「うまーっ!!この『かれー』という食べ物は滅茶苦茶うまーなのだー!」
こんにちわ、ハイドです。現在テンペストには魔王が居座っています。ゴブイチさんの作る飯は今日も美味い。
そして魔王…ミリム・ナーヴァもそれは同じようで……滅茶苦茶パクパク食べている。いやまぁ美味いけど…
「……あぁやって見てるとほんとに子供みたい……」
「本人は子供扱いは嫌そうだけどね…」
と語り俺の横にいるのはスミレさんとリトさん。スミレさんはこの世界に転移してきた女子高生で、リトさんも同じだがこの間和解したゴブリンのカタキの仲間。今はどうやらこの国で働いているらしい。
「こんな美味しいもの、蜂蜜以来なのだ〜!」
「今朝の話じゃねぇか」
「今朝も食べたんですか蜂蜜……」
「甘いもの好きって…」
「いやぁ…誰でも好きってことにしとこうよ……」
「…………」
そんな俺達はさておき、リムルさんとミリム…さん?のやり取りをシオンさんがじっと見ていた。羨ましいのかと思いきや…見ているのはミリムさんの持っている蜂蜜っぽかった……はて?
「……ミリム様が興味を持たれたアレは蜂が集めた蜜だったのですか?」
「回復薬と思ったが……そういえば色が違ったな?アレも結構美味しかったし……」
「ぐっ……」
「……リムルさん、隠してるといい事ありませんよ〜?」
ちなみに俺は先生のおかげで蜂蜜の正体は知ってるし、スミレさんやリトさんは蜂蜜が美味しいものという知識がある世界の出身である。なので純粋なこの世界の出身者は基本的に蜂蜜が美味しいものということは知らない……というより、この世界の蜂蜜の質が基本的に低いだけなのだが。恐らく今頃シオンさんの目ざとさに唸ってしまっていることだろう。
「……まぁ、蜂蜜には薬効があるから回復薬ってのもあながち間違いじゃないな」
「へぇ……」
「……!!!やらんぞ!これは私のものなのだ!!」
「取りませんて……」
「隠すつもり自体はなかったんだけどな……砂糖っていう甘味料の代わりに用意したんだよ。今のとこ多くは取れないし、抽出も俺と…多分ハイドにしか取れないな」
「え、俺?」
「スキル構成似通ってる癖して何とぼけてんだ……」
そういえばそうだった。あんま気にしてなかったから、すっかり記憶から飛んでいた。にしても俺かリムルさんか…取れる量自体も少なくて、そっから抽出ってなるとたしかにほとんど取れないだろう。
「じゃあ高級品どころか市場には出せそうにないんですね……甘いの久しぶりに食べたいのに……」
「だなぁ…このレベルのを出せるまでになったらいいんだが……それもあって、お披露目は量産の目処が立ってからにしようと思ってたんだよ…ほれ、舐めてみ」
と、言いつつも…リムルさんは蜂蜜を小皿に分けてくれた。スミレさんの小声がどうやらお耳に入っていたようで……全員が指ですくい舌へと乗せていく。俺もご相伴にあずかって……うん、甘い。当たり前だがすごく美味しくて甘い。
「わ…!?」
「甘い…」
「んふーっ!」
「久しぶりの甘さ…!」
「あー…もっと欲しくなっちゃうなぁ…!」
自分の分があるというのに舐めている魔王様は兎も角…向こうの世界出身組は涙を流している。まぁこの世界の甘味類って基本的に果物とかになりそうだしね……一応砂糖とかを見つけられれば話は別なんだろうけど……
「ッ…!!!!」
うわびっくりした。ベニマルさん本気で食いついてるじゃん。『どうして隠していたのか』って目で言ってる。この人相当な甘いもの好きだな?
「うん…まぁ、独り占めしたのは悪かったよ」
「お砂糖は高級品なので食べたことがありませんでしたが……このはちみつほど甘いものなのですか?」
「あぁ、砂糖なんかあれば料理の幅が広がるし甘いお菓子なんかも作れるようになるぞ?」
「「「「ッッッッッッ!!!!!!!!!!」」」」
「絶対お砂糖を見つけましょー!!」
「「「おー!」」なのだー!」
「女性陣の一致団結具合すご…」
「君たちいつの間に仲良くなったの……」
,
「━━━という訳で、魔王ミリムの滞在が決まった。1人で出歩かれるのも不安なんで、常に誰か傍で見てやって欲しい」
その日の夜、男性主要メンバーで集まり会議が始まった。女性陣はミリムさんと共に現在出来上がったお風呂に入っており、じっくり見てくれている最中である。
「ちょっといいか旦那」
「どうした?」
リムルさんの話の後、カイジンさんが話を振り始める。その様子はとても神妙で…心配事、と言うよりもなのかを警戒しているふうな様子であった。
「魔王ミリムの動向も気になるが…俺ァ他の魔王の出方にも気をつけた方がいいと思うぜ」
「どういう意味だ…?」
「魔王は何人かいるんだが、仲間同士ってわけじゃねぇのさ。互いに牽制しつつ睨み合ってる状態だ」
「しかり…しかもリムル様はジュラ・テンペスト連邦国の盟主というお立場。そのリムル様がミリム様との有効を宣言し、ミリム様がこの国に滞在している……」
そしてカイジンさんに続きハクロウさんまでその話を説明していく……確かに改めて状況を並べると、客観的に見た時にかなり凄まじい自体が起こっていると認知されるなぁ…
《魔王ミリムの領地ではなく、友好関係を結んだ相手の国。しかも国ではなく個人…魔王ミリムをよく知らない人物であれば取り入って庇護下に入った程度の認識で収まりますが、よく知っている人物であればあるほど…この国は要警戒対象になります》
確かに……実際は蜂蜜で買収しただけだが、個人相手の有効宣言…魔王ミリムをよく知っている人からしたら、これがどれだけ異常な事態かの認識が着いてしまうだろう。
「つまり、『テンペストが魔王ミリムと同盟を結んだ』…事の経緯を知らぬ他の魔王たちにはそう見えるでしょうな」
「同盟が事実なら今まで配下を持つことすらなかった魔王ミリムの勢力が一気に増すことになり、魔王間の力の均衡が崩れる…か」
「しかも魔王ミリムをよく知ってる人からしたら、今回の件リムルさんの事要警戒対象にするでしょうしね…」
「お忍びで来たりしたらネームドしかいないこの国ってやばいんじゃ……」
リトさんの言う通りである。この国、住人がフルネームドとかいうとんでもない国なのだ。友誼を結べたから何とかなってるだけで、要警戒対象なのは変わらないだろう。
「……そして、それらを面白く思わない魔王もいるかもしれない……って事です」
「ベニマル殿の言う通りですが……実際にお帰りいただくように頼んだとしても……」
「無理だろうなぁ……」
「『大丈夫なのだ!マブダチは絶対に守るから安心して欲しいのだ!』……位は言いそうですね」
…ソウエイさんのモノマネがどっから声出してんだってくらい似てたんだけど何?今ので話の腰戻らないくらいに折れかけちゃいましたよ?
「ッ…ぶふっ……」
「ぐっ……」
あーあ、リトさんとカイジンさんガチ受けしちゃった。尋常じゃないくらい似てたから仕方ないけど。けどソウエイさんの物真似のクオリティの高さは置いとくとして…
「ソウエイさんの言う通りでぶふっ…………」
ダメだ堪えられない。
「………言って、帰らなさそうですもんね」
「お、おう……そうだな…飽きて帰るのを待つしかないか……」
「……ですが正直、そちらの方がマシかもしれませんよ。無理に帰らせて機嫌を損ね敵対………なんてことになるよりかは、他の魔王相手にする方が楽でしょうし」
「ベニマルの言う通りです。ほかの魔王の相手をしている方が、まだ勝てる可能性がありますね」
「……ってなると、もう他の魔王が現れた時に考えるしかないな。投げやりで申し訳ないが……」
「いえいえそんな……ところでリムル様、当のミリム様はどちらに…?」
「あ、さっき女性陣と温泉に行ってましたよ」
「あぁなるほど……ん?」
会議してる部屋の外、廊下から誰かが走る音が聞こえてくる。おや、女性陣がお風呂上がったのだろうか?だとすれば次は男性陣が……なんて思ってたら、勢いよく扉が開く。
「リムル!ここの風呂はすごいのだな!泳げるのだ!!」
「「「「「ッ!!!!!!!!!?」」」」」
タオルを巻いているとはいえ、逆に言えばそれ1枚。濡れたままの姿で魔王ミリムがそこにいた……すごいどうでもいいけどタオル1枚巻いてる方が露出度少ないのでは…?
「ミリム様!ほら!まだ御髪を洗えていませんよ!」
「そ、そうですよ!!それに男性陣びっくりしてるじゃないですか!」
「おお、すまぬ。この感動を早く親友に伝えたかったのだ!じゃあなリムル!明日は一緒に入るのだ!」
「し、失礼しました……ミリム様タオルが落ちて…!」
まるで嵐のような一幕。女性陣は温泉へと入り直しに行き、男性陣は呆気にとられてしまっていた。しかし呆けているばかりでは宜しくない、というわけなのかベニマルさんが1つ咳払いをし━━━
「あー…ではミリム様のお相手はマブダチであるリムル様に一任するということで」
「「「「「異議なし」」」」」
「ッ!!!!?ベニマル貴様!!」
「いや、だって滅茶苦茶懐かれてんじゃないですか」
「り、リグルド!」
「リムル様以外適任がおりまなんだ」
「ぐうっ…そ、ソウエイ!」
「自分は隠密なので」
「うぐ…か、カイジン!ハイド!リト!!」
「無骨な職人だからァよ…任せるわ」
「良かったじゃないですか、シオンさんシュナさんに続いて3人目ですよ」
「働くので忙しいのでノーコメントで」
「お、お前らァァァァァァァ!!!!!」
こうしてリムルさんは無事にミリム様係という役職に着くことになった。というかウチの盟主以外に魔王の手綱を握れる存在はいないのである。ひとまずは…ミリム様はリムルさんの庵に住むことになったらしい。
是非、頑張って欲しいものである。