やあみんな、僕はアキラ。六部街に住むしがないビデオ屋のイケメン店長さ。
しかしそれは表の顔、その実態はパエトーンと呼ばれる伝説のプロキシ。
性格は自分で言うのもなんだけど、誠実で優しい。
この話はそんな僕が、周りの身勝手な女性に振り回される話だと思ってほしい。
☆★☆
「お兄ちゃん早く起きて!!」
伝説のプロキシ、パエトーンの朝は早い。妹に叩き起こされた僕はやれやれと首を横に振りながら、気性の荒い妹の顔を見上げた。
「どうしたんだいリン。こんな朝早くから」
「全然早くないでしょ!!もう12時だよお兄ちゃん!ってそんなことはどうでもよくて、表のルーシーをどうにかしてよ!」
大声でまくし立てるリンに教育を間違えたかなと考えながらも表の方へ注意を向ける。
「ちょっと!プロキシさんいるんですわよね!さっさと出てきてくださる!?」
ドンドンと壁をたたきながら叫ぶルーシーの声が聞こえてくる。
「なぜルーシーはあんなに怒っているんだい?」
「お兄ちゃんが約束すっぽかすからでしょ!!今日の11時にルミナスクエアで会う約束してたんじゃないの?」
僕は過去に記憶をめぐらせてみる。確かにそんな約束をしたような気もする。しかし忘れていたものは仕方がない。人間誰しも失敗はあるものだからね。
「そういえばそうだったね」
「ほんと最低…。お兄ちゃんいい加減反省したほうがいいよ」
「けれどリン、君も前悠真との約束をすっぽかして怒られてたじゃないか」
「あ、あれは仕方がなくて…」
段々声がしりすぼみになっていくリン。全く…。人に説教をする前に自分の身を省みるべきだと僕は思う。リンには僕を見て誠実という言葉を学んでほしいね。
「もうそんなことはどうでもいいから、早くルーシーをどうにかして!」
そう言ってリンは、僕を無理やり部屋の外へ追い出す。やれやれ、どうやら僕は妹の教育に失敗したらしい。僕は重い腰を上げルーシーの元へ向かうことにする。
「あらあら、プロキシさん。これは一体どういうことかしっかり説明してくださる?そうしないと、わたくしの堪忍袋の緒がブチ切れてしまいそうですわ」
もう切れてるじゃないかと思いはしたけれど、賢い僕は口には出さない。図星をつくと人間は余計に怒ってしまうものだからね。
そして優しい僕は、今から演技をしなくてはいけなくなった。ルーシーの顔に笑顔を取り戻すために。それに怒られるのは嫌だからね。
「…ごほっごほ」
僕は大げさにせき込みながら、ルーシーの前へと進んでいく。すると、ルーシーの怒り顔がたちまち心配顔に変わっていく。
「…どうしましたのプロキシさん」
「…ごほっ。ルーシーごめん…。ほんとは凄く楽しみにしていたんだけど…ごほっ。今朝から急に体調を崩してしまって…。連絡することもできなかったんだ…ごほっ。本当に申し訳ない」
僕がそう言うと、ルーシーはバツの悪そうな顔を浮かべ急いで僕の身体を支える。
「…そういう事情があったなら、早くおっしゃってくださいまし。怒ってたわたくしが馬鹿みたいではありませんの…」
「今日はわたくしが看病いたしますわ。あなたは何もしなくていいですわよ」
「…ごほっ。ありがとう。ルーシーがいるだけで、なんだか元気が出てくる気がするよ。まるで天使のようだね」
「な、なにを馬鹿なことをおっしゃってますの!?本格的に参ってしまっているようですわね!」
ルーシーは顔を真っ赤にして顔を背けているが、にやついているのが隠しきれていない。やれやれ。また僕は一人の女性を笑顔にしてしまったようだね。僕の優しさが底を見せることはないらしい。
そして得意げにリンの方を見ると、僕のことをまるでゴミを見るような目で見ていた。
僕はリンに何故そんな目をしているのか尋ねたかったが、流石に今の状況では聞くことはできない。
ルーシーに連れられベッドに戻ろうとしていると、不意にビデオ屋の入り口のドアが勢いよく開いた。
「パエトーン様!!ビビアンと会う約束をしていたのに何故来てくださらないのですか??ビビアンがすぐ許すちょろい女だからですか??それともビビアンが嫌な女だからですか??」
急に入ってきて凄い勢いでまくし立てるビビアンに僕らは思わず固まってしまっていた。
そしてビビアンは僕を支えているルーシーに気が付くと、表情を変え低くつぶやく。
「今日はビビアンがパエトーン様とご一緒する日なのです。なのでパエトーン様から早く離れるのです」
「何をおっしゃってますの?今日はわたくしがプロキシさんと用事がありましてよ。あまり出しゃばらないでくださる?」
負けじといい返すルーシーに、場の空気は険悪になるが、何かに気付いたらしく二人とも僕の方を見てくる。
そうしてルーシーとビビアンは僕に怪訝そうな目を、リンはやはりゴミを見るような目で僕の方を見ていた。
参ったな…まるで僕が悪いみたいじゃないか。