猫科戦隊ニャーレンジャー   作:舞嵐

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第10話:不動の要塞、ジャガーの潜行

三つの領域のうち、二つを浄化したニャーレンジャー。

残るは、玄武の領域のみとなった。

「玄武の領域は、水と氷に覆われた巨大な要塞。奴は、不動の防御と緻密な観察眼で、私たちを迎え撃ってくる。」橙野隊長が無線で指示を送る。

この最後の領域に挑むのは、ニャーブラック(雄夜)とニャーイエロー(樹菜)のコンビだ。

「玄武は、知略の青龍とも、激情の朱雀とも違う。奴は、全てを静かに見極める。だから、俺の予測不可能な動きと、雄夜の神秘の隠密性が鍵になる!」

イエローは、躍動の力を胸に、決意を新たにする。

ブラックは静かに頷く。

「玄武は、おそらく俺たちのすべてのパターンを既に解析しているだろう。だからこそ、俺は『存在そのものを消す』。そして、樹菜の『計算外の躍動』が奴の防御を揺さぶる。」

二人は、水と氷の冷気が立ち込めるゲートを潜った。

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白虎の配下の特務隊員、鋼牙は、コンソールで玄武の領域への突入を監視していた。 (俺の心の声:知性のチーターと情熱のライオンが、コアの浄化に成功した。だが、玄武の防御は、四武将で最も固い。それに、ジャガーとタイガーの組み合わせ…「計算外の躍動」と「神秘」。これは、青龍の敗因を教訓とした新しい戦術か。)

鋼牙は、彼らがなぜ、これほど早く、武将たちの弱点を克服する「新しい力」を次々と見つけ出すのか、理解に苦しんでいた。

それは、俺が追求する「忠誠のルール」からかけ離れた、異常な進化だった。

(俺の心の声:彼らは、朱雀や青龍の弱点を『心』で読み取っている。俺たちの忠誠心や知性が、彼らにとっては『攻略可能なデータ』でしかない。これは、王への重大な脅威だ。)

鋼牙の心は、「王を守るためには、この者たちを速やかに排除すべき」という忠誠心と、「このルール外の力は一体何なのか?」という探求心との間で、激しく揺れ動いていた。

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玄武の領域は、すべてが氷と分厚い水流で構成された、巨大な潜水艦のような要塞だった。

空気は冷たく、分厚い水壁が彼らの進行を阻む。

「玄武の防御は、動かないこと。この要塞は、コアを守るために、一切の振動や衝撃を吸収する構造になっている!」

イエロー(樹菜)が、氷の壁に飛び蹴りを放つが、その衝撃は完全に吸収されてしまう。

その時、要塞の深い水底から、巨大な重装甲の鎧に身を包んだ男の幻影が現れた。その背後には分厚い亀甲状の装甲があり、腰からは二匹の蛇の頭を持つ長い尾が伸びている。

それが、不動の玄武の姿だった。

「ようこそ、麒麟の残滓たちよ。」玄武の静かで重々しい声が、水と氷を伝って響き渡る。

「私は、不動の玄武。私の防御は、王の永遠の繁栄を象徴するもの。お前たちの不純な力では、この絶対防御を破ることはできん。」

玄武の幻影が動くと、要塞内の水流が激しく渦巻き、彼らを押し戻そうとする。 「俺は、潜行する。樹菜、奴の観察眼と防御システムを、混乱させてくれ!」ブラック(雄夜)は指示を出すと、ジャガー・ファントム・ブラーを発動させ、その場から存在を抹消させた。

イエローは、ブラックの信頼に応えるため、最大出力で躍動する。

「タイガー・ワイルド・スパート!」 彼女は、氷の壁を避け、水流を逆行し、予測不能な多角的な動きで、玄武の防御システムを揺さぶり始めた。

玄武は動じない。

「無駄だ、タイガー。お前の動きは、全て予測可能だ。その躍動のパターンは、既に私の防御システムにインプットされている。」

玄武が静かに腕を振ると、イエローが向かう先に、氷の壁が瞬時に生成され、彼女の進路を完璧に塞いだ。

「くっ!予測されている!」イエローは、回避に専念せざるを得ない。

その頃、存在を消したブラックは、水壁の奥深く、要塞の中枢部へと潜り込んでいた。

彼は、玄武の防御が「動かないこと」に依存していることを理解していた。

「(ブラックの心の声:玄武が、要塞のどこかから、この全体を「観察」し、防御をコントロールしている。その観察の盲点が、必ずあるはずだ。)」

ブラックは、要塞の構造と玄武の防御パターンを、存在を消した状態で、静かに観察し続けた。

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ニャーイエロー(樹菜)は、玄武の完璧な防御によって動きを封じられ、要塞内を翻弄されていた。

玄武の氷の壁と水流の制御は、イエローの計算された躍動の全てを予測し、阻止した。

「なぜだ!?なぜ、私の動きが全て読まれる!?」

イエローは、再び「予測されること」への恐怖と焦燥を感じ始める。

玄武の声が、静かに響く。

「タイガーよ。お前の動きは、『失敗を恐れる心』に支配されている。故に、パターン化され、観察可能だ。私の防御は、皇帝の永遠のルール。破ることはできん。」

(イエローの心の声:…玄武の言う通りだ。私は、いつも『失敗しない正しい動き』に囚われていた。だが、もう違う!予測されても、その先へ行くだけだ!)

彼女は、氷の壁に真っ向から突っ込み、あえて予測された場所で急停止した。

その瞬間、玄武は予測通りに、彼女を囲い込む最後の氷の檻を起動させる。

ガキン! 氷の檻に閉じ込められたイエローは、しかし、不敵に笑った。

「ワイルド・イノセンス!タイガー・ディメンション・ブレイク!」

イエロ-の体が、檻の内部で爆発的な躍動を起こし、空間そのものを裏返すかのように、次の瞬間、氷の壁の内側へと跳び出していた! 玄武の声が、初めて動揺に震える。

「あり得ん!跳躍の力で空間を『裏返す』だと!?私の防御の『内側』への侵入!?」

その一瞬の動揺こそ、ブラックが狙っていたものだった。

ゴオォォォン!

玄武が防御を再構築しようとしたその間隙を突き、存在を消したブラックが、玄武の「観察の核」となっている要塞中枢に、ジャガー・クローを叩き込んだ。

キン!

コアを守る最終防御システムが、ブラックの奇襲により沈黙した。

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ニャーブラック(雄夜)の一撃により、玄武の要塞の最終防御システムが沈黙した。要塞を支配していた水流の制御が失われ、冷気が緩む。

玄武の幻影は、動揺を隠せない。

「私の…永遠のルールが、不純な衝動に…」

「不純な衝動じゃないわ!」イエロー(樹菜)は、力強く言い放つ。

「私たちの力は、誰かを守るための、予測不能な勇気よ!」

二人は、要塞の奥、防御の核となっていた場所に隠されていた緑色の結晶に到達した。

これが、玄武の領域の生命の源(コア)だった。

イエローは、コアの結晶に手をかざし、遠隔で愛のパンサーの力を起動させる。 「リベレート!」 緑色のコアの周りを覆っていた紫色のゲヘナの瘴気が、まるで氷が溶けるように剥がれ落ち、コアは深く穏やかな緑色の光を放ち始めた。

スゥゥゥ…。 コアの浄化が完了した瞬間、玄武の幻影は力を失い、静かに水底へと消えていった。

「玄武の領域、浄化完了。これで、三つの領域、全てを突破しました。」

ブラックは、静かな声で隊長に報告した。

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白虎の配下の特務隊員、鋼牙は、モニターに映る三つのコアの浄化完了の報告と、玄武の防御の崩壊を、ただ見つめていた。

(鋼牙の心の声:朱雀は心。青龍は頭脳。玄武は肉体。俺ら武将の三つの柱が、感情、神秘、そして勇気という『ルール外の力』によって打ち砕かれた。残る柱は、俺と白虎様の『絶対的な忠誠』だけだ。だが、その忠誠の基盤は、もうグラつき始めている…)

鋼牙のコンソールには、「ゲヘナの支配率、急激に低下」という警告が表示されていた。

ニャーレンジャーは、王への反逆者であるどころか、王を支配するゲヘナの力を着実に削いでいる。

鋼牙の心の中で、今まで絶対であった「王への忠誠心」が、激しく、そして決定的に揺らぎ始めた。

(鋼牙の心の声:白虎様の忠誠心は、決して偽りではない。だが、もし、忠誠を誓う王が、偽りの存在だとしたら?そして、反逆者とされる者たちこそが、真の正義だとしたら…?)

鋼牙は、無言でコンソールの電源を落とした。俺の瞳には、ニャーレンジャーの戦いを通じて見た、不完全だが揺るぎない人間の情熱と、四武将の悲劇的な運命が焼き付いていた。

「…俺の忠誠の対象は、誰なんだよ。」

鋼牙は、立ち上がり、己の道を探すための静かな決意を胸に、監視施設を後にした。

鋼牙の心は、既に組織の「ルール」から離れ、「真実」へと向かっていた。

 

—第10話 不動の要塞、ジャガーの潜行 完—

 

 

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