猫科戦隊ニャーレンジャー   作:舞嵐

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第15話:悲劇への序曲(プレリュード)

幻獣界、青龍の本拠地。

知略武将・白澤からの報告を受け、青龍は冷徹な笑みを浮かべていた。

「朱雀は、『忠誠心』という最後の鎖を自ら選び、あのライオンとの『共鳴』を、反逆の証拠として利用した…完璧だ。

朱雀は、『偽りの裏切り者』として、処刑台に上ることを選んだ。」

青龍の目的は、朱雀を倒すことではない。

朱雀の「不死の力」が、ゲヘナの支配を揺るがしかねないため、合法的な手続きでその力を消し去ることだった。

「白澤。最終指令だ。朱雀を処刑するに足る『大罪』を、全幻獣族に知らしめよ。そして、最も残酷な方法で、朱雀の『忠誠心』を試す。

ターゲットは…ニャーレッド。」

彼の不死の炎は、我々の秩序にとってあまりに『眩しすぎる異物』だ。

永遠の隷属の前に、その『命の輝き』を完全に消し去る必要がある。

青龍は、朱雀が命を懸けて守ると決意したものが、レッドの『情熱』であることを知っていた。

朱雀を屈服させるには、レッドの命を奪うのが最も確実だと判断した。

「全武将に告ぐ。『反逆者・麒麟の残滓(ニャーレンジャー)』を討つため、朱雀と共同戦線を張るよう命令する。

ただし、ニャーレッドを討つのは、朱雀の『責務』とする。」

青龍の指令は、朱雀に「反逆者」を討つ最後のチャンスを与えたかのように見せかけながら、朱雀がレッドを討てなければ、朱雀自身が『真の反逆者』として即座に処刑されるという、非情な罠だった。

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橙野指令は青龍の指令を傍受し、戦慄した。

「青龍め…!朱雀を救う最後の道を閉ざした!朱雀を『処刑台』に誘い込む気だ!」 「朱雀が…俺たちを討つふりをするってことか?」

レッドが問いかける。

「違う、吼輔。青龍は、お前たちを討つのは朱雀の『責務』とした。

朱雀が責務を果たさなければ、その瞬間に処刑される。

朱雀は、自分の命と、お前たちの命、どちらかを選ばなければならない!」

「そんな…!」

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朱雀は、ニャーレンジャーとの連絡を絶ち、単独で青龍の指令に従うふりをして、処刑の舞台となる荒廃した闘技場へと向かっていた。

その途上、朱雀は時空間のノイズを避け、レッドに最後のメッセージを送りつける。 (朱雀からのメッセージ(音声のみ):

「ライオン。これが、お前への最後の警告となる。青龍の罠の詳細は明かせない。

だが、お前は決して私を討とうとするな。

そして、私が『責務』を果たすその瞬間まで、皇帝を救う『真の炎』として生き抜くのだ。」)

レッドは、その短いメッセージから、朱雀の「死の覚悟」を感じ取る。

「馬鹿野郎…!朱雀!お前、一人で死ぬつもりか!」

レッドは、朱雀を追おうとするが、橙野指令が静止する。

「止めろ、吼輔。これは、朱雀が『忠誠心』という名の呪縛に、『命』という対価を支払う、最後の責務だ。」

「そんな…!俺は、あいつを助けたいんだ!」

橙野指令は静かにレッドを見つめ、告げる。

「朱雀が唯一望んでいるのは、お前が生きて王を救うことだ。その『情熱』こそが、朱雀が命を懸ける『価値』なのだ。」

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朱雀が青龍の指令に従い、荒廃した闘技場に到着すると、既に白虎、玄武、そして白澤が集結していた。

その中央には、青龍の配下の最強部隊が待ち構えている。

「朱雀。王命だ。『反逆者』を討て。」青龍が命じる。

その瞬間、遠くからレッドの炎のオーラが近づいてくる。

朱雀の警告を無視し、レッドは一人で闘技場に乗り込んできたのだ。

「朱雀!お前の責務なんて、俺がぶっ壊してやる!」レッドは変身し、朱雀に突進する。

「馬鹿なことを…!ライオン!なぜ来た!」

朱雀は苦悶の声を上げる。 朱雀は、レッドを討つふりをして、青龍の配下を攻撃しようとするが、その動きを白澤が瞬時に見抜く。

「朱雀様。貴殿の迷いは、『裏切り』と見なされます。」

青龍が静かに、そして非情に命じる。

「朱雀以外の武将は、ニャーレッドを討て。そして、朱雀に『責務』を果たさせるのだ。」

白虎、玄武、そして白澤の配下が一斉にレッドに襲いかかる。

レッドは、朱雀を信じ、朱雀との一対一の対決を望んでいたため、多対一の連携攻撃に対処しきれない。

ドォン!

レッドは、白虎の強力な一撃と、玄武の防御を突き破る波動を同時に受け、装甲は砕け散り、変身を解除された。

朱雀の目の前で、瀕死の状態となった吼輔(レッド)が血を吐き、動かなくなる。

吼輔(レッド)は意識が遠のく中、朱雀が苦悶の表情で自分を見つめている一瞬の光景を目撃する。

その炎は、怒りではなく、『断ち切れない絆』の悲しみに燃えていた。

「ライオン…!」 朱雀の『忠誠心』は、『ライバルの命』という究極の対価を突きつけられ、最高潮に達した。

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朱雀の目の前で、ニャーレッド(吼輔)が血を吐き、動かなくなった。

青龍は冷徹に朱雀を見つめる。

「朱雀。これが、『反逆者』を討てなかった『忠臣』の末路だ。今こそ、最後の責務を果たせ。

ニャーレッドを討て。さすれば、お前の命は保証される。」

朱雀は、瀕死のレッドを抱きかかえるように見下ろす。

彼の全身から、燃え盛る悲痛の炎が噴き出した。

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この一連の出来事は、闘技場の瓦礫の陰から、白虎の配下である特務隊の鋼牙によって、一瞬たりとも漏らさずに監視・記録されていた。

(鋼牙の心の声:ルール通りだ。朱雀は、秩序を乱す者を討てなかった。これで、彼の『反逆』は確定する。青龍の戦略は完璧だ。)

しかし、鋼牙の持つ監視装置が記録したのは、朱雀がレッドを討つ直前に見せた、全身全霊の悲しみと、自己犠牲を伴う『決意の光』だった。

朱雀の炎は、『忠誠心』という言葉で説明できる「ルール」を超越していた。

それは、「命の対価」を支払うことを選んだ、あまりにも純粋で、秩序の外にある『愛』に近い感情だった。

鋼牙は、朱雀の炎が『命の対価』として、何かと交換される予感を、知識ではなく、本能で察知する。

その炎は、彼の信じる『ルール』には存在しない、計算外の力だった。

彼の脳裏で、彼の信条である『王への完璧な忠誠(ルール)』と、今目の前で展開されている『命を賭けた情熱(感情)』が、激しく衝突し、致命的な亀裂を生じさせた。

鋼牙は、記録装置を握りしめ、静かにその場を離脱した。

彼の使命は、報告することだ。

しかし、彼の心は、既に『忠誠』という名の檻の中で、揺らぎ始めていた。

青龍は、静かに朱雀に命令を繰り返す。「責務を果たせ、朱雀。」 朱雀の炎が、瀕死のレッドに向けて、別れと決意の光を放ち始めた。

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荒廃した闘技場。

朱雀は、血を流し動かないレッド(吼輔)を抱きかかえるように、静かに見下ろした。

「責務を果たせ、朱雀。」

青龍の声が、冷たく響く。

朱雀の全身から噴き出す炎は、もはや忠誠心のためではなく、命を懸けた悲痛な決意を燃やしていた。

彼の脳裏には、レッドとの共闘、そして「貴様こそが、王を救う『真の炎』となる」と誓い合った瞬間が蘇る。

朱雀は、顔を上げ、青龍を、そしてその背後に立つ黄龍神帝の玉座の影を見つめる。

「青龍…貴様の企みは、『忠誠』という名を汚すものだ。私が討つべきは、王を支配する『闇のゲヘナ』…そして、貴様の『偽りの秩序』だ!」

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青龍は冷笑し、言葉を遮る。

「余計な戯言を!貴様は、最後まで『反逆者』を選んだな。

白虎、玄武、処刑せよ!」

白虎と玄武が朱雀に襲いかかる。

朱雀は、死を覚悟した炎を纏い、二人の武将を相手に最後の猛攻を仕掛けた。

しかし、その力は既に疲弊しており、勝機はない。

その瞬間、朱雀は自らの不死の力の源である「コア・バーミリオン(不死鳥の核)」を、命の炎で高熱に加熱した。

「我が命は、情熱の炎と共に!」

朱雀は、背中を向けたまま、コア・バーミリオンを解放する。

朱雀の肉体から、紅蓮の炎と共に、不死鳥の生命エネルギーが光の帯となって噴出する。

朱雀の装甲が砕け散り、彼の身体は急速に力を失い、炎が鎮火していく。

「ドオォォン!」

その不死鳥の生命の光は、他の武将には見向きもせず、一直線に瀕死のレッド(吼輔)のコアへと流れ込んだ。

レッドの体内で、朱雀の情熱と不死の力が融合する。

瀕死のレッドのコアが、朱雀の紅蓮の炎を吸収し、一時的に黄金の輝きを放った。 朱雀は、すべての力と命をレッドに託したのだ。

命の炎を失った朱雀は、その場に崩れ落ちる。

彼の体は、ただの燃え尽きた灰寸前の抜け殻と化していた。

青龍は、朱雀の行動を「瀕死の反逆者に力を託すという、断固たる裏切り」と断定し、喜びの表情を浮かべた。

「完璧だ。朱雀。貴様の『忠誠心』は、貴様の『愚かさ』と共に、全幻獣界に永遠に語り継がれるだろう。

裏切り者、朱雀!即刻、処刑せよ!」

白虎と玄武は、命の炎を失った朱雀に対し、処刑の剣を振り下ろす。

ドゴーーーーーーーーン!

朱雀の体は、燃え尽きた不死鳥の残骸となり、炎は完全に消滅した。

青龍は、「これにて、四武将の朱雀は、反逆者として滅した」と全幻獣族に宣言する。

闘技場には、朱雀の炎が消えたことによる『絶対的な虚無の沈黙』が満ちる。白虎、玄武、白澤は勝利を確信し、青龍は冷徹に朱雀の残骸を見つめていた。

その瞬間、遠くで気を失っていたニャーレッド(吼輔)の体から、朱雀の残した紅蓮の炎が、新たな命の輝きとして静かに、しかし力強く、覚醒し始めた。

 

—第15話 悲劇への序曲(プレリュード) 完—

 

 

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