レスキュー基地の訓練室。蒼真、雄夜、鋼牙の三人は、激戦後の焦燥感に苛まれていた。
蒼真:「幻獣将サーペントを倒しましたが、次の敵はさらに強固な理屈で来るはずです。次の戦闘の効率を上げるため、雄夜、あなたの神秘の流儀をデータ化させてください。」
雄夜:「無駄だ。俺たちの流儀は理屈じゃない。…だが、休息が必要だ。」
鋼牙:「俺も同意見だ。Mode Wildの解析だと、疲れたまま戦うのは非効率だろ?俺らの計算は、もう限界だって言ってんだよ。」
吼輔:「チッ、そんなこと言ってる場合か!限界なんて情熱でぶち破るのが俺たちのポリシーだぜ!行くぞ、熱い魂で!」
司令官はモニターを指す。そこには、国立公園の広大な森林が、急速に灰色に石化し始めている写真が映し出されていた。
橙野司令:「新たな脅威だ。生命の理屈が根底から歪められている。この異変は、お前たちの戦闘の流儀では根源を解決できないだろう。しかし、これ以上被害を広げるわけにはいかない。現場へ急行し、敵の分析と被害の食い止めにあたれ!」
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ニャーレンジャーが国立公園に到着。
森は静かすぎ、鳥の鳴き声も、虫の音も失われ、重く濁った空気が漂う。地面には、動物たちの石像が転がっている。
ニャーブラック:「ここが……異変の中心か」
ニャーピンク:「嫌な気配。……空気が、死んでる」
ニャーレッド:「なんてザマだ…!見てらんねぇ!一刻も早く、俺たちの熱い情熱で片付けるぞ!行くぞみんな!Wild Change!」
蒼真、雄夜、愛、鋼牙も変身を完了し、ニャーレンジャーが揃った。チームが散開しようとした、その時――
???:「待って! これ以上、森を傷つけないで!」
そこに立っていたのは、淡い緑の制服を纏った若い女性。
ニャーブラック:「碧!? …どうしてここに……!」
黒谷 碧。森林警備隊の一員にして、ニャーブラック――雄夜の妹だった。
碧:「お兄ちゃん……この森の異変、気になって……。この森のいのちを守るのが、私の信念だから……。でも、こんな……!」
彼女の目に映るのは、命を失った森。彼女がずっと守ってきた場所だった。
ニャーファング:「チッ。一般人がいんじゃねぇか。最悪の非効率だ。ここは理屈の通らねぇ戦場だろ。さっさと消えろ!」
ニャーレッド:「待て、ニャーファング!彼女は一般人だ。下がって安全な場所に!危険を承知で前に出るのは、俺たちのポリシーだ!コカトリス、俺がお前の相手だ!」
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レスキュー基地の作戦室。
樹菜、はるか、かなたは、現場の不安定なモニター映像を凝視していた。
樹菜:「石化の広がりが早すぎるわ!生命の理屈を無視した敵なんて、前例がない……!みんな、大丈夫かしら?」
かなた:「(腕を組み、静かにモニターを見つめる)現場の通信が乱れている。この異変は、我々の計算を超えるものかもしれない。雄夜の冷静な流儀が乱れなければいいが……。」
はるか:「(落ち着いた声で)心配するな、樹菜。そして、かなた。吼輔たち五人は、どんな理屈や非効率な状況に陥っても、必ず立ち向かう強靭なポリシーを持っている。私たちはここで、彼らのバックアップに徹するのが、今の計算で導き出される最善手だ。あいつらを信じて、待とう。」
樹菜:「……そうね。吼輔も雄夜も、みんなを信じて待つわ!」
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戦いが始まった。だが、コカトリスの石化波動が広がり、ニャーレンジャーの動きを鈍らせ、木々が音もなく砕けていく。
ニャーファング:「なんだ、この力……!この石化の理屈は、Mode Wildでも解析できねぇぞ!」
ニャーピンク:「(悲痛な声)やめて!この森の可愛い動物たちや花たちが……全部、石になっちゃう!私が、私が守らなきゃ!」
彼女は懸命にコカトリスの動きを封じようと光弾を放つが、石化波動の重圧で光は弱まり、攻撃は届かない。彼女の愛のポリシーが、この死の理屈の前で無力に打ちひしがれる。
コカトリスが蒼真――ニャーブルーを狙い、石化波動を込めた強力な爪を振り下ろす。
ニャーブルー:「クソ、データにもない速さ……避けきれない!」
ニャーブルーが叫ぶ間もなく、ニャーブラックが仲間を庇って飛び出した。
コカトリスの尾が唸りを上げ、ニャーブラックの肩口に深く突き刺さる。
黒い毒が広がり、ニャーブラックの身体が膝をつく。
碧:「お兄ちゃん!」
ニャーレッド:「危ない!クソ!情熱だけじゃどうにもならねぇのか!?」
ニャーレッドは二人を庇うように立ち塞がるが、石化波動の重みに動きを封じられ、胸の焦燥が爆発しそうになる。
その瞬間、碧の胸元のペンダント――小さな麒麟のかけらが、淡い光を放った。
光はニャーブラックの毒に触れ、瞬く間にその広がりを止めた。
光はニャーブラックだけでなく、ニャーレッドやニャーファング、そしてニャーピンクにも降り注ぐ。
ニャーレッド:(ニャーレッドは、その光に触れた瞬間、胸の奥で燃えていた焦燥と無力感が、泉の如く静かに引いていくのを感じる。彼の怒りの炎が、鎮静されていく。
「この……穏やかな光は……。胸の焦りが、スーッと引いていくみてぇだ……!なんだ、この力……。あったけぇ、優しすぎる光だ……!まるで、あの時の君……碧の瞳に宿る静かな輝きみてぇだ……。」
ニャーファングのMode Wild装甲の激しいスパークが、一瞬で収束し、静寂に包まれる。
ニャーファングの心の声:「てめぇ……解析不能だ!これは既知の理屈じゃねぇ!データじゃなく……魂に触れるような、圧倒的な……美しさだと!?俺の計算が狂ってやがる!」
ニャーピンク:(光に包まれ、石化の重圧から解放されるのを感じる。)「あ……この光、なんて優しいの……。森のいのちの、温かい鼓動が聞こえるみたい……!これなら、私にも……!」
ニャーピンクの瞳に、再び強い光が戻る。
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碧は震える手でペンダントを握る。
碧:「お兄ちゃん、今ならいける!」
碧:「Wild Change!」
眩い風の渦が森を包み、エメラルドと淡いターコイズの輝きが融合する。
ニャーグリーン:「希望のリンクス!ニャーグリーン!」
彼女のウィンドクローが煌めき、流れる風がコカトリスの石化波動を切り裂く。
コカトリス:「なんだと!?」
ニャーグリーン:「風は、止まらない!流れ続ける限り、いのちは繋がる! 私の希望の流儀は、あなたたちの石化の理屈を、根源から吹き飛ばす!」
グリーンの風が仲間たちを包み、石化が次々と解けていく。ニャーブラックの毒も完全に霧散した。
ニャーレッド:「身体が軽い!よっしゃあ!まるで森の息吹を浴びたみてぇだ!」
ニャーピンク:「ありがとう、ニャーグリーン!この風、すごく気持ちいい!」
ニャーピンクは光弾を放ち、石化の影響を免れた敵の触手を破壊し、ニャーブラックの進路を確保する。
(ニャーファングは、全身に満ちた風の波動を感じ、解析ウィンドウが狂ったように『希望の律動:無限の効率』という不可解な単語を吐き出すのを目撃する。
ニャーファングの心の声:「これが……命の再生だと!?俺の理屈が、完全に侵食されてやがる!」
ニャーグリーン:「お兄ちゃん、今ならいける!」
ニャーブラックは毒が消え、静かに立ち上がる。妹の成長と強さに、静かな誇りを感じる
ニャーブラック:「…借りを作るぞ。だが、お前の風に賭ける!」
二人の攻撃が交差する。風と影が交わり、巨大な竜巻の刃がコカトリスを呑み込む。
ニャーブラック、ニャーグリーン:「ツインテンペスト・リベリオン!」
轟音。光。そして、森に再び“風”が吹いた。
コカトリスは浄化され、石化していた木々も元の生命力を取り戻していく。
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戦いが終わったあと、ニャーグリーンの装甲が光り、粒子となって消えていく。
ニャーブラック:「碧……!?」
元の姿に戻った碧は、少し疲れたように微笑み、雄夜と、そして吼輔と鋼牙の方をまっすぐ見る。
碧:「みんな、怪我はない?大丈夫だよ。私の風が、少しだけみんなの疲れも連れて行ったから。」
雄夜:「(静かに、妹の頭に手を置く)…ありがとう、碧。お前は、強くなったな。」
碧:「お兄ちゃん……森を、お願いね。」
そう言い残して、碧はそっとその場を離れた。
吼輔は、未だに身体に残る風の穏やかな感触を確かめるように拳を握り、ゆっくりと開く。その瞳は、碧が去った森の奥を追っていた。
吼輔:「情熱じゃねぇ、もっと温かい、光みたいな力だ……。俺の焦ってた炎まで、優しく包んでくれたみてぇだ……!よっしゃ、次も最高の熱い魂で頑張れるぜ!……優しい風だったな。」
鋼牙は、その場に立ち尽くす。彼の視線は、碧が去った森の奥に向けられている。
鋼牙:「チクショウ……計算を捨てたはずの俺が、今、新たな理屈を見た。希望って名の、最も強大で、チクショウ、美しい流儀を。俺のMode DarkもWildも、この純粋な希望の前には無力だった……。あの光は、俺のデータの中に巣食う汚ねぇ計算までも洗い流した……。俺は、何のために戦う?……俺は、動揺してんだ。」
吼輔:「……また、会えるかな、あの風に……。」
ポツリと、誰に聞かせるでもなく呟く、彼の胸には、情熱とは違う、初めて知る淡く、切ない想いが生まれた。森を包む風が、彼の頬をそっと撫でていく。
雄夜:「……ありがとう、碧。お前の風、ちゃんと感じてる。」
拳を握り、空を見上げた。
—第29話 風麟の目覚め ― 森が呼ぶ少女 ― 完—