こんにちは、ハイドです。先程まで急に来たガゼル王とリムルさんが戦いました。何故か俺もお付きの人と戦闘をすることになりましたが、辛勝……今はドワーフ王国の人達と共に宴をしている最中です。
「━━━魔物の危険度ォ…?」
リムルさんのそんな怪訝な声が聞こえてきました。危険度って言うと…所謂等級ってやつになるのだろうか。AクラスとかBクラスって言うのかな。
《━━━魔物の危険度と言うのは、また別クラスで出されます。A、B等の区分けは…厳密には違いますが、更に区分けした物ですね。この場合ガゼル王達が話しているのは、大まかな区分けの方になります》
先生曰く……
俺は知らないが、少し前にあった
《因みにこの街そのものだと、ディザスターになりますね》
え、そんな驚異的なものって判断されてるの?皆優しいよ……ってそれ知らないと、単なる名付け魔物が万単位でいる集会所だもんな…やばい、ってことになるのか。因みにカタストロフは?
《基本的に最古の魔王や竜種などがそれに当たります。あとそれ以上の存在は大体そっちです》
なんかザックリしてるけど……要するに世界の頂点に座する者達のクラスって事ね、喧嘩売らない方がいいってことか。
《巻き込まれないように祈っててください、ってくらいです。通る所はぺんぺん草も生えないレベルまで命が絶えます》
まさに天災……まぁ最古の魔王とか竜種とかってそんな滅多に会うもんじゃないだろうしね。そりゃその辺の位置付けになるか…
《領地から動かない存在ならいいのですが、動く存在だと近くを通るだけでおしまいですからね。ミリム・ナーヴァや、ヴェルドラ等が街にとっては危ない存在ですね》
やばい魔王とやばい竜種か……街の子供達に被害がないように祈っとかないとね……なんて考えてたら、スミレさんが俺の傍に来た。何やらドワーフ王に聞きたいことがあったらしいのだが…リムルさんを交えて話してたらしい。そして今戻ってきていたが…あまりいい情報は無かったようだ。
「はぁ……」
「……まぁとりあえず美味しいご飯食べて、飲んで食って一旦休もう?」
「…そうですね……」
少しだけ微笑んでくれたスミレさん。しかしその表情には…何だか色々な感情が入り交じっているような…そんな雰囲気を醸し出していた。
「━━━リムルよ、俺と盟約を交わす気はあるか?」
宴会が始まりしばらくして…急にガゼル王がそんなことを言い出した。盟約…盟約か、対等な立場で申し込んでいるというつもりなのだろうか。
《そうでしょうね》
びっくりしたよ、まじで。だってそれはつまりこの街を国として認めるということだ。しかも英雄王とまで名高い存在が、だ。しかも確かドワーフの国って滅茶苦茶重要な場所だよね?
《現在取り扱われている金貨、銀貨、銅貨などの一般貨幣はドワーフ王国での生産になります。そこからの承認となると、一気に信頼が高くなります。何せ下手なことをすれば、ドワーフ王国と共はこの街と一緒に沈むという事ですから》
これが人間の国ならまだ話は別だったかもしれない…が、ここは魔物の街だ。リムルさんが色々教えてるのもあって、今から国を名乗っても普通にやっていけそうなくらいには色々整っている……が、だ。
魔物の集団を国として認める、という行為がどういう意味を持つかを知らないガゼル王でもあるまい。実際今リムルさん『何言ってんだこいつ』みたいな顔してる。
「『何言ってんだこのおっさん』と言いたそうな顔をするでない」
「………本当にいいのかよ。それってつまり、俺達魔物の集団を『国』として認めるってことになるぜ?」
「無論だ、それにこの街は素晴らしい作りをしていた…いずれ交易路の中心都市となるだろう。後ろ盾となる国があると便利だぞ?」
《交易路の中心、ということは即ち様々な国の品が集まりやすいということになります。そして同時に人が多く行き交う場所となるので、保養地としても発展が見込めます…つまりこの街がそうなると…魔物達の対応によっては、今までの価値観が一新されることになるでしょうね》
聞く前に説明してくれた……確かジュラの森を迂回するような交易になってるんだよね今。それはこの森が危険だから……けど、ジュラの森に出来たこの街を直接行けば、森向かいの国へと交易が伸ばしやすくなる。それに、直進する分必要な経費とか少なくなるもんね。
《商人としても、他の国としても…この地は見過ごせない場所になるでしょうね》
「それにこれは王として言っている。当然だが、善意だけの言葉では無い…双方に理がある話だ」
「ほんとにぃ…?俺騙されてない?」
「ふはははは!恩師や
ドワーフ王国としては新たな交易路は、それだけで価値のあるものだろう。その上でこの街を国として認めたならば、色々と都合として通しやすくする為…というのもあるかもしれない。この街からしてみれば、国となることで自由に交易がしやすくなる。互いに甘い汁が啜れるというわけだ。
「…条件は2つだ。国家の危機に対しての相互協力、そして相互技術提供の確約…なに、答えは急がずとも良い。よく考えるがいい」
「………えっと、つまり…?」
俺の横にいたスミレさんがボソリと俺に話しかける。実は反対側にはゴブタ君もおり、同じようによくわかってない顔をしているので…2人の会話を邪魔しないように、思念伝達で話しかける。
《まぁ要するに、互いの国の為に手を取りあって一緒に歩いていきましょうねって認識でいいと思うよ》
《わ、分かりやすいですけど…あってます?それ?》
《…ん、あれ?それオイラ達にメリットしかないけど、向こうそこまでメリットあるッスか?》
《へ?どういう事?》
《だってオイラ達…魔物っすよ?勿論スミレちゃんとかみたいに、色んな人間の行商人が来るっすけど…魔物の国、ってなったら周辺の国が討伐に来ないっすか?》
どうやらゴブタ君も気づいたようだ。そう、ドワーフ王国が後ろ盾とは言え…魔物といえば本来討伐対象だ。先生によれば
けれどこの国はそうではない。魔王が収めてる訳でもなく、魔王が庇護下に置いてある訳でもない。幾らリムルさんが強いと言っても、舐めてかかる国は絶対にいるのだ。つまり、この場合は…
《あ!襲われやすい国を、襲われにくい国が守るってこと!?》
《そういう事。だからこの盟約の真の目的は多分…交易路の確保と、技術の共有が主だと思う。その為に守ってくれるって認識でもいいかもね》
なんなら国として認めなくても、今すぐここで領土確保すればいいだけなのだ。まぁそんな卑怯なことをしないから、英雄王と呼ばれてるのかもしれないが。まぁとどのつまり…この盟約、受ける方が完全に得である。まぁドワーフ王国が後ろ盾の国を襲うとこなんて、とんだ無能王と馬鹿にさせてもらうがな!但し人間の国に限る。
「━━━いや、その盟約…喜んで受けさせてもらう」
「ふっ……王者に相応しき決断力だ!流石俺の弟弟子よ!」
……この人弟弟子って分かってから、リムルさんとの距離凄い近くない?ただでさえ美少女とおっさんの絵面なせいで、もうなんか危ないような気がする絵面である。本人達にその気は全くないと思うが。
「………で、お前達の国の名はなんというんだ?」
「━━━━」
リムルさん固まってしまった。鬼人さん方に目線を向け…首を振られ、リグルドさん達に目を向け…首を振られ…ついに俺達の方に目線を向けてきた。
《なんかねーのかよ!》
思念伝達……いやまぁすぐに言われて思いつくもんでもないだろうけど、それにしたって国の名前を部下に聞くのはどうかと思う。自分で考えて欲しい…が……
《リムルさんの名前から取ったらいいじゃないですか》
《ここジュラの森ですからそこから取るのは?》
《バチッとかっこいいのにしたいっすねぇ》
俺、スミレさん、ゴブタ君の3人がそれぞれリムルさんに伝えていく。というかあんたが国主になるのは明白なんだから、なんて名前付けても基本大丈夫だと思うけどね。ネーミングセンスいいんだから。
「いや……まだ国という段階でも無かったからな。俺はジュラの森大同盟の盟主だけど、国主って訳じゃないし……」
「リムル様を王と認めぬ者がいたならばこのシオンが…!」
「コラコラ!しまいなさい!!」
……まぁ敵を全部捩じ伏せるシオンさんの思考は兎も角、事実大同盟の盟主である以上国主みたいなもんだと思うけどな。この場にいる全員がそのつもりだったと思うんだけど……寧ろ、リムルさんにその気がなかったのが意外だ。
「国の主を決める、って話ならリムル様で決まりだと思うぜ?力ある者に従うのは魔物の本能だが……少なくとも俺達はそれだけで配下になった訳じゃないからな」
「というか私、てっきりその気だと思ってました」
「オイラもっすね、というかリムル様以外居ないと思うんすけど」
「同じーく……この街はリムルさんが育てたようなもんだし、街が綺麗で整ってるのも人徳…というのは魔物だから変だけど、リムルさんの信頼のお返しって形で出てると思いますよ」
「その通り!!!」
「我もそう感じているぞ!」
俺の言葉にリグルドさんとランガさんが叫んでいた。忠義だけで言うなら、この二人結構分厚いよな。本当の初期からいるメンバーらしいからそんなもんか?
「おい!あんまり俺を持ち上げるんじゃない!ここには森の管理者だってい」
「いいと思います、リムル陛下」
今被せてきたなあの人。森の管理者ではあるのだが、多分これで多種族の制御をリムルさんがやってくれるからぜひやらせたい、ということなのだろう。
「━━━ここの王は貴様以外おらんようだな、諦めろ。では明日の朝までに国名を考えておけ、そして今夜は酒の付き合え」
「考える時間くれねーのかよ!?」
この人も存外酷いもんだが……まぁ、こういうのって案外酒の席で何とかなったりするものなのかもしれない。まぁ余程変な名前で無ければいいだろう。
《………》
どしたの先生。なんか言いたそうな雰囲気感じるけど。
《酒の席で国の名前を決めるものでは無いと思うんですけど》
いーのいーの!細かい…いや細かくないけど!!決めるのはリムルさんなんだから!あとどうせ今から全員朝まで酒飲み付き合い続けるんだし一緒一緒!!
《Xsmal》「……いや、そうか…」《/Xsmall》
「なんだどうした」
「国の名前、今決めた……俺の名前、『リムル=テンペスト』とジュラの森から取って…『ジュラ・テンペスト連邦国』だ!!」
………いいネーミングセンスじゃないですかやっぱり。まぁ酒の席で決めるものかどうかは兎も角として、かっこいい名前だと思う。それに他種族がいるから連邦国って事でしょ?
「はっはっは!いい名ではないか!」
「だろ?」
「では首都の名前はリムルですな!」
「えっ」
急にリグルドさんが決めた……まぁ、反対する人はいないしな。ぶっちゃけわかりやすいしいいと思う。リムルさんの作った国だから、首都はリムル……うん、とてもいい。
「中央都市リムル!いいですね!」
「シュナ?」
「確かにいいな、リムル様の国らしい」
「ベニマル?」
「いいと思います!」
「スミレ?」
「賛成です!」
「リグル?」
「賛成しないものはバッサリです!!」
「ダメだからねシオン!?」
皆が次々と賛成していく中で、アワアワとしているリムルさん。あらかた賛成の声が集まっていく中で、リムルさんはついに俺の方を見る。助けが欲しいのだろうか。しかしまぁ……反対する理由がないので、俺は微笑みだけ返していた。項垂れしまった……すいませんちょっとおもろい。
「では国の名前はジュラ・テンペスト連邦国!そしてこの街の名前は中央都市リムル!ですな!!」
「では明日早速調印式を行うとするか!」
文字通りの酒の席、酔いで高いのか元々なのか。全員がハイテンションで行われた国の名付けは、驚くほど簡単に行われ…そして決まったのであった。
後に…ジュラ・テンペスト連邦国という名前は、略称が魔国連邦となるのだが……みんな気に入って魔国という呼び方が広まったのはしばらく経ってからなのであった。