混沌より這い寄る透き通った青春   作:過負荷の後輩

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第十八話『救出作戦開始』

 

カイザー基地は砂漠のど真ん中にあった。元々二つの掘り出し物があるせいか、とにかく警備が厳重だ。今現在、僕とシロコちゃんが陽動を仕掛けて敵の注目を引いている最中だけれど、引っ切り無しに襲ってくる弾丸や爆発物に埒が明かない状況だ。

 

「それでは、状況を開始いたしましょう」

 

だけれど徐々に時間が経つにつれて戦況は変わっていく。具体的に言えば――空を覆う砲弾。

轟音を鳴り響かせて派手に吹き飛ばされる機械の兵士たち。近くの傾斜と小高い丘地の上には幾つもの主砲が並んでいた。

そう、ナギサちゃん達――トリニティの部隊がやってきたんだ。

 

「私達も行こうか」

 

それを皮切りに反対側からヒナちゃん達ゲヘナの増援が到着して、何とか正門をこじ開ける事に成功した。機械の身体をしていても焦るものは焦るのだろう。兵士の一人は通信機器を片手に何とかしようとしているが、しかし。

 

「クソゥ……何故本部との連絡が取れない!」

 

「わ、分かりません! 突如としてこちらの通信機器が故障し……恐らくジャミングがされていると――」

 

「バカな! ここの施設力を上回るジャミング性能を持った機器など、そんなのある訳が――」

 

あるんだよねえ。それが。

まあ僕にも事情は知らないんだけどさ。

 

螺子で壁際に張り付けた僕は、改めて戦況を確認する。

どうやらいい感じに混戦状態になっている様だ。こちらに投入する戦力もあるだろう。

ならば今の内に中に突撃してさっさとホシノちゃんを奪還しなければ。

 

間もなく先生が四人に守られながら、タブレットを片手に入口までやって来た。

 

『それにしても良くこんな高価なものを貸してくれたね』

ミレニアムサイエンススクール……だっけ?』

 

僕はポケットの中に入れている携帯とは違った小型の黒い機器を取り出す。

この小さな機械一つで、ここら一帯の電波全てが狂うだなんてまるでスキルみたいだな。

一応この事は事前に皆にも報告してあるから、混乱は無いと思うんだけど――大丈夫かね。

 

先生は汗を拭いながら僕の質問に答える。

 

‘‘私のお願いを叶えてくれたユウカのお陰だよ‘‘

 

『ふうん。しかしそのタブレットは大丈夫なんだ』

 

‘‘このタブレットは特別製だからね。さあ、ホシノを助けに行こう!‘‘

 

 

そんなこんなで良い感じにアビドス対策委員会の皆と基地の内部に突撃したんだけど……。

そもそも通路が入り組んでいる&照明が落されているせいで難航していた。

僕なんか三回壁に激突して六回くらい殺されているよ。

向こうは暗視付きの完全武装で、シロコちゃん達がどうやって戦っているかと言えば、まず先に撃たれて(キヴォトス人だから一発二発なら死なないから)、その射線上を予測して撃ち込んでいるらしい。それで実際に倒せているのだから凄まじい。

 

「前方! 二手に分かれてますね……」

 

今回は珍しくドローンだけじゃないアヤネちゃんが眼鏡を押さえながら目の前に別れている二つの道を指差した。手に持っている大きなタブレットにはここの簡易的なマップが表示されている。

黒服ちゃんが用意してくれた代物らしい。その情報によるとここを右折すればホシノちゃんのいる部屋に辿り着くらしいけど……。

 

『この騒ぎを聞きつけて別室に移動されていてもおかしくはない』

『それじゃ、僕は左の方を行くよ。先生は皆の方を付いて行けば良い』

 

「そんな危険です! 六人いますし、三人三人で分けた方が――」

 

『おいおい。せっかく囚われのお姫様を助けに行くんだぜ?』

『最初に見せる顔が僕だった時のホシノちゃんの表情を考えて見なよ』

『ホシノちゃんが最初に見る顔は、やっぱり後輩であって欲しいんだよね』

 

「球磨川先輩……」

 

『戯言だけれどね。それでも大事なことだ』

『特に君たちの間では』

『言いたいこと言わなきゃいけない事、言わせたいこと沢山あるんだろう?』

『なら次にすべき事はもう分かっているよね』

 

僕は後方へと螺子を一投し、暗がりの中で銃器を構えている兵士の一人を地面へと縫い付けにする。

やれやれ、どうやらまだ残っているらしい。ここらでヘイトを全て僕の方に向けるのもありかな。

僕は彼女たちとは離れて、まだ残っている彼らの前に立ちふさがる。

顔だけ動かして後ろへ振り向いて言った。

 

()ってらっしゃい――()ってらっしゃい

 

 

「「「「いってきます!!」」」」

 

 

うん。いい返事だ。

僕は離れる彼女らとは反対側へと向き直り、螺子を二本持ち構えて、機械の兵士たちと相対した。

幾ら向こうの手に銃器が握られていようと、この遮蔽物が無いにも等しい通路であれば、制圧術に長ける僕の方が圧倒的に有利だ。

足や胴体に数発良いのが入るけれど、そのまま僕は螺子を突き刺して横の壁へと張り付けにした。

 

そして自分も倒れる。

 

倒れるというか――死亡だね。

 

いやいやお恥ずかしい事に、今の動きをするだけでも精一杯だ。

無力化している訳じゃないからね。痛いのは痛いし身体が保たなかったら死んじゃうよ。

死亡後に自動で発動される『大嘘憑き(オールフィクション)』が無ければ話にならない。

 

『さて……と』

 

起き上がった僕は先ほどの別れ道の所まで戻って、皆が行かなかった方向へと進んでいく。

進んでいく毎に道を塞ぐ兵士たちの数が増えていく。どうやら僕にとってこっちが当たりらしい。

適当に片付けながら、遂に最奥にある固い鉄の扉に手を添える。

 

大嘘憑き(オールフィクション)

 

如何に強固なセキュリティを張っていようとも、この前じゃ全て片無しだ。

前にあるのは白い巨大な艦船だった。ビンゴ、あれが先生が言っていた『ウトナピシュテムの本船』か。

実際の所この戦いにおける僕の目的は正にこれの存在だ。

 

未知なるオーパーツで作られたこの船――船というか戦艦だねもはや。

これがあれば、もしかしたら僕が元の世界に戻れるかもしれない。

荒唐無稽な話にも思えるけど、それを実現させてしまいそうな力はありそうだ。

それにあのカイザーが何年も掛けて捜索してきたという代物だ。破格の性能は持ち合わせてあるだろう。

 

こんな物騒なもの、ちゃんと首輪つけとかないとね。

 

「動くな! 両手を挙げろ!」

 

「貴様何をするつもりだ!」

 

残っていた数人の機械兵士がアサルトライフルをこちらに向ける。

僕はその中を悠々と歩いて、その存在感を確かめる様に見上げる。

なまじ僕が空手だから何をするか読めないんだろう。怪訝な表情のまま、声を荒げる。

 

うーん、なまじ空間が広いだけに全員を相手取るのはちょっとキツイな。

仕方ないかー。

 

「ま、待て! こいつ全身に手榴弾を隠し持っているぞ!?」

 

「ここで死ぬ気か!?」

 

「自爆だと!??」

 

『あらら。もうバレちゃった』

『そうだよ。皆大好き手榴弾さ』

『これだけの量があればこの室内もろとも吹き飛ぶね』

 

「狂人に付き合ってられるか! 各員、退避ーー!」

 

『因みに逃げ道は無かった事にしといたよ』

 

『あ』

 

『それではみなさんご唱和ください――』

 

「「「やめろおぉぉぉぉっ!!」」」

 

 

『It`s All Fiction!!』

 

 

瞬間、室内に閃光が迸った。

 

 





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