「毎日生命線を彫刻刀で延ばしてる俺が死ぬわけないだろ」「手相以外の知識を捨てて来たのは分かりました」   作:遺書の切れ端

12 / 44
高校3年6月06日 火曜日
不在票の天使


 

 いつもの部活への渡り廊下を歩きながら『言えないキスは癒えない傷』というフレーズが走ったが、廊下では走ってはいけないのでフレーズに注意した午後。

 

 ピカピカ(コインランドリーのお陰)ブレザーの俺はピカピカ(俺のお陰)文芸部の扉を…………扉を開けるとそこは

 

 

────文芸部でした

 

 

(てれてれーん♪)

 

 選手生命も断ち切られた上に掃除まで押し付けてきた後輩と目合(まぐわ)う。

 

「西藤哲也って言います!主食は眠剤! でも寝れない夜ばかりをキミと過ごしてます!よろしくね!」

 

 いつも通りの挨拶を交わす、今日から始めるいつも通りなので昨日まではやって無かったとか関係ナイトフィーバー。

 

「それホントに言ったのですか?」

 

 多分、新学期の自己紹介挨拶を差してる言葉。何故ならコイツは友達が居ない(予想)ので学校の話題は行事関連でしか埋まってない(断言)

 

 目の前のクラスメイトが自己紹介で笑いを取ってしまうと、次の人は無意識に上がったハードルを超えられずに焦って空回りしてスベり、その無様な姿が渾名(あだな)で1年を過ごしてたりする。

 

「俺は教師に(うと)まれてるから自己紹介は飛ばされたぜ」

 

「想像を超えていきますね……先輩はよく教室で息が吸えますね」

 

 俺は気づいたんだ、これは教師からの『言葉ではなく行動で自己紹介して魅せろ』という熱いメッセージなのだと、確かに受け取ったぜそのバトン。

 

「今日の文芸部の活動はスタバでカップにメッセージを書かれて逆ナンされるまで帰れないに決まった」

 

「一生頑張っててください」

 

(そんなかかりそうだ)

 

「無策では無いのだよ、ヒイワトソンくん。まずはお前をバイトの面接に送り込む」

 

「他力本願以前に他力を借りれない人望の無さに気づいてください」

 

「俺達ってそんな仲だったのかよ!!!!!」

 

「うっすうっすです」

 

 世間は冷たい、やっぱり東京がいけないんだ。東京さえ無くなれば皆幸せなのに、という思想が芽生えるわけもなく俺東京好きだし。行ったことないけど。

 

「金魚すくいのポイより薄い?」

 

「あれで命を選別してると思うと人道的に間違ってる気がしますよね」

 

(ポイ製造者もそこまで思ってない)

 

「どうせ柊じゃ履歴書で落とされるから捕らぬ狸か」

 

「受けて立ちますよ、銃なんか捨ててかかってきてください」

 

 クソ田舎なのでスタバなんてそもそも近場に存在しない、在るのは綺麗な空と自然。

 

 ごめん田舎、クソは言い過ぎた。バスも電車もあるもんな、ただスタバが無いだけでクソ田舎なんて言われて当然だろ。

 

「先輩は夏服にはしないんですか?」

 

 昨日のを終えてコイツは半袖のワイシャツのみになっている。俺はピカピカブレザーを未だに着こなしていた。分かってない後輩を見下し、これだから柊は終と見間違うような名前なんだと呆れかえる。

 

「リスカしている生徒が浮かないように長袖を貫いて生きていくって決めてるんだ、邪魔をするなッ!この反メンヘラ学会の犬め!!」

 

 犬を歩かせるな棒に当たるだろ。

 

「私、犬より猫の方が好きです、散歩とか要りませんし」

 

 楽な方で生命を選ぶなんて烏滸(おこ)がましい、恥を知れ。

 

「俺はお前の方が好きだよ」

 

「あっそういうのも要りません」

 

(いつなら要るんだろうか、感染症伝染病の世界的な流行とかぐらい追いつめられても結ばれない気がしてる。世界が平和だから俺の告白が活躍する隙が無いと思い込もう)

 

「柊が居ない世界なんて耐えられない!!!81年しか」

 

 軽く(むせ)び泣いて主張する青年に気分的になった。

 

白寿(はくじゅ)まで生きないで即追いかけて首吊ってくださいよ」

 

 百歳から頭の1を取ったら白になるから99歳は白寿と言うやつだ、変な知識ばかり偏ってるな。

 

「俺は追うより追われる方が好きなんだ」

 

 サバンナ感を出しとく。

 

「では先に死んどいてください、追いかけますので」

 

 追ってくれる気がしない。

 

「死は救いなんだ、死んでからが人生の本番だから生きるとは死ぬこと、死=生、として死ぬまで生きている間に何を成せたかということが分からない挙句、死んだ後は人生が観測できない「完結に」

 

 俺の死生観が簡潔を通り越して完結させられた。

 

「人の夢は終わらねえ!」

 

「聞いて損しました」

 

 落ち込んで、ぐでっと突っ伏してる、これが机だらけ柊のオス。主に6月に観測されている。

 

 ▽

 

 キーンコーンカーンコーン、と『学校にもう居るんじゃねぇジャリどもが』の意味を込められた最終下校チャイムが鳴り響く。ロリに対してメスジャリと言う大人は信用できないと統計が出ている。

 

 俺は一先(ひとま)ずメスジャリが帰る現象を目撃しようと、文芸部で立ちんぼをしていた、座れよ、と自分へのエールを贈ったが届かないらしい。

 

「先輩が帰るまで待っていたんですけど……墓穴(ぼけつ)を掘った感じですかね……?」

 

 墓穴の話か、任せろ。

 

「埋葬するなら天台宗(てんだいしゅう)真言宗(しんごんしゅう)浄土宗(じょうどしゅう)浄土真宗(じょうどしんしゅう)臨済宗(りんざいしゅう)曹洞宗(そうとうしゅう)日蓮宗(にちれんしゅう)どれ柊ん家?」

 

「そういうの年寄りとか煩いですよね、同じ宗教で寺なのに宗派(しゅうは)でまた別れて埋葬の仕方が変わるの私はどうでもいいと思っちゃいます」

 

 確かにジャリメスからは信仰心は感じない、だが幽霊は信じている。思考回路が少年漫画なんだろうな、人気投票の順位で死んだキャラが蘇るタイプだ。

 

(いやいや、待てよ)

 

 すぐ宗教とか国際に繋げるのは俺の良くないところ、元凶は間違いなく高校1年の時に選択科目で人気教科と不人気教科があり、教師が人数バランスを取る為に俺を勝手に倫理と世界史に入れやがった。

 

 そのせいで脳みそが宗教と国際に繋げる身体になってしまったんだ、2022年からは世界史という科目の名称が歴史統合に変更されたんだから俺の選択科目も変更してくれ。

 

 俺達は立ち上がり、帰り支度をしながら思考をする。相手の思考は知らない。あと俺は立っていたから立ちながら立ち上がった。

 

 

 

 

 学校の玄関、通称昇降口に着いたが、柊は相も変わらず物理的な距離が凄く離れている。仕方無い、先輩としてトークテーマを振ろう(心意気)

 

「アーマードなコアは詳しく知らないけど大豊娘娘(だーふぉんにゃんにゃん)だけは知ってるぞ」

 

「それ実質何も知りませんよ」

 

 少し近くなってきた。基本的に同じ知識量で殴り合うよりかは、ニワカな相手を見下せれる方が話していてラクなんだろうな。

 

 

「でも元カノが今はホストの彼女だって言ってたけど」

 

「ホストには彼女なんて居ないです、常識です」

 

「でもSNSでたくさん担当(ホスト)の本カノを見かけるよ」

 

「沢山居たらそれはもう彼女じゃないんです、『本カノ営業と育て』で調べてください」

 

「待て! 契約者よ!!」

 

 下校しながら駄弁ってたら変なヤツが飛び出してきた。やだ不審者怖い。不審者も俺のことを怖がってる可能性があるな。優しくしてあげなきゃ。くしくし。

 

「黙れ!お前とは道を(たが)えたはずだ!!!!二度と交わらない輪廻の理に逆らうな!」

 

 瞬時に脊髄反射的に言葉の刃を交わし合う。

 

「えっ知り合いなんですか?このコスプレ少女」

 

 面倒事に絡まれた顔を前面に押し出している後輩だが俺も被害者だ、被疑者の可能性までは認める。

 

「スーパー初対面だよ」

 

「ふーむ、前世をカウントしないならイグザクトリー」

 

 黙れと言ったのが効いたのか、少し静かになっていた彼女の言い分が確かなら前世の記憶が無い俺が知らなくても当然だな。

 

「また瘴気(しょうき)が濃くなって来ましたね」

 

 片頭痛で苦しんでるようなポーズをしてる後輩の気持ちが痛いほど分かる。俺もよく頭が痛くなる、物理的に。

 

「この小娘は中二病なのか?瘴気なんてもんは無かろう?」

 

「すまん、うちの後輩はちょっとイタいんだ」

 

「もういいです、私帰ります」

 

 とにかく足を出して後輩を転ばせよう。

 

「ヒギッ」

 

 地面ころび柊のオスの貴重な鳴き声だ。

 

「新手の攻撃か!?」

 

 通行人Aが警戒を漂わせてる。鳴き声の効果で攻撃力なら1段階下がったはずだ、まだ戦える。勝負は最後の最後まで最後だから。

 

「マズいぞ……!敵に囲まれている……!」

 

 俺は状況を整えながら発言を撤回しない。敵ってなんだろうか、社会かな政治かな。とにかく漠然(ばくぜん)としたモノを敵にすればいい。

 

「思いきり足を引っかけられたんですけど」

 

 柊が寝転がりながら抗議をしてきた、何自由気ままに寝てるんだ。

 

「死体が喋んな」

 

 8巻まで読まなかったのかよ。

 

「私死んでるんですか……」

 

「人は首を()ねても2秒生きてられるらしいからな! 早く死にすぎて気づけないというアレではないか!?」

 

 通行人の推理に頷きながら、

 

「流石、相棒」

 

親指を立てて褒める。海外だとサムズアップは侮辱的な意味にあたるらしいが侮辱的な気分なのでどっちに転んでもいい。

 

「契約者もやるではないか」

 

 何故か小指のサムズアップで返された、こいつやるじゃねえか。

 

「えっ(なん)で今の流れで仲良くなれるんですか?スラム街でももっとマトモな友情が生まれてます」

 

 立ち上がることを放棄した後輩の背中に通学バッグを落としとく。

 

「気軽にスラムとか言うな!非人道的人権集落!」

 

「ぅえ!絶対この鞄を河川に捨ててやります」

 

 柊の鳴き声の季節も終わってしまったらしい、左手で中指を立てながら俺の鞄を右手で離さない後輩。

 

(また来年、見に行こうね)

 

「伏兵なのか!?」

 

 臨戦態勢に入る相棒を励ます。

 

「警戒しろ!敵は近い!」

 

 実際の戦闘では声を上げていたら、こちらの位置が簡単にバレるとは思いたくなかった。

 

「このまま帰宅するのに何時間かかるんですかね……」

 

 道端で寝転がりながら柊は俺のスクールバッグを近くの草むらに投げ込んだ。多分、河川まで行くのが面倒だったんだな。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。