「毎日生命線を彫刻刀で延ばしてる俺が死ぬわけないだろ」「手相以外の知識を捨てて来たのは分かりました」   作:遺書の切れ端

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高校3年7月03日 月曜日
「赤ちゃんじゃないから意志と知識がある!」「無いですよ」 「自我を否定された」


 

 いつも通り、

 

「漫画買う資金が尽きました、先輩ジャンプしてください。もっと高くです」

 

 文芸部で恵まれない後輩にカツアゲをされていた。

 ぴょんぴょん頑張るが未だに許してもらえない。

 

「貧乏人ですか……」

 

 柊は いつもの定位置の席に戻り、なんか失望の目を向けられてた。

 一先ず、まだ飛ぼう。

 

「キャッシュレス派なんだけど! 俺!」

 

 何年何人触ったか分からない札や小銭には()れられないタイプ。

 

「ふむ、電子書籍も有りですね。基本紙なんですが そこまで言うなら電子書籍デビューしてやります」

 

 そこまで言ったかな?

 ハラスメントと同じで受け取る方次第なのかもしれない。

 

「何を読みたいんだ?」

 

 スマホを出して何やら探し出す後輩。

 

「コレと、あとコレもですかね」

 

 こちらにスマホの画面を見せてきた。

 ちょっと前に音楽ランキング世界一位を取っていたアイドルから産まれるやつと、勇者が魔王を倒したところから始まる初登場で脱落した敵キャラなのに人気投票で二位を取った作品か。

 人気投票と言えばメインヒロインが最下位、特定ルートの特定選択肢に一瞬だけ出てくる使い捨てキャラが人気投票一位を取ってしまって、続編ではメインヒロインがそれを認識、チェンソーを振り回し使い捨てヒロインの半身を切り刻み、自分の半身も切り落とし接合させ、『これで一位』と言いながら死んだメインヒロインさんの話はともかく、

 

「公式アプリで読めるぞ」

 

「でも高いのですよね? 私の財布をあまり見くびらないでほしいです」

 

 なんで偉そうなんだ。

 

「初回全話無料」

 

「大手の余裕ですか、ムカつき感謝します」

 

 絶対、こういう後輩が買ってもいないのにSNSで長文悪口レビューを書いているんだろう。

 

「だが今日はそれを見越して皆が喜ぶ物を持ってきた!!!!」

 

「今読んでるので静かにしてください」

 

「どうせ登場人物は100年後には全員死んでるんだ! 今、生きている俺を大切にしなくてどうする!!!」

 

 かまってわん! かまってわん!!

 

「エルフは長寿です」

 

「登場『人物』な、エルフは人じゃない(激強思想)」

 

「それエルフの前で同じこと言えますか?」

 

「言えるぜ! 余裕!」

 

 無神経トップオブトップの俺に死角は存在しない。

 相手の気持ちどころか自分の気持ちすら知らないぜ。

 

「言って来てください」

 

「……」

 

「ほら、早く、どうぞ」

 

 そっか……無理なことは返事しちゃいけないんだ……。

 

「一巻の範囲だけ奢ろうと思う、俺エルフの耳で流し素麺できるし」

 

「三巻です」

 

「間を取って二「四巻」

 

「……(流し素麺の最後の方の人の顔)」

 

「五巻」

 

 止まらないよぉ……ふぇぇ……。

 

 

 

 

 エルフは探したけど草むらには一先ず居なかった。代わりに暗くなる前の空を見つけた。

 夏の唯一の長所は陽が長いところ。引き篭もり期は太陽が憎かったので冬が好きだったが、今は太陽さんと仲直りしたので性行為を『仲良し』と言うバカップル並みに仲良しだ。

 

「結局その荷物はなんなんですか? 明日にしません? 来年でもいいです、三年後にしましょう」

 

「シャボン玉をしに来たんだ……! やろうやろうやろうやろう!」

 

 やろーども! 帆を出せ! いざ大航海時代!!!

 

「漫画を濡らしたら先輩に食器用洗剤を飲ませます」

 

「綺麗になっちゃう」

 

「……」

 

「冗談だよ? そんな人魚の卵でタピオカミルクティーを作った時の顔で俺を見ないで」

 

「でも紙は食べてましたよね」

 

 シーニャの味だった。

 

「赤ちゃんじゃないから意志と知識はある!」

 

 子供の誤飲には気を付けよう!

 親戚の子供がスーパーボールを飲み込んだ時に足を掴んで逆さ吊りにして振った。

 これで死んだら真っ先に俺が犯人だと思われるなとしか思えなかった保身的な思考。

 

「無いですよ」

 

「自我の否定」

 

「シャボン玉液を洗面台に入れてストローを輪切りにして吹くとデカいのが作れるの思い出しました。懐かしいです」

 

(多分、洗面台は風呂桶のことで輪切りが円状切りのことだろう)

 

 ノスタルジック記憶ガバガバ後輩を訂正していたら流石に夏の太陽も見えなくので時を流そう。

 

「なにその貴族の遊び」

 

 市販の小さい泡々で満足していたのが恥ずかしいぜ。

 

「洗濯(のり)を入れると割れづらくなりますよ(自慢げ)」

 

 ポリビニルアルコール様々。

 

「割れやすいから綺麗なのに」

 

 ずっと空に残ってる花火とか邪魔だろ。

 

「芸術は爆発タイプなんです?」

 

「無駄に延命されてもな」

 

 たまに安楽死団体のミーティングに参加するが、かなり話は合う。

 でも『今から一緒に死にませんか? 今すぐ、ここで皆で仲良しタイム』と迫ると帰らされた。

 彼等は別に今は死にたくはなかったらしい難しい。

 そして俺も今は死にたくなかったらしい難しい。

 

「幸せが延長されるのなら味わいたくありません? 嫌な時間なら永いのは辛いですけど(アンニュイ)」

 

「なかなかノスタルジック(記憶ガバガバ後輩が言いそう)な議題だ」

 

 2-4-11。

 

「文芸部ですからね(誇らしげ)」

 

「ははは」

 

「そのリアクションだとアメリカンジョークを飛ばしたみたいですね……」

 

 マジだったの?

 

「シャボン玉を食べようとする犬の動画を思い出して笑ってた」

 

 ヨン。

 

「やはり猫が最強ですから(縄張り争い)」

 

「にゃー(激かわ哲也)」

 

 吾輩は猫であるにも関わらず誠に申し訳ない。

 

「可愛くないですにゃ」

 

「柊には勝ってるにゃー(ドングリの背比べ)」

 

「シャー」

 

 威嚇された。

 

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