ベル君のエロ本を書くのは間違っているだろうか? 作:リーグロード
まあ、内容に関しては後悔はしていませんが。面白く書けてると思ったんですがね?
紅竜となった黒竜はリムルの手によって打ち倒された。
その結末に漫画の中では皆が喜び肩を抱き合ったり、握手したりと、様々な喜び方で勝利を祝う。
「~~~っ、ぷはぁ!!」
「あんたねえ、呼吸ぐらいしなさいよ。酸欠でぶっ倒れるわよ」
息をするのも忘れていたティオナに呆れるティオネ。
「でも、ティオナが息をするのも忘れちゃう気持ち……分かる。私も、ベルが黒竜に立ち向かう姿、カッコいいって思ったもの」
剣を握って覚悟の決まった勇ましい顔で黒竜に向かって挑むシーンを見ながら、アイズは胸の前で本をぎゅっと握りしめ、頬をほんのり赤く染めていた。
普段は無表情に近い彼女が、まるで恋する少女のように目を輝かせている。
「ん? んん? 待て待て、あかんでぇ!? ウチの娘に恋愛なんてまだ早い!!」
「ロキ、気持ちは分からなくもないし、他派閥の……それも団長とのそういう関係は望ましくは無いというのは同意するが、君が関わると面倒になるから黙っていてほしい」
愛する娘の恋愛話に敏感なロキが噛み付きかけるが、フィンが面倒な話になって拗れることになると予測して無理矢理に黙らせる。
それで一応はロキも口を閉ざすが、その顔には不満が塗りたくられており、部屋の空気が微妙なものになる。
そんな空気の中、ベートがバサッと本を机に叩きつけた。
「けっ、所詮こんなのただの妄想の産物だろうが」
吐き捨てるように言うと、気に食わなさそうなベートが部屋から出ていこうとする。
「どこに行くんだい、ベート?」
「はっ、ダンジョンに決まってんだろうが」
フィンの質問に鼻で笑ってベートは答える。
そして、振り返りもせずに、乱暴に扉を開けて出ていく。
「なにさ、あの言い方!!」
ティオナが怒りで髪を逆立てんばかりに立ち上がる。
「まあ、ベートの気持ちも分からんでもないわな」
ガレスが腕を組みながら苦笑する。
「ガレスまで!」
ティオナが噛みつくように睨むと、ガレスは肩をすくめた。
「ここに描かれてあるのは確かにご都合主義とも言える部分が多くある。喋るモンスターとの共闘、ランクアップを超える魔法に進化とやら。黒竜の鱗に通用する新たな魔法。現実がそんな風に都合のいい展開になるわけじゃないというのをベートは知っておる」
「それは、そうだけど……」
ガレスは淡々と、しかしどこか優しい声音で言葉を続けた。
「じゃが、それであやつがこの本の全てを馬鹿にしたわけじゃないぞ。血を流し、骨を折りながらも戦い抜くその姿。あの小僧の活躍はどうしてか、儂やベートの胸を熱くさせる。現に、儂ももう少し若ければベートのあとを追ってダンジョンにむかっておっただろうな。そう考えれば、もしや、本当にあの小僧はアルゴノゥトやもしれぬな」
「──っ、そうだよね! やっぱり、ベルはアルゴノゥトみたいな凄い男の子なんだよ!!」
ガレスの褒め言葉に、ティオナはぱぁっと花が咲いたように笑った。
その表情はアイズの静かな乙女顔とはまた違う、太陽みたいに明るい好きが全開の笑みだった。
「ぐぬぬぬ……!!」
ロキの顔が、再び娘を取られた親のそれになった。
「ロキ、その変な顔は止めろ」
リヴェリアが冷静に釘を刺す。
「なんや、変な顔って! ウチはなぁ、アイズたんにティオナがあのドチビの眷族に取られるかもしれん思たら──」
「はいはい、落ち着いてね」
アキがさりげなくロキの近くに歩み寄り、まるで大型犬が撫でられて落ち着くみたいに、「……ふん」と鼻を鳴らして大人しくなった。
そのまま、ぶすっとした顔で本の続きに目を落とす。
勝利を祝う輪から抜け出したベルがマインドダウンで気絶したローリエを優しく抱き起こす。
すると、ちょうど目を覚ましかけていたのか、ローリエの瞼がピクピクと動いて、ゆっくりと目を開ける。
『──ベル?』
『うん、おはよう。僕のアリアドネ』
ローリエは周囲を見回して、自分達が生きている事を確認し、そして、自分がベルに抱きついたままであると気づく。
思わず赤面しながらも、ベルの腕の中から離れようとはしなかった。
そのままの状態でローリエはあのトラウマになっている黒竜の事を聞く。
『勝ったのか? あの恐ろしき黒竜に……』
『うん。まあ、僕がやれたのなんて角を折ったぐらいで、倒したのはリムルたちなんだけど……』
ベルは苦笑しながら頬をかいた。
その仕草だけで、ローリエはすべてを悟った。
──ベルは、約束を守った。自分のために、命を懸けて立ち向かった。
その事実が胸に押し寄せ、ローリエは震える腕でベルの首にそっと回す。
そして、迷いも恥じらいもすべて捨てて、ぎゅっと抱きしめた。
『約束を──守ってくれたのね。ありがとう。……愛してる。私の一番大好きな
涙を流しながら、とても綺麗な笑みでそう告げながら、ローリエは迷わず、ベルの唇にそっと口づけた。
ローリエの唇が触れた瞬間、ベルの体がびくりと震える。
けれど、拒む理由なんてどこにもなかった。
ベルはゆっくりと目を閉じ、ローリエの想いを受け止めるように、そっと彼女の背に手を回した。
「「むううぅぅぅ~~~!!」」
明らかに嫉妬した声を漏らしながら、アイズとティオナは2人のキスシーンを睨む。
そもそも、この本はこれがメインだろうと、冷静な大人組は2人の嫉妬に呆れながらも、恋する少女とはそういうものだと喉まで出かかった言葉をそっと飲み込む。
ベルとローリエの濃厚なキスシーンの次のページで、ようやく唇を離した。
その時にお互いの口元から糸が引かれて、キスの激しさを物語っている。
ベルは赤面して顔を逸らし、ローリエは満足したのかとても満足げに笑う。
『──随分とイチャイチャしてるじゃないかね』
『『ッッッ!!?』』
気付けばすぐ傍に仁王立ちしたリムルがニヤニヤと笑っていた。
なんなら、その後ろに野次馬のように先程まで勝利を祝っていた者達がこちらを見つめていた。
ベルは飛び上がりそうな勢いで後ずさる。
『り、リムル!? ち、違っ、これは……!』
ローリエはローリエで、ベルの服を掴んだまま真っ赤になって震えている。
リムルは腕を組み、完全に面白いものを見つけたという顔で二人を見下ろす。
『いやぁ〜、青春っていいねぇ。命がけの戦いの後に抱き合って、涙して、愛してるなんて言って、そのまま濃厚なキスまでしちゃうとか……いや〜、ごちそうさま』
リムルはパン! と手を合わせ、まるで「最高のエンタメを見せてもらった」と言わんばかりの満足げな笑みを浮かべた。
その後ろでは口笛を吹いたり、笑いながら「これぞラブコメ!」と頷いていたり、頬を赤く染めて凝視していたりと、反応は様々であった。
そんな大勢に見られていたことに気づいたベルとローリエはさらに赤面し、無言のまま縮こまった。
『ん? この反応は──』
突然、ベルとローリエをからかっていたリムルが何かを感じ取ったようで、翼を広げて飛び立った。慌ててその後を全員が追いかける。
辿り着いたのは、先ほどリムルが紅竜にとどめを刺した場所だった。そこには、荒れ果てた地面に突き刺さったボロボロの黒い鱗が残されていた。
『これは黒竜の鱗か? でも、なんで一枚だけ残ったんだ?』
『ドロップアイテムだからじゃない? 僕らの世界のモンスターって倒すと灰になるけど、こんな風にモンスターを倒した時に稀に落ちるアイテムがあるんだ』
『しかし、それにしては、随分とボロボロだな?』
多分、リムルの最後の魔法が強すぎたせいだとベルが言うと、ローリエは驚きつつもボロボロになりながら形を保っているその鱗に触れた。
あの黒竜との戦いがどれほど激しかったのかと想像していると、リムルはベルの言葉を否定した。
『いや、恐らくこれがさっき戦った黒竜の本体だ』
『これが本体? どういうこと……』
『多分、これはベルたちが空間の裂け目に飲まれてやって来たんだろうな。出現した位置が違うのは、飲み込まれた時間か……あるいは、無機物だったからか?』
それを聞いた瞬間、2人の脳裏に、この世界へ来る前に黒竜が落とした鱗を見た記憶がよみがえった。
『これは俺の予想なんだが、この鱗はこの世界にやって来た際に、あの魔素を吸収するスキルを手に入れた。その結果、魔素で肉体を構築し、よりスキルを発揮できる角を生やしたんだろうな』
『ちょっと待って!? ただの鱗にスキル? それに、あの黒竜がただの鱗1枚から出来た偽物だったって言うの?』
まさかの衝撃の事実に、ベルは愕然とする。ローリエも、信じられないという風にリムルを見つめる。
あれほど強かった黒竜がただの鱗1枚から出来た偽物だったなど、信じられるはずもない。
だが、リムルは2人の反応を見て、予想通りとでも言いたげに頷いた。
『確かに、お前たちの世界にこの鱗のモンスターの本体がいて、それがまだ健在だってことは十分な危機的状況なんだろう。でも、ベル、それにローリエ、お前ら2人だけがお前らの世界の冒険者じゃないんだろう。仲間と力を合わせれば、割りとなんでも乗り越えられる。無責任な言い分かもしれないが、俺の実体験だ!』
『くわっはっはっは! そうとも、仲間がいれば恐れるものなどない。それに、あの竜は吾輩の魔素を吸収して強くなったのだ。きっと、お前たちの世界にいる本体よりも強化されていたであろう!!』
『あー! そういえば、お前がポカやらかして魔素を奪われたからこんな大変な事態になったんじゃねえか!!』
『むっ! いや、ほらあれだ、終わり良ければ総て良しというではないか、リムルよ』
『それ、お前が言うセリフじゃなくね。つーか、ベルたちが死に物狂いでどうにかしてくれてなかったら、テンペストが壊滅してたんだぞ! 罰として、ヴェルドラは1ヵ月はおやつ抜きだ!!』
『そ、そんな!! 頼む、考え直してくれリムルよぉ!!!』
これだけの大惨事で、おやつ抜き程度の罰はかなり甘いのでは? というベルの考えが、きっと顔に出ていたのだろう。
ゲルドをはじめとするハイオークたちは、力こぶを見せつけながら、この街の復興に全力を尽くすと意気込んでいた。
どうやら、本当にリムルには頼れる仲間がいて、きっと自分には想像もつかないような困難を一緒に乗り越えてきたのだろうと、ベルは改めて実感した。
そして、自分の仲間たちの事を思い浮かべる。
『(大丈夫。僕にも、仲間がいる)』
ベルがそう決意した時、ボロボロだった黒竜の鱗が急に砕け散り、鱗に蓄えられていたであろう魔素が吹き荒れる。
それがトリガーとなったのか、ベルとローリエがこの世界にやって来る原因となった空間の裂け目が再び現れた。
『どうやら、お別れみたいだな』
『でも、テンペストをこのままの状態にして帰るなんて』
『心配すんなよ、ベル。俺たちの街の事は俺たちでなんとかする。だから、お前もお前の世界で自分のするべきことをやって来い!』
そう背中を押され、ベルは空間の裂け目の前に躍り出る。
そして、隣に立っていたローリエと一緒に空間の裂け目に吸い込まれながら、リムルに振り返って言葉を贈った。
『ありがとう、リムル! みんなと会えたこと、絶対に忘れないから!!!』
空間の裂け目にゆっくりと吸い込まれていくベルに、テンペストのみんなは別れの言葉をかけながら手を振り、ベルとローリエが自分たちの世界へ帰っていく姿を見送った。
最後のページ、青空の下で元の世界に帰ってきたベルとローリエはお互いに手を繋ぎながら、黒竜に勝てると信じて見送ってもらったリムルたちの為に、この世界の英雄になると誓って、この物語の幕は閉じる。
随分と長い物語に、読み終えたロキファミリアの面々は息をのんだまま固まっていた。
「ふむ……黒竜が鱗一枚から再構築された存在、か。それに、異世界のスキルとは。真実ではないにしろ、中々に興味深い内容だったな」
リヴェリアは腕を組みながらも、わずかに目を見開いていた。
「僕としては、この黒竜の鱗の強度に興味があるね。もしこの強度が本当だったとすれば、ゼウスとヘラが敗北した原因の一因だろうからね」
「ふむ、作中で経験値倍化の魔法の恩恵を受けたベル・クラネルの攻撃でも通用しなかった鱗か。確かに、それが真実ならば、今の儂らに攻略する術はないのう……」
顎髭をなでながら、フィンが興味を示した鱗の強度にガレスが唸る。
そんな3人の会話に、英雄譚オタクのティオナが嚙みつく。
「ねぇ~! もう、ちょっとはベルが活躍したこととかに触れなよ!」
「馬鹿、団長は今後の事とか、色々考えてんのよ。アホなアンタが邪魔するんじゃないよ!」
「はぁ~!? 今、ティオネがアホって言った!!」
「なに、文句あるっての!!?」
喧嘩を始めそうになるヒリュテ姉妹を落ち着かせる羽目になり、結局この日はこれで解散となった。
言うまでもないが、ギルドの掲示板に張り出されているとあるランキングで、ローリエ・スワルは絶対不動の1位として君臨し続けるのであった。
これからしばらくはこの小説の更新はストップします。
変にコラボして作品の質を落としてメンゴ!