「毎日生命線を彫刻刀で延ばしてる俺が死ぬわけないだろ」「手相以外の知識を捨てて来たのは分かりました」 作:遺書の切れ端
竜宮城アトランティスATK3300
一人でトボトボ帰宅しているつもりになっている。文芸部へと頻繁に通っていた自分へ挑戦状を叩きつけた、今日も今日とて俺は帰るんだ。
ん
長谷部さんの後ろ姿を見かけたのでヘソで茶を沸かすことに決めた。
「上履きで登下校している長谷部さんだ」
振り返って
「西藤、靴よこしなさい」
宣告をされる
「サイズ違うよ」
俺も負けずと警告する
「同じ目に遭わせるのが目的だから問題ないわ」
通告されてしまったら仕方ない
「ごめん、俺そのくつ?って言うの知らない」
無知は罪にならないと鍋で学んだ
「知らないなら要らないわよね」
靴紐の引っ張ると
忠告は聞くべきだった、やはり罪は罪なんだ。
「俺のスニーカー投資が!」
「履いてる時点で暴落してるから気にする必要は無いわよ」
立ち上がって鉄板の上だと錯覚する道路の温かさに
「そう言えば今、カメパンを食べてるんだけど、お
右手に日傘、左手にパンを詰め込んだパン屋のロゴが入っているビニール袋をぶら下げている。完全装備、じゃきーん。
「全部メロンパンね……こんな買い込んで何をしているの?」
そう言いながらも涙目になっているカメが連れ去られた。甲羅のビスケット生地はココア風味になっており夏が近いということも有り、中身のメロンクリームがシュークリームみたいな仕様になってヒンヤリしている。俺が袋越しに口で適当に取ったのは目がハートのカメだった、催眠アプリに違いない。
「トンビに
動画サイトで他人のホームビデオを巡回していたら、カメパンチャレンジというジャンルを思い付いた。パン屋に駆け込んでペインしてきた、唸れ。
「海開きまでもう少しね」
むしゃり、と食べている長谷部さんと歩幅を合わせる。
なんか普通に帰宅する流れだけど、とにかく足が熱いし痛い、これは恋?
「靴下の防御力では耐えられない」
「靴を持っているの疲れたから、感謝して受け取りなさい」
そう言って乱暴に投げ返される、優しい。
「長谷部さんへの感謝は言葉じゃなくて言動で返すね」
靴を受け取って履こうとする。
「っ」
2年以上の付き合いだけあって走る決断が早い、一瞬で人のあげたパンを俺の顔面に投げつけて目眩ましを瞬時にして走り去った長谷部。
「待てよ!!!」
お互いに追いかけっこが始まった、俺は靴を履くのを諦め捨てて靴下で追いかけてる。
「足がいけないぐらい太陽だ」
ここは電話だ、コールサイン、なーなーなーなな、なーななー。
『随分と弱くなったものね、雑魚』
「カメパンぐらいの優しさを竜宮城によろしく」
『食べた後にすぐ走ったから、こっちだって気持ち悪いのよ』
お互いにダメージは食らったらしい、残りは美味しくいただくのだろうか、落ちていてもどうせスタッフが残さず食べるので放置。
「というか帰宅してるけど図書委員は?」
『1年の時と同じ施錠で問題ないわ、元図書委員として活躍する時よ西藤くん』
「なんで俺だけフォーメーションラップみたいなことさせられる予定入っているの?」
モータースポーツを生半可に齧って用語を使いたくなった。それぐらい面倒な要求をされている。
『それって頑張りますって意味よね』
「再登校か、西藤だけに!?!?」
それを最後に通話は切られた。やっぱり文芸部に通わない呪いかもしれない。この二日間、ずっと帰宅で走らされているので絶対厚底ランニングシューズを買うと誓う。
ht
一昨日のスケープゴートがよっぽど効いたのか、昨日は先輩が文芸部に来なかった。
これは良い
「その……中井さんは文芸部では無いですよね? いいのですか所属部活サボっていても」
「私よりピアノが上手い人は居ないので問題ありませんよ、貴音ちゃんを構ってやれと昨日西藤先輩に言われてしまいましたので」
(人を囮にするなんて最低です)
「えっと、そうですね……お構いなく……」
「折り紙の残りがあるみたいですね、勝負いたしましょうか」
紙畳みに勝ち負けなんて何を先輩みたいな戯言を言ってるんですかね。
トントン
ノックが響いた。分かっていましたよ、私を囮にして逃げるような先輩
「失礼します、やっぱここに居たのか、中井戻れ」
でしたね、誰ですかね? 返事を待たずに入るならノックの意味ありませんけど?
ドアの前には黒髪に茶髪が混じりの綺麗なロングストレート、涼しげな爽やかなセンターパートも際立っていて表情が良く伺えますね。同じ制服だとは思えないフェミニンな着
訪問者の観察をしていると中井さんは立ち上がり礼をする。
「樫見先輩、わざわざ御足労いただきありがとうございます」
戻るように促されて素直に従って出ていく姿を見ると、やはり知ってる中井美代さんだと感じます。
(どこで歯車が狂ったんですかね?)
「貴音ちゃん、また機会がありましたら折りましょうね」
「折れたら折ります」
私は絶対に折らない人の返事をしながら、距離感は大事だと最近は強くそう思う。
「……」
何故か残る樫見?先輩です。ネクタイの色が紺色なので3年生だとは思うんですが、特に関係性は無いはずです。
「あの、何か他に用がありますか……?」
「そのさ、西藤怒ってた?」
「え? 先輩が?」
あの人が怒ってるところなんて見たことない。想像もつかないです。
「いつも通りでしたけど、知り合いなんですか? 意思疎通不可先輩を」
「だよなぁ……ペースが崩れないのはそれはそれでムカつくけど」
「私は付き合いが浅いですので、何か話したいなら直接喋れるように文芸部を開けときますが……」
こういう面倒事には近寄らないです。週の始まりに話してた手帳持ちに優しいギャルという人ですかね? なんとなく点と点が結ばれてきてますね。仲直りでも仲違いでも好きにしたらいいです。
「いや、そこまではいいんだけどさ。ただ、またどっかで来させてもらう」
そう言い残し退出していく樫見先輩。文芸部に文芸部員が来ないのに、どうして吹奏楽部部員の人口が増えていくんでしょうか……。
「居なくても人に迷惑かけますよね……ほんと……」
窓を眺める、日差しも入学の時より強くなってきて、暑さがそれをもっと自覚させてきます。風が吹き込んで、少し蒸し暑さを乗せて文芸部へ漂う。
そんな風に
「人身売買後輩いいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!」
窓から突入した己を鼓舞しながら参戦した。
「うぇ!?」
慌てて椅子からびっくらポンする後輩に詰め寄る、ぱくぱくの仇を取ってやるからな。ゴミ箱の底から見とけ。
「俺はな!この真夏に靴下で歩いてトンビが!!!カメを!カエルにも会った!そしてフォーメーションラップなんて言葉は二度と言わないとフォーメーションラップを組んでやった!!」
「そんな鳥類と爬虫類を並べられても知りませんよ!」
「カエルは両生類だ!!!小学校高学年からやり直せ!!後輩の後輩!」
「知ってますか?まだ世の中には議論の余地を残してる出来事が沢山あるのです、真実は時代共に移り変わりやすいのです」
「時代が変わってから真実を追いかけてくれ、それまでは時代に合わせろ」
「それすらも議論の余地があります」
「無敵かよ」
「先輩、折り紙は国から危険物指定されたので持ち帰ってください、超危険です」
「鶴られた?」
「いえ、鶴回避しました」
いちよう、パンのビニールと一緒に折り紙のビニールを合わせて持ち帰りカシャカシャ祭りになる。
「じゃあ俺、図書室で施錠卍リベンジャーズしてくるから来週ぐらいまた来るわ」
「二度と来なくても問題ないです」
「ごめんな寂しいよな、でも明日は料理研究部、通称猟犬に果てまで行ってQしてくるから」
「もしかして窓から入るためだけに靴下になったんですか……?」
出て行こうとすると足元に気づいたらしい。なったのではない最初からそうだった、産まれた時には皆裸足だったんだよ、俺は靴下だけどな。
「お前も気を付けろよ、コンクリは熱い通り越して痛い」
「一生使わない知識ですね」
ばたん、と文芸部の扉を閉める。
引き戸だから、ぎぎぎ、とん、が正しい。今のところ夕飯はカメパンの残りに決まっている。
中身のアイスクリームは溶けてカメが白い泡を吹いて毒殺死体、温暖化の影響か。
ウミガメは温度によって性別が決まるので、温暖化でオスばっか生まれて絶滅が間近。
これで一度レポートを書いたら教師から『温暖化は石炭火力発電へのプロパガンダなのでフェイクです』と赤点をもらったのを思い出した。ぱくっ。