戦鬼絶唱シンフォギア   作:MAI²

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超お久です、なんとか生きてます。



第七話 なお昏き深淵の底から

 

ネフシュタン?とやらの鎧を纏ったあの女の襲撃から、一週間が経った。

あれからあの女が再び襲撃を掛けてくる事もなく、今日も今日とて、俺は響にお好み焼きを焼いていた。*1

 

「で響、最近運動始めたって?」

「んぐ?モグモグモグ……うん、未来から聞いた?」

「あぁ、前に言ってたボランティアに続いて、今度はアスリートにでもなるつもりか?」

「あ、アハハ……ほ、ホラ!シキ君のお好み焼き美味しいからなー!体動かさないとカロリーがなー!なんちって、アハハ……」

「俺から言わせりゃ、お前も未来も細っこすぎるぐらいだぞ……」

 

『最近響の奴、弦十郎の旦那に稽古つけて貰ってるみたいでさぁ、よくアレについていけるよなぁって思うんだよ……いやぁ、若いっていいねぇ』

『二つ三つぐらいしか変わらないだろお前』

 

思い返す天羽 奏の台詞。

改めて見れば、明らかに付きつつある筋肉。

脳裏に浮かぶ、赤いシャツの筋肉ダルマ。

 

(最終的に、響も素手でコンクリを砕いたりしだすんだろうか……)

「……あの、シキ君?そんなに見られると、少し恥ずかしいなー、って思ったり思わなかったり……どうしたの……?」

「響、せめて人を辞める前に声掛けてくれ、俺にも心の準備ってものがな……」

「本当にどうしたの……⁉︎」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

数日後

 

広木防衛大臣の殺害、ノイズ出現の頻発化に伴い決定した、完全聖遺物「デュランダル」の移送。

その警護が二課に言い渡された。

 

「防衛大臣殺害犯の検挙を名目に検問を配備、移送先の“記憶の遺跡”まで一気に駆け抜ける」

「名付けて『天下の往来独り占め作戦』!」

 

弦十郎と了子によって説明される作戦を聞かされる装者3人。

 

「所で、ずっと聞きたかったんですけど、完全聖遺物って何なんです?私達のシンフォギアと何が違うんですか?」

 

響が疑問の声を上げる。

それに応えるのは、聖遺物研究の第一人者了子。

 

「響ちゃん達のシンフォギアに使われているのは、あくまで聖遺物の一片、それだけでは殆ど力の無い唯の欠片よ」

 

翼ちゃんのはアメノハバキリ、奏ちゃんや響ちゃんのはガングニールの、ね。

そう言われ、先輩二人に視線を向ける響。

二人の胸元で輝くギアペンダント。

 

「対して完全聖遺物、これは世にも珍しい、ほぼ欠ける事なく現存している聖遺物。都度起動する必要があるギアとは違って、一度起動すれば半永久的に動かし続ける事が出来るの。加えて、ギアのように、個人と聖遺物の相性の良し悪しも関係無し、適合者を必要としないのも特徴ね」

「ほへぇ〜」

 

小難しい話に、気の抜けた返事しか出来なくなる響。

 

「このデュランダルや、先日のネフシュタン、そして同時に確認されたノイズを操る杖のような物、現状こんな所かしら」

「あとは紫鬼のロンギヌスの槍、だろ?」

「え?紫鬼さんのもなんですか?」

 

響の脳裏に浮かぶ、真紅の槍。

 

「てっきりあれもシンフォギアかと……」

「気持ちは分かるけど、そもそもの話、シンフォギアは現状、女性にしか扱えないシステムなのよ」

「じゃあ、紫鬼さんが持ってるあの槍も完全聖遺物……?」

「とも、言えないのが現状なのよね〜」

 

そう言ってタブレットを見せられる響。

そこには、周囲の音を拾った音声データが。

その一つが再生される。

 

『Dep…… Odi Long……s Ziz……』

 

「これは、歌?」

「そう、数少ない、紫鬼くんのものと思われる聖詠よ」

「……?あれ、完全聖遺物は」

「そう、起動した完全聖遺物には歌は必要ない。でも、男性にはシンフォギアは扱えない」

「???」

「混乱するのも無理はないわ。私達でも直接調べて状態を確認したわけじゃないから、現状これを「半完全聖遺物」と呼称することしか出来ていないの」

「半完全聖遺物……」

「加えて、アタシ達のガングニールとおんなじ周波数を出してるってんだから、初めて見つけた時は大混乱だったもんなぁ」

「?????」

「ちょっと奏!立花の混乱をより深くしてどうするの!」

「ま、その話はおいおいね♪」

 

頭から煙を吹く響。

空気を変えるように手を鳴らす弦十郎。

 

「兎も角!まずはデュランダル移送においての班分けを……皆、耳を塞いでどうした……?」*2

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

デュランダルを載せた車に運転手の了子と直衛に響。

その周辺には、護衛車が数台。

機動力に優れたバイクに、翼と奏。

さらに上空のヘリから弦十郎が直接指示を出せる万全の体制。

 

何事もなく事が進むかと思われた時、事態は急変する。

 

「了子さん、橋が!」

「おいでなすったわね!」

 

前方の橋の一部が突如として崩落、急ハンドルを切った了子達は兎も角、間に合わなかった護衛車の一つが転落──する直前で、飛び出した奏が車ごと橋の基部に縫い止める。

 

『奏!』

『アタシは大丈夫だよ翼!先に行っててくれ!』

「しっかり掴まっててね、あたしのドラテクは凶暴よ……!」

「は、はいぃ!」

『敵襲だ!まだ目視で確認出来ていないが、ノイズだろう!』

「この展開、想定していたより早いかも!」

 

了子の駆る車が通過した直後、マンホールが吹き飛び、直上の護衛車が突き上げられ空を舞う。

 

『下水道だ!ノイズは下水道を伝って攻撃してきている!』

 

再びマンホールによって、今度は前方の護衛車が吹き飛び、響達に向かってくる。

 

「ぶ、ぶつか──」

『ハァ!』

 

 

 

衝突の直前、飛び上がった翼によって護衛車が前方から綺麗に両断され、車内の人員も回収される。

 

「翼さん!」

『頼むぞ立花!』

「サンキュー翼ちゃん!」

 

一切アクセルを緩める事なく、全速力で突き進む。

しかし、場所が悪かった。

 

「弦十郎君、ちょっとヤバいんじゃない? この先の薬品工場で爆発でも起きたら、デュランダルはッ」

『分かってる、さっきから護衛車を的確に狙い撃ちしてるのは、ノイズがデュランダルを損壊させないよう、制御されていると見える!』

「それって……!」

 

制御されたノイズと聞いて先日の少女の顔が思い浮かぶ響。

 

『狙いがデュランダルの確保なら、敢えて危険な地域に滑り込み、攻め手を封じるって算段だ!』

「……勝算は?」

『思いつきを数字で語れるものかよッ!』

 

残された一台の護衛車と共に薬品工場の敷地に突入する一行。

下水道から飛び出し姿を現したノイズが、護衛車に飛び掛かる。

車内のエージェントはすぐさま離脱。

制御を失った車は、そのままプラントに突っ込み爆炎を上げた。

その様子を見て、ノイズの動きに躊躇いが見えた。

 

「狙い通りで──“ガタンッ”」

 

喜びも束の間、パイプに片方のタイヤが勢いよく乗り上げ、そのまま車体が傾きだし、横転。

上下逆さまになりながら回転。

 

「うえぇぇぁぁあああああ⁉︎」

『南無三……!』

 

なんとか停止した車から這い出す二人。

その周囲はすでにノイズに包囲されていた。

 

「り、了子さん……!これ(デュランダル)、重……!」

「だったらいっそ、ここに置いて、あたし達は逃げましょ♪」

「そんなのダメです⁈」

「そりゃそうよね……」

 

移動しようとする二人に迫るノイズ。

横転した車に突っ込み、爆発。

衝撃で響は倒れ込み、デュランダルが収められたケースが手から離れる。

 

「くっ、見えん……!二人共、早く来てくれ……!」

 

肝心の司令塔も、先の爆発の煙で現場の指揮が困難になっていた。

再び飛び掛かるノイズ、絶体絶命かに思われたその時、響の前に了子が立つ。

ノイズに向かってその手のひらが向けられ、紫の波動のような物が放たれる。

それは接触するノイズの攻撃を弾き、消滅させていた。

 

「りょうこ、さん……?」

 

摩訶不思議な現象に目を見開く響。

 

「しょょうがないわね。アナタのやりたい事を、やりたいようにやりなさい」

「!…………私、歌います!」

 

何はともあれ、先ずは目の前のノイズだ。

頷いた響は、歌を口にする。

 

「Balwisyall Nescell gungnir tron」

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

その様子を観察するように見つめる人影。

 

「…………………………」

 

ネフシュタンの鎧を纏った少女。

何を思うか、無言で響と了子達を見つめている。

 

「高みの見物たぁ良い御身分だな?」

「……出やがったな、紫鬼」

 

その背後に現れた紫鬼。

意識を切り替えた彼女は、すぐさま手元の杖から光が発され、二人の周囲を大量のノイズが囲う。

しかし、紫鬼の視線は、未だノイズ相手に接戦を繰り広げる響に向かっていた。

動きを見せない紫鬼を前に、再び彼女の視線も響に向かう。

 

(思えば、これまでの響の戦いは、常にあの二人の何方かが付いての、連携ありきの戦いばかりだった)

「なんなんだよ、アームドギアも無しに、あんな……!」

(守る奴が居るだけで、一人でもあそこまで……守るという覚悟に、ガングニールが応えようとしているのか……?)

 

一方の了子もまた響の戦いに目を奪われていた。

背後から鳴り響く電子音、目を向ければ、デュランダルが収められたケースのセンサーが赤く点滅し、内部のロックが外れた。

 

「この反応は……まさか⁉︎」

 

思い当たる節があるのか、再び視線が響に向かう。

当の響は、接戦とはいえ多対一の数の不利に苦心していた。

そこへ、更に紫の鞭が襲いかかる。

咄嗟に避けた響に、ネフシュタンを纏った少女が蹴りを放つ。

 

「今日こそはモノにしてやるッ!」

「あっ、んにゃろ!いつの間に!」

 

響に加勢しようとした所で、先に喚び出されていたノイズに足止めをくらう。

 

「っ!邪魔!」

「テメーはそこで指しゃぶって見てるんだな!」

 

同時に響も、紫鬼の存在に気がつく。

 

(紫鬼さん、来てくれて……でも、足止めされて…………私ダメだ、まだシンフォギアを使いこなせていない……どうすれば、どうすればアームドギアを……⁉︎)

 

地面に叩きつけられる響。

じわりと心に焦りが生まれる。

 

瞬間、異音。

 

ケースを突き破るようにして、一本の石器のような大剣が空中に飛び出した。

 

「覚醒⁉︎……起動⁈」

 

突然起動した完全聖遺物「デュランダル」。

黄金のオーラを放ちながら宙に静止している。

 

「コイツがデュランダル……!」

 

それを手に入れようと飛び上がるネフシュタンの少女。

 

「させるかぁ!」

「がっ⁉︎」

 

横から突っ込んできた紫鬼によって阻止される。

足止めに放たれていたノイズを殲滅して駆け付けたのだ。

 

「鎧に杖に、今度は剣か!手癖が悪いんじゃあねぇか⁉︎」

「テメェ、あの数のノイズを⁉︎」

 

取っ組み合う二人、鞭をしならせ、それをデュランダルに向けて伸ばす少女が優勢かに思われたその脇を、橙色の少女が駆け抜けた。

 

「融合症例⁉︎」「な、響⁉︎」

「渡すもんかぁ‼︎」

 

響の手が、デュランダルの柄を掴む。

 

ゾッ

 

「ッ⁉︎」

「はッ⁉︎」

「あッ⁉︎」

 

一瞬、世界が反転したのかと思う程の『圧』が、デュランダルから放たれる。

直後、先よりも更に激しく輝きだすデュランダル。

黄金と赤黒いオーラを天高く放ちながら、黄金の眩い姿へと変じていく。

 

それを握る響にも変化が現れる。

 

「うぅぅ、ウウウウゥゥ……Uuuuuu……◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️ッ‼︎!」

 

見開かれた瞳は、理性を失い赤く染まり、その口からは獣の如き雄叫びが上がる。

 

「響⁉︎」

「コイツ、何をしやがった⁉︎」

 

咄嗟に背後に視線を向けた少女。

視線の先の了子は、この異常事態に、何故か狂気的にも見える笑みを浮かべている。

 

「そんな力を、見せびらかすなぁ‼︎」

 

再びノイズを召喚する少女。

すると、響はゆっくりと視線を少女に向ける。

 

「ッ⁉︎」

 

その圧を感じ、声にならない小さな悲鳴を漏らす。

呆然とする彼女に、一切の容赦なくデュランダルを振りかぶる響。

 

「◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️◾️ッ‼︎!」

「馬鹿、避けろッ!」

 

少女の首根っこを掴み飛び出す紫鬼。

デュランダルの刀身から放たれたエネルギーの刃が、ノイズ諸共工場を切り裂き、周囲一帯を爆炎で包む。

 

「お前⁈……アタシは、アイツを捕まえて……」

「言ってる場合か!どう見たって異常事態だっての、今日は退いとけ!ついでに二度と来んな!」

 

瞬間、一際大きな爆発が起きる。

そのまま少女を放せば、彼女も抵抗せずに姿をくらました。

紫鬼もまた、その衝撃に乗じてその場から離れる。

 

「………………」

 

気絶し倒れ伏す響、それを怪しい笑みで見守りながら、手から発したバリアのようなもので、瓦礫を防いでいる了子を見つめながら。

 

(ノイズが出たと思って来てみりゃ、OTONAモドキに、トンデモ聖遺物……やっっっぱり二課も、まだきな臭い……な)

 

 

 

*1
おばちゃん「買い物行ってくるから、後は若いのでごゆっくりー」

*2
※ヒント:OTONA猫騙し




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