「毎日生命線を彫刻刀で延ばしてる俺が死ぬわけないだろ」「手相以外の知識を捨てて来たのは分かりました」   作:遺書の切れ端

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高校3年6月18日 日曜日
助けるべき弱者は助けたい姿をしていない


 

 ちゅんちゅんちゅん、朝は小鳥パイセン達の声で目が覚めた。

 

 休日は眠剤を対して盛らなくて良いので起きてていい。何故なら人格矯正施設に出席する必要がないからだ、あそこはおかしい。

 

 部屋から出て、2階の踊り場で寝っ転がる。

 

 夜が冷やしてくれたのか心地良いぜ。

 

 いつもの布団を畳んだモーニングルーティーンはしたが、ステイホーム期間中に私生活ネタが動画サイトに蔓延(はびこ)っていたのを考えると俺も日常に彩りを加えるべきか?

 

 産まれ落ちてから特にデカい病気になったことがない、状態異常が元から埋まってるのでウイルスの入る余地が存在しないのかもしれない。

 

 最終的には健康が欲しくなると、金持ちがドキュメンタリーで言っていたので、それなら俺は手放さないように気を付けよう。

 

「……山に行くぞ、準備しろ」

 

 パピーが階段を上がって、踊り場で寝っ転がって思考を巡回している俺に告げてきた。

 

「お父様! 流石に山に捨てられるなら大人しく施設に行きますっ! でも捨てられる山が海底火山なら現代の技術は目を見張りますっ!」

 

 肉親の唐突な関白宣言にデモ活動する、革命の合図だ。日本では特に根付いてない文化。

 

「……カレンダー見たか?」

 

 父さんがパチクリしている、俺は渋々スマホで確認確認した。

 

カチッ

 

 父の日だ! こりゃ! なんてこったい! てやんでい!

 

「俺と行っても楽しくごぜえませんよ!」

 

 村人Aとして主張する、関係性が薄い人間と旅行に行っても苦痛なのだ。やめるのだ、そこは出し入れするところじゃないのだ。

 

「そんなことはない」

 

 ぐぬぬ、こういう否定だけ力強い、根負け。ここで粘っても対した結果も望めないだろう。自他共に。

 

「わかったよパピー……とぼとぼと歩いて30分で支度するピー」

 

 俺は日曜魔法少女のペット枠みたい語尾で朝ご飯(ブレキィ)を食べて歯を磨いて、リュックに水分と念のために非常食を詰める。ごー。

 

 

 

 

 黙々と近くの山へ足を向ける、線路は続かないどこまでも。

 

 何故なら神奈川県は山がそこら辺にあるので、線路をまず敷くのに山の掘削工事から始まるので時間がかなり必要とする。だから駅はレア。

 

 近くの駅まで車で2時間はかかる、その割に交通量が多い。

 

 皆ポコポコ増えてるのだろう、キノコの胞子みたいだ。

 

 四方八方に山道があるな、民家の近くにも竹藪だらけだ。

 

 深夜はマジで何も見えねえ、お互いに不審者だと思い、変な攻防が起きる時がある、

『誰だよ!』

『そっちこそ!』

『この距離を保とう! お互いに怖がってる!』

『わかった!』

というのが何十回かあった。

 

 そして大体、山の頂上に神社か寺がある、参拝して帰るのは俺も好きだったらしい。

 

 そんな風に思考を錯語しながら、父の背中を見ながら山を登っていく。

 

 会話などは存在しない。

 

(俺居るかな? こっちの話待ちか? 投げてみよう)

 

 緊張なんてしてないんだからね! ふん! 古いツンデレのメンタルで食らいつこうぜ。

 

「暑くなってくるとミミズがよく干からびて道端で死んでるよね! 父さん!!!!」

 

 空気が止まる。山の中だから人里の噪音(そうおん)から離れた証だろう、きっとそうだ。

 

 ミミズの死骸は悪くない、土の中の溶解含有(がんゆう)酸素量の欠乏(けつぼう)で地上に上がって呼吸しようと太陽に殺されてしまう可哀想な習性なのだ。そこは出し入れする穴じゃないのだ。もうそれだけ出し入れされてたらそういう穴だろ。

 

「……そうだな」

 

 コールアンドレスポンスが遅れてやってきた、死んでないだけマシさ。

 

 声はいつも遅れて聞こえて来るものだ。地下アイドルだったらアンコールが無いのに歌いだしていたかもしれない、デビューしてすぐライブしてしまったせいで持ち曲が無くて同じ曲しかセトリにない地下アイドルのライブあるあるみたいなものだ。

 

 ミミズも地下に居るから話は脱線していない。

 

 でもトークテーマが良くなかったかもしれないから改めて思考。

 

「昆虫食においてミミズは栄養素豊富で食感もほぼ肉なんだ!! 父さん!!!!!」

 

 取って付けたような父さんで俺はまだ戦える。

 

 ま、負けないんだからね! 勘違いしないでよね! ふん!

 

「……」

 

 聞こえなかったのかな。

 

 父さんも年月を重ねている、人は老いには勝てない。

 

 まだ負けてないじゃない! だってアンタはいつだって!! わ、わわ私の! ってなに言わせようとしてるのよ! 馬鹿!

 

 ヤバい、ツンデレ中毒だ。理不尽暴力系ヒロインに灰皿代わりにベロを根性焼きされたいと妄想をしていた中学時代の黒歴史が蘇る。

 

 黒は300色あるねん、その内一つが俺ってわけ、でも俺は一人だ。

 

 そう、俺は一人なんだ。

 

 あっ?今日二人じゃん、話しかけよう。

 

「いつも思うんだけど魚の餌にミミズの親戚を使ってそれを食べた魚を人が食べてるの実質ミミズ食べてるよね!!! 父さん!!!!!!」

 

「…」

 

 寡黙だな、ウチのパピーは。

 

 元から多くを語るに落ちるタイプではない。きっと今日は特別そういう日なんだ。男の子の日、5月5日。

 

 成人済の相手に『子』を付けるのは気になる、イソメもゴカイもうねうねしていて一般人からしたらミミズなはずさ。

 

 

「それでミミズに尿をかけると男性器が腫れるのは化学的根拠「ついたな」

 

 いつの間にか山の頭部にやってきていた。そろそろミミズのゲノム編集編のトーク在庫を切り売りするとこだったぜ。

 

「綺麗なアオ空だね」

 

 来て良かった的なこと社交辞令するべきか迷う。

 

「哲也、ミミズ好きなのか?」

 

 何を言っているのだ、ミミズなんて何の役にも立たないのだ。そこは出し入れする穴なのだ。

 

「いや全然」

 

きっぱりと言い放つ

 

「………そうか」

 

俺が好きなのはキミだけ

 

《嘘吐き》

 

 

 

 

 大雑把な気だるさが今日の一日のラリーを物語っている。

 

 このまま心は痩せて細くなり小さくなっていくのだろう、収納スペースに簡単に入れられる。

 

 自室で虚無感と対峙して暇を潰す、ぷちっぷちっ。

 

「私の高いシャンプー使ったでしょ!」

 

(誰だてめえ)

 

 毎回、妹の名前がキラキラ過ぎて覚えられない。あと勝手に入ってくるな。別に見られても困ることはしていないが ならいいか。

 

「証拠は?」

 

 シャンプーなんて1番近いのを使っているだけなので、もうベタインシャンプー、アミノ酸シャンプー、タンパク質シャンプーの区別も付かない。

 

 でもボディーソープで洗うと髪がギシギシになるからすぐ分かる。成長。

 

「減りが早い! ここ1番の日に使うんだから触らないで!」

 

 まず妹専用シャンプーが並び過ぎていて俺は何も理解してないからな。

 

 どのシャンプーなのか教えてくれ、次に生かせないので、また繰り返すだろう。無念。

 

「ここ1番じゃなく、毎日を真剣に生きろ」

 

 超綺麗事的偽善者台詞を吐く、中国語かな。ニーハオ。逆から読むとハーマイオニー。

 

「うざいー!」

 

 いつまで部屋に居るのだろうか? 最近スマホアプリで中性色のフクロウに他言語を教えてもらっているが、飽き性が発揮しない限り、未来の俺はバイリンガルだ。

 

「賞味期限が切れても知らないからな」

 

 部屋から出て行くように促す、ゲットアウト。

 

 確かネットにはシャンプーを飲む文化があると数年前に聞いた。グルシャン、飲シャン、普通に身体に悪影響を及ぼす、なるべく原液を薄めるために水を大量に飲んで薄めると良いらしい、まず飲むな。

 

「私のシャンプーを飲むなーーー!!!!」

 

兄妹なので通じ合ったらしい

 

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