学園を卒業し、煉獄杏寿郎を探す旅路の途中で。
※本作は『鬼滅の刃』の世界をベースにした二次創作です。
※キャラクターには独自解釈・改変を含みます。
※原作をご覧のうえでの閲覧をおすすめします。
◆ヒロインは名前固定&設定強めのオリジナルキャラクターです(夢主=“あなた”形式ではありません)。
◆「夢小説」タグは広義の意味で使用しています。不快に感じる方はご注意ください。
4煉獄煌寿郎との邂逅1〜5
●前説
煌寿郎との邂逅は、旅する物語 白百合異聞の出逢い編が終わり炭十郎との邂逅の前の時間軸のお話です。
書かれたのは白百合異聞の内容が全て連載終了してから、AIと共に書き上げた一作目です。かなり暗く重いので、連載当時は書く気になりませんでした。
⚫︎主要キャラクター紹介
ユリ(ユキ):煌寿郎にはユキと名付けられた白百合を思わせる神秘的な美貌の女性。白百合異聞の旅する物語の主人公。出逢い編にて異世界にある学園で、煉獄杏寿郎と邂逅し特別な絆を結ぶ。彼の協力で学園を卒業し、彼女にとって唯一の杏寿郎を探して無数の世界を旅をしている。物語の改編能力のある魔女で、人間よりも精霊に近い存在。彼女は口では利用すると言いながらも、本質はとても優しく関わった相手を甘やかすこともしばしば。特に癒しの力に優れている。
煌寿郎:江戸時代を生きた煉獄家の次男坊。最強の鬼狩りになったかもと彼の死後、後世で語られたこともある。才能はあったがやる気がなく、雪山に潜んでいた強い鬼との戦いで死んだ。
白百合異聞の旅する物語では策動編と仕舞い編に登場、ユキ(ユリ)に対して恐ろしい熱量で執着しており激しく杏寿郎に嫉妬していた。黒炎を纏うブラック煉獄さんのイメージ。
今回語られる邂逅では杏寿郎を探す旅の途中のユリと出会い死の運命から逃れ、最強の鬼狩りになるとかならないとか。
⚫︎1
深く積もった雪の上、大の字に寝転がって空から落ちてくる雪を見ている。
なりたくもない鬼狩りになり、やっととどめをさせたと思ったらこんなところで一人死にゆく定めにあるとは……なんとも情けない。
「こんなことなら……女の一人や二人抱いておけばよかった……」
言い寄られることは多かった。だが少しも気持ちが動かなかった。世界は白黒に見えて味気なく、どんな人間も同じに見える。
──生まれてくる場所を間違えたのかもしれない。
そう思ったら急にどうでも良くなった。手足は冷え、身体から熱が奪われていく。血が流れ出ているのも原因だろう。
「はぁ」と大きく息を吐いた。
「あなた……死にたいの? 変な人ね」
鈴が鳴るような美しい声がした。
自分の顔を覗き込むのは、息を呑むほどの美貌の女性。
誰だと口にする前に、自分はただの通りすがりだと言ってきた。
雪を踏む足音もたてずに? それではまるで──
「雪女? あぁ、そういう妖怪もいるってことになっているんだったかしら。あなたは会ったことがあるの?
……って、そんな話しをしていたらあなた死んじゃうじゃない」
ぺしぺしと俺の額を叩くその女に軽く苛立つ。
「今にも死にそうな相手に!」
がばっと起き上がって女に向き直った。改めて見ても美しい女だ。かあと頭に血が上り、ドキドキと胸が高鳴ってくる。白い服を身にまとったその姿は何故かとても強く惹きつける。御伽話に登場する美しい雪女のようにも見えた。
「俺は鬼と命懸けで戦って、今にも死にそうで──」
言いながら違和感に気がつく。先ほどまでの出血が止まっている?
「あなたはどうして死んでもいいと思ったの?」
特別何か驚いた様子もなく、女は俺に声をかけてくる。
「ちょっと待ってくれ、君が何かしたのか?」
「何かしたかといえばしたわ。あなたが死なないようにした」
「は?」
「その上で、どうして死んでいいと思っていたのか聞いているのよ。答える気がないならいいわ。あなたの思考は多少はわかったから、それを記録しておいてまた似たような境遇の──」
「待て」
腕を掴む。
……腕を掴める? ならば人間か? まさか妖怪? よもや鬼ではあるまいな。最近妙な術を使う鬼がいると聞いた気がする。
「何よ」
不機嫌そうに一瞥される。
「君はな──」
君は何者だと問おうとして口ごもる。
「俺は煉獄家の煌寿郎だ。君は?」
一瞬、彼女はどこか遠い目をした。まるでここにはない何かに視線を向けるような。
「……私に名前はないわ。好きに呼べばいい」
初めて見た冷たい表情に戻って、ぽつりと小さく彼女は言う。
「そうか、ならば君はユキと名乗ればいい。君のその姿は天から舞い降りる雪のように神秘的だ。
──よもや本当に雪女ではあるまいな?」
そんな質問に答えるのも馬鹿らしいとでも言いたげに、ユキは背を向けて音もなく歩き出す。
「待ってくれ! 君のことを教えてくれ」
掴んだままだった腕を引く。ひんやりとした冷たい腕だ。
「なぜ? ……どうしてあなたに私のことを教えないといけないの?」
「俺は、君が好きだ」
口から出た言葉に俺もユキも驚いた顔をした。
「そう……なら仕方がない。もう少しだけ話し相手になってあげる」
控えめに微笑んでみせたユキの表情に、俺は心を掴まれ揺さぶられる。
空から雪が降り積もる寒い日の夜。
俺は初めてユキと出会ったんだ。
⚫︎2
雪山からの帰り道をユキと並んで歩いていると、鬼狩りの桑島と遭遇する。
「あれ? 煌寿郎が苦戦してるって聞いたから、わざわざ来たのに……」
次の瞬間には桑島の目がユキに釘付けになった。
「わあ、君かわいいね。このあたりに住んでるのぉ?」
声色を変えてユキの顔を覗き込む。ユキの表情はぴくりとも動かない。その様子に桑島は俺に耳打ちする。
「ちょっと、煌寿郎! なんなのこの子! ぴくりとも表情が変わらないんだけど!?」
「お前みたいな奴は好みじゃないんだろ」
「はぁ? 俺を誰だと思って言ってるの!? 俺は桑島 善悟郎! 可愛い女の子との艶聞は数知れず。どんな女の子とも仲良くなれる無敵に素敵な女たらしなんだぞ!!」
精一杯のかっこいいと思うポーズをする桑島。
「っていう妄想してる奴だ」
指を刺して桑島を紹介する。
「ちょっとー!!!」
桑島が不満そうに大声を上げると、木々から鳥たちが羽ばたいていった。
桑島が合流するまでの間に、ユキは人探しが旅の理由だと俺に話してくれた。
「探している人がいるのか……父親とか、母親とかか?」
「違うわ……」
ユキの表情が曇る。どうやらあまり詮索されたくないらしい。
「わかった。君が人探しをしているなら付き合うよ。
俺が君の力になる」
「別に頼んでない……」
「いいんだ。俺が君を助けたいんだ。だから君は気にせず俺を頼ってほしい」
俺が微笑んでみせると、ユキの頬にふと赤みがさした。
「この山の麓に馴染みの宿があるんだ。まずはそこで一旦落ち着こう……」
ユキは特に何か言うこともなく、俺の差し出した手に自分から手を重ねる。
麓にある旅館、とはいっても藤の家だ。俺と桑島の同行者ということでユキも泊まれることになった。
「ねぇねぇ、君きみぃ! 俺に名前だけでも教えてくれよぉ!」
桑島はユキにまとわりついている。
「彼女はユキ。俺が彼女の人探しを手伝うことになってる。お前が関わることじゃない」
ぐいと肩を掴んで引き離し、部屋の外へ追い出す。
人探しなら人手が多い方がいいだろ! 等々文句を言っていたが、藤の家の住人に声をかけられると声をかけられた相手についていったらしくようやく静かになった。
「やかましい奴だろ。
……あぁ見えて結構強いんだ」
戦うための装備を外していく。ここは藤の花の香も焚いてあるし、鬼は来ない。
「この香り、知っているわ。懐かしい……」
「藤の花の香のことかな?」
ぼんやりと窓の外を眺めるユキの隣に座る。
「君は不思議な人だ。かといって鬼狩りでもないし、鬼でもない。雪女でもないとしたら君は一体どういう人なんだろうか?」
「…………」
「いや、いいんだ。話したくないなら無理にとは言わない。でも俺が鬼狩りだと知っても驚かないし、鬼のことも知っている様子だね? それなら俺と一緒にしばらく行動してみないか?」
緊張でごくりと喉を鳴らす。
「君は俺の考えていることがわかるのだろう? なんだか気恥ずかしいな……」
「恥ずかしい?」
「普通なら言葉や態度で相手を知るんだ。こんな風に──」
ユキの頬にそっと触れた。彼女は初めて俺に恥じらうような女性らしい表情を見せてくれる。
「──っ! すまない。唐突だったな……気安く触れてしまった」
俺が手を離すと、ユキはふいと窓の外に視線を向けてしまった。彼女の美しい横顔に言葉を続ける。
「……こんな気持ちになったのは初めてなんだ」
ドキドキと俺の胸が高鳴っていた。
「今話す気がなくてもそれでいい。しばらく共に過ごしてみないか?」
ユキの様子を窺いながら慎重に言葉を紡ぐ。
「……わかった。少し留まることにする。私の探している人も鬼狩りに関わっていたから」
ぽつりとユキは言葉を返してくれて。
「そ、そうか! 俺は鬼狩りの中でも、かなり名の知れた──」
ユキは俺の話しを聞いているのかいないのか、どこかぼんやりとした様子で聞いていた。
⚫︎3
翌朝、暖かな布団の中で目を覚ますと腕の中にユキがいた。ひどく驚いて着ているものを確認すると、俺もユキもきちんと浴衣を着込んでいる。
昨晩は夕食を食べて風呂に入って浴衣に着替え、それぞれ別の布団で寝ていたはずだ。
「おーい。煌寿郎。朝餉ができたってよー」
なんの遠慮もなく桑島が俺たちの部屋にやってきて汚い悲鳴を上げた。
「なっなんで、同衾してんだよー!!! お前たちやっぱりそういう関係──」
身を起こし手にした枕を投げて桑島を黙らせる。
腕の中でパチリとユキが目を覚ました。
「お、おはよう──」
寝ぼけた様子のユキはにこりと微笑んだ後に周囲を見回し、あっと驚いたような顔をしたと思ったら……いきなり姿が消えた。
「ユキ!」
桑島と朝餉も手を付けず手分けして方々を探して帰ってくると部屋にユキはいた。
「なんだよもー」
ぐったりと崩れ落ちる桑島。
「ユキ! 良かった……」
駆け寄って片膝をついて座っているユキの手を取った。ユキは気まずそうにしている。俺の布団に何かの理由で間違えて入ってしまって恥ずかしくて──といったところか。にしてもいきなり姿を消すことが出来るとなるとますます、彼女の正体が気になってくる。
「心配したぞ……」
「……ごめんなさい」
「──いいさ。それだけ動揺することだったということだろう? 俺を誰かと間違えたのか?」
こくりとユキは頷く。俺を誰かと間違えた……その誰かとは気安く同衾するようなら関係だったとするなら──。心の奥でざわざわと漣のような音が聞こえている気がする。
「良ければその……俺を、その間違えた相手だと思ってくれて構わないぞ?」
「どうして?」
ユキは思いがけず驚いた顔をした。
「……君が寂しい思いをしているようだから──」
嬉しそうに微笑むユキを見て、俺も微笑んでみせる。そんな様子を横で見ていた桑島はイライラと怒りの形相を浮かべてはいたが黙ってくれてはいた。
「煌寿郎くーん。詳しく聞かせてくれたまえよ」
次の任務への道中、桑島が俺に圧をかけてくる。遊郭で失踪事件が多発しているということで、珍しく桑島と俺との共同任務となった。聞き込みも必要だろうということで日が暮れる前の到着を目指して移動中だ。
「詳しくも何も……」
ちらりとユキを見る。視線が合うとほんの少し微笑んでくれるようになった。
「なんだよもー! その甘酸っぱい空気なんとかして!!」
桑島は狂ったように頭をかきながらくねくねと身体を揺らしている。
「煌寿郎はさ! 女の子に興味なかったじゃん! 俺と一緒で!」
「違う! お前は相手にされなかっただけで、俺は相手をしなかっただけだ!」
「裏切り者ぉぉ!!」
桑島は泣きながら遊郭に向かって走っていった。
ユキはきょとんとした顔をして桑島の背中を見送っている。
「ユキはあぁいう奴どう思う?」
「どう思うって? 色んな考え方や反応があるんだなぁと思って見ていたわ」
「……そうか」
ほどなくして遊郭が見えてきた。まだ日も出ているし人通りもまばらだ。
「君の容姿だと目立ってしまうかもしれないな」
「そうなの?」
ごく簡単に遊郭の説明をする。
「そう、なら──」
ユキが白い頭巾を目深に被ると彼女の存在が希薄になったような気がした。
「すごいな。そんなことも出来るのか」
「話しかけないでくれる? 意識を向けられると効果が薄れてしまうの」
「ふむ。わかったよ。なら俺の後ろについてきてくれ、何かあれば袖を引いてもらえれば……」
ユキが小さく頷いたのを確認して、遊郭に一歩足を踏み入れた。
⚫︎4
聞き込みをしている内に日が暮れた。一室を借りて待っていれば連絡もしたし桑島とも合流できるだろう。
「さて、一度情報を整理するとしようか──」
紙と筆、硯を用意していると窓際に座っていたユキがぴくりと反応する。
「どうした?」
「……鬼を探しに来ているのよね?」
窓の外を指差すユキ。指差した方には何人もの通行人がいたが──。
「見つけたのか!?」
「鬼と人なんて全然違うじゃない」
ここは二階だ。一階に降りてあの場所に行くには時間がかかる。日輪刀を腰に刺すと、ユキを抱き上げ窓の外に出た。なんだなんだとこちらを見る人々に隠れて路地裏に逃げていく姿が。
「あいつか!」
瓦屋根の上を勢いよく走る。耳のいい桑島が騒ぎを聞きつけて、俺の視線の先にある路地裏へ真っ先に走り込む。
鬼を追いかけて行った先で、桑島が倒れていた。
身体に無数の穴が開いている。日輪刀が抜かれた状態で落ちているということは斬りかかろうとしたのだろう。
──ドクドクと血が流れる。明らかに致命傷だ。
ユキが桑島を一瞥し、片手を翳した。瞬きの内に桑島の傷が癒える。いや、着物まで修復されてまるでなかったことになったかのような……。
「痛いーーー!!! 痛いよーーー!! 俺死んじゃうよーーー!!」
「おい! しっかりしろ! 声が出るってことはもうなんともないだろ!」
「──え? あ、ホントだ」
桑島は自身の身体をぽんぽんと叩いている。
「鬼はどこへ逃げた!!」
桑島にかけた問いに反応したのは俺の腕から降りたユキだった。真っ直ぐに路地裏の一角を指差す。
瞬間、鬼がこのまま隠れてはいられないと飛び出してきて──。鬼の身体からハリネズミのような無数の赤黒い針が出てきた。
「その針を斬りなさい」
ユキが言う。俺は躱しながら抜刀の構えをとり角度をつけて斬撃を放ち赤黒い鋭い針を切り落とす。針だと思ったものは切り離された瞬間には霧散した。
「動いて!」
「あひぃ!」とユキに蹴りを入れられた桑島が、落ちていた刀を手にして脚に力を込める。桑島の放った雷撃のような一太刀で、針を失った鬼の首を取った。
その後、最寄りの藤の家にて。
「いやー! うまい! うまいなー!」
桑島が浴びるように酒を飲みながら用意された食事をニコニコと笑いながら食べ進めていた。散々飲み食いして気持ち良さそうに寝ている桑島を放置し、俺はユキの様子を窺う。
「まだまだあなた達の剣技は形になってないわね」
ユキがそう指摘した。
「形になっていない?」
「そうよ。鬼と戦うには……いずれは鬼の総大将と戦うには、今よりもっともっと強くならないと──」
「君は何を知っているんだ!!」
ユキの肩を掴んでつい声を荒げてしまう。
「そうよ。私は知っているだけ。知っていたって彼の側にいられないなら何の意味もないわ……」
ぽろぽろと涙を流すユキの表情に言葉を失った。
「あぁ、そんな……君を泣かせてしまうなんて……」
親指で涙を拭いながら特に意識せず額を合わせる。すると、見たこともない光景が頭の中に流れ込んできた。
⚫︎5
──彼女は、ユキは生まれた時から孤独だった。
親というものが存在しなかったようで、庇護も受けず、ただ孤独に、知識を深め、自身を知り、世界を知った。
ユキのこれまでは俺が今まで生きてきた内容とは、まったく違う。
しかし、彼女もまた俺と同じように誰からも期待されていないことに気付き、心を閉ざし、白黒の世界で生きてきたのだ。
──俺はますますユキに惹かれていった。
彼女のことをもっと知りたい。彼女ともっと話したい。彼女ともっと親しくなりたい。彼女にもっと触れてみたい。彼女にとって唯一の相手でありたい。
学園を卒業できなければ、迎える結末は消滅のみかと諦めかけていたところで彼女は出逢った。
煉獄家の長子……名を杏寿郎。
俺の兄ではない。どこか別の時代、もしかしたら別の世界の煉獄家に生まれた者なのだろう。そいつもまたユキに好意を抱いて彼女のために戦うことを決意する。
元服してもいなさそうなそのガキは、やる気と大声だけは人一倍でユキを振り回して困らせていた。
俺ならばユキを困らせたりしない。俺ならもっと彼女を理解して寄り添えるはずだと思った。
そして、そいつはユキを卒業まで導くとあっさりと見捨てて元いた世界に帰っていった。
──眩しい光を感じて目を覚ます。
ユキが心配そうに俺を覗き込んでいた。
「ユキ!」
起き上がった勢いでそのまま彼女を抱きしめる。
「もう大丈夫だ。俺は君を見捨てたりしない!」
「何を言って──」
「俺は君と共にいる。この世界だって捨てられる」
「!?」
ユキは俺の腕から逃れ距離をとろうとしていた。
「俺は君のことを一番に考えるよ。だから、もう君を見捨てた奴のことなんて忘れていいんだ──」
「やめて!!」
強い言葉と共に突き飛ばされるが、ユキの力ではさほど強くも感じない。
「違う。私は見捨てられてなんか──」
彼女だってそう思うところもあるのだろう。不安そうな表情に同情してしまう。
「杏寿郎は君を見捨てたんだ。待っているだなんて人任せにして」
もう一度ユキに手をのばす。
「違う!!」
俺の手を彼女は振り払った。
「……」
こんなにユキを想っているのにわかってもらえないなんて──。
「──!?」
強引に腕を掴んで強く抱きしめる。
「これほど強く君を想っているんだ。杏寿郎を探すことなんてもうしなくていい。君は君の思うままに物語を紡げばいいんだ」
唇同士を重ねてユキを黙らせる。
──初めての口吸いは血の味がした。