、多分なんだけど世界渡りをする度に身体は作りかわるみたいな感じだったから。月のものとかよくわからなかったんだけど、その──」
顔を真っ赤にして言葉を続ける。
「杏寿郎とそういうことしてるみたいだし、夏火にそのあたりのことを聞いている時に彼女の思考も読ませてもらって勉強したの……杏寿郎、ちょっと片手を借りてもいい?」
「あぁ」
彼女の前に片手をかざすと、ユリは両手で俺の手をとり自身の下腹部にあてた。
「ここに少しずつ成長してる子たちがいるみたいなのよ」
子、たち?
ユリが俺の手はそのままに唇を重ねてきた。
おそらくは彼女がみえているものを見せてくれるつもりのようだが、目を閉じると確かに小さな生命が彼女の胎内にいることがわかる。
「ユリ!」
目を開いてユリの身体を強く抱きしめた。
「これはめでたい!」
何度も何度も口づける。
「さっそく千寿郎と父上にも」
布団から出ようとした俺の身体をユリが抱きしめて止めた。
「杏寿郎だめ!」
「むぅ。なぜだ」
「こんな小さな時に妊娠に気付くなんてありえないことだからよ。普通はもっとお腹が大きくなってから気付くものでしょう? だからこの話は、まだ2人だけの秘密」
いい? とユリに念を押される。確かにそうかと思い直した。
「しかし、既にここに俺たちの子供がいたとは──これから大事に育てよう。まずは身体を冷やさぬように。食事にも今まで以上に気をつけないといけないな」
「うん」
「あとはどんなことに気をつけたらいいのか、こんなことなら先に色々調べておくんだったな。胡蝶にでも聞くか」
「まだ駄目よ」
「そうだな! そうであった!」
めずらしくユリが俺に抱きついてくる。
「喜んでくれた?」
「当然だ!」
「良かった。それなら、
私がここにいることにもちゃんと意味があったのね」
涙が一雫、彼女の目から溢れる。
「どうした?」
嬉し涙かしらと言うユリの身体を、俺は優しく抱きしめた。
●3
吉原潜入の準備を終えて、
「よーし、じゃあお前ら役割はもう頭ん中にたたき込んだな? 行くぞ」
はいだのおうだの返事をして3人がついてくる。善逸だけがやたらと睨んでくるが、無視することにした。
出ようとしたところで、見知った顔の人物がこの藤の家に向かって歩いてきていることに気づく。
「お、煉獄」
「うん? その声は宇髄か。奇遇だな!」
相変わらずド派手な奴だ。少し後ろを嫁さんがついて歩いてきていた。ちょうど死角だったが、もしかして手を繋いで歩いてたか?
「煉獄さん! ユリさんも!」
嬉しそうに炭治郎が駆け寄り、2人とも吹き出して笑い出した。
「炭治郎か? その姿、特に顔はどうした?」
「それなりに見えるように化粧することも出来たんだが、送り込みたいところは既に絞ってあるからな。上手いこと興味を引かない具合を探ったらこうなった」
俺がかわりにこたえると、煉獄もなるほどとうなづいている。
「祝言の時は、あまりゆっくり出来なくて悪かったな」
「いや、来てもらえただけで十分だ。君の奥方たちは潜入任務中だったと聞く。そんな時に祝言を挙げることになって申し訳なかった」
「いいんだよ。そんなことは、誰にでも今って時がある。他人を気にしてたら何も事は起こせない。
あれだ。任務が終わった嫁たちとド派手に祝いに行くぜ!」
「それは楽しみだ!」
ふと煉獄の嫁さんと目が合う。祝言の時も思ったが──。
「ユリさんといったか。俺はアンタと昔どこかで会っていた気がするんだが」
「宇髄?」
煉獄が鋭い視線を向けてくる。おっといけない、昔どこかで会っていたかなんて口説く時の常套句だったな。
「違うぞ、煉獄。
そういうつもりで俺は言ってない──。
せっかくの機会だ。柱同士少し話しをしないか?」
「それは構わないが」
俺と煉獄がその場を離れると、炭治郎たちは煉獄の嫁さんのところに集まって楽しそうに会話をはじめた。
○ ○ ○
少し離れたところで、炭治郎たちの様子を遠目で見ながら俺は煉獄に声をかける。
「成り行きとはいえ、継子を借りる形になって悪かったな」
「いや、そういうこともあるだろう。鎹鴉から連絡は受けているぞ」
「俺たちはこれから吉原に行くが、煉獄は?」
「別件だ」
「そうか。行き先が同じなら一緒にとも思ったが、別件ならこれまでか」
「変装してまで行かねばならないところなんだな」
「あぁ、相手は上手いこと花街に溶け込んでいるらしい。今は音信不通になっている嫁たちが再三念押ししてきた。これからあいつらが潜入して、何か掴めればいいんだが……。
それからなぁ煉獄、世の中には女は2種類しかいないと俺は思っているんだが──」
「なんだ藪から棒に」
「ひとつは一目で俺に惚れる女、ふたつは俺が口説いたら惚れる女だ」
「ほぉ?」
煉獄の目付きが鋭くなった。
「まぁ待て、それで先ほどお前の嫁さんに声をかけてみたわけだが。俺が口説いても落ちない女だなとわかったんだよ」
「それはそうだろう。ユリは俺一筋だからな」
ふふんと自慢げに煉獄は言う。
「すごい自信だな。それは新婚生活もそれだけ満喫してるってことか?」
「んんっ、まぁ……人並みには充実しているとは思う」
「それは良いことだ」
以前、胡蝶が言っていたことを思い出す。ここらでひとつカマかけてみるか──。
「だが、そんないい嫁さんならなおのこと鬼狩りに付き合わせるのはやめた方がいいんじゃないか?」
「……」
「言えない事情ってやつはまだ続いてるのかよ。それならそれで仕方がないが。
だがな煉獄、厄介ごとは1人でどうこうしようと思わない方が余程利口だと俺は思うぜ」
「それならば君も奥方たちの安否が気になるなら、もっと他を頼れば良いのでは?」
「──確かにな。
なら煉獄。そっちの任務が片付いたら少し吉原の方に寄っていってはくれないか?」
「そうだな。君の奥方たちの安否も心配だ。
そうしよう」
俺は煉獄と片方の拳同士を突き合わせた。
●4
任務を終えて宇髄たちが利用していた藤の家まで戻ってきた。
「さて、このままの格好では行かぬ方が良いということだったが」
どうしたものか。
「潜入捜査というのに協力するの?」
用意された着物を手にしながらユリが言う。
「いや、君にしろ俺にしろ潜入捜査は無理だろうな」
「そうなの?」
「年齢の問題だ。炭治郎ぐらいであれば下働きとして入ることも出来るだろうが俺たちの年齢では一線で働かせようとするだろう。
吉原は男が女を買う街だ。どれほど使い込んでいるとか、変な病気を持っていないかとか、そういうことはまず調べられるだろうな。場合によっては仕込まれたりもするだろう」
ユリはなんのことやらといった表情をしているが。
「君は普段俺としていることを、他の誰かとしたいのかということだ」
彼女の下腹部のあたりに片手を置くと、火がついたようにユリの顔が赤くなった。
「あ、そういうこと?」
「それに子供がいるなんてことも、すぐに見抜かれる可能性だってある。そういうことに詳しい人種が集まっているわけだから……」
「杏寿郎は、なんでそんなに詳しいの?」
「うん?」
「なんで、そんなに、詳しいの?」
ユリが俺に尋ねてくる。口元はわずかに微笑んではいるが、目は完全に笑ってない。
「たまたま知識として知っていただけだ」
「行ったことがあるとかではないの?」
「そうだ」
「そう」
俺にかかっていた圧のようなものが消える。
「ユリ、もしかして今。俺が吉原に行ったことがあるのではないかと思って嫉妬したか?」
「してません」
「いや、しただろう?」
「してません!」
ユリは顔を背け──これは妾になれなんて言った場合、どうなっていたかわからなくなったぞと思いつつ内心嬉しく思っていた。
「俺が吉原に行ったことがあると聞くのが嫌だったのだな」
おいでとユリの身体を抱き寄せ、よしよしとユリの頭を撫でる。
遠くでドンと2回音が聞こえたと思ったら、遅れて地面が少し揺れる。
方角は吉原の方だ。
「──これはもう変装する必要はなくなったかもしれないな」
ユリと顔を見合わせた。
○ ○ ○
「勝つぜ、俺たち鬼殺隊は」
「勝てないわよ! 頼みの綱の柱が毒にやられてちゃあね!!」
斬られた首を元に戻そうとしながら、女の鬼が感情的に叫ぶ。
「毒か! 確かに顔色が悪いな!」
──ここで駆け付けるのかよ。戦場の視線を一気に集めるよく通る声だった。
屋根の上にいた炎の羽織を纏ったあいつが、俺たちの前に降り立って言う。
「皆、よく耐えた! ここからはこの炎柱、煉獄杏寿郎が助太刀する!」
「煉獄さん!」
炭治郎が嬉しそうに声を上げる。
「ハハッ、これで柱が2人。ボケ雑魚相手にゃ、ちと勿体ないが余裕で勝たせてもらうぜ!!
そしてテメェらの倒し方はすでに俺が看破した! 同時に頸を斬ることだ!」
「なるほど! 二体同時ということか! 心得た!」
流石は煉獄、理解が早いぜ。毒がまわっているせいか、俺はそう気付いた理由までもつい口にしてしまった。伊之助が俺の言葉を聞いて笑い声を上げる。
「なるほどな! 簡単だぜ! 俺たちが勝ったも同然だな!!」
鬼たちはそんな簡単なことも出来なかったと俺たちを嘲笑う。
「何人柱を喰ったとか、こっちは興味もないんだよ。
わざわざ自慢してくるところが小物な証拠だぜ!
大事なのはなぁ、今ここで俺たちがお前らを倒すってことだ!!」
「あんただって口ばっかりじゃないか! どいつもこいつも死になさいよ!!」
女の鬼が帯を広げて襲い掛かってくる。同時に善逸が斬りかかり女の鬼は屋根の上に逃げ、追いかけるように善逸が飛んだ。
「蚯蚓女は俺と寝ぼけ丸に任せろ!!」
言いながら伊之助が続く。
煉獄が俺にいくつかの指文字を使った後小さな瓶を2本投げ、男の鬼……蟷螂男に斬りかかる。
「ほれ、炭治郎。お前の分だ」
「なんですかこれ?」
煉獄の投げた小さな瓶には、赤い蜥蜴の印がついていた。
「回復薬だそうだが、どんなもんかは飲んでみないとわからんな。とにかく早く飲んで戦線復帰だ。俺たちで蟷螂男の首を斬るぞ」
「煉獄さんはなんて?」
「今は蟷螂男の気を引いてくれているが。あいつは戦況を見ながら隙あらば攻撃、首を切れなかった方に加勢するそうだ」
「わかりました!」
同じ敵相手に戦っていた時間が長い方が連携が容易だろうという判断だか、はたして吉とでるか凶とでるか──。
●5
おかしい! おかしい! おかしい!
なんだこれはおかしなことだらけだ。
炎柱の斬撃を躱しながら思考する。
炎柱?
上弦の参がこの間倒したといっていた柱は、炎柱だと言っていなかったか?
なら目の前のこいつはなんだ? 炎柱は2人いたのか?
僅かな隙に一撃を返す。
しかし、見えない何かに阻まれ炎柱の服すら傷つけることが出来ない。
なぜこいつはこんなにも強い!?
1人で俺をここまで追い詰められたら、手負いとはいえあの2人が参戦してきたら──。
視界の隅で、その2人が何かを呷った。
「うわ! なんですかこれ!?」
「こいつぁ、たまげたな。内から力が漲るようだぜ」
先ほどまでの戦いで負った奴らの傷が、周囲に満ちていた奴らの血の臭いまでもが消えた。
なんなんだ! 何が起きてる!
炎柱と目が合う、奴は口角を少し上げて笑っているようだ。
お前か! お前なのか!
ふっと炎柱の姿が視界から消える。
「!?」
「待たせたな!」
入れ違いに音柱が目の前に現れた。
音の呼吸 伍ノ型 鳴弦奏々
騒がしい技で押してきた所で──馬鹿な、押し切られる!?
○ ○ ○
──さて、状況を整理しよう。
俺たちはなんとかあの後、蟷螂鬼と蚯蚓鬼の首を斬った。かなりの激戦だった。
再び鬼の毒にもやられたが、そこは先ほどやってきた竈門禰豆子の血鬼術により解毒。ひとまず命は助かったが、倒しきった代償としてこの音柱様の左目と左手は使いものにならなくなった。
嫁たちには煉獄を探せと言ってこの場を離れさせ、炭治郎たちは鬼たちの首を確認すると言って離れていった。
「──というわけでだ。人払いはしといたぜ」
独り言のように言葉を紡ぐと、先ほどまでいなかった場所に煉獄の気配を感じるようになった。
「よぉ、近くにいる気はしたんだ。気配を消すのも上手くなったもんだな。
それで? 俺はどうなる。このままか?
……さっきの回復薬を寄越せとは言うつもりはないぜ。あれに入っていたのはただの味のついた水だ。
お前が言う奇跡というやつで、俺は助けてもらえるのかよ?
どういう仕組みか知られちゃまずいってんなら、目でも瞑っていればいいか?」
唯一開くことの出来ていた右目を閉じる。
さて、これでどうなるか──。
一瞬、強い光がまぶた越しに視界を焼いた。
そして光が消えると身体中の痛みが消えている。
「よっ」
立ち上がって、自分の前の空間に両腕を広げおもむろに抱きしめた。
「!?」
驚いたような気配と共に、腕の中にいるのは煉獄よりも少し背が低いぐらいの女を抱きすくめるような形になっている。
「宇髄やめろ!」
煉獄が声を上げた。
「初めて会った気は、最初からしていなかったんだ」
両目を開いて腕の中を見下ろす。
「久方ぶりだな」
幼い頃に命を救われた記憶。
まさか恩人の姿が、昔と少しもかわらないとは誰も思うまい。
探している人がいるからと、あっさり俺を振っていったのは後にも先にもアンタだけだったよ。