「毎日生命線を彫刻刀で延ばしてる俺が死ぬわけないだろ」「手相以外の知識を捨てて来たのは分かりました」 作:遺書の切れ端
原点回帰
文芸部へ放課後旅立つ。
この隅っコのジメジメしている陰湿で、
でも理想が高過ぎると現実の自分とのギャップに苦しみ続ける日々が待っている、そんな当たり前に気付けただけで今日はもう終わっていい。
「知っているか? 精神科と心療内科の違いを!!」
机を挟んで漫画を読んでいる後輩に久しぶりにダル絡みをする。
「先輩が行くべきなのは精神科です」
だいたい合ってる。漫画から目を離さずに受け答えされたのも合ってる。いつもの仏頂面だ、それに関してはお互い様かもしれない。
「先生! 俺はどうすれば助かるんですか!!! 教えてください!!」
言葉の勢いだけで乗り切ろう、パッションは大事、大抵これで解決する、してないな。
「まず部室から出て行ってください」
すぐ文芸部から追い出す、副部長なんだが? 別に部員も把握してないし、特にやる業務もない、書類上の生きとし生ける副部長だ。
「じゃあ助からなくていい! 俺はここで死ぬ!」
助かりたくない、本当にそう思えてしまうぐらいに、大切な存在が無い人間は気が楽。
残念ながら俺にだって守りたい存在は居る……誰だろ、み、宮川とか?
「はぁ」
溜め息が窓から入る夏風と共に通り抜ける。面白い、感情で息を吐きたくなるなんて人間の構造はどうなってるんだ? 解剖したい、魂の重さが21グラムなんて都市伝説を信じよう。
「すぐ死ぬや殺すと言っちゃうクセは治る気がしない」
客観視、どうして『死ね』や『殺す』を簡単に使えるような人間になってしまったのか? 日本には言霊という概念がある。悪い言葉を使うとそれ自体を引き寄せてしまう、信じる者が救われてるなら、自分が救われないことを信じようじゃないか。
「別の言葉に置き換えたりするといいらしいです」
倒置法、違う。
置き換えか、漫画と睨めっこの最中の後輩にも慣れてきた。
「ふむ、逆にしてみるか、柊生かしたい!!!!」
しっくりくる、『死ね』より『生きろ』の方が辛くないか?
言われたら別にお前のために生きてないし。ずっと生きている時間、そいつに言われたから生きているみたいで気持ち悪い。誰かの思い通りだ。
「セクハラですよね」
ジト目で視線が来る。これが欲しかったわけではない、クーリングオフしたい。
そっちに取られたか。英語圏だとオーガズムを指す言葉は主に『来る』で、アジア圏だと主に『行く』と言う。スペイン語は名詞に性別があるという激ムズ言語過ぎるので、まずは日本語をマスターしよう。
「これは冤罪」
柊にセクハラしているほど、俺も腐ってない。
というかハラスメントの楽しみ方が分からない。言動より行動で示したいと思う、でも相手を不快にさせていたら反省はする、それが第一歩、ではない屈するな。
「別の罪状が溜まってるので、一つ二つ冤罪があっても死刑は動きませんよ」
極刑は決まっていたらしい。上訴して再審を望む。後輩は漫画を閉じて向き合ってきたので、ディスカッションを続行する様子が俺に見受けられる。
「生刑か……戦争の最前線で強制蘇生させられまくって、ゾンビアタックを強要されている勇者みたいだ」
ラスボスなんかはずっと倉庫番していたエリクサーとかでゴリ押し討伐できて終わってしまう。
「RPGではよくありますね」
オフラインゲームには終わりがあるから、辞めるタイミングがあって助かる。
「蘇生アイテムってリアリティなくない? ゲームの中ぐらい一回死んだらセーブデータ消去で絶望させてほしい」
やり直せる環境は緊張感が欠如していて現実劣化環境と言わざるを得ない。
「人気が出るか、見向きもされないの2択になりそうなゲームです」
最近のブームは時短、効率、放置。確かに逸脱しているテーマだ。面倒で人気が出るパターンは大手ぐらいか、ゲームの話は辞めて欲しい、お前から振っただろ、そうだった?
「俺もデータが消えたら辞める自信はあるな」
消えろよ
「やりたいことと、やって欲しいことは違いますからね、一定の理解はします」
木のテーブルに肘を付きながら、ぐたっとしてる。後輩に理解されてもな。
「擦り寄ってくんな」
自分の意見が通る空気は良くない
「秋の空ですね……」
乙女ではないけど、一回深呼吸をして落ち着こう、
何の話だったっけ。
「もうタピオカタピオカ言うの辞めろよ、同じ所属部活部員として恥ずかしいだろ」
キャッサバの農場を購入しようか迷っていた。本当に買わなくて、過去の俺ナイス、ご飯はライス、ライズは昇る、ライズライスナイスナイズ。
「言ってません、というか今言ってる人は存在してません」
気怠そうな返事が木漏れ日と彼方に相まって、流れそう。
「この数年で出た漫画を読むと未だにタピオカが出て来るのは過去の遺物感出てて辛いよな!?!?」
あるあるを投げかける。でもマリトッツォよりかは存在感は在った気がする。あれはほぼ、はみ出てるシュークリームだったし。
「スマホ出る前のガラケーみは確かにありますね、昔の漫画で高校生がガラケー持ってると笑っちゃいます」
「そのうちにスマホで笑われるんだろうな、笑われる側になる練習しようぜ」
初めて買ったスマホは小学の時だった、好きな青色を選んでしまったせいで中学に上がった時に人前で青色が恥ずかしくて出しづらかった。
機種変更の時に無難の色を次に選んで、視えない同調圧力に負けたような気がした。好きを否定されたくない。
「漫才の導入みたいな振りウザいです」
練習しようはNGワードか。関係性は付かず離れず、最初は被害者加害者だったのに、なんて形容したらいい?
「しゅん……」
落ち込む素振り、態度で意思を表現。
「先輩は私と信頼関係を構築出来てないのを自覚するべきです、何もしないで餌をもらえるのは雛鳥だけです」
何もしたくなかった。
「奇遇なことにミミズトークを最近したじぇ」
「いいんですか? このままピヨピヨしているだけでは私の友達にすら成れませんからね」
学生時代の友達は一生の友達になると説教されたことはある。
でも自分の一生は自分で決めれるから、どうでもいいな、逃げんな。
「何故なりたい前提で進んでるんだ、というか俺達、なんだかんだキスまで行ってる関係だぞ、忘れてた」
そうだ、俺達は出世魚じゃないか、
「そもそもですねッ、そういう行為は自分の魅力と努力で勝ち取るものなのですよ! そんな態度で
真面目だ。魅力も努力も育てずに財力で叩いている汚い大人も居るだろうに。でもここは自分が間違っていると感じたい。
「なんで怒られてるピヨ! ヒヨコがそんないけないことしたピヨ!?」
ひな鳥の定義は広いが、ヒヨコは俺しか居ない。
「そのヒヨコを生かしては被害を与えるのです」
害獣認定された、くまった、あージビエジビエ。
「鶏まで待とうぜ」
解決策を提示する。鶏は産卵すると栄養不足になって産んだ卵を食べて病んでしまう時があるらしい。ハムスターを見習えよ、そいつも子供食べるだろ、ライオン!、以下同文。
「か弱い時が狙い目なんですよ!!!!! 成長したら簡単に捻り潰せるものも出来なくなります! 若い芽なんて迅速に摘まなければ回りまで悪影響が及びます!」
なんでコイツ変なスイッチ押されてるの?
「やっぱ環境なんだよ、そんな言葉をフリカケご飯にしてもお茶漬けしか出来上がらない、もっと優しい愛を持って、手を繋いで小さな世界で笑いあって泣いて皆それぞれ助け合って小さな世界で世界は同じ、世界はまるい、ただひとつ!!」
トゥモローしようぜ。
「後半無茶苦茶ネズミの国で聞いたことある歌詞です!!!!!!!!」
お隣県だから小中学校の修学旅行は大抵、夢の国に連れていかれて高校では飽きたという声が上がり、ユニバーサルなスタジオになりがち。
「家の隣が幼稚園だから、つい」
通学路にキッズ達が『さよならー』、と時々挨拶してきて『気を付けて帰れよ』とか返せないので『?』とガン無視してしまう、勘違いだったら恥ずかしいし。
まず俺みたいなのに声かけないところから学習してくれ、あとピンポンダッシュしてくるな。
「じ、事故物件……」
酷い言われようだ。
「別に何もしてない! するつもりもない!!」
前科はこれでも持ってないのだ、ほんとに、マジで、ガチだよ、真実だって。
「絶対先輩が隣に住んでたら土地の値段暴落します」
経済にダメージを与えるほど? 安くしたい土地があったら連絡をください、落としてみせます。
「子供相手に犯罪とかハードル低すぎて引くわ」
この競争社会で習ったことがある、目標は高い方がいい。
「そういう問題ですかね」
モウマンタイ、唯一知っている中国語が無問題と謝謝だ、二つあるな。
「教養も常識も育っていない相手を蹂躙しても、ただアリの巣にホースを突っ込んでいるのと変わらないからな」
でもアリも頭良い、雨などの対策に水の出入り口を作っているから巣に水は溜まらない、限度はあるが。
「まずその暴力的な思考をなんとかしません? さっきの歌詞を思い出してください」
(世界は広い)
「最近は暴力もめっきりだ、直近が柊で最後」
人助けしかむしろしてないまである。
「それはそれでムカつきますね……あ、そう言えば樫見先輩には何かしたんではないんです?」
都合が悪いことは封印してたっぽい、あったわソレ。
「うすうす思い出してきた」
「それ次の日忘れますよね、というか政治ネタはやめてください。嫌なんですよ! どこの党を支持してるから左翼だ右翼だ言い争ってるのが!! まだタケノコとキノコで争ってるなら参加しますけど!」
俺、政治と宗教と国際しか会話デッキが用意されてないんだけど。己を恥じる、改善はしない。
「ちな何派」
はっけよーい、ノコったー。
「ビスケット部分も楽しみたいのでキノコです」
タケノコにもあるけど、細かいことを気にしていたらハゲるぞ、俺はハゲる前に死ぬから平気なはず。
「俺はさくさくパ〇ダかな」
動物とお菓子の組み合わせは黄金比。
「先輩もお菓子食べるのですね」
チョコより圧倒的にグミとラムネ。
「そりゃな、最近はピュ〇グミを洗って食べるのがマイブーム」
食べ〇こ動物も洗って食べるの好き、背徳感もスパイスとして足し算されてる説。否定。
「普通のグミ買いましょうよ……」
普通のグミには背徳感は付いてこないだろ。
「今、これで散財を頑張ってる」
確定申告どうしよう、黙っていたらバレない気がする。いけるぞ、俺は無敵、私は最強の反語。
「しょうがありませんね、私もその散財手伝いましょう」
死臭に
「やっぱり貯金は大切、全額新積み立てニ〇サにぶち込むか」
兄さんにぶち込もうだとBLっぽい。
「でも先輩非国民ですからマイナ〇バーカードとか持ってます?」
実装された年に取らされている。手帳更新は有効期限が2年なので、そのたびに更新させられてる、その時にマイナンバーもついでに申請された、した、まだ国民のカード率は5%の時だったから絶対に途中で制度自体無くなると思ってた。
「いつから俺は非国民に?」
そう言えば18歳だから選挙権あるな、特に政治や国際に関心がないので無投票でいいか。
「……産婦人科ですかね?」
出産されるまでは国民だったと、子宮と卵巣近くでいったい何があったんだ。
「そんなこと親が聞いたら悲しむだろ」
そろそろフォローしないと帳尻が合わない、まだ全然欠けてる。
「正論はレッドカードです」
赤は薔薇だけでいい
「一発退場か」
そろそろ窓を閉める。退場記念に帰ってもいいかも、椅子の前足を浮かせて黄昏れる。
「文芸部ってほんと暇ですよね」
それが美点。
「小説でも書いてろよ」
読みたくはないけど。
「私は読んで批判する専門なので」
読者が居てこその作品ではあるな。
「どいつもこいつも専門を語りやがって」
「でも読んでると自分でも同じようなこと考えれるなーと感じなくはないです」
そんな風に思えたら幸せかもな。
「同じじゃ駄目なんだろ、もっと上に行かないと、あー何言ってるんだ俺」
誰かと張り合ってる、ずっと背中を追いかけて、苦しんで、逃げ出したい。
「そんなシーニャに手応えが……?」
ヴァーチャルアイドルの最後のオアシス! あなたの心の一番星! シーニャにゃ!
まずヴァーチャル界は砂漠だったのだろうか。
「ない、ないと思う、なんか同じだと負けた気がしないか?」
他人の真似なんてする暇があったら、自分を極めたい、だってそれなら負けても悔いが少ないと思われる。
「すぐ勝ち負けで考えるから殺伐としてしまうのですよ、あと勝ったところでなんなんですか?」
それは
「犯されない」
全てを
他人に侵犯されない
「発想が良くありません、もっと力を抜いてそのドアを開けて、外に出て、二度と文芸部に来なければ少しはマシになります」
少しのマシなんて要るかよ
「まだ星座占いの方が信じられる」
チャンネルごとに結果が変わるぐらいが丁度良いさ。
「統計学らしいですね、内容は知りませんけど」
知らないのではなく気にならないのだろう、羨ましい。
「同じ星座の人がこうなったから貴方もこうなる的なやつか、まだ同性愛の方が信じられる」
恋愛対象は女ではギリギリある、男の方が性に合ってる気も否定しづらい。
「信じるモノ動きまくってますね」
(信じたなら救ってくれ)
「それが人間だ!」
万能調理器具。
「何にでも言えます」
《幸せになろうね、それか皆不幸にしようね》
「言ってくれるのはお前だけだよ」
柊の顔をちゃんと確認する。
(まつ毛、髪先、指の間、愛嬌、爪、関節、懺悔、発した言葉、揺らぎ)
「そして誰もいなくなります」
その通り、ぐーたらしてる後輩を視認した。ここには誰もいないから、ここに救いはないんだ。
「誰も見てないのだから誰も居ないなんて確認しようがない!!」
誰も居なくなってるのは悪魔の証明。
「あー、確かにです」
「俺なんか信じてどうするんだ、将来不安かよ」
生後200ヶ月
もう自分が自分だと思い出したくない