「毎日生命線を彫刻刀で延ばしてる俺が死ぬわけないだろ」「手相以外の知識を捨てて来たのは分かりました」   作:遺書の切れ端

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高校3年6月30日 金曜日
「俺を毎日味噌汁にしてくれ」 「これが変態です」


 

──拝啓、文芸部へ

 

(来ちゃった……///)

 

「もう保健室登校でスヤスヤしたあとに余裕綽々(しゃくしゃく)で文芸部に入って来てる俺をどう思う? 羨ましい?」

 

 学生の基本は勉学とはなんだったのか、睡眠学習ということにしよう。

 

「適材適所ですね、教室に平和が訪れたと思います」

 

 そう言われると荒らしたくなるな、でも長谷部の執拗な煽り言葉運転が怖いので免許返納する。

 

「脱眠剤をしようと夜に日記でも書いていれば眠くなるかな? と思ったけど全然効かないぜ」

 

 相変わらず漫画から目を離さない後輩に話しかけている日々が再開した。

 エアコン超寒い、温度を上げたら文句を言われるので文芸部守護神の意向に沿おう、くしゅん←可愛い俺

 

「犯罪をしたあとにワイドショーで解剖されそうなやつですね、インタビューされたら『捕まるの遅くないですか? 出産直後に牢屋に入れるべきです』とコメントしときます」

 

 日記は利き手の数を増やそうと思って足で書いているから字がピラミッドの壁画みたいになっていて、(おび)番組ニュースコメンテーターが これを見てどんなコメントをするのか気になる。

 ちゃんと好きなアニメや漫画を書いといた方が後々に盛り上がるだろうか、将来の夢もよく犯罪者のはピックアップされているから、それも忘れずに書かないと。

 

「将来の夢なんて書いたっけな」

 

 保育園や小学生は作文として夢を書かされた気がする。中高では急に夢じゃなくて進路になるから夢は必要としていない。

 進学校なら小学校から夢に現実がブレンドさせられていた。

 

「私はフィギュアスケート選手と書いた気がします……」

 

 少し後輩の漫画の持つ位置が上がり、恥ずかしそうに顔を隠している。

 全く興味と関心が沸かない。

 チッチッチッ(何かを沸かす音)

 

「選手寿命が短命なスポーツだ」

 

 物心が付く前に氷上で競わされて挙句、一握りが成人する頃に残るのはメダリストという肩書ぐらいだろう(偏見と現実のブレンド)

 何より日本はお家芸と言っていいほどに強いのでフィギュアスケーターは層が厚い、あそこに割って入り実力を示すのは至難どころではないな。

 

「将来を語る時は将来を見てはいけないんですよ」

 

(なにその辛い名言)

 

「確かに語るだけなら自由だしな」

 

 うんうんと頷く。

 最近は全肯定しとけばなんとかなると学んだ。イエスマンはラクでいい。

 ただ失敗すると『どうしてあの時止めてくれなかった……? この人未満クソゴミクズ野郎が』と絶望顔で詰められた経験があった。

 

「先輩はなんだったのですか」

 

 そんなに俺を知りたくないだろうに、えーっと?

 

「なんかフクロバケモノになりたいって書いた気がする」

 

「園児です?」

 

 せめてトレーナー志望になってくれよ過去の俺。ジムリーダーとかさ、もっと良いポジションがあっただろうに。

 

「いや、園児の時はお花屋さんだった」

 

 フクロバケモノは小学生の時だったような。

 おかしいと思っていてもそれを真剣に書いて開き直っていたら変な認められた方をして、あだ名になったりするので無難に公務員にしとけば良かったんじゃないかな。

 

「退化してます」

 

 職業差別だ。

 誰がお花屋さんよりフクロバケモノが下と決めたんだ。

 

「中学は専業主夫にした」

 

 ウェディングドレス着てみたい、常時マリッジブルー。

 

「フクロバケモノより難易度高いです」

 

「遠回しに孤独死を匂わされてる!!!!」

 

「もっと無難に就職とか障害者雇用でいいんじゃないですか、まあ私が面接官ならお祈りしますが」

 

 勝手にガイジ扱いされているのは置いといて、園児が『将来は就職したいです』は氷河期に産まれた可能性の示唆。

 

「俺は()えて攻める! 高望みぐんぐん!」

 

 緩い空気と頭に冷気が直当たりで流れている午後。

 

「ヘラヘラの間違いです」

 

 メンヘラ的な意味だろうか、漫画を読みながらなので、やっぱりそこまでの好奇心は惹いてないらしいから返事が悪魔の実みたいになってる。

 俺も漫画読もーっと。

 

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