【奈落家】読書する神無 -Variety of Colors- 作:涼木風太
原作:犬夜叉
タグ:神無 神楽 夢幻の白夜 奈落 白童子 奈落家 奈落一派 犬夜叉 るーみっく 高橋留美子 読書 瞑想 悟り 哲学
途中、神無の読んでいるショートショートの小説(劇中劇)が
実際に挟まれます。
まえがき・あとがき無し。
人見城は静寂に包まれていた。
秋から冬に変わりかける頃合いの夜は、
外の秋の虫の音も
エアコン暖房の室外機の音もしない。
無音だった。
神無は自室の布団で
フカフカクッションを背にして
読書をしていた。
神楽は自室にいるが、
寝る前に布団に寝っ転がって
スマホでYouTubeやネトフリを観ている。
白夜は白や黒の折り鶴のストックを作って
寝るところだ。
奈落と白童子はリーダー的立場として
明日の仕事に備え、すでに寝静まっている。
(他の分身たちは……???)
神無は本のページを進める。
-『優者(ゆうしゃ)の本』----------------------------------------------
If there were truly superior people, would we be happy?
(本当に優れし者がいれば、私たちは幸せになれるだろうか?)
*
一人目の優れし者は、
剣を持つ気性の荒い者だった。
戦いに戦いを続け、
殺しに殺し、
とうとう敵味方全員を皆殺しにし、
愚かにも気づかず、
集団が成り立たなくなって
自分が生きていけなくなるまで
殺し尽くすかに思えたが、
特段強くもない者に
偶然あっけなく敗れて死んだ。
勝ち続けることなどできはしないのだ。
*
二人目の優れし者は、
非常に穏やかな気の弱い、
盾と疾風の脚を持つ者だった。
逃げに逃げ続け、守り、
戦いを避けた。
永遠に逃げ続けられるかのように思えたが、
敵は減らず、すべての攻撃を
完全には防ぎきれず
小さな傷に傷を重ね、
最後はそれらが積み重なって
守りきれずに殺された。
逃げ続けることなどできはしないのだ。
*
三人目の優れし者は、
剣と盾を持つ知略に優れた
とても賢い者だった。
時に盾を構え仲間を守り
剣を振るって敵を倒した。
仲間想いで戦いに優れ、
周囲からの信頼も厚く
集団内も潤っていたが、
その者を良く思わない者に
密かに毒を盛られて
泡沫の如く死んだ。
完璧などありはしないのだ。
*
What is justice?
(何が正義?)
Where is perfect?
(完全はどこに在る?)
Will God save us?
(神は私たちを救うだろうか?)
Is life only sad?
(人生は悲しいだけ?)
Why do we live?
(なぜ生きる?)
What should we do?
(何をすべき?)
THE END
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「…やむをえない」
神無は独り小さくそう呟いた。
自分の自由無き抗えぬ運命からは
そう言った物語の問いに答えることすらままならない。
だが、彼女はその余韻を
胸の奥でそっと受け入れた。
そして神無は静かに本を閉じて、
その本を抱きしめるかのように胸元へ寄せ、
すっと目を閉じた。
彼女の心に小さな波紋が広がり沈んで行く。
反響するが、
無音に無心は深まる。
自分の中でコーヒーとミルクが
混じり合い調和していくかのような
色とりどりの思考と心の、
すべての色のバランスが取れていくような
心地良い光る虹色が上手く交錯する感覚に浸る。
神無は"偉大な何か"の心地になっていた。
しかし彼女はそれを誇ることも
驕ることもしないのだった。
神無はどこまでも無心であり、
美しい心を持っているのだった。
そして皆を想う。
それから神無は本を置いて、
他の家族同様
今日も静かに眠りに就く。
神無の部屋の明かりが消えた。
静寂だけが、彼女の小さな悟りをそっと包んだ。
おわり
最後まで読んでいただき、
ありがとうございました。
ほんとに終わりです。