混ざりし世界の正体不明   作:長之助

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怨敵進化

「━━━オマエヲ、コロス!!」

 

こんにちわ、ハイドです。現在戦闘の真っ只中…リムルさんと戦いに来たカタキが、進化の秘宝という道具を使用。それにより肉体依存の生命体から精神生命体への進化を始めました。

それはきちんと使えば確かに進化するっていうアイテムみたいだけど……問題は、それを止めようとしたカタキの仲間がこちら側についていた事。それを目にしてしまったカタキは精神的に不安定になってしまい、精神が進化の秘宝に耐えられなくなってしまっていた。そして今…虹色の妖気(オーラ)を撒き散らしながら、カタキは暴走を始めてしまっていた。

 

「カタキを止めるぞ!!」

 

「「「おう!!!!」」」

 

全員が、俺もその1人だが…威勢よく返事を返す。今のテンペストでの戦えるメンバーのほぼ全てが、ここに揃っているのだから。とは言っても、単に倒すだけじゃ意味が無い…仲間の敵討ちの為の行動で、彼を倒す必要性がないのはリムルさんも分かっているはずだ。

 

《対処法ですが…》

 

あるのかい、先生。

 

《暴走している部分の切り取り…取り除きさえ出来れば、進化の秘宝による暴走は収まるかと》

 

なるほど。それなら確かにカタキも無事だし暴走も止められるしでいい事づくめじゃん。やるとしたら俺かリムルさんかな?捕食できるしね。

 

《…ただ》

 

ただ?

 

《取り除いた場合、カタキのユニークスキル復讐者(ウラムモノ)の効果により、『()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。さらに進化の秘宝自体の挙動は止まっている訳では無いので……》

 

……つまり、進化の秘宝への耐性を獲得した上で…精神生命体への進化をしてしまうってこと?それは…止めるのを確定させてる今、確実に進化しちゃうってことか?

 

《そうなります》

 

んんんんん………背に腹はかえられぬって所か……リムルさんが、カタキを止めた後に一騎打ちを望むのなら手を出すことはしないけど…そうじゃないなら割り込む事にしよう。とりあえずは━━━

 

「ソウエイさん!!」

 

「ああ…!」

 

ソウエイさんと俺で、カタキを糸で縛る。拘束が役に立つとは思ってないが、これは拘束用ではない。伝線の役割を果たすための糸なのである。

 

「ランガさん!!」

 

「ベニマル!!」

 

「「おう!!!」」

 

俺達はそれぞれ声をかける。同時にベニマルさんが黒炎を、ランガさんが雷を糸に通してカタキに攻撃を仕掛ける。ここは森の中で、カタキは暴走しているとはいえ、木々を通り抜けて素早く移動をしていくだろう。ならば確実に当てるためには、伝線と拘束する必要があったわけだ。

 

「グオオオオオオオオオ!!?」

 

《リムルさん、簡単に話しますけどいいですか?》

 

《なんだ、どうした?》

 

《カタキを止めるのはいいとしても、先生がこのまま止めたら耐性得て進化しちゃうって言ってます》

 

《え、まじ?大賢者マジなのそれ?》

 

《是》

 

《是じゃないが……いやまぁ殺す訳にもいかないし、仕方ないな…止めたあと、もっかい止めるぞ》

 

《はい!!》

 

よし…これで何とかなるだろう。今のカタキは俺たち全員でかかれば五体満足で捕獲できる。リムルさんが暴走の原因を食べてしまえば、この場は解決…進化した後だよなー!面倒なの!!

 

「落とします!続きなさいゲルド!!」

 

「任された!!」

 

縛られ、そして燃やされ痺れているところにシオンさんとゲルドさんが即座に武器を叩き落とす。これでカタキは素手…けどまだ足りない。拘束を恐らくは無理にでも突破してくるのは目に見えている。ならダメ押しが必要だ。

 

「行きますぞー!」

 

「行くっすよスミレちゃん!」

 

「はい!!」

 

「僕達も!!」

 

ガビルさん、ゴブタ君、スミレさん、そしてカタキの仲間の人達。彼らが強力する事で周りの木々が数本カタキに向かって倒れていく。拘束されたままでは動けないカタキは、そのまま木々に押しつぶされる……が、無事である。物理的な拘束による体の不自由さが余り通じないのなら、重量による不自由さも追加で押し付けるべきなのだ。

 

「ごッ…!?」

 

「人数揃うと流石にあっという間だな」

 

「この後が問題ですけどね……」

 

「ま、何とかするしかない……大賢者」

 

《了》

 

糸に拘束され、若干焦げ付き、そして木々に押しつぶされているカタキ。このあとに起こることに少し溜息をつきながらも、リムルさんは暴走の原因をカタキから即座に取り除こうとして━━━

 

「━━━ヒツヨウ、ナイ…!」

 

「………意識が、あるのか?」

 

《まさか…意識だけで、進化の秘宝に抗った…?!》

 

「オレハ、マケタ…!シンカノ、ヒホウニ…!負ケレバ、俺ハ…強クナル…!コノ能力モ、俺ノモノ…!俺は…復讐者(ウラムモノ)だ…!」

 

力に呑まれていたカタキが、段々と流暢に喋り始める。そしてそれに比例するかのように、オーラも大きく濃くなっていく。そう、進化の秘宝という道具ありきとはいえ…今俺は目の前でこの世界の魔物の進化という物を初めて見ているのだ。

 

《告。個体名カタキの肉体と精神が急速に安定、精神攻撃耐性を獲得しました》

 

その言葉が表すところはつまり……最早カタキはその心を揺るがすことは無いということ。復讐者の意地と、憎しみと、そして残された優しさが彼の全てを強くする。

 

「俺は牙狼(ガロウ)族への復讐心から、全てに怒り全てを恨むようになった……その牙狼族の恨みをリムルへ……だが違う。俺が許せないのは俺自身…!仲間を守れなかった俺を!俺が許せない!!これが俺自身への恨み…!だから、この怨念は消えなかった━━━」

 

「カタキの体が…!?」

 

「超速再生で回復してる…!」

 

多少傷ついた体が、回復していく。超速再生のスキルを持っていることはリムルさんから聞いていた…聞いていたが、これは……確かに凄まじい…!というかなんか全身に魔素が行き渡ってないか…!?

 

《周囲の魔素も取り込んでおります》

 

まさか、進化に必要なエネルギーを周囲の魔素から取り込んで行ってるのか…!?そうして取り込み取り込み…魔素を取り込み続けていったカタキの体は変化していき……彼を押し潰していた倒木、拘束していた糸を弾け飛ばすようにして…その身体を変化させる。

 

「カタキの体が…!?」

 

《……個体名カタキは星幽人鬼族(アストラルゴブリン)へと進化を果たしました》

 

変化…いや、進化か。カタキの体は大きくなっていた。元々似た様な種族であるゴブタ君とは違う方向で進化したのがカタキだ。そのせいかゴブタ君や他のゴブリン達とは身長が大きくなっており、今回の進化でさらに大きくなっていた。

何より変わったのはその胸部……進化の秘宝と同化したらしく、その胸に大きな宝石が宿っていた。体の1部が刺々しくなっており、物珍しい灰色の髪もロングへと伸びていた。そして何より…その目は漆黒へと染まっていた。

 

「━━もうお前達にも、お前の国にも恨みはない。だが、これは自分に対するケジメだ…敗者であり続けた俺へのケジメ、俺の復讐を果たす…!」

 

「…みんな、ここからは俺一人でやる。手を出すなよ?」

 

「………あんたがそう言うなら、俺達は手を出しませんよ」

 

「ッ!?何を…!リムル様をお一人で戦わせる等…!」

 

「シオン」

 

ベニマルさんの一言。その一言だけでシオンさんは黙ってしまう。ベニマルさんの圧に黙らされたといえば聞こえは悪いが……シオンさんも、カタキに大して思うことがあったのだろう。

 

「よし……こい、カタキ。俺だけでお前の相手をする」

 

「あぁ……行くぞ!!」

 

カタキのその一言により…2人はぶつかり合う。カタキの使う武器は、どれも大きくリムルさんの使う刀が短刀に見えるほどの差があった。身体の大きさも同様、見た目通りならカタキが一蹴するで終わるレベルだろう。だがそうはならない。

二人の力は互角……いや━━━

 

「申し訳ないが…全力でやらせてもらうぞ!!」

 

「ぐうっ…!?」

 

リムルさんが押していた。鍔迫り合いは一瞬、リムルさんがそのままカタキを押し飛ばしていた。そしてそのまま追撃へと移る。リムルさんの剣術は俺と…いや、テンペストの戦闘員ほぼ全員が指南を乞うているハクロウさんの剣術。腕自体はまだまだ師や兄弟子であるガゼル王には及ばないにしても、その実力は計り知れないほどの高さがあった。

 

「だがこの程度で…糸…!?」

 

「粘糸だよ…!」

 

押し飛ばされたカタキは空中で体制を整える。くるりと身を翻し着地…したところに、リムルさんは罠を張っていた。粘糸による足場の固定罠である。

無論、こんなのに時間をかけて解除するカタキではない。だが意識を向けることには成功した。仮に即座に罠を破壊されようが、意識さえ向けさせてしまえばリムルさんの勝ちである。

 

「『水刃』!」

 

「ぐあっ!!」

 

「上手い!!」

 

「合わせて…!こう!!」

 

「ぐううううううう!!!?」

 

水刃によって手足の腱に近い部分を切り裂くリムルさん。続いて黒い炎と雷による波状攻撃。いやいくら超速再生があるとは言っても遠慮が無さすぎる。いや超速再生があるからこそ、か?

 

《超速再生が追いつかないほどにダメージを与えてしまえば、カタキは完全に戦闘不能になるでしょう。逆に言えば、殺すだけならスキルで食べてしまえばいいだけなのでこうならざるを得ないのです》

 

にしたってこれは…大分えぐい手を使ってるな。倒さなきゃいけないと、殺してはダメ。この二つの両立を目指した結果がこう…ってのは説明されたらまぁ理解はできるんだけど……

 

「……ひぇー…自分は受けたくないっすね、あれ」

 

「……ふむ」

 

「おい、ソウエイ?お前今何を思いついた?」

 

「いや……あのレベルでは無いにしても、拷も…尋問の手段として使えそうだと思ってな…さすがリムル様だ、と感心していたんだ」

 

「おい!!!今なんか俺の評価がおかしな事になってないか!!!?」

 

「よそ見をする暇が……あるのか!!」

 

「うわっと!!?」

 

おお…凄いなカタキ。足場を固定され、筋肉の腱を切られ、燃やされしびれさせられてるのに突破してる。あ、いやでも…これは……駄目っぽいな。

 

「く、はっ……」

 

「……動けそうか?」

 

「……いや、難しい…な……」

 

仰向けで倒れ込むカタキ。切られた傷から電流は流れてきて、傷跡が焼かれてしまったせいで超速再生が追いつかなくなってるみたいだ。

 

《エネルギーの限界もあり、超速再生が追いつかなくなっています》

 

そんな感じの理屈で再生ってされてたんだ……まぁそもそもカタキ今日は俺達が来る前もシンシヤと戦いってたからエネルギーなんて消耗してて当たり前だよな…

 

「超速再生が追いついてない…!」

 

「終わった……全部…これが、俺の最期の敗北…」

 

「はぁ…とりあえずその傷を癒せ、場所は提供する」

 

回復薬で治療はしないのか、とも思ったが…そもそも負けた相手から施しを授けるの自体、結構腹立たしいと思う奴がいる。カタキは勿論その類いだろうし…

 

「何度、言わせる……お前の……所に、など………誰、が…………行く、か………………」

 

そう言いながらも、カタキは笑顔で意識を失った。まぁリムルさんとは色々あったみたいだが……どうやら心の整理は出来たみたいだな。まあ強情そうだからまだまだ難儀しそうだけど……

 

「ほんとに、世話の焼けるやつだ!」

 

「でも…前のカタキに戻った顔してるよ」

 

「清々しい顔、してるもんね」

 

「最後の最後まで…ほんと、強情……」

 

「だけど…だから、カタキなんだよね」

 

その後…カタキとその仲間の人達と共に、俺達はテンペストへと帰る。カタキは酷い傷を負っているものの、命に別状はなく時間をかけて回復するだろう。

さて…この戦いの後始末…どうなる事やら……後、シンシヤのことも気にかかるな……どこに行ったのかは分からないが、何とかなればいいけど……

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