猫科戦隊ニャーレンジャー   作:舞嵐

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今回はイエローメイン回になります。
お楽しみください。


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第6話:王の影、虎の咆哮

レスキュー基地の訓練場。黄山 樹菜(ニャーイエロー)は、今日もタイガーの力を最大限に活かすためのアジリティ(敏捷性)訓練に励んでいた。

彼女の動きは俊敏で力強いが、どこか「決められたラインを外れることを恐れている」ように見える。

「ちっ、まただ!」樹菜は、訓練用のマーカーにぶつかり、苛立たしげにしゃがみ込んだ。

蒼真(ブルー)が隣でデータを解析する。

「黄山。君のパワーはタイガーの力を完全に引き出している。

だが、常に『最短ルート』に固執している。

野生のタイガーは、最短ルートが危険だと知れば、迷わず軌道を変える。」

「それができないのよ!」樹菜は、珍しく声を荒げた。

「私は…私自身を信用できない。

昔、レスキューの現場で、最短ルートだと焦って飛び出したせいで、逆に救助が遅れたことがあった。

私の『躍動』が、結果的に誰かの命を危険に晒した…」

樹菜にとって、タイガーの力「躍動」は、「二度と失敗してはいけない」という焦燥と表裏一体だった。

だからこそ、彼女は常に完璧で最短な動きに固執し、野生の本能を抑え込んでいた。

「白虎は、最強の剛力を持つと聞いている。もし、私の躍動が通用しなければ、私はまた…」

「黄山。」吼輔(レッド)が、真剣な眼差しで樹菜を見た。

「お前が失敗を恐れるのはわかる。

だが、お前が持っているタイガーの力は、限界を決めつけない勇気だろ。

もし白虎が完璧な力なら、俺たちは不完全な勇気で挑むしかない。」

その時、基地全体に警報が鳴り響いた。

「緊急事態!街の中心部、中央タワー上空に、極めて高濃度の幻獣界エネルギー反応を確認!四武将最強、白虎の出現だ!」

樹菜は、吼輔の言葉を胸に、恐怖と焦燥を感じながらも、決意を固めた。最強の敵、白虎の出現は、彼女の「完璧さへの囚われ」を試す、最大の試練となる。

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街の中心部、高さ数百メートルの中央タワーの頂上に、金色の稲妻のような光と共に白虎が降臨。

白虎は純白と黄金の装甲を纏い、威厳に満ちた姿で地上を見下ろす。

「愚かな朱雀よ。遊びすぎたな。

そして、青龍、玄武…お前たちもだ。麒麟の残滓ごときに手間取るとは、王の威厳が地に落ちる。」

白虎の目的は、王を裏切った麒麟の力を完全に葬り去り、武将たちの規律を正すこと。

「麒麟が託した人間ども。お前たちは、王への反逆の証だ。この白虎が、お前たちの命を、王の忠誠にかけて断ち切ってくれよう。」

白虎が片手を振るだけで、虎の縞模様を持つゾルダの精鋭部隊が湧き出てきた。

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吼輔が叫ぶ。「怯むな!全員、Wild Change!いくぞ!」

5人は変身し、地上から中央タワーへと向かう。

ニャーレンジャーの5人はタワーの基部でゾルダの精鋭部隊と激突。

しかし、白虎が放つ圧倒的な威圧感が、戦場全体を支配していた。

「速い!ゾルダの動きが、今までと段違いだ!」ブルー(蒼真)は、ゾルダの動きを解析しようとするが、白虎のオーラが解析を邪魔する。

「私たちが勝手に、焦らされている!」ピンク(愛)が、精神的な圧力を感じ取る。

レッド(吼輔)は、ライオンのパワーで精鋭ゾルダを蹴散らすが、その拳は重い。「これが白虎の力…!俺たちの力を、上から押さえつけている!」

イエロー(樹菜)は、タイガーの力でゾルダの防御陣を突破しようと高速で駆け抜ける。

「私ならできる!最短距離で、白虎の注意を引く!」

しかし、彼女の「焦燥」に基づく最短ルートは、白虎によって完全に予測されていた。

ガキン!

白虎はタワーの頂上から降りることなく、光速の蹴りを放った。その衝撃波が、イエローが通るはずのルート上の瓦礫を粉砕し、彼女の動きを一瞬で停止させた。

「無駄だ。愚かな躍動は、完璧な力の前ではただの残像にすぎない。」白虎の声が、冷たくタワーをこだまする。

イエローは、粉砕された瓦礫の衝撃波を受け、地面に叩きつけられた。

「うそ…私の最短ルートが…読まれた…!また、焦って…失敗した…!」

白虎は、イエローの姿を見下ろす。

「タイガーよ。お前の力は、失敗を恐れるあまり、可能性を閉ざしている。お前の『躍動』は、王への反逆には値しない。」

白虎の言葉は、樹菜の最も恐れるトラウマを深くえぐった。彼女は、「完璧に動かなければ」という重圧で、立ち上がることすらできない。

その窮地を、レッドが吼える。

「白虎!お前の相手は俺だ!」

レッドは、ライオンの装甲にダメージを受けながらも、白虎に向かって真っ向から突進する。白虎は動じることなく、ただ一歩、足を強く踏みしめた。

ゴォォォォ!

白虎の足元から、純粋な剛力の波動が地面を伝って放出される。

それは、レッドの突進を、触れることなく完全に停止させた。

「王への忠誠を汚すな、ライオン。お前たちに、剛力の真髄は理解できない。」

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白虎の剛力の波動により、ニャーレッド(吼輔)が動きを止められ、ニャーイエロー(樹菜)は瓦礫に打ち付けられたまま、立ち上がることができなかった。

頭の中には、過去の失敗と、白虎の冷たい言葉がこだまする。

「…愚かな躍動は、完璧な力の前ではただの残像…。」

「違う!そんなことない!」樹菜は、心の中で叫ぶ。

彼女は、周りを見た。白虎の剛力に阻まれ、必死に体勢を立て直そうとするレッド。ゾルダの精鋭部隊を相手に、冷静に活路を探るブルーとブラック。

そして、負の感情を抑えようと必死に戦うピンク。

「私がここで動けなければ、また、みんなの足を引っ張る…!また、失敗する…!」

過去の失敗への恐怖が、彼女の体を縛り付けていた。

その時、レッドの諦めない咆哮が、彼女の耳に届いた。

「黄山!お前が言ったんだろ!『失敗を恐れて、行動しないことが一番の失敗だ』って!俺たちは、お前の最高のムードメーカーに救われてきたんだ!今度は、お前の番だ!」

吼輔の言葉は、樹菜が仲間に対して常に与え続けてきた「勇気」そのものだった。

彼女の優しさ、そして明るさの根源には、失敗しても立ち向かう強さを信じる心があったのだ。

「…そうだ。私を縛り付けていたのは、失敗した過去じゃない。失敗を恐れる心だ!」

樹菜は、瓦礫の中で、自分の中に宿るタイガーの力と向き合った。

タイガーの力は、計算された最短ルートではなく、野生の本能が導く、予測不能な跳躍と限界なきエネルギーだった。

彼女の胸のタイガーの結晶が、黄色を超えた純粋な金色に輝き始める!

「私は…もう、失敗を恐れない!」

樹菜は、全身の力を集中し、覚醒の力を発動させた。

「真の躍動!タイガー・ワイルド・スパート!」

彼女は、瓦礫を蹴りつけた。

その動きは、計算も、最短ルートの執着もない、純粋な野生の直感に基づいたものだった。

その瞬間、イエローの速度は、ブルーのチーターの速度すら超える、限界突破の瞬間的な爆発力を発揮した。

彼女の残像がいくつも生まれ、ゾルダの精鋭部隊は、彼女の動きを捉えることすらできない。

「速い!?計算外だ!」白虎は、初めて動揺の色を見せる。

イエローは、白虎の剛力に抑えつけられているレッドの背後へ、あえて遠回りし、予測不能な軌道で回り込んだ。

「吼輔!伏せて!」

イエローは、タイガーの剛力と速度を乗せた拳で、白虎が放った剛力の波動の中心を、一点で叩いた。

カァァン!

タイガーの爆発的なエネルギーが、白虎の絶対的な剛力の波動を、一瞬だけ、分散させたのだ。

白虎の剛力の波動が弱まり、レッドは解放される。

「黄山…!これが、お前の…!」

イエローは、覚醒したタイガーの力で、白虎にまっすぐ見据えた。

「白虎!あなたの力は完璧かもしれない!でも、私たちの不完全な勇気は、あなたには予測できない!」

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ニャーイエロー(樹菜)の「タイガー・ワイルド・スパート」によって剛力の波動が分散し、ニャーレッド(吼輔)は白虎の拘束から解放された。

白虎(バイフー)は、その場で不動の構えを崩さなかったが、その表情には微かな驚きと苛立ちが浮かんでいた。

「…愚かな衝動が、我が剛力を乱しただと?貴様らの力は、予測も計算もできん。」

白虎は、覚醒したイエローの不完全だが強靭な勇気を認めるように、静かにレッド(吼輔)に視線を集中させた。

「ライオン。お前たち人間は、麒麟に誑(たぶら)かされている。」

白虎の冷たい声が、タワー全体に響き渡る。

「麒麟は、黄龍陛下を裏切った反逆者。武将としての地位を捨て、お前たち人間にその汚れた力を託した。王は、王の権威を守るために、反逆者を討った。その事実に、疑問を抱く必要はない!」

白虎は、己の絶対的な忠誠心のみを語り、ニャーレンジャーの心に「自分たちが本当に正しいのか」という重い疑念を植え付けた。

「我が名は、白虎。覚えておけ。次に会う時こそ、お前たちを王への反逆者として、この剛力をもって断罪する。」

白虎は、それ以上の言葉を交わすことなく、再び金色の稲妻となって、タワーの頂上から静かに姿を消した。

静寂が戻ったタワーの下。ニャーレンジャーの5人は、変身を解くことも忘れ、白虎が残した「王への反逆者」という重い烙印に打ちのめされていた。

「私たちは…本当に、裏切り者の片棒を担いでいるのか…?」イエローは、覚醒の興奮が冷め、混乱と戸惑いに包まれる。

「そんなはずはない!麒麟様は、私たちを救いに導いたはずだ!」レッドは叫ぶが、白虎の威厳に満ちた言葉が、彼の胸に重く突き刺さっていた。

彼らの戦いは、真実を知らない者同士の、悲劇的な衝突へと、足を踏み入れたのだった。

 

—第6話 王の影、虎の咆哮 完—

 

 




見事に覚醒したイエローでしたが,いかがだったでしょうか?
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