「毎日生命線を彫刻刀で延ばしてる俺が死ぬわけないだろ」「手相以外の知識を捨てて来たのは分かりました」   作:遺書の切れ端

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高校3年7月05日 水曜日
※自分の太ももを切り落としガールズラブを成立させてはいけません


 

「ひ、久しぶりの教室に緊張するなっ!逃げちゃ駄目だ!負けるな俺!想像してるより現実は優しいんだ!頭の中で戦うな!現実と戦え!」

 

 教室の扉の前で地団駄(じだんだ)を踏みながら俺は心の中で精一杯の勇気を振り絞る。

 

「……無課金アバター? あら、西藤くんじゃない。ちゃんと課金する時は親に言うのよ?」

 

 後ろから声がした。ながたにぶさんと登校時間が被ったらしい、悪運が尽きた。

 

「もう帰りたい」

 

 勇気なんて何の役にも立たなかった。ユウキもな、どう注意してくれたのか、全く持って使えない。

 

「いいや!俺はもう保健室に逃げたりしない!長谷部さん、この通り!勘弁してっしゃす!しましゃす!しゃっすしゃっす!」

 

 俺は頭を下げて長谷部に(こうべ)を垂れて全面降伏。

 勝てない時は相手の味方になろう!

 

「禿げてるわね」

 

「お辞儀するタイミングでそれ言っていいの芸人だけだよ? あとハゲてないよ俺」

 

 もう戦争だ、ばきゅんばきゅん。

 

「ナイストンチね」

 

 一休ちゃうねんぞ。

 

「煽りのバリエーション多くない? 泣いちゃう」

 

《男なのに泣いちゃうの!?w》

 

 ユラギおはよう。

 

「1リットルは泣きなさい」

 

 俺の涙で溺死させてやるからな。

 

「四面楚歌だー! 退却ー! 撤退だー! 皆ー! 帰るぞー!」

 

 敵前逃亡。

 

「てっつー! 待ってー!! 今日喋るラジオのエピソードトーク聞いてー!!!」

 

 教室のドアの前で長谷部さんと喋っている俺を、大半の生徒が避けて後ろのドアから入っていく中、後ろの窓から宮川が出てきた。

 お前ラジオのゲスト率高くないか? MCが『あっ、えっ、はい……うっ、すみません』と、自己主張が全く出来ないカスが原因か。この呼ばれていないゴリ押しゲストにMC乗っ取られても知らないからな、そして俺は保健室(エンドレスフィールド)へ向かう!

 

「付いてくるな!!!お前じゃ俺の傷は癒せない!ヒーラーだ!ヒーラーを呼べ!この料理を作ったヒーラーに挨拶をさせてくれ!!!」

 

「それでねー!昨日その瞬間に青白い光が!!!」

 

「映画館の途中にトイレで立ち上がってしまった心境ー!!!!!」

 

 誰か何が起きたのか教えてください、あれは夏のような暑さの夏の話でした。夏暑夏。

 

 ▽

 

 渋々と足の速度を緩めて同じ目線に合流する。

 うぇ、昨日、ガールズラブ漫画で身長デカ女ヤンデレが自分の身長を切り落とし、低身長の女と同じ高さにして『これで同じ目線♡』みたいな内容だったのを思い出した、一先ず身長を気にするより、あっ、あ? 違う、余った太ももを焼いて仲良く食べたのは別の話だ。

 

「で、入れ歯系彼女がふがふがほごほご言ってて可愛いって?誕生日は溶液で除菌してあげたらいいぜ、じゃあな」

 

「昨日幽霊見てさー!!」

 

 宮川がなんか喋ってるから俺もなんか喋ってよう。

 

「悔しい!! この世はこんなにもルッキズムに溢れていたなんて!!! 今まで気づかずに生きてきた自分が悔しい!!!!」

 

 どうして無知で生きてきてしまったのか? 当事者になるまで本当の意味での危機感なんて湧かない。全員が不幸にならないと、全員を幸福にしないと、世界が世界が、どうでもいい。

 

「頭に三角のが付いててねー!」

 

 宮川が両手を頭の上に挙げてイチゴ大福している。昨日でいちごの話題は終わってるんだが、教えてあげた方がいいか?

 

「古典落語の幽霊か、今からスピリチュアルキャラは厳しいぞ。三学年最後にやることじゃない、あばよ」

 

「足が沢山あって! こうー! 10本ぐらい!」

 

 なんとなくチャンネルを回していたら流れていたクイズ番組の正解が気になってついつい見てしまった。

 

「ムカデ人間の子供か? でも青白い光と風の道中で聞いた気がする、10分の1ムカデ人間子供!!!」

 

 早押しなら勝ってたのに。

 

「刺身にすると美味しいー!」

 

「その幽霊、包丁を使わないで手で下処理が出来て内臓のところをぐるっとひっくり返すと気持ちいいよな」

 

 生命を手で奪える感触。

 

「イカ専用の醤油で食べるのてるき好き~」

 

「固有名詞言っちゃっていいんだ、利権関係平気なのかよ」

 

 イカの肖像権でイカに裁判起こされるかもしれないから準備しとこう。

 昔スペインに在ったな、太陽の所有権を主張するやつが海外で裁判を起こしていた、太陽の使用料を払えって。

 

「あっ、てっつーふうに! 言ったらイカんー?!」

 

 また頭の上で手を三角状にして煽りイカ。こいつを殺りイカしていイカ?

 

「俺は普段こう見えてたの? また辛くなってきた、保健室に帰る、そこしか俺の居場所がダイアリー」

 

 日記、手帳、メモ。

 

「てるきは好きだよ、涼しいから!」

 

 夏だもんね、明日から七月だもんね。

 

「うわああああ! 誰かを温かくしてあげたかったああ!!!!!!」

 

 俺は走った、もうこの足を保健室まで止めないと胸に刻み、再び風に馴染んだ。

 

 

 ▽

 

 

 保健室で俺はすやすやタイム(動物園だったら行列レベル)していると、珍しく近い距離の初恋。

 

《シュンくんは私のためにどこまでできるの》

 

 唐突になにを試されているんだ俺は。どこまで出来るかなんてAV(反アガペービデオ)の冒頭インタビュー以外で初めて聞いた。

 いやユラギ、勘違いしないでくれ。俺は低俗な動画なんて好んで見たりしないんだ、まず生きている人間ですらちょっと難しい。死んでいる人間は法律上は物なので無機物には興奮できないし。自動販売機と結婚は二回もすることではない。

 

「そういうの分かってるだろ」

 

《なにもできないくせに、ね》

 

 どっちの意味。手を出せない方なのか、手伝えていない方なのか。どちらに転んでもアリとしとこう。

 

『ならその悩み てるきが解決してあげよう!のコーナー!!!!!』

 

 保健室の天井近くに設置されているスピーカーから、さっき寒がっていたクラスメイトの声が聞こえる。つまりもう昼。

 

「くそラジオめ、MCに喋らせてあげろよ。俺はクソ陰キャコミュ障根暗カスの声が久しぶりに聞きたいんだ」

 

『なんとてるきの親友が最近イメチェンしてさぁー!』

 

 イメチェンじゃない、外傷。車だったらパーツ交換、内部損傷レベルなので二桁は請求されている。

 

『髪の毛を信号の配色にしちゃったのー!』

 

 俺じゃなかった、誰だよそいつ。恥ずかしいじゃないか、親友ヅラしちゃったよ。そう思うとこのヘアスタイルは恥ずかしくない……?

 

「ろんろんろんろん大変だけろんー」

 

 保健室の扉越しで野生のろんろんマスターが通っていった。追いかけて昨日の埋め合わせをするべきかもしれない、社会人として。

 ベッドから起きて、後輩の不手際(ふてぎわ)は本当はどうでもいいが暇だからろんろんウォッチングをしよう。

 

「はじめてのろんー!きみとろんー!」

 

 ろんろんは太陽が反射して窓に薄っすらと写った自分を鏡代わりにしてクルクル回ってポーズを取っている。

 

(全然平気そうだ、トラ(たぬき)かよ)

 

「あうぃぎびなんとかろんー!」

 

「お前高校二年生だろ!!はっ!?しまったっ!」

 

 帰ろうとしたら餌に食いついてしまった。

 

「おしるこ先輩ろん!(駆け寄る)」

 

「中学一年英語で(つまず)くな、立ち上がれ」

 

 転ぶことは失敗じゃない、立ち上がらないことが失敗なんだ。

 

「?ここ日本ろん」

 

 そんな首を(かし)げても英語が世界共通語を気取っている現状は(かたむ)かないぞ。

 

「ほら、あそこにベース基地があるだろ」

 

 窓の適当な方角を指をさす。

 

「入口の警備員も日本語ペラペラろん!」

 

 それはそう。

 

「そんな横須賀あるあるはともかく、その頭で大学はどうするんだよ?(直球悪口)」

 

 神奈川には横浜しか存在していないので横須賀はもちろん架空の地名。

 

「西大なら誰でも入れるろん!」

 

「延長刑務所(西大)に行きたくないから皆勉強してるんだろ!努力(カンニング)を惜しむな!ちなみに俺は指定校推薦(ガチ刑務所)もらってるからこの余裕だぜ」

 

 その点、長谷部は凄いよな。正々堂々とカンニングしている。

 

「西高に入学した時点で往生際(おうじょうぎわ)悪いろん……」

 

 頑張って二桁を叩き出すぐらいなら零点で胸を張れと言え。

 

「るこ先輩も一緒に昼ご飯食べたいろん?」

 

「どうしようかな、一日限定オートファジー(断食)したい気分……『も』?誰か居るのか?」

 

「ヨチろんが居るろん!(手を広げる)」

 

「誰だよ」

 

 人見知り激しくて自己主張すら出来ないこの俺が赤の他人とご飯を……?

 

《どこの俺ー?》

 

 俺くんはシャイなんだよ。皆、俺くんに飯の誘いを投げないでくれ。断る時の理由で毎回大喜利をさせられている、もう冠婚葬祭は通用しない時代が到来中。

 

「ヨチろんは喋らない設定で生きてるろん!スケッチブックで筆談が得意ろん!あとはろんね、演劇部ろん!(目を瞑り、こめかみを抑えながら付け加える)」

 

「二年は日常会話をしてないの?テレパシーとか流行ってる?俺も使いたい(真似して目を瞑り、こめかみを抑える)」

 

 今のところ人類へのコミュニケーション手段を持ち合わせているのは二年はごく僅か。

 

「なに言ってるろん〜?(さっきと違う方向に首を傾げる)」

 

「ごめんな声帯を使って、二年生の実態と美術部眼鏡後輩が愛おしく思えてきただけなんだ」

 

「みやろんは男ろん」

 

 面識あるのか、世間は狭いな。そういえばここ狭い世間(学校)だった、驚愕の真実。

 

「じゃあ、お前はヨチろんが嫌いなのかよ」

 

「そ、それは好きろん!これが愛ろん!?わかったろん!先輩を応援するろん!(手を前にグー)」

 

 愛がなければ無に等しい。

 

「話すほど二年と面倒な絡みが増えそうだから俺はぼっち飯するぜ。ろんろんまた誘ってくれ、また断るから(手を振る)」

 

「るこ先輩は素直じゃないろんねー?(微笑み)」

 

 やはりどっか空気が、隙間風か?さっさと壁を修繕(しゅうぜん)しようペタペタ。

 

「じゃあな、あうぃぎびfeat(フィーチャリング).道桜(ちはる)

 

「もう誘わないろん(ジト目)」

 

 友達が減った。ろんろんは踊りながら二年の教室へ帰って行く。落ち着きがないと通信簿に書かれてそう。

 

 ▽

 

 昼ご飯を何処で食べようかと迷いながら便所飯は迷信だと思う。昼休みの便所は割と人が来るからむしろ教室より賑やかだ、あと衛生面が終わってらっしゃる。

 やはりベストアンサーは空き教室、だが俺は屋上へと階段を上がる、やつには借りを(ゆう)している。

 ガチャ、とドアを開いて少しホッとした。鍵が閉まっていたら一個下の階から窓をクライミング屋上登りをする想定までしていたから。ドアの音で気づいたのか、こっちをじーっと深淵を覗き込んでくる工藤。

 

「見下ろすな」

 

「そんなに。差はない。」

 

 ニーチェはそんなこと言わない。

 

「これでもか!!!」

 

 俺は寝転がり、地面に当たっている面積が靴から背中へとバージョンアップしてやったぜ。

 

「……。」

 

 見下(みお)ろす通り越して見下(みくだ)されてしまった。

 

「新しい感覚だ、お互いリアクションが薄いなんて」

 

 お互いの声に抑揚(よくよう)が無いため、少し紙芝居を思い出す。

 

「よく。喋るね。先輩は。」

 

「会話が好きなんだ」

 

「そう。」

 

「躁!?」

 

「……。(空を見る)」

 

「……(スベると思っていなかったので唖然)」

 

 もう俺も空を見ることにした。風が夏の暑さを誤魔化してくれている感謝、しえしえ。まぁ、背中は熱いけどな。

 

「あれが夏の大三角」

 

 望遠鏡がせっかく届いていたので使う前に予行演習をしておく。

 

「昼。見えない。(顔、動かず)」

 

 探しもされてないけど。

 

「今日の空、お前には何色に見える?」

 

「水色。」

 

 水色好き、お前嫌い。

 

「お手」

 

「……。」

 

「俺がしようか?ワン、へっへっへ、わおわお、わんわん、あっ死にたくなってきた、ばうばうばう、がおーーーん」

 

「……。」

 

「もうここから動かないからな!!!!!!空は空だ!!色なんて無い!!!」

 

「永住。?。」

 

「先住民は大事にするよ」

 

 大抵の歴史では先住民は非道な目に遭いがち。だが俺はしない、誰も俺の後ろには居ない。大事には二つの意味が有るのを隠しながら、

 

「空とかずっと見てて飽きないの?代わりに俺が見られようか?こっちを見て、見るな」

 

「飽きてる。」

 

「素直だ、そこは好感を持とう」

 

 きっとこんな時間も必要なんだろう。

 

 ▽

 

「昼普通に食べ忘れてた」

 

 むくりと起き上がり空腹で自我が芽生えたので、お腹に同情する。

 

「どんまい。」

 

 同調者現る。

 

「そういや、くれたパンの賞味期限ぶっちぎってたよ?地元走り豆腐屋だよ?」

 

「ごめん。」

 

 空の方を見ながらこっちには一切視線を向けない謝罪が飛んできた。避けた。

 

「屋上から跳び降りて頭から着地したらいいよ」

 

 俺も鬼じゃない、かぐや姫下位互換要求で手を打つ。

 

「謝ったのに。」

 

「俺じゃなかったらコッペパンがコペェパンッ!になってた」

 

「……?。」

 

読解力(どっかいりょく)不足か。仕方ない、帰ろう、テレパシー覚えてきてやる」

 

 こういうところが他人を寒くしている原因かもしれない、夏は是非地方に呼んでくれ。

 

 

 ▽

 

 

「ただいま」

 

 保健室登校再開の合図のチャイムが鳴り、昼飯は結局食べ(そこ)なった。昔は二食だったらしいのでセーフだ、つまり白黒ということに違いない、パンダだけ忠実で草。

 

「教室どうだった?ちゃんと行けた?」

 

「……きょうしつ?」

 

 なんの話だろうか。闇医者はパンダではない。

 

「いつまで君は保健室に居るのかな?」

 

「……ほけんしつ?」

 

 なんの話なんだろう。

 

「西藤さんは野良犬だと思うの、皆で面倒見るような存在で、可愛くなかったら保健所に連れて行かれる、わかった?あ、分からなくてもいいよ?」

 

 くーん。

 

「今時野良犬なんて居ないので、ジェネレーションギャップは伝わりました!人生の先輩先生!!!マジかっけえ!ぱねえ!」

 

「この学校で怪我をしたらもう君は助からないね」

 

 まずい。助かりたい助かりたい助かりたい。

 

「先生!!ペットショップに行って犬だけを買い占めて逃がしてきます!!!!!」

 

「よろしい、ただ先生は大人しく寝てるか静かにを希望してるよ?」

 

「でも近場のペットショップは出禁なので寝てようと思いました、すやすや」

 

「何したの?」

 

「その、何匹かやっちゃって、てへぺろ」

 

「うわ……」

 

「冗談ですよ!?!?そんな引かないでくださいよ!」

 

「君の冗談は誰にも通じないから」

 

「よく言われます」

 

 布団に向かいながら、ここのベッドどのぐらいのペースで洗っているんだろうと思わされた。こういうの気になると痒くなってくる、思い込みで人って死ねるから俺も死ぬんだろう。

 

 

 ▽

 

 

「おはヨークシャーテリア!」

 

 文芸部で手を犬にして挨拶をかまし、今日も一日頑張るぞいしとく。今言っているのは俺と俺だけ。

 

「夕方です」

 

 夕方らしい、こちらからの中継は以上。

 

「おはプードル!(再挑戦)」

 

 最近の語気の猫率の高さからバランサーが働いてないと判断して犬を口で増やす。まぁ犬も猫(もく)で大抵の動物は猫目に分類されるとかは二度と社会で使わない知識が頭を通り過ぎる。

 

「シャラップードル」

 

「プードル返し!?」

 

 いつもの定位置に居る子供食堂で無料が通用しそうなやつと会話しながら直射日光に負けた。

 

「ああああああああああああ夏休みー!!!!!!(テーブルを叩き読者の邪魔をする子供食堂で通用しない俺)」

 

 学生は夏休みがあるから喜ぶが大人は暑い中で仕事をさせられるので夏が嫌いなんだろうなぁ。と子供ながらに思っていたが別に室内なら快適だった、盲点。室内で働けるような大人になりたいぜ。

 

「やっともうすぐ夏休みですね。(テーブルの振動に被害を受けないように漫画を浮かす)苦痛の時間が長いと言われるだけ有って本当に長かったです」

 

「確かに俺も今、週7でなんで坊主にされたか疑問が浮かんでる、長かった」

 

 耳という漢字に恐怖すら覚えている。

 

「答えは出ましたか?」

 

「それが全く」

 

 なんか神妙(しんみょう)に明後日の方向を向き出した後輩。

 

「きっと先輩にも……いつか私の考えが理解できる日が来るといいですね……いいんです、先輩にとって私は……その……なんですかね……なんかですね」

 

「誤魔化されない、誤魔化せれてもない」

 

「っち」

 

 露骨な舌打ちである。髪は生えてくるが心の傷は生えてこないのだ。

 

「ごほん、まだ(とい)に対する解をあげていませんでしたね。先輩も生きていればきっと、なんか、多分あるんじゃないですか?知りませんけど」

 

 そんな5月にお前が投げかけた『なんで生きてるんですか?』の(とい)を今更答えられても困る。質問した方が答えたら自問自答。こっちからすると他問他答。

 

「つまり惑星と惑星がぶつかって小規模なブラックホールが発生するような感じか……」

 

「すぐ宇宙で例える男は嫌われますよ」

 

「これ以上?」

 

「訂正します、もう嫌われないです」

 

「カンスト勢(喜ぶ)」

 

「どうせ先輩の人生ですから私に関係ないです。勝手に死にたければ死ねばいいです、誰も止めませんよ?」

 

 死にたがりに見えてるな、刃物から逃げなかった定義。

 

「別に生きたくないだけでイコール死にたいわけではない。これメンヘラ教科書1ページ目に書いてあるから」

 

「知りません、興味もないです」

 

 生きづらいと死にたいは別問題だろうにんじゃりぱんぱん、朝はパン!パンパパン!という感じで昼飯を食べ忘れたのでコッペパンを買ってきていた、しゃきーん!らんちたいむ!

 

「……このコッペパン焼きそばが入ってる」

 

 異物混入だ。後輩が焼きそばをお花見気分でルンルンと近づいて来なかった、普通に来た。

 

「不良品ですね、私が処理しときます」

 

 コッペパンもどきを取り上げられた、俺の昼飯。

 

「思いついたんだけど焼きそばをパンに挟んだら売れる気がする」

 

「もう買っふぇるのです」

 

「盗作か……オーマイ柊」

 

 キリストに配慮した。

 

(わたひ)は神ですか」

 

 神へのお供え物としてコペェパンッを諦めることにする。

 

 

 ▽

 

 

 夜、夕飯いつもより多く食べた。

 育ち盛りではないがどうせ起きているのでカロリーは消費するに違いない、自室で夜の長さをどう解決するか検討する。

 

《双眼鏡見ないの~?》

 

「望遠鏡な」

 

《死ねぇー!!!》

 

 俺に落ち度はあったかな。

 最近はずっと猫を茹でる動画を見ていたのだがもう飽き気味、シラスのように目が白くなって濡れた姿はモップみたいだなと思いながら眺めていたが、人と違い言っていることがわからないため感情を表情と鳴き声以外で判断するのが難しい。

 人だと大体海外なので言っていることが同じく分からない、いや、多分分かったとしても死ぬ間際の言葉なんてグチャグチャで意味を成してないかもしれない。

 人の場合は猫と違い白く成らずに赤くなる、ほぼ角煮だ。ぐつぐつぐつ、赤が赤黒くなり、ただ人はガスが多いのでボン、ブクブクと鳴る、とてもじゃないが食べれなさそう、調理方法は茹でるより燻製(くんせい)とかの方が食べやすいか。

 

「昔やった百合ゲー、どのファイルに置いてあっかな」

 

 あまりもうPCは動画視聴以外で使うこともなくなってしまったな。

 ただ好きなシーンが時折、頭にチラつく。今思い出したのが、どこかに埋もれているはずのガールズラブゲーム、巨乳キャラを攻略しようとすると女主人公がもうすぐ誕生日なので、その巨乳に『なにが欲しい?』と聞かれてネタ選択肢の『なんでも〇〇からもらえたら嬉しいけど……この胸!この胸は欲しいかな!?な!?』を選ぶと『揉まないでよぉー』とじゃれるイチャイチャするシーンだが、誕生日当日に巨乳キャラが自分の胸を切り落として血だらけになりながら『欲しがってたもんね』と胸をくれるのだが凄い感動した、これが愛なんだろう。

 

《私、ぼっちの子のルート〜(ぼっちの子が良くする立ち絵の物真似のポーズ、手の甲を合わせる)》

 

 ぼっちは目玉スプーンくり抜き誕生日ケーキなので割とポピュラー。海猫でも人のパーツフルコースしてたし、舌何枚も並べられている皿とか細かい、あんなありふれた展開が好きなユラギも良い、百合は奥深いな。

 一番気に入った攻略キャラは()しくもツインテールだった。ツインの話になるとシュンくんが煩い、せっかくだし、かまちょしとく。

 

「女装男子のスカートの中は何派?俺はねトランクス!っと」

 

 相手の得意な話題を投げる、これが円滑なコミュニケーションの一歩だ。

 

「見つかる気がしない、もう脳内でクリアさせて再プレイしたことにしよう」

 

《ファイル分け過ぎて見つからないとか意味なくないー?本末転倒じゃーん》

 

 フォルダ名をきちんと書くタイプなのだが、細分化(さいぶんか)を繰り返すあまり砂漠になってしまった。

 一度見失ったらもう見つからないのだ、容量が37TBあるので存在はしてそう。たまに自分の苦痛ポエムが見つかったりして中々ハード、死んだあとにこの外付けHDDの量を確認する誰かも大変だろうに、消す気はないので遺品整理を是非頑張って欲しい。

 

「今日も今日とて走るか」

 

 ランニングシューズを使用しに行く。靴、今夜は寝かせないぜ。

 

 ▽

 

 玄関で靴紐を結びながら靴紐で首吊りをしたことがあるが普通に体重で切れたので荒縄をオススメしよう。

 

「兄ぃ家出(いえで)ー?カギ閉めといてあげるね」

 

「ちくわって魚なんだぜ!」

 

 風呂上りの妹が茶々を入れてきたので茶柱を立てとく。

 

「ちくわ?」

 

「かまぼこって魚なんだぜ!」

 

「兄うるさい、しっしっ」

 

(うお)クンは人だよ」

 

「う、る、さ、い!」

 

 カニカマ魚説は黙っといた。

 

 ▽

 

《ホームレス決定!》

 

「うち鍵っ子やねん(ポケットの鍵をユラギに見せる)」

 

 何処を歩いてドーパミンを出すかな。ランナーズハイでキメたい、軽く走りながら考える。

 ユラギの家に向かいたい気持ちと、以前ユラギの出したゴミ袋を眺めていたら窓越しから中指を立てられて、次のゴミの日から黒いゴミ袋で中身が見えないように対策されていたので、次は洗濯物を眺めていたら次の日から部屋干しになって親指を下に立てられてしまったのを思い出す。

 ストーカー規制法で捕まらないラインを押さえながら次は何を眺めようか考えているが、追い詰め過ぎると何してくれるか分からない。

 

《一度捨てた相手にしがみついてるなんて滑稽だねw》

 

「言いそう」

 

 小惑星をまず平仮名にする。しょうわくせい、真ん中を〇で隠す、しょう〇くせい。

 これを小学生と読んだ人はロリコンという心理テストを考えたが使いどころは無い。まず最近己にその容疑がかけられてそうだ、児童性愛者はアニメや漫画のキャラ相手なら恥ずかしくないみたいな風習が有るが普通に良くない、というか犯罪者予備軍なのでは?と思考が流れる。

 心理学の講義で習ったが学生の時にちゃんと恋愛をしたり青春をしてこなかった年齢のまま精神が止まってしまい、高校生が好きという人は高校生活が良くなかった。中学は小学はと、その時にやり残したことを取り返そうとする習性、もしくは持って生まれた病気だと言っていた。

 そういえば俺高校生だった、講義を受けてない。授業料を払っているのに人気講義は抽選とか推しのライブ感覚は辞めてくれないか。

 

「ん?」

 

 シュンくんからメッセージが返ってきていた。

 

『お前は下着の種類で興奮しているのか????大事なのはその女装男子に合っている色、種類、で有って状況にも依るだろ。勇気を出して自分と共に成ってくれる時なら俺は何でも嬉しいが、日常の何気ない瞬間で真面目がズボラな一面でもギャップを感じるだろ?でもズボラがズボラのままでもいいんだよなァ……カルマ的な話題だな、それでそいつのパーソナルカラーは?』

 

 好きな何を発表しているドラゴンなんだろう。

 スマホをポッケにナイナイする、一歩進んだが二歩下がった、円滑とか知るか。既読無視の毒虫。

 

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