「毎日生命線を彫刻刀で延ばしてる俺が死ぬわけないだろ」「手相以外の知識を捨てて来たのは分かりました」 作:遺書の切れ端
超☆スペクタクル
廊下をコツコツと歩いてると昨日の鍋は結局、俺が料理研究部に洗って返して柊が未だに何もしてないことに腹が立ってきたのでゴツゴツ歩く。
特に期待はしていないが何もしないと、それはそれでムカつくのは不思議だ、渋谷で海を見るぐらいに。
「西藤くーん!」
飯塚美咲さんだ、ミサッキーというあだ名が思いついたのでサを抜くべきか迷う彼女はこちらに駆けてきた。除夜の鐘が鳴っていたらシンデレラ扱いしていたな。
「
「一体いつからここが廊下だと錯覚していた!」
よく分からない慣れていないポーズで返事してくる飯塚さんは元気そうだ、もっと初対面の時は落ち着いてたのに『そうなんだ、西藤さんはその……個性的だよね……?』ぐらいのテンションだったのに、おかしい、西高校は人格矯正施設かもしれない。
「なるほど。間違っていたのは人間だったんだ」
こんな施設を創設させてしまった人間は間違っている。
「そうそう、コタツありがとね! だいぶ茶道部がスッキリしたよ、おかげさまでー!」
もう相手にしてもらえずに要件をぶつけられる、ドッ
「こたつ?飯塚の塚さん、なんの話をしているの?」
生まれて初めて聞いた単語で困る、産まれたばかりのヒナだったら親だと刷り込みが起きているレベルだ。最近『小学生の疑問に応えよう!』という、ひたすら電話で応えるバイトを夏休みに向けて募集をしていたが、去年『文鳥が逃げ出しました、どうすれば戻ってきますか!』というクソ質問が来たので『君、鶏肉を食べたことある?そういうことだよ……もう戻ってきているんだ……さあ お腹に手を当ててごらん、チュン!チュチュン!』と優しく教えてあげた。お前のことが嫌いだったからじゃない?と言わなかっただけ社会貢献した。
「知らないの?な、なんでかな?」
飯塚さんがその時のキッズよりかは数段下の
「実は文芸部の腹ペコ怪獣に風水的に相応しくないって廊下に出されたんだ」
大体、その場に居ないヤツの所為にしとけば丸く収まると元カノに習った。その上でそいつの悪口で盛り上がれば、なお良しだそうだ。
「捨ててないならセーフかなぁ?」
首を
文芸部の廊下は
「鍋パでお世話になったから王将バトルは回避しといた」
「……どういうこと?」
昔の飯塚さんのテンションに戻ってきた、やはり戸惑ってる方が彼女らしい。
「お詫びに俺、茶道部に転部しようって話」
「物凄く要らないよ。あと転部制度も無いよ」
確かに無いな。一度、偉そうな人に聞いたが『一年に一回部活を訊くのも面倒なのに転部なんてルールをなんで作らなければいけないんですか?』と学年主任が常識的に言っていた、賢い。
だから柊みたいな文芸部に紛れ込む愚者が出るんだが、新入生向けの部活紹介のところで文芸部は思いっきり飛ばされたので勝手に壇上に上がって抗議活動をしたところ教師陣に取り押さえられた、あれを見て入ってきたやつはどっかおかしいのだろう。
そう言えば柊はおかしかった、見てなかった説もある。
「挟み将棋と将棋崩しなら任せろ」
茶道部へのアピールポイントを紹介する、挟み将棋は動かなければ一生終わらない未完成ゲームだから お得。
「西藤君はいつも楽しそうだね、そういうところは憧れちゃうな」
顔が全然憧れてない、『こいつに主導権を渡しては駄目だ』と顔に書いてある。無ければ書いてやる。
「社交辞令だろ?」
「もちろん」
ラリーがスマッシュで帰ってきた。おかえり、今日の夕飯何かな?カレー?またかよ、でも二日目から本番だよね。とか言ってるやつは雑菌の繁殖力舐めてるの?なんでも火を通せば菌は死ぬと思うなよ。
「泣いた、帰る」
ただいま、カレー、文句言わないの、ドロップショット。
「じゃあね、コタツは寒くなったら取りに行くね」
厚かましい実家帰省宣言で家事を普段やっているから帰省した時ぐらいはサボろうという魂胆だ。そういう時こそ率先して
飯塚さんは言うことが言えて満足したのか去っていった。
「それまで無事ならいいがな!!」
俺は捨て台詞を吐く、コタツは冬まで生存できるのだろうか。餌も散歩も与えられず、ちょっと豚骨の匂いもする状態で。
「頑張って守ってー!」
遠くから声がしている、ブランド傘なんて知るかよ。と思いながら飯塚さんを見送った、そして見送られなかった。