「毎日生命線を彫刻刀で延ばしてる俺が死ぬわけないだろ」「手相以外の知識を捨てて来たのは分かりました」   作:遺書の切れ端

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高校3年7月04日 火曜日
「理想ばかり語るねw現実語りなよw」


 

 遠くから声が聞こえなくもない。

 また昼休みラジオで宮川が参戦してるのかもしりゃん……。

 

「哲也ぁー、もう昼だよ起きなよぉー」

 

 保健室のベッド(聖地)で寝ている俺の貴重な惰眠(だみん)(さまた)げる愚か者は宮川ではないな。

 物理的に揺さぶられている、うぃーうぃるろっくゆー(その魂を揺さぶってやる)

 

「シエスタを知れ」

 

 瞬きすら億劫(おっくう)になっている俺は、スペイン文化の日照時間が長いから昼は寝て休もう精神を彼女に訴える。

 

「教室に居なかったからぁ、まだ市民プラザで籠城してる思って心配してたよぉ」

 

 探すの遅くないか。

 

「お詫びに卓球で足を引っ張った罰ゲームをするから寝かして『ぼ、ぼかぁは、お、おに、おにぎりだいすきなんだなぁ↑』」

 

「罰なんて求めてないよぉ、というか誰ぇ?」

 

「ユウキの物真似」

 

「最近、僕への解釈が乱高下(らんこうげ)してるねぇ……」

 

「探しに来てるなら今日火曜日だけど、空白の月曜日はどこを探してたんだよ」

 

 俺が寝転がっている隣に腰掛けるユウキに寝言のような疑問。

 

「レイカ姫の配信が在ったからぁ、それが聞いてよぉ。しばらく配信ペース抑えるのが正式に発表されて、そりゃ最近なんか更新頻度が落ちてたけどね。気づいてたよ、でも本人の口から言われるのとやっぱ違うよね……僕の予想だと活動を辞める引退や卒業では恐らく無いと思うんだけどぉ……でもそういう推測はやっぱり飛び交っててさぁー、空気感が重いのが辛いよ……ベンチで卒業の話をしたから言霊が悪さしたのかなぁ……一緒にお祓い行こうねぇー」

 

「zzz」

 

 

 ▽

 

 

『ほらね、ほらほらほらほらほらほら』

 

『私が君を助けた』

 

『ねっ? やっぱり私が居ないと駄目だよね? 必要だよね? 離れたくないよね? また離れたら死にたい死にたい死にたい死にたい、あ、殺そうかな、殺しちゃおうかな、そうしたら私も追いかけるし、うぃんうぃんだね、そうする? どっちでもいいよ』

 

「夢か」

 

 ユラギは俺にそんな甘い言葉は吐かない儚い。

 

『違うよ?』

 

「あと五分」

 

『あー、わかったキスで目覚めたいんだー、えっちー』

 

「超起きた、目が冴えきった」

 

『嫌なの????????????????????????』

 

「歯磨きとかしてないし」

 

『私は気にしないよ? 君の全てを受け入れるよ?』

 

「は? 俺の歯磨きへの崇拝も受け入れろよ!!!!!!!!」

 

『私と歯磨きどっちが大事なの!!!!』

 

「お前だよ!!!!」

 

『好き!!!!!!!!!!!』

 

 悪夢と遊んでいたら整合性が破壊されたのか、α波を観測した。

 

「ねえねえ、シュンくんのあだ名を考えた! 産業廃棄物!」

 

 ピンク、紫の中間ぐらいのマゼンタ色の髪が何時(いつ)ものように、はしゃぎまわる。

 

「なんだよ原発処理水」

 

「悪口みたいに使わないで!!!

人体に影響ないんだけど!? あー、もう! そんな冷たいなら私は貝になるからね! 探さないで!!!」

 

「絶対出てくんなよ」

 

「ところで『可愛い子には旅をさせろ』って言うけどさ、ブスは閉じ込めとけってことだよね?」

 

「さっさと貝になれよ」

 

「私、旅立たないといけないね……遂に この時がやってきました!! ででん!」

 

「貝は???」

 

「貝! 貝! 貝! そんなチョークの原料が好きなの!? 付き合ってる私より好きなの!? ねえ!!」

 

「おかしいな、ここの空気いつから覚醒剤が散布されたんだ?」

 

「皆どっか狂ってるよ」

 

「人を巻き込んでんじゃねえ、お前だけ狂ってろ」

 

「それって私だけを見てる的な告白的なやつだよね? しょうがないなー、全くこれだからシュンくんはー」

 

「理不尽解釈迷惑罪とか出来ねえかな」

 

「だって付き合ってるんだよ!? 私だけを見て欲しい気持ちがそんな欲深いことなのかな……?」

 

「前提は上手く狂えてんぞ」

 

「あっ、もう私だけ見てたんだね……ごめん、見てないなんて勘違いしちゃった♡」

 

「頭もだったか」

 

「髪の毛が性感帯の話をして欲しいの?」

 

「黙れ」

 

「いいのかな? 私に逆らって」

 

「もうテロには屈しねえ、国際法に準ずると決めたからな」

 

「恋のテロリスト! 二つ名っぽいよね〜」

 

「エンドレスストーカーに改名しろ、毎回駄々を()ねたら何でも通ると学習されても困るしな」

 

「でもね。私、昔の方が面白く喋れてたかなと思う時があるんだよねー」

 

「いつもつまんねえぞ」

 

「そう言われると気が楽になるね! 私の肩の荷を降ろしてくれるなんてシュンくんの愛情をビシビシ感じるよ!」

 

「いつも面白い」

 

「私と違ってシュンくんはつまらない人間だねーw」

 

「ここが学校だったら死人出てるからな」

 

「それどんな西高、うわっ、キモい単語出しちゃった」

 

 

 ▽

 

 

「てーつーやーおーきーてー」

 

 ゆさゆさと人の胴体でDJをしているユウキの声が夢心地に聞こえた。

 それはともかく睡魔は相当なドS、この毛布はM! と見せかけてS! と思いながら俺は睡魔に身を預ける。

 

「んなぁ、あー聞いてる聞いてる俺は夕方まで寝る寝る寝る寝え1番の粉、水、混ぜる」

 

 むにゃむにゃしながら相槌を売り飛ばす。

 

「ちゃんと2番も入れてから混ぜないと駄目だよぉ」

 

 時短すんな。知育菓子のルールすら守れない人間に人権を与えるな。

 

「そう言えばねぇ、ちゃんと長谷部さんに注意しといたよぉ、えっへん〜」

 

 思わず得意げな鶴の一声で起き上がる。

 

「マイベストフレンドシップッ!!!!」

 

 抱きついて一方的な喜びを分かち合う。またしてもクルージング開始。

 

「やっと起きたぁ、このまま昼休みが終わっちゃうと思ったよぉ」

 

 安堵の表情を覗かせながらユウキは何かを言っている。

 もちろん水中の中なので聞き取れなかった。

 

「ついでに鳳仙花(ほうせんか)の隣に落とし穴を掘って長谷部を埋めようぜ!」

 

「えー、掘るまでならいいけどぉ」

 

「やたっー! やたよー! 行こっう、行こっう! サファリパークゥ!」

 

 穴掘り要員を確保したので中庭へとユウキの背中を はしゃぎながら押して、俺は後ろから主犯じゃないという顔をして向かう。

 

 ▽

 

「笹だ(草の進化系笑いの表現では無い)、遂に我が校はパンダにすら負けたのか……」

 

 西校の敗北を悟り、元々期待していなかったが深く失望した。

 

「違うよぉ、毎年七夕の笹を林間学校で燃やしてるでしょぉー?」

 

 ふむ。笹と竹の違いは長さだけだからクジラとイルカみたいなもんか。

 つまり西校はイルカに負けたのだ。

 

「色々燃やし過ぎて合法的に燃やしていい存在を忘れていた」

 

「……僕が思い出させたことになるのかなぁ?」

 

「俺もそんな暇じゃないから、火炎瓶とか投げ込まないってばよ! 自販機のペットボトルから作れるのでお子様の自由研究へ最適!」

 

 自動販売機とか実質火炎瓶の集合体。

 

「事前にスプリンクラーの故障とかぁ、消火器を詰まらせとくとかも駄目だよぉ」

 

 めっ、と注意を(うなが)された。

 

「失礼なことを言うな。現在俺は文學(ぶんがく)への道を歩くのに集中している。あ、全集中!」

 

「もう言ってる人 居ないよぉ」

 

 目の前に居るだろ。

 

「また劇場版でもやれば盛り上がるくせに!」

 

 七夕の前に茶色いテーブルが置かれており、ペンと短冊(折り紙をただ切っただけ)が並んでいる。俺は一枚、黄緑を取って願い事を書く。

 

「何をお願いするのぉ?」

 

 小さい同級生が俺の手元を興味薄めに覗き込む。

 

「願いを口に出すと叶わなくなると聞いたことは有るな。『全ての未解決事件の解決』って書いたけど、どうなるかな?」

 

「僕のせいにされても荷が重いよぉ……」

 

 そんな大罪人を横目に遠くから白いのが駆け寄って来た。俺を見ると大体の生徒が引き返すのに珍しい、俺も俺を見たらよく引き返すから気持ちは分かる。

 

「少年ろん! あと契約書先輩も居るろん!!! やっと見つけたろん……! 帰宅部を探してみたけど見つからなかったんだろん!! いったい何処にあるろん!?」

 

 七夕コーナーでジャレていた俺達に、野生のろんろんが勝負をしかけてきた。

 残念なことに手持ちはパンダ1頭しか居ないので目の前が真っ暗になる。

 

「僕も知らないやぁ、ごめんねぇ」

 

 それでいいのか親友。

 

「アドバイスを送ろう、この地域の法則は西に行けば行くほどに頭が悪いと言われている。つまり西に行け! 冬は寒くて夏は暑い! そんな(すみ)に追いやられているのが帰宅部だ!」

 

「位置情報を送って欲しいろん……此方(こなた)はあまり校内に詳しくないろん……」

 

 二年目なのになんで詳しく無いんだよ。とりまスマホを投げる。

 

「ほら、ろんろん、林檎だぞ(餌)」

 

 iPh〇neを林檎、Andr〇idを泥と言う文化はそろそろ死ぬから拾おう。

 †俺は言葉のネクロマンサー†

 

「僕は返事遅いからそこは勘弁してねぇー」

 

「ユウキは遅いんじゃなくて見てないだけだから期待しない方がいいぞ」

 

「わかったろん! スマホ返すろん、ありがとろん!」

 

 渡し方も返事も丁寧だ。林檎が返却されたので早速、文芸部の位置情報を個別チャットに貼り付けといた。

 

「僕にも送ってぇ」

 

 どうしよう、過去に柊の嘘を吹き込んだから鉢合わせて誤解が混沌と化すかもしれない。

 

「でもどうせ来ないだろうし、害は無いからいいか。あと位置情報を理解する脳がユウキには無さそうだ」

 

「全部口に出てるよぉ」

 

 ユウキに服の袖を掴まれて、ユサユサとされた。多分、求愛行動。

 

「先輩達はなんて願いごとをしたろん?」

 

 ろんろんが七夕コーナーを指差しながら聞いてくる。

 

「ろんろんと仲良くなれますようにかな……あっ、ち、ち違う、これは……」

 

 棒読みで狼狽(うろた)えているフリをしながらペンをわざと落とし、顔を恥ずかしくて上げれない感じを演出。主演俺。

 

「僕はねぇ、ワイルドさが欲しいって書いたぁ」

 

「あの先輩は情緒どうなってるろん……?」

 

「哲也はちょっと人間に慣れてないだけなんだよぉ」

 

「やばいやつろん……」

 

 なんかもう既に相手にされてないな。

 誰か空気入れた? 風船空気入れ破裂チキンレースを人の胃袋でやる処刑方法を今思いついたけど、もうやっている人が居そう。

 というか口と鼻と目と肛門に蓋をした時点で窒息死だコレ、却下。

 

「そうだよな……俺達はまだ知り合ったばかりでお互いのことを何も知らないから。まだそんな俺の気持ちになんて心に届かないよな。閉まっていた心の鍵を開けて最後には希望が残っていた……パンドラの箱!!!! クソッ!! いけ! エルピス! ダイレクトアタック!」

 

 後攻ワンキルVS後攻ワンキルまでお互いにデッキを築き上げたらあとはジャンケンバトルなのだ。ということで今度カードショップに行こうと思うのだ。

 

「なに書こうろん」

 

 ガン無視されている……だと……!? 俺は実在してなかった、そしてチャイムも鳴った。

 

「あー、哲也もう二回目が鳴る前に僕は教室に戻るねぇー」

 

「此方も帰るろん、やばい先輩も放課後よろしくろんー! ばいばいろん!」

 

 折り紙を持ち帰っていった感じ、ろんろんは願いが決まらなかったのだろうか? 結構、優柔不断なのかもしれない。

 

「長谷部撲殺計画は!?」

 

 俺はしっかりと本来の目的は覚えていた、偉い。

 

「ばいばいぃー、哲也もそろそろ仲直りしなよぉ、もうすぐ林間学校なんだからぁギスギスしてたら見てられないよぉ」

 

 別クラスだから見る羽目(はめ)にはならないと思う。

 

「そんな話あった? 突拍子も無いこと言うなよ。ちゃんと物事には順序と流れが在るんだぞ、いい加減な態度、行動、言動では人は付いてこないし、説得力も生まれないから生き方を考え直せ! この家畜にも劣る卑しい平民風情が! 地味に家畜の有用性は認めている上級貴族」

 

 親友への助言をしながら、俺の屍を反面教師として(いけ)(ぬま)

 

「うーん、教室が違うから説明が無かったのかなぁ?」

 

「まず教室に行ってなかった件」

 

 ユウキが急いで、(いな)、ゆっくりと教室に帰る姿を俺は見送りながら、七夕の願いごとを眺め、一通り満足したので保健室へ戻って睡魔とランデブーした。

 

 

 ▽

 

 

 西校舎(すみ)の文芸部へと向かっていると、いつもなら学級閉鎖のごとく静かなのに、(わめ)き声が廊下を反響して聞こえてきた。

 

「だから!! ここは文芸部だと言ってるでしょうがぁ!!」

 

「帰宅部ろん!!!」

 

 説明するのも面倒そうなので、どちらかが消えるまで廊下で待つことにしよう。

 

(俺はこの戦いの邪魔はしない)

 

 卑怯な手を使わないから人気があるバトル漫画の敵キャラとして俺は自覚を持つ。

 

「鍵。」

 

 同じように廊下で待っていた『やけにデカい柱が建っているぜ』と、思っていたら俺のコッペパンを殺した二年生じゃないか。

 

「お前もこの辺境に辿り着いたのか」

 

 西校舎を知らずに卒業する人も居る中、君はたった今、社会の仕組みに気づいたんだ。『自分が上手くいかないのは全て仮想敵が原因』、決して自分が悪いのは自分が原因だなんて見せないのが悪徳セミナー。

 

「帰宅部に部室は必要無いのが分からないんですか!? そのネクタイは飾りなんですかね!!!!」

 

「帰宅する気分じゃない帰宅部も居るろん!!!! 此方は二年生ろん!!!」

 

「帰宅しない帰宅部は帰宅部ではないんですが!!! はい私の勝ちです!! さようなら!!!」

 

 ビックリマークでドミノが出来そうなほどに騒音が響いている。

 俺は文芸部からなるべく離れて、廊下の窓際(まどぎわ)に背中を柱と同じように持たれさす、すると横並びになるまで近づいてきた柱。

 この窓下の日陰空間のヒンヤリした感覚は夏限定だな。

 

「ろんろんと。昨日から。一緒に探してた。」

 

 RPGかよ、引き連れて探索すな。星を探して一人で歩いとけや。

 

「同学年にもろんろんと言われているのか……本人もそりゃ初対面でも返事を返すわけな。利害の一致ね? あ、目的への一致の方か。なるほどなるほど。しばらくらぎらぎとろんろんが(かい)してそうだから、お客はコタツでも入って待っていていいぞ」

 

「あれのこと。?」

 

 コタツを指しながらクエスチョンマークで問いかけられる。声帯を切除してろ。

 

「それのこと」

 

「可哀想。」

 

「飼い主に戦力外通告されたらしい、薄情だよな。まだ二軍で戦えたのに、ちょっと期待の超新星に当たっただけであの有様(ありさま)さ、やっぱりスターって言うのは「私。可哀想。」

 

「お前だったのか」

 

「鍵。無い。」

 

 柱は両手を器にして差し出してきてるが、話すと少し脳が嫌悪感を抱いている。基本フレンドリーオブザイヤーのこの俺がだ。

 

「……。(無言の圧力)」

 

「スターと言えば美大落ちじゃなくて書記の方だけど、ピッケルは流石にどうかと思う」

 

「(鞄ガサゴソ)パン。鍵と交換。」

 

「たかがコッペパン程度? 生憎(あいにく)、グルメハンターである俺の食指(しょくし)は動かない、はっ! 残念だったな!」

 

「黒糖。シュガー。バター。揚げ。コッペパン。」

 

「屋上は君の物だ」

 

 鍵とパンを通信交換した、進化はしそうだった。

 

「やった。」

 

「すげええええ!! カロリー界の革命児だああああ! 四階級制覇ァ! チートデイ来たああああああ!!! うおおおおおお!(パンを窓から投げ捨てる)」

 

 ダン! と文芸部の扉が力任せに開かれる。

 

「なんでこういう時ばかり直ぐに来ないんですか!?」

 

 バレた。

 そして気づいたら工藤(仮)の後ろ姿が廊下の階段付近へと動いていた。ああいうヤツが戦場で生き残るんだろう。

 

 ▽

 

「チートデイってアレ有りなんですか!? 自分が地球や動物を(いつく)しんで(かか)げた食事制限ですよね!!!! チートは不正という意味なんですよ!!! 不正してまでやってる己を存分に(かえり)みて生き恥晒し続けててください!!!!!!」

 

 後輩がストレスの()け口に机をバンバンと、あっ、不正だけにBANと掛かってるな! とか微塵も思わなかった昼下がりの午後(文学的文章)

 

「らぎらぎ落ち着け。ろんろんが見るからにドン引きしてるだろ、自分ルールに自分ルールを追加してるだけなんだ」

 

「怖いろん……(両手をグーにして頭に当てていて馬鹿がやる防災訓練みたいになっている)」

 

 最初はふざけて言い合っていた相手が、どうやら『マジっぽいぞ』と気づいてしまった感じだ。

 怯えたろんろんを無視しながら俺はクソみたいな演説を(さかな)に投げ逃したパンを開封。

 

「中途半端な覚悟で環境汚染を食い止めれるんですか!? 地球は有限なんです!!! どうせ滅ぶなら私が死後にしてくだ「チートパンと愛し合ってるから好きな駅前で叫んでてくれ」

 

 ストレスが一定を超えると何かに難癖を付ける系後輩を後目(しりめ)に、パンの包装の文字が目に入った。前にも後ろにも目。

 

(賞味期限が切れてるな……でもナマモノじゃ、バ、バター……そうだ、それだけ牛さんの気持ちが籠っているんだ、待ってろ、今一つになってやるからな」

 

「お腹壊すろん……(馬鹿防災訓練)」

 

「いいか? パンの原料は小麦で米の原料は大麦、そして米には七人の神様が宿ってる、あとは分かるな?」

 

←この辺に柊

 

「パンも麦だから宿ってるろん……? どうしていつも変なのと一緒なんだろん? 先輩も変だけどろん」

 

 米は麦じゃなくて稲だという指摘待ちだったが、教養が先に負けた。

 

「俺が聞きたい知りたい何故なにどうぶつの秘密」

 

 二人で『うーん』と(うな)り考える。

 

「待ってください! この……(怪訝な顔をする資格を持ち合わせてないやつの怪訝な顔)……「ろんろんだぞ」

 

 柊が終電から帰ってきた。

 自己紹介もせずにバトっていたのか貴様等。

 

「そのろんろん先輩、私を変だなんて発言を撤回してくだ「佐々木ろん」

 

「佐々木先輩!!! だからですね私は変ではなくオンリーワン「道桜(ちはる)だろ」

 

「その「下の名前はやめるろんー!?」

 

「てっかいを!!!「げつがてんしょう!!!」

 

「それは卍解で、は無いですね!? 卍解は天鎖斬月(てんさざんげつ)です、引っかけです! その程度は引っかかりませんよ!(機嫌回復++)」

 

 なんか勝ち(ほこ)られたから負け誇っとこう。

 

「なんの話ろん? 教えて欲しいろん!」

 

「お前の呼び方だよ(確信)」

 

「ろんろんでいいろん」

 

(いいんだ)

 

「麻雀が好きなのか?」

 

「漢字は苦手ろん……」

 

「じゃあ俺は語尾を国士無双(こくしむそう)にする国士無双」

 

「同じバラバラでもノーテンの方ですよ」

 

「麻雀のルールを知らないノーテン」

 

「気安く採用しないでください」

 

 なるほど?

 

「月牙ろんろんは廊下に居たコッペパン納税者を何処でゲットしたんだ? あと俺にも個性をくれ」

 

「うろうろしてたから仲間にしたろん!」

 

 能力バトル世界における無能力者もある意味個性だと、そうろんろんが説得力を持って俺の話を無視しないで真剣に答えてくれなかった。

 

「ちゃんと厳選しろ、あいつは木の実でステータス強化をした後に平然と途中離脱して帰ってこないタイプの仲間だ」

 

「一緒に探してくれたろん! 鶴ろん!!」

 

「見られただけで逃げ出すようなバードに義理(ぎり)なんぞ搭載されてねえんだよ! まだ餌付けされて丸々太ったハトの方が触っても逃げねえ!! 地域による!」

 

「あの、ここは文芸部なんです。部員以外とそこの幽霊部員推奨先輩を引き取ってさっさと出て行ってもらえますか?」

 

 実質自分以外は出ていけとおっしゃっている。

 

「手芸部員は駄目ろん……?」

 

(駄目じゃないかな……?)

 

「仕方ない、エアコンの室外機を外から止めるか」

 

「やれやれ……真意に気づいてくださいよ、私が困った生徒を本当に見捨てるわけないじゃないですか。テストですよテスト」

 

 首を左右に振って海外のリアクションをしているが、その場合テストされているのはお前にならないか。

 俺が困ってる後輩を見捨てる→俺のテスト〆

 柊が困ってる後輩を見捨てる→柊のテスト〆

 柊が困ってる後輩を見捨てる→俺のテスト(?)

 

「所属部活なんて関係ないです。さあ、垣根(かきね)を越えて話を聞きましょう、佐々木先輩はどんなしょうもない用事で私の邪魔をしに来たか早く言ってみてくださいよ」

 

 こいつら初対面なんだろ?

 

「ご、ごめんろん……遊びに来ただけろん……」

 

「こっちこそ民度が低くてすまない……」

 

 トランプのアンティルール付き大富豪で陰キャが1位取った瞬間に『別のゲームしようぜ』と言い出す陽キャの気持ちがよく分かる。陰キャが権力を持つ国では貴族制度が破綻するという慣用句の語源になりそう。

 

「そうやって私を悪者にして自分の株を上げてて楽しいんですか? これだから先輩は他人を慈しむ博愛精神が足りないんです」

 

 なんか矛先がチャリで来やがった。鳩すら大切にしている俺が今一番持ってる成分だと過信していたんだが。まだ足りないか。

 

「の、喉乾いたろん。買いに行ってくるろん」

 

(これは帰ってこない、だから文芸部は過疎るのだ)

 

「私が買ってきましょうか? 1000円で大丈夫です」

 

 人件費何倍の価格設定、というかこの空気を作った張本人がなんで逃げようとしてんだよ。

 

「俺が来る途中で買ったので良かったら飲むか? 口付けてないぞ」

 

 困っているろんろんに救いの手を差し出す、はい博愛精神。

 

「あ、ありが……ろん……おしるこは要らないろん……」

 

 返却された、おかえり博愛精神。

 

「でもここから一番近い自動販売機は西校舎と北校舎の中庭ですよ」

 

「蛇口はテニスコートの後ろ斜めだしな」

 

「それで人が居ないろん……?」

 

 良い立地には人が多い。悪い環境はそこを抜け出せない理由を抱えているので底辺しか居ない。

 

(底辺が心地良く感じる前に帰れ)

 

 ってハトが言ってた。

 

 

 ▽

 

 

「ろんろんが可哀想じゃないか!! ショボくれて帰っただろうが!」

 

 強く生きろ佐々木。

 

「先輩、文芸部は先輩だけの所有物じゃないのです。『他の生徒を連れて来るな』とは言いませんが一言私に有ってもいいんじゃないですかね?」

 

「(合法的な手段での)連絡先しりゃん、あと中井が来る日だけ都合良くバックレてた後輩はそれを元から知っていた上で逃げたと先輩は認識してるらしいぞ」

 

「私は先輩より精神的上位存在なので、例え先輩の言い分を論破出来たとしても壊さないであげます。私の言い分が絶対的に正しくても相手の被害妄想を否定したりしません、あと交換したくないのでこの話は無かったことにします」

 

 確かに超高校級のクソ暴論ディベートとは厳密に連絡先を交換していない。

 

「ずっと関係性が時間と共に変化してないな、文芸部の時間だけ止まってるのか? もう犬になりたくない」

 

「出会いもそれからも良くなかったですから進展はあり得ないです」

 

()いて褒めるとしたら!?」

 

「先輩が来年居ないことですかね」

 

「留年しよう(自由意志)」

 

「来年は別の部活にしますから、どうぞご自由にどうぞ」

 

 伝家の宝刀『どうぞ』(はやぶさ)斬りだ。お互いいつもの定位置に着きながら俺は『後輩を無下に扱うような人間になって欲しくない』と強く願う、あれろんろん先輩じゃね。

 

「嘘みたいだろ? 健常者なんだぜ」

 

 暇なので鉄板ギャグを披露する。障害者の傷舐め合い話し合い会でこれを言うとウケる。

 

「嘘ですね」

 

 ウケなかった、そもそもそんな会は知らない。傷を舐めたら悪化する可能性。

 

「分かってるよ、ろんろんにだけ飲み物をあげようとしたのを嫉妬してるんだろ? ほら奢ってやるよ」

 

 この甘ったるい年寄りの血液みたいなのを早く手放す決意。

 

「今渡す直前に無茶苦茶振ってましたよね……」

 

「木の精だ」

 

 お汁粉は振られてもうんともすんとも言わない。テーブルの上をスライドさせて渡す。

 

「そっちに逆さに向けて開けます」

 

 缶を持って近づいて来るな。

 

頻繁(ひんぱん)にこの部室で白や黒に染まりたくないんだが、俺はリバーシの(こま)か(小粋なツッコミ)」

 

「そこでオセロ呼びをしない辺り、関係性が変わらないんです」

 

 甘い。

 

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