混ざりし世界の正体不明   作:長之助

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魔王襲来

こんにちは、ハイドです。色々な事件が起こりましたが、新興国テンペストは今日も平和そのもの。俺も今日は休みを貰ってたのでのんびりひとりでピクニックと洒落こんでいます。

テンペストは日に日に大きくなっており、その進化を一望できる場所から見る景色のいい場所へと移動している最中です。

 

「偶には一人でいるのもいいよね、先生」

 

《強力な存在が接近中》

 

先生も同じ気分のようだ。たしかに今日はほんとにいい天気で青空が広がり、点々と白い雲がまばらに散っているのが妙に風情を感じて…そして桃色の閃光が俺目掛けて接近して……はい?

 

「先生今なんて」

 

「ハイドー!!!避けろー!!!!」

 

「へ?リム」

 

………その瞬間凄まじい轟音と共に、俺の体に凄まじい衝撃が走る。折角の休みが、台無しになってしまっている。いや、そんなことより強力な存在?何事?

……なんて、思ってたら……気がついたら俺の首根っこは誰かに掴まれていた。もちろん、リムルさんではない。

 

「━━━初めまして!私は魔王ミリム・ナーヴァだぞ!お前がこの街で1番強そうだったから挨拶しに来たのだ!」

 

……桃色のツインテール、愛らしい童顔。そして全てを見透かすかのような蒼い瞳に……スカートの履き忘れ。しかも下着もサイズがあってないようだ。きっと親からネグレクトでも受けているのかもしれない…………

 

「……今なんて?」

 

「おお、済まないな巻き込んでしまって…お前も相当強そうだな、しかしこいつには負けるだろう…ほいっ!」

 

……リムルさんと比べられているようだ。そしてぶん投げられた。先生が体の制御をしてくれたおかげで着地できたが、随分とまぁいきなりの挨拶である。よりにもよって魔王とは……

 

「…初めまして、リムルと申します。どうして私が強いと思われたのですか?」

 

「ふふん、それで妖気(オーラ)を隠したつもりか?この竜眼(ミリムアイ)にかかれば相手の隠してる魔素量など丸見えなのだ……!私の前で弱者のフリなどできぬと思うがいい!わーっハッハッハっ!!」

 

なるほど、隠し事が出来ず丸裸にされるスキルということか……なんというか、魔王らしい能力…と言うべきなのか?

 

《……………》

 

何も喋っていないが、何となく先生がすごい嫌な気分になっているというのだけ雰囲気が伝わってきている。ミリムアイとやらがどうやら気に入らないのかもしれない。

 

「…ところで、お前達はそれが本来の姿なのか?リムルとやら、ゲルミュッドと戦っていたのはお前だろう?その時は銀髪の姿のように思えたが……」

 

「ゲル…?」

 

なんだっけ、耳馴染みの無い言葉だ。会話の流れから推測するに恐らくリムルさん達と戦っていた誰かなのだろうが……

 

《それで合っています。該当人物は既に死んでいます》

 

なるほど、まぁならそういう事で理解して………あれ、そう言えばお前『達』って言ったなこの子…俺もなんか隠してると思われてる?俺別になんか隠してるとかは無いんだけど。

 

「………銀髪…というとこの姿ですかね」

 

リムルさんは一先ず、先に疑問を解消させることにしたようだ。人型へと変貌しその姿をさらけ出す。見たことある姿で一瞬納得しかけた魔王サマだが、すぐに別の疑問が湧いたのかリムルさんを四方八方からジロジロと見始める。

 

「もう少し小さかったような………さてはお前、豚頭帝(オークロード)を食ったか?」

 

「……えぇ、まぁ」

 

……まずい。何がまずいかと言われたら、リムルさんがこの魔王サマに警戒されているという気がしたからだ。というか、確かオークロードは魔王種…つまるところ、リムルさんは魔王になれる逸材を倒し食らった存在なのだ。実力としてはかなり強い方だろう。そしてそれをリムルさんも察したからこそ、警戒モードがONになっている。

 

「……それで、本日はどう言ったご要件でしょう?」

 

「む?最初に言ったではないか…挨拶だぞ?」

 

「「…………………」」

 

そんだけ?あれ、危険人物扱いなので排除しに来たとかオークロードを良くも倒してくれたなとか…なんかこう、そういういみあいかとおもってたんだけど。マジでただ挨拶しに来ただけ?

 

《因みにお2人が協力して戦ったところで勝てる確率は0%、敗北までの時間はコンマ未満でしょう》

 

コンマ未満って言葉初めて聞いた。コンマ0以下とかじゃないの?未満って何?瞬殺?いやそもそも戦いにすらならないってことか…なんて考えていたら、何かを思い出したように魔王サマはこちらへと振り向く。

 

「む!そうだ忘れていた!何故お前は内側にエン━━━」

 

何かを言いかけたその時、周囲に土埃が舞うのだけが確認できていた。だがそれの原因がなんなのかが分からない内に…一瞬で俺の意識は暗闇へと落ちていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

,

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふっ…!」

 

「ランガ!リムル様を連れて逃げなさい!早く!!」

 

「心得た!」

 

土埃が舞うこの空間、起こしたのはシオンである。即座にランガに指示を飛ばし、リムルをこの場から逃がしていた。だがシオンの攻撃は片手間で止められており、同時にもう片手間でもう1人の攻撃を受け止めているのだ。

 

「ほう…お前、私と遊びたいのか?それに……」

 

《お前…随分と面白い魂の形をしているのだな、外側は兎も角としても…内側に天使族(エンジェル)とは見たこともないぞ?》

 

《…訳あってこのような形ではありますが、出来れば周りには言わないでいただきたいところですね。今のご配慮を、続けていただきたいところです》

 

《いいだろう、だが一つ聞きたい…天魔大戦が、まもなく行われる予兆か?周期はもうそろそろだったのは覚えてるが、その辺はギィに任せっきりなのでな》

 

《…詳しいことは、まだ言えません。ですがはっきり言えば私の存在と天魔大戦は無関係、とだけ》

 

《ふむ……なら、そういうことにしておこう…なら━━━》

 

「━━━ここで遊ぶとしようか!!!むっ!!」

 

話は終わり、その瞬間に魔王ミリムの体は糸によってまるでサナギのように雁字搦めにされていく。攻撃の正体はソウエイの糸。しかしその糸は10秒もミリムを拘束することは出来ないだろう。

 

「魔王と言えどもこの糸の束縛より逃れることは簡単にはできまい…!少なくとも、数秒はな…!」

 

「数秒で十分だ…!黒炎獄(ヘルフレア)!!!」

 

ソウエイの糸を伝って、ベニマルの黒き炎がミリムの体を包んでいく。しかしその炎の内側より感じ取れるミリムのオーラは尽きる様子がなく、また一切のブレを感じさせていなかった。

その間に距離をとったハイド…主導権が変わっているとはいえ、普段の彼とは違う動きを見せていても、ベニマル達はそれを気にするほどの余裕が今は存在していなかった。故に、安心して即座に離れることができたのである。

 

「火傷くらいしてくれると嬉しいが……」

 

「━━━わはははは!!凄いのだ!」

 

「まじか…」

 

「……知ってはいましたが、こうも化け物とは……」

 

主導権を握っている存在は、ハイドらしからぬ態度と口調で戦慄していた。オーラで無事なのはわかっていたが、まさか来ている衣服すら焦げのひとつも凹みのひとつさえも見えなかったからだ。

 

「これほどの攻撃…他の魔王であればダメージを負ったかもしれんが、私には……通用しないのだ!!」

 

そして、お返しと言わんばかりのオーラの爆発。本人からしてみれば挨拶に等しいものだろう。攻撃かどうかも怪しいその行動に、周りの木々や地面と共に全員が吹き飛ばされていく。

 

「うぅ……」

 

「ぐっ……」

 

「っ……」

 

「ッ…さすがに、これ以上は戻るべきか……ッ………!!!!!?!?!?!!」

 

そう言って…再び目を瞑るハイド。そして次に目を開けた時に出てきているのは、ハイド本人である。突如として体を襲う痛みに声もなく、彼は驚きと苦痛で体を痙攣させていた。

 

「いででででで………!!!?」

 

「━━━お前ら、それ飲んで下がってろ。あとは俺がやる」

 

そう言って、ランガによって下がっていたリムルが改めて一同の前に現れる。ミリムの攻撃とも言えぬ行動によって、戦闘不能に追い込まれた仲間達にポーションを投げつけていく。ぷるぷるモチモチの謎触感だが、飲まなくてもかけるだけで傷は治る。

 

「ま、マジでやる気ですか…リムルさん……?!」

 

「そやつの言う通りだぞ?それとも…私に通用しそうな攻撃方法を持っているのか?」

 

「一つだけな……」

 

「わーはっはっはっ!!いいだろう!但しそれが通用しなかったら、お前は私の部下になると約束するのだぞ?」

 

はっきりと言えば、魔王ミリムに戦闘能力で勝てる存在は文字通りの万に一つ。当然この場にいる者は誰一人として勝てず、リムルとの力の差は歴然。

 

《下限ですら、リムル=テンペストの上限の10倍です》

 

「イカれてる…!」

 

「分かった━━━」

 

その力の差は当然の事ながら、万に1つの可能性も存在していない。()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「━━━じゃあ、喰らえ!!!!」

 

迫るリムル、仁王立ちで一切の反撃をするつもりのないミリム。しかし得意の捕食は力の差で無力化され、下手な攻撃は並の人間が全力で硬い壁を殴りつけるようなもの。そんなつもりはなくとも、ミリムからの反射でダメージを負うだろう。

そんなミリムに対し、リムルは何をするのかと思いきや……手のひらを勢いよく、ミリムの顔面…正確には口元へと押し当てていた。

そうしてやることを終えたのか、リムルは少しだけ距離をとっていた。まるでミリムの反応を伺うかのように。

 

「…………………な━━━」

 

「……へ…?」

 

「何なのだこれは!?こんな美味しいもの初めて食べたのだ!!」

 

「食べた…って、何食べさせたの…?」

 

《蜂蜜です。先日蜂型の魔物に名付けをしていたのを覚えていますか?その存在…個体名アピトが作っている蜂蜜です》

 

ハイドは後ほど知ったのだが……この世界の蜂蜜は、基本的に出来があまり宜しくない。蜂の生育環境や、そもそもの設備がまともに整えられないという問題もあり質が悪いのが大半なのだ。

故にこの世界の住人からしてみれば、異世界レベル…元々リムルの住んでいた世界レベルにまで引き上げられた蜂蜜は、とんでもない代物とも言えるのである。

 

「俺の勝ちだと認めるならば、これをくれてやってもいいんだがな〜」

 

「だ、だがしかし…!!」

 

「うーん…!美味しい〜!!おっと…早くしないと無くなりそうだぞ〜!!」

 

「あ!!?ま、待て!提案がある!引き分け!今回は引き分けでどうだ!?今回の件を全て不問にするのだ!も、勿論それだけでは無いのだ!今後私がお前達に手出しをしないと誓おうではないか!!」

 

「……嫌な意味で大人だ……」

 

リムルは気づいていたのだ、魔王ミリムという存在の強さと…幼稚さを。その幼稚さをついて、食べ物で釣った……子供に言うことをきかせるために、目の前に文字通りの餌をぶら下げたのだ。

 

「……さて!お前たち大丈夫か!?」

 

「はっ…申し訳ありませんリムル様…」

 

「俺を逃がそうとしてくれたのはわかってるよ、でも今度から気をつけろよ?じゃ、街に戻るか」

 

……こうして、急遽訪れた魔王ミリムとの戦いは幕を閉じた。しかし未だ根本的な問題は解決していない。そう、魔王ミリムが普通にリムル達に着いてきているのだ。

ハイドはこれからのに嫌な予感を覚えつつも、致し方なくリムル達と戻り始めるのであった。

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