「毎日生命線を彫刻刀で延ばしてる俺が死ぬわけないだろ」「手相以外の知識を捨てて来たのは分かりました」 作:遺書の切れ端
ツーツーツーツー
放課後に空き教室の掃除当番で配置に着きに来た。
掃除当番は複数居るはずなのに、ここには俺しか存在していない。きっと皆は神隠しにでも遭ったんだろう。どうして俺だけ連れて行かれなかったのか?
真剣に考える。調べた結果!よくわかりませんでした!というまとめサイトが大好きだ。どのぐらい好きかと言うとF5連打でサーバーを落としたくなるぐらい。
俺は大人しく掃除を続ける。そこである結論と
一番のゴミは俺なのだから、俺が掃除をサボれば一番のゴミが教室から消えたことになる。教室を出ていき、つまり掃除はこれにて終了。
流石、現代の謎解きひらめきクイズ東大王の俺。
文芸部はそろそろ祟られてる気がするので俺は図書室へ向かう。
▽
がららーらん、引き戸を開けて受付をチラ見するが、やはり長谷部さんは相変わらず存在していない。きっと電子と同じで観測者効果が起きている。光子になってから出直さなければ。
「あの、図書室でもう暴れないで下さい」
座っていた男子生徒が近づいて言葉の釘を刺してくる。
ネクタイ色的2年生の初見さん、こんにちは。ゆっくりしていってね。と本人のチャンネルじゃないのに1桁のVチューバーに後方腕組み彼氏面しているコメントはいい加減射殺オーケーな世の中に俺は変えてみせる。
「君こそ図書室は何するところだと心得てる?果たして正しさは君にあるのか、こないだはバケツありがとう助かった」
俺は
「はぁ……」
なんか離れていった。
さて何を読もう、聖書を置いてないとは なんて日本的な無宗教国家なんだ、その割にクリスマスも正月も楽しみやがって羨ましいぜ。
図書館でバトルするとよくあるのが本棚で下敷きにして敵を倒す展開だな。あれをやって さっきの男子生徒を討伐しよう?
▽
俺は真剣に本棚ドミノを考えた、そうして気づいたら空が青からオレンジに変わり漆黒に飲まれようとしている。きっと世界の終わりなんだ、夜を知らないのかな。
「西藤くん、まだ居たの?そんなに本が好きなら鍵を閉めて一晩一緒に居させてあげるけど、どうする?失せて?」
長谷部さんが図書委員をしている、おかしい。この世界は本当に変わってしまったんだ。
「うるさい!!!俺は騙せても長谷部さんが図書室に居るなんて世界は騙されないぞ!!」
「あっそ」
ドアを流れるように普通に閉めてガチャっと音がした。鍵かな?鍵だよね。長谷部さんはやると言ったらやる凄みがある。これはあれだ。
図書室の左から3番目の窓から飛び降りて、体育倉庫の屋根に乗っかる、そこから靴箱に走り長谷部さんの靴を瞬間接着剤で固定する。
サインペンで『どう考えても世の中には2種類以上の人間が居るよね』と書いて、ついでに初心者マークも描く、下校をしよう。
ここにはもう用はない、そう思い体育倉庫の屋根を登り、また3番目の窓から侵入する。
ここだけクレセント?あの半回転する窓の鍵ってクレセントって呼ぶんだ知らなかった、それが機能していない。というか去年壊した気がする。知らない。
月明りと本に囲まれながら暇だったので貸し出し記録で人間考察を始めた。
人の趣味というのは興味深い直ぐに飽きた。他人興味ねえな、柊漫画しか借りてねえな。
スマホのバイブレーションを感じる。
確認するとユウキから電話がかかってきていた、きっと寝落ちするまで電波で繋がっていたいという思春期カップルがよくやるやつだろう。思わずスナイプする。
『哲也ぁごめん捕まったよぉ』
秘密警察か、手強いぞ。
「だから言っただろ治外法権まで逃げたり、踏み台してIP誤魔化せって」
『西藤っ!!私の靴に何してくれてるの!!!!』
在籍不明の図書委員の声だ。最近、よく人に怒鳴られるな、季節の問題か? 花粉症か、ティッシュの原料が花粉症の原因と同じスギの木だと知った時は自作自演具合にアッパレだと思った、こうやって人は成長するんだろう。
ユウキの彼女からの夜電に どう返答しようか悩む。
というか夜中に恋人同士の間に俺が混ざっていて良いのだろうか?着信を切らないと百合を邪魔する男モブみたいに思われるかもしれない、非常に心外だ。
「長谷部さん、確かに世の中は悪意に溢れている。だけど同じぐらい善意も溢れていると俺は信じたいんだ」
強く訴える。人が人を信じれなくなったら人で無しなのだ。
『そうだよぉ、哲也はそんなことする人じゃないよ、ねぇ哲也ぁ、それで初心者マークはどういう意味だったのぉ?』
ありがとう、マブダチ。
「ユウキだけだよ、俺を評価してくれるのは。倫理観が少なすぎて長谷部さんは人間初心者なのかな?って感じましたとさ、まる」
落ち葉マークと初心者マーク両方が貼られている車は怖い。落ち葉は差別的だからとシルバーマークに言い方が変わっているが差別を差別してるので使い続けよう。
『人間失格の西藤に言われたくないわね』
初心者以下になると文学的になるのか、未だに内容は知らないが失格した人間は知っている。
「俺まだ図書室で本燃やして暖を取って生き延びてるんだよ? それでも
『密室トリックというわけね、あとそれ夏目漱石よ』
(超速理解)
「犯人が双子のオチはムカつくよね?つまり俺はムカつかない、だから犯行不可能だよ、月は月、通訳すると貴方は貴方です」
ノックスの
『私が図書室に閉じ込めた以外にアリバイはあるのかしら?』
それをアリバイに判定されないのか、気に入るアリバイと気に入らないアリバイで犯人を決める名探偵は公害。
「
俺はマイベストガールに支援を要請する。
『えーっとねぇ、僕が思うに哲也は幽体離脱でやったかなと思いましたぁ』
ガバガバ推理可愛い、被告人守れや。
「それでも俺達はやってない」
複数形で攻める。
『いいわ、そこまで言うなら信じてあげる、でも上履きで帰らされたから八つ当たりで西藤をボコすことにするわね』
全く論理的な武装だ、太刀打ちできない。
「
カードゲームの基本は環境を使い続けて個性をひたすら捨てることが勝利の方程式なのだ。
『受け入れましょう、西藤くん。本は漫画以外全部燃やしておきなさい、おやすみ』
ふぅー、図書委員から放火の許可も降りたので一安心だ。
俺は早速何を燃やそうか迷う。選択肢が多いとついつい限定品を頼みがちになり、レギュラーメニューを一回も食べたことない奇人扱いをされてしまう。
だから俺は、また窓から降りて体育倉庫のマットで寝ることにした。
ガチャ、開かない。
真面目かよ、開いて。
図書室に帰ってカーテンを外して
西校の怪談七不思議の七つが生きている人間だから夜中の西校は怖くない。というか幽霊もこんな学校に居たくないだろう。俺だったらそうする、キミもそうする。
幽霊とか居ないのかな。
月と目が合う。
誰もが同じ月を視えてるのだろうか
《馬鹿は一つ以上覚えちゃいけないんだよ?》