無個性のヒーローアカデミア   作:明灯月陽

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B組合流

 八月、オールマイト一行は車内で、これからの事について話し合う。オールマイトと根津が仲間を集めている間、生徒たちは隠れ家で修業をする。

 

「生徒たちの事は君に任せられないだろうか」

 

「私がか?」

 

 オールマイトに言われて、古瀬はそこまで信用されているとは思わず、少し不思議に思った。

 

「僕らには今、人手が足りないのさ。何とか頼まれて欲しいのさ」

 

「そういう事ならば分かった。毎日は無理だが、定期的に様子を見ておこう」

 

 そんな中、爆豪だけが別に場所へと送られる。根津の知り合いがいる場所で、そこに匿ってもらえとの事であった。

 

「俺は行かねぇ!」

 

 爆豪は抵抗するが、捕らえられて拘束される。そのままオールマイトたちの車に乗って、目的地へと連れて行かれる。

 

 他の生徒たちは、廃墟となったマンションがある場所で降りる。最近まで使われていたが、治安の悪化に伴いこの場所も放棄された。

 

「最近こういった廃墟が増えてるよね。何でだろう?」

 

「治安が悪化する、人が減る、不便になる、さらに人が減る、を繰り返した結果ですね。現在は治安が悪い土地には行商すら来ませんから」

 

「そして廃墟には、僕たちみたいなダークヒーローかヴィランが住みつくってわけだね」

 

「そりゃ離れるわ」

 

 彼らはマンションの中に入る。一階は物音がせず静かだった。

 

「確か、B組の人が先に来てるんだっけ?」

 

「そうらしい。まずは彼らと合流しよう」

 

 二階に上がると、彼らは凡戸に遭遇する。彼はA組の名前を思い出そうとする。

 

「八百万さん、それに耳郎さん、それとあなたは……」

 

「根津校長から君たちの事を任された大吾だ。よろしく頼む」

 

 凡戸は来た道を戻って、他の生徒たちを呼びに行く。このマンションにいるB組の生徒全員が一室に集まる。居るのは黒色、小大、鉄哲、取蔭、凡戸、柳の六人であった。

 

「それでは再会を祝してカンパーイ!」

 

 芦戸の音頭で親睦会が開かれる。一応二十代設定のため、後は君たちで楽しんでくれと言って古瀬は帰った。

 

「取蔭さんたちは根津校長とオールマイトに救助されて、ここに来られたんですよね」

 

「そうだよ。八百万たちは違うの?」

 

「私は先ほどの大吾さんに助けられました。その時は、骨抜さんと回原さんもいらっしゃったのですが、他のB組の方はどうなったのですか?」

 

「さあねえ。私たちも配置はバラバラだったし、その後も散り散りになったから。何人かは死んで、何人かは捕まったんだと思う。あと敵に付いた奴もいるし。A組の方は?」

 

「青山さん、砂藤さん、上鳴さんが現政府に付きました。蛙吹さんはまだ敵に捕まっています。飯田さん、切島さん、口田さん、障子さん、瀬呂さんは亡くなったことが分かっています。常闇さん、轟さん、葉隠さんの三名は消息不明です」

 

「切島が死んだのか!? 誰がやりやがった!」

 

 近くで聞いていた鉄哲が声を上げる。

 

「白髪のヴィラン、AFOだそうです。個性を奪われて、そのまま殺されたそうです」

 

 鉄哲は悔しさのあまり、拳を机に叩き付ける。

 

「ちょっと壊さないでよ」

 

「でもみんな生きててよかった。なんかもう、世の中目茶苦茶だもん」

 

 柳が少し安心したようにそう呟く。

 

「皆さんも、家族を人質に取られたのですか?」

 

「まあそう。ってことはそっちもなんだ」

 

 彼らは互いに情報交換を行う。その後、羽目を外して夜遅くまで彼らは騒いだ。

 

 

 

 深夜、古瀬のスマホに電話が掛かってくる。完全に眠っていた古瀬は、寝ぼけて変声機を付けずに電話に出る。

 

「はい」

 

『大吾さん! 今敵に襲われてて、すぐ来てください!』

 

「分かった」

 

 そのまま十分くらい横になってぼうっとする。それから起き上がって、展開装甲を身に付けて出かける事にした。

 

 少し前、ヒーローたちがマンションを襲撃する。数は全員で百人を超えており、闇夜の中を歩いて来る。

 

 八百万は襲撃を警戒していたため、入り口にセンサーを設置していた。マンション内に警報が鳴り響いたことで、何者かが侵入してきた事に気付く。

 

 生徒たちは交戦するが、数に押されて後退する。階段を壊して登れないようにするが、ヒーローたちの連携によってあまり意味はなかった。

 

 上へ上へと後退していき、屋上まで追い詰められた所で、古瀬に連絡することにした。そこまでは自分たちで何とかできると考えていた。

 

 緑谷は外に出て、多数のヒーローたちと戦う。自分が出せる最大の力で、拳を振るおうとするが受け止められる。

 

「どうやら俺は、ヒーローだったみてぇだ!」

 

 デステゴロが緑谷の拳を受け止める。そして緑谷を掴んで地面へと投げつける。

 

「デトロイト……」

 

 緑谷は立ち上がって拳を振るおうとするが、その瞬間、残り火が完全に消える。拳も体も力を失い、脆弱な拳がデステゴロを打つ。

 

 蹴り飛ばされて転がって、マンションの壁にぶつかる。緑谷はそのまま気を失う。

 

 もう一人、外に出ていた鉄哲に攻撃が集中する。彼もまた耐えきれずに膝を突く。

 

 そんな中、バイクの音が聞こえてくる。バイクがヒーローたちを飛び越えて、鉄哲と緑谷を掴んで引っ張って行く。

 

 古瀬はバイクから降りたのち、跳躍して屋上へと着地する。気絶した緑谷と動けない鉄哲を他の生徒たちに任せる。

 

 ヒーローたちは屋上の扉を破ろうとしている。古瀬はそちらへと近づいて、先に蹴破って、その先にいるヒーローたちの相手をする。

 

 睡眠不足によるデバフを受けながらも、攻撃を腕で弾いて蹴り飛ばす。二十人近く倒した所で、ヒーローたちは気絶した人たちを連れて撤退する。

 

 古瀬は屋上に戻って他の生徒たちに尋ねる。

 

「怪我はないか?」

 

 それから彼らは、怪我人の手当てと、建物の被害状況を確認する。それから荷物を纏めて、すぐに別の場所へと移ることにした。

 

 気絶した緑谷はすぐに目を覚ました。体を起こして、自分から残り火が完全に消えたことを確認する。

 

 緑谷は安全な場所、爆豪と同じところに行くと周りに伝える。

 

「この状況で逃げるってこと!?」

 

「僕はもう、戦えない。僕がここに居ても邪魔になるだけだ」

 

 周りはそれに対して何も言わない。もはや戦えないと言うなら、それを止めるつもりは無かった。

 

 しかし古瀬はその言葉に怒りを覚える。主人公のくせにあっさりと諦める所も、戦いから逃げ出すところも、ふざけるなと思った。

 

 もしかしたらこれは一時離脱イベントなのかもしれない。一度離脱して、新たな力を身に付けて戻ってくるのかもしれない。

 

 だとしてもあまりの情けなさに腹が立った。主人公が力を失ったから、もういいって投げ出すって何だよ。お前、本当にふざけんなよ! 

 

 かなり理不尽な怒りである。手足を失っており、体もボロボロ、その結論を出すことも理屈としては分かる。しかしそれでもなお、主人公としてみると腹が立った。

 

「力が無ければダメなら、力を得る資格はない。君は力が無ければ何もできないのか。君は選ばれたのだろう! 君が受け継いだものは力だけか!」

 

 スーツなしじゃ駄目なら、スーツを着る資格はない。スパイダーマン ホームカミングのトニー・スタークのセリフである。

 

 激高する古瀬の肩に手を置いて、周りは抑えようとする。

 

「私とて、手足を失った人間に対してこんな事、普段なら言わない。だが君には、使命があったんじゃないのか! 託された想いを失ったのか!」

 

 緑谷は俯くように視線を下に向けて、黙り込んだまま何も言わない。古瀬は周りから、落ち着くように言われる。

 

「すまない、少し頭を冷やしてくる。君には失望した」

 

 去り際にそう言って、古瀬は部屋から出ていく。もはや緑谷を主人公とは思わない事にした。

 

 ちょっと話してくる、と言って麗日が後を追う。それ以外の生徒たちは緑谷を慰める。

 

 深夜のベランダ、そこから見える住宅地に明かりは無く、月と星のみが照らしている。麗日は追って来て声を掛ける。

 

「すまない、少し冷静さを失っていた」

 

「いえそんな、デクくんに発破をかけるために言ったんですよね。それに今日は助けていただいて、ありがとうございます」

 

「どうかな」

 

 古瀬はベランダからの景色を見る。麗日はその姿を見つめる。

 

「井梨くん?」

 

「……少し、場所を変えようか」

 

 その呼びかけを聞いて、古瀬は麗日を見る。それから屋内へと戻り、別の場所へと歩いてく。

 

 古瀬は倉庫へと向かう。麗日が入った後、ドアを閉めて鍵をかける。それから展開装甲を解除して、素顔を見せる。今日は急いでいたため、マスクはしていない。

 

「久しぶり。こっちの姿では、割と会ってたけど」

 

 表情の見えない笑顔を古瀬は見せる。眠気で頭が回らず、何と言っていいか分からなかった。

 

「久しぶり、って言っていいのか分からんけど」

 

「抱きしめてもいい?」

 

「いいよ」

 

 古瀬は麗日を抱きしめて、そのまま荷物の上に座る。ちなみに今は八月で、普通に暑い。

 

「かなり間が空いたけど、僕たちってまだ付き合ってるのかな?」

 

「どっちがいい?」

 

「付き合っていたいです」

 

「変わらんねえ」

 

 麗日はこの数ヶ月で、かなりの精神的ダメージを受けている。何も考えずに、しばらく古瀬に寄りかかる。正直、古瀬よりもよっぽどメンタルケアが必要な状態である。

 

「心配したんやから」

 

「申し訳ございません」

 

 古瀬はこれまでの経緯を説明する。AFOが雄英を襲った際に、緑谷が捕まっていると判明した事。もしOFAを奪われていた場合は奪い返すために、超常解放戦線に入るとオールマイトと相談して決めたこと。

 

「あっちに付いたわけじゃなかったんやね」

 

「そんなことは無いよ。ヒーロー側に勝ち目が無いようなら、あちら側に付くつもりだから」

 

「……井梨くんは、私たちにまだ勝ち目があるって思ってるの?」

 

「どうだろう。僕はまだそう信じているよ。諦めるには、まだ早い」

 

「でも多くのヒーローが死んで、生き残ったヒーローも寝返って、街はボロボロで、市民の支持も無くて、作ってた道具も相澤先生が壊して、みんな個性を使って治安はぐちゃぐちゃで、ヒーローなんて、もう誰も望んでないんだよ」

 

 麗日の指が古瀬の背中に食い込む。彼女は呻くような声を出して、体を震わせている。

 

「そうだね。きっと過去には戻れない。ヒーローがみんなの憧れだった、あの時代には戻れないのかもしれない」

 

「ヒーローになんて、なろうとしなきゃよかった」

 

 誰にも語れなかった本音を吐露しながら、麗日は涙を流す。古瀬は寄りかかる体を抱きしめる。

 

 しばらくしてから、二人は立ち上がって離れる。麗日は気恥ずかしさを笑ってごまかす。

 

 古瀬は大吾の連絡先は何かの機会に消すかもしれないからと、別の連絡先を麗日に渡す。それともう一つ、腕に取り付ける機械を渡す。

 

「多分必要無いと思うけど、死柄木に抹消が奪われたからその対策に作った、個性因子を活動させる機械。試作型で三十分位しか使えないから気を付けて」

 

「井梨くんも何でも作れるよね」

 

「まあ完全にメタアイテムで、抹消以外には使えないけど」

 

 古瀬はもう一つ伝えておくべきことを思い出す。

 

「ああそれと、お茶子さんの両親が捕まっていたので逃がしておきました。今どうなっているかは少し分かりませんけど」

 

「分かりません、というのは?」

 

「逃がした時は無事でしたが、それ以降会っていないので、今どうなっているかは分かりません。今度確認しておきます」

 

「あ、あー。じゃあ、父ちゃんも母ちゃんも無事ってこと? 良かった……」

 

 麗日は安堵から涙を流す。そんなつもりなかったのに、涙が零れて止まらなかった。それを誤魔化すために、無理に笑う。

 

「先に出ますね。落ち着くまでここに居てください」

 

 一緒に出ると自分の正体が露見しかねないと思い、古瀬は先に部屋から出る。一番の問題は臭いで、同じ匂いがするとバレるとまずいため今日はもう帰ることにした。

 

 少ししてから、麗日も倉庫から出てくる。そこでばったり、緑谷に遭遇する。

 

「麗日さん!?」

 

 緑谷は麗日が泣いていることに気付く。

 

「いや、これは違うから。気にせんといて」

 

 そう言って目元を隠しながら麗日は立ち去る。緑谷は名前を呼んで呼び止めようとするが、相手が止まることは無かった。

 

 

 

 翌日、緑谷は宣言通り、リタイア組が集まる根津の知り合いの所へと向かう。彼は結局、結論を変えることは無かった。

 

 オールマイトたちが戻るまで待った方がいいのではないかと他の生徒たちは提案するが、緑谷はすぐに行くことを選んだ。

 

「どうやって行くの?」

 

「私が送りましょう」

 

「何人か付いて行った方がいいんじゃない?」

 

 治安が悪いため、無個性の緑谷が一人で出歩くのは危険である。念のために数名を乗せて、八百万が車で送る。

 

 八百万たちが戻って来た後、彼らは昨日の襲撃について相談する。何人かは相澤やロックロックたちがいた頃の襲撃に似ていると感じた。

 

「この中の誰かが、内通してんじゃねえか?」

 

「なっ、俺たちの中に裏切り者がいるってのかよ!」

 

「待ってよ。人探しに特化した個性で見つかったんじゃない?」

 

「そうかもしれないけどよ」

 

「そもそも裏切り者がいるなら、お前たちの方だろ! 俺たちだけでいる時は何も無かったんだ!」

 

「ちょっと落ち着いてよ。仲間割れしてる場合じゃないって」

 

「そうですね。少し落ち着きましょう」

 

 話し合いの結果、今日から見張りを配置することに決まる。それと広範囲にセンサーを設置して、道に足止め用の罠を作る。

 

 その日も、多数のヒーローが襲撃に来たが、事前準備によって被害無く撤退することができた。

 

 二日続けての襲撃、隠れ家の場所を彼らは誰にも知らせていない。つまり何らかの個性で補足されたか、内通者がいる事になる。

 

 三つ目の隠れ家の場所を聞いた古瀬がやって来る。彼もまた、二つ目の隠れ家の場所を知っていたため容疑者である。

 

「本当に私たちの中に内通者がいるの? 個性で補足されたって考えた方が自然じゃない?」

 

「怪しいならその人じゃねえか? 他は全員雄英からの知り合いだろ」

 

「大吾さんが内通者なら、最初の襲撃で助けになんて来なかったでしょ。そっちこそ、自分が内通者じゃないって証明できるの!」

 

「皆さん、落ち着いてください」

 

 内通者を疑い、彼らは疑心暗鬼になる。あまり顔を合わさず、信用できる人間とのみ行動するようになる。

 

 古瀬から見た場合、麗日はおそらく確定白であるが、それ以外は全員が内通者かどうか不明であった。

 

 おそらく全員、個性を使えば外部と連絡を取ることができる。どのようにして、を考えるのは無意味だと古瀬は思った。

 

 また、ヒーローたちは二十三人中七人、およそ三分の一がスパイだった。今回も複数の内通者がいる可能性が高い。

 

 麗日に誰がスパイなのか分からないのかと聞かれるが、古瀬にも分からなかった。襲ってきているヒーローたちはスケアクロウ社の指揮下にあるが、心求党の命令で動いている。調べれば何か分かるかもしれないが、時間が掛かる。

 

「少しいいだろうか」

 

 どうするか考えて、古瀬は八百万に協力を求める事にする。八百万が内通者であれば、その万能さから外部と連絡を取る方法などいくらでもある。もし彼女が内通者だとするとどうしようもないため、白と仮定することにした。

 

「協力して欲しいことがある」

 

 古瀬は八百万とバイクに乗って、次の隠れ家へと向かう。麗日にはその間のアリバイ作りを頼んだ。

 

「どうされるおつもりですか?」

 

「内通者だと証明するためには決定的な証拠が必要だ。だが個性を使えば、周りに隠れて外部とやり取りをする事は容易だ。だからそれを見つけるため、全ての部屋と建物の外に監視カメラを設置する」

 

 次に移動する隠れ家に予め監視カメラを設置しておき、外に情報を送る瞬間を撮影する。古瀬はその協力を八百万に頼む。

 

「全ての部屋、というのは個室もでしょうか?」

 

「個室、トイレ、浴場、全てだ。女性の方は君が確認してくれ」

 

 八百万は少し考えてから、その作戦を了承する。一日かけて、二人で建物に監視カメラを設置する。

 

 一方で麗日は、入り口付近をうろついている峰田を発見する。何をしているのか尋ねると、少し口籠る。

 

「オイラは前の拠点の入り口にもぎもぎを置いてただろ? あの時、入り口の扉が勝手に開いたような気がしたんだ。あれはもしかして、葉隠だったんじゃねえかなって」

 

「透ちゃんが?」

 

「勘違いかもしれないけどよ、あの時、葉隠みたいな匂いがしたんだ」

 

「匂い」

 

 寮にいた時、葉隠の部屋に入った時に嗅いだ匂いがしたのだと峰田は言う。仮にそれが事実だとしても、お手柄と言っていいものか、麗日は何とも言えない顔になった。この情報は、古瀬と八百万にも共有される。

 

 次の襲撃は一日空けての二日後だった。この襲撃も事前に察知して、接敵する前に逃走することに成功する。

 

 古瀬と八百万はその隠れ家で、内通者が外に情報を送っている瞬間を見つける。映像から、内通者は黒色、小大、そして葉隠がその情報を運んでいることが確定する。

 

 二人は彼らをどうするか相談する。黒色と小大の捕縛はすぐに可能だが、できれば葉隠も捕らえたかった。

 

「葉隠さんにも、おそらく何か事情があるのでしょう」

 

「それを知るためにも、捕らえた方がいいだろう」

 

 敵が来る前に、建物を爆破して次の隠れ家へと移動する。そこで何人かの協力を得て黒色と小大を捕縛したのち、情報を受け取りにやって来た葉隠を捕縛する。

 

「黒色、小大、アンタたち本当に裏切ったの? 何とか言えよ!」

 

「葉隠さん、どうして……」

 

 三人は言い訳することなく黙り込んでいる。三人をどうするかは、根津とオールマイトに決めてもらうことになった。

 

 根津とオールマイトは戻ってきてから、改めて生徒たちから話を聞く。それから三人に、何があったのか話を聞くことにした。

 

 

 

 雄英高校跡地で他の生徒たち別れた葉隠は、周りに言っていた通り家に帰ろうとしていた。

 

 その途中、お腹が空いた葉隠はファミレスで昼食を食べる。食べている途中でなぜか警察に通報され、無銭飲食で捕まることになった。

 

 その後、死柄木に個性を奪われて、縛られたまま黒色と小大と共に、公安の取調室へと連れて行かれる。

 

 床へと座らされて、彼らは公安から提案される。個性を返してもらう代わりに超常解放戦線のために戦うか、ここで死ぬかを突きつけられる。

 

 床には誰かが死んだような、赤黒い染みが残っている。葉隠は恐怖で震えていたが、黒色と小大はさらにクラスメイトの命を上乗せされる。

 

 小森希乃子の命を助けてもらう代わりに、黒色は超常解放戦線に従うことにした。かなり葛藤していたが、小大の後押しを受けてそれを決める。

 

「君はどうする?」

 

 そう聞かれても、葉隠には何も答えられなかった。公安に従うという事はつまり、他の生徒たちの敵に回るという事である。

 

 自分は飯田によって生かされた。避難所では他の生徒たちと協力した。彼らと敵対すると、葉隠には言えなかった。

 

「頼む! 俺は小森を助けたいんだ! ここは頷いてくれ!」

 

「ん」

 

 ここで逆らっても殺されるだけ。頷かない空気を察した二人は、葉隠を生き残らせるために必死に説得する。流される形で、葉隠は協力すると頷いた。

 

 体に個性の爆弾が設置され、逆らえば死ぬと伝えられる。同じ部署に配属されている他のヒーローも同じ状況であった。

 

「お嬢ちゃんも無理やり連れてこられたのかい」

 

「お嬢ちゃんじゃないよ! 葉隠だよ!」

 

「そりゃ悪かった。俺はデステゴロだ。よろしく頼むぜ、葉隠」

 

 周りを見ると、ビルボードチャート8位のウォッシュもいる。

 

「ウォッシュだ! あんな上位ヒーローも超常解放戦線に従ってるんだ……」

 

「思う所はあるだろうが、余計な事を考えないのが生き残るコツだ」

 

「余計な事って、やっぱり嫌な仕事もあるんですか?」

 

「ああ、後味の悪い事もやらされる。ここは俺たちに任せておけ。ヒーロー名を名乗る自信がまだ無いんだろ?」

 

「ウォッシュ!」

 

 ウォッシュは親指を立てて、自分たちに任せておけと言う。何度も一緒に仕事をして、葉隠は彼らと仲間と呼べるほどに信頼関係を築いた。

 

 それから、緑谷が降りてきてウォッシュを殴り飛ばす。その拳は葉隠へも振るわれるが、デステゴロがそれを受け止める。

 

「はっ、何なんだろうな。どうやら俺は、ヒーローだったみてぇだ!」

 

 仲間が傷付くと思った瞬間、デステゴロは体が勝手に動いていた。そして緑谷の体を掴んで投げつける。

 

 戦いが終わったあと、葉隠は連絡役に志願する。友人が相手だからと、消極的な行動を取っていた。その結果、仲間が傷付いたことに対して償いがしたかった。

 

 

 

 部屋にいるのはオールマイト、根津、古瀬の三人である。しかし耳郎と取蔭が個性で室内の話を聞いている。

 

 葉隠たちの話を聞き終えて、根津は深く考え込む。そうしていると、外から他の生徒たちが入ってくる。

 

「小森が人質って何だよ。戦えよ! ヒーローだろ!」

 

「葉隠、戻ってきなよ。全然気にしないからさあ!」

 

「いい人達なんだよ。私によくしてくれて。それに爆弾があるから、どの道、裏切れないんだよ」

 

 生徒たちの会話を聞いて、オールマイトは心配そうに根津の方を窺う。

 

「校長、あまり重い処罰はどうかと」

 

「私も同意見です。少なくとも、彼らの命を奪う事には反対です」

 

「彼らを連れて行けば、裏切り者と判断されて、処分されかねないか。長期間の拘束も危険なのさ。撤収した後、この場所をヒーローに教えるのさ」

 

「宜しいのですね?」

 

 根津は椅子から立ち上がって、生徒たちの様子を見る。

 

「甘い判断なのさ。だけど僕は彼らに、人を殺すヒーローではなく、馬鹿げた理想を目指す存在でいて欲しいのさ」

 

 その後、オールマイト一行が撤収してから、ヒーローにこの隠れ家の事が伝えられる。三人が助け出されたのを確認した後、古瀬はその場から走り去った。

 

 

 

 爆豪は根津の知り合いの所へと連れて行かれる。そこは教会で、何人かの子供が暮らしている。

 

「それではマザー、お願いするのさ」

 

「仕方がないねえ」

 

 マザーと呼ばれたのは老齢の女性、修道女の服を着ている。ふてぶてしい態度で恰幅がいい。

 

 爆方が教会に入ると、見知った顔が一人いた。他の子供に混じって勉強している物間は、爆豪の姿を見てヒステリックに笑う。

 

「あれれえ? 優秀なはずのA組がここに居るのっておかしくない? A組はB組より優秀なはずなのに!?」

 

「なんでてめぇがいんだよ!」

 

 爆豪は他の子供たちに引っ張られて、一緒に勉強することになった。

 

 

 

 飽きた、終わり。

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