ニャーレンジャーが出撃準備を整えていた。
レッド(吼輔)が通信端末を手にしている。
吼輔: 「司令の情報どおり、朱雀は荒野にいる。青龍の策略が本格化する前に、接触するぞ!」
(その時、橙野司令からの暗号化された追伸が吼輔の端末に表示される。)
橙野(通信): 「一つだけ警告しておく。朱雀の炎は、我々が予想するよりも早く『王の冷たい影』を察知している。
彼は今、最も危険な時であり、同時に最も救いに近い時でもある。
今回の任務は、討伐ではない。あくまで『接触』に留めろ。」
「もし、朱雀が『王の命令』を理由に撤退しようとしても、追うな。彼を追えば、戦場を監視している青龍の罠に嵌まることになる。…我々の真の敵は、戦場を離れた『情報の裏側』で動いていることを忘れるな。」
「私の計画は、真の黄龍皇帝を取り戻すことにのみ集約されている。お前たちの情熱を、勝利ではなく『救済』のために使え。」
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ニャーレンジャーは、橙野司令の情報をもとに、朱雀が単独で行動している幻獣界の辺境の荒野へと向かった。
「青龍が何か企んでいる。朱雀を孤立させる前に、接触しなくちゃならない!」
レッド(吼輔)は焦る。
荒野の中心で、朱雀は一人、麒麟が残したとされる微かなエネルギーの残滓を追っていた。
その姿には、以前のような傲慢さはなく、深い迷いと苦悩が影を落としていた。
(朱雀の心の声:私の炎は、王への絶対的な忠誠を示す。だが、王の炎が、最近、以前とは異なり冷たく不純な『闇の熱』を帯び始めている。
王の炎と最も強く共鳴する私の炎が、それを感知している…この違和感は、忠臣たる私にしか感じられない…)
—回想フラッシュバック(極短い一瞬)
— 若き朱雀が、黄龍皇帝から『炎の力の正しい使い方』について教えを受ける瞬間。皇帝の手は温かく、その炎は命の慈愛に満ちていた。「朱雀よ。お前は私の光だ。自らの命を削るな。命の輝きを示せ。」 —
朱雀は、黄龍皇帝の炎の変質を誰よりも早く察知したことで、ゲヘナの支配の可能性を薄々察知していた。
彼の忠誠心は、この真実を探る本能と、王の命令に従う呪縛の間で引き裂かれていた。
「王の命令は、麒麟の残滓を討つこと。だが…あのライオンの情熱には、陛下が失う前の、清らかな輝きが重なる…」
その時、レッドの強いエネルギーを感じ、朱雀は振り向いた。
「来たか、ライオン。」
「朱雀!」
レッドが変身し、一歩踏み出す。
「俺はお前に伝えなきゃならないことがある!お前たちは…偽りの王に忠誠を誓っているんだ!」
朱雀は、冷徹な仮面を取り戻すかのように、炎のオーラを纏った。
「黙れ!麒麟の残滓め!王を裏切った反逆者の言葉など聞く耳を持たん!私の炎は、王への絶対的な忠誠を示すものだ!」
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二人は、荒野で激しく激突した。
ニャーレッドは、ライオン・フレイム・バーストで圧縮された炎の波動を放つ。
対する朱雀は、不死鳥の炎でそれを迎え撃つ。
炎と炎がぶつかり合い、辺り一帯が灼熱の戦場と化した。
「力は上がったな、ライオン。だが、私の王への忠誠は、お前の不純な情熱には屈しない!」
朱雀の炎は、彼の迷いを打ち消すかのように、さらに激しさを増す。
「お前は迷っている!お前の炎は、苦しいと叫んでいる!なぜだ!?」
レッドは、朱雀の攻撃を受け止めながら叫ぶ。
「俺はお前を倒しに来たんじゃない!真実を伝えに来たんだ!」
朱雀は、その言葉に一瞬たじろぐ。
(朱雀の心の声:真実…!この男の言葉は、私の心の奥底の疑念を突き刺す。陛下は、本当に自由なのか?私の炎は、今、偽りの王に捧げられているのか!?)
彼の脳裏には、黄龍皇帝の目に宿る、冷たい紫色の影の幻影がよぎる。
それは、ゲヘナの支配を示唆する、朱雀だけが見てしまった「違和感」の確信だった。
この疑念こそが、彼の忠誠心を「呪縛」へと変えていた。
ドォン!
朱雀は、レッドの僅かな隙を突き、炎の蹴りを叩き込む。
レッドは吹き飛ばされるが、すぐに立ち上がった。
「朱雀!俺たちは、お前を救いたいんだ!お前の忠誠心の向かう先が、間違っていると分かったら、どうする!?」
「私の忠誠心に間違いはない!」
朱雀は、その問いを打ち消すように、さらに強力な炎の波動を放とうとする。
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朱雀が次の攻撃を放とうとした瞬間、遠くの崖の上から、一つの視線が二人の戦いを監視していた。
それは、白虎の配下の特務隊員、鋼牙だった。
朱雀の行動は「皇帝への絶対的な忠誠」という幻獣帝国の根幹のルールに関わるため、青龍は、特務部門の総監として、白虎の最も冷静沈着な部下である鋼牙に、この極秘の監視任務を異例の越権で行わせていた。
鋼牙自身は、王への絶対的な忠誠という「ルール」を守るため、この指令を全幻獣の共同の意思だと解釈し、行動していた。
(鋼牙の心の声:朱雀の戦闘は、激情に頼りすぎている。そして、あのライオンの言葉に揺らいでいる。これは、忠臣として許されない『不純物』だ。)
鋼牙は、冷静に戦闘データを記録する。朱雀がレッドの言葉に反応した一瞬の映像を、「忠誠心への疑問」として、報告書に記述した。
その報告書は、青龍の策略を裏付けるための「偽りの証拠」となることを、鋼牙はまだ知らなかった。
彼はただ、『王への完璧な忠誠』というルールを守ろうとしていた。
戦場では、朱雀が攻撃をためらい、炎の波動が乱れ始めていた。
「朱雀!もう、戦う必要はない!力を貸してくれ!」
レッドは、炎の壁を越えて、朱雀に手を差し伸べた。
朱雀は、レッドの手を見つめる。
それは、彼が心の中で求めていた「救いの手」に見えた。
その時、遠くから緊急の召集シグナルが鳴り響いた。
それは、青龍の策略による、「朱雀への新たな任務」を装った、罠への誘導信号だった。
朱雀は、苦しげに目を閉じ、レッドの手を振り払う。
「…私の使命は、反逆者を討つことだ。」
朱雀は、葛藤を炎で無理やり押し込めるように、その場を飛び去った。
レッドは、その場に立ち尽くした。
「朱雀…!お前は、まだ戦える!」
ニャーレンジャーの「救済」のミッションは、朱雀の「忠誠」という壁に阻まれたが、二人のライバル関係は、魂の葛藤を伴う、より深いものへと進化を遂げたのだった。
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橙野司令は、秘密の基地の一室で、無数のモニターを前に立っていた。
画面には、鋼牙が青龍へ送ったばかりの報告書のコピーが流れていた。
橙野(心の声): —フッ、青龍は動いたか。予想よりも早い。鋼牙に朱雀を監視させ、『反逆の確証』という名の偽りの証拠を固めようとしている。
—彼が書き換えた情報が、帝国中枢に侵入していく際の、システム警告音が鳴るが、橙野は無表情でそれを無視する。—
彼は、キーボードに手を置き、青龍がアクセスする幻獣帝国の情報共有ネットワークの深層に、ある『偽装情報』を極秘で流し込む。
橙野: 「朱雀、もう少し持ちこたえろ。この『不純物』の報告書が皇帝に届く前に、青龍の注意を別の『重大な脅威』へと逸らさねばならない。」
橙野(心の声): —私は、仲間たちに真の危険を教えられない。この情報戦は、全責任を一人で負う、孤独な綱渡りだ。だが、全ては、黄龍皇帝陛下の光を取り戻すため。私の背中は、決して振り返らない。—
彼は深く息を吐き、モニターを閉じた。
これで、ニャーレンジャーが朱雀に接触したことによる幻獣帝国側のペナルティは、一時的に回避された。
—第13話 炎の交錯、葛藤の深淵 完—