混ざりし世界の正体不明   作:長之助

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就職活動

「━━━で、何の用ですか?リムルさん」

 

こんにちわ、ハイドとあだ名を貰った男です。今俺はこの街の執務室へとやってきています。この街の盟主、リムルさんの仲間に軽く紹介をされた後少しぐるりと街を回っていたのが確か三日前。

で、一昨日には一旦の仮住居として執務館の部屋を貸し与えられた。リムルさんの仲間…もとい街の住人はかなりの人数となっているらしく、全員を紹介するのは難しいと言うことでおいおい挨拶をしていくことになり……そして昨日自主的に街を散歩して色々話を聞いていた。そして今日、俺はそのリムルさんに呼び出されていたのだ。

 

「いやな…街には慣れてもらったかな、って話を聞こうと思ってな…まぁ本題は別にあるんだけど……」

 

本題…なんとなく俺はちらりと横目である人物を見ていた。それは俺の他に呼び出されたもう1人。パッと見女子高生である人間、もとい転移者のスミレ・マキノという人間だ。

 

「いや…俺は大丈夫ですよ」

 

「私も…大丈夫です」

 

「んじゃあ手短に……何か手に職、付けてみない?」

 

仕事しろ、という事だ。うん。とは言っても…俺はともかくスミレ…さん?は俺が来るよりもずっと前から色々していたらしい。現在も、自分のスキルで色々手伝っているのだとか。所謂フリーターと言うやつだろう。

 

「…あの、今のままだと私はダメとか、街をクビになるとか…そういう話ですか…?!」

 

「あぁいやいや!違う違う!!いやね?この街も大きくなってきたからさ、1回誰がどういう立場なのかっていうのを整理し直しときたくてさ」

 

俺は知らないが……スミレさんがいた時はまだかなり小さい…それこそ村とかそんなレベルだったらしい。つまるところなぁなぁでなんとかなってたとかそんな感じ。

しかし外からの人間が多くなってきたので、改めて職に着いてる人間とか部隊の人間とかのリストを作りたいのだとか。それに俺達は…2人共ユニークスキル持ちだ、可能なら定職に着くべきという話だろう。

 

「なるほど……でもそしたら私は多分、外に出るのが基本になりますよ?」

 

「魔獣狩りとかそっちになるよなぁ……ハイドはどうだ?何か思いついたか?」

 

「俺は……」

 

……俺の持っているユニークスキル。基本は1人に1つらしいのだが…俺は違った。複数の所持がリムルさん調べと俺の直感で確定している。つまるところ……

 

《━━━やろうと思えば、なんでも出来ますよ》

 

「……ですよね」

 

「…?」

 

「………はぁ…お前ねぇ…」

 

スミレさんが不思議そうにしていた。そしてリムルさんは呆れていた。そう、俺はスキルによってある程度のことならそつなくこなせる…らしい。今は初夏だが…気温や自然環境によって体調が崩れることはなく、気になったことは頭の中の相棒が調べ、知識は蓄積されていく……これが俺の1つ目のユニークスキル『適応学習者《マナビシモノ》』である。俺は学習者とか先生とかって呼んでる。因みにリムルさんがなんで呆れたのかと言うと…

 

《私がいる、というのを周りに知られれば面倒しかありません。知識豊富なもう1つの人格のようなスキル、というのは傍から見ていればかなり驚異的なものです。それがどこかから漏れた場合、要らぬ争いを産みかねません》

 

という訳です。

ついついやっちゃうので、癖ついちゃわない内に直しておきましょう。と自戒しておく。

因みに学習者と解析鑑定したリムルさん曰く……俺はリムルさんの持っていたスキルと耐性に随分似通ってるそう。学習者はこっそり《貴方が個体名:リムル=テンペストの中にいる時にこっそりコピーしたので》って言ってた。多分おかしいことをしているんだと思う。流石にそれはリムルさんには言ってない。

 

「…まぁでも、昨日散歩してて思いましたけど…ほんとにどこでも慣れれそうなんですよね」

 

「だな……」

 

「…でも、敢えて言うなら皆の顔が見れる方がいいような気持ちがあります。昨日だって散歩中子供達が遊んでて汗かいてたので、水渡しましたし」

 

「汲んでるのか?」

 

「あぁいや、こんな感じで……」

 

俺は学習者のスキルを使ってコップを作り、なんかいっぱいあるスキルから水刃を恐ろしく出力を低くしてちょろちょろとコップに注ぐ。リムルさんがすごく何か言いたそうにぽよぽよしてる………これ貧乏ゆすりか…?1人ドリブルかと思っちゃった……

 

「…初めて挨拶した日に二人で確認したじゃないですか。スキル覚えてるし何ができるか確認しようぜ〜って」

 

「言ったな………ただ多分何回みてもすごいスキルだなって思っちまいそうだ」

 

「魔素を大量消費してコップ作っただけですよ」

 

学習者のスキルの権能の1つに、代替というのがある。魔素を消費して知識として知ってる物を作り出す能力だ。因みに俺自身の知識じゃなくていい……学習者には解析鑑定と、蓄積という権能がある。

要するに解析鑑定したのを忘れなくなるみたいな能力だ。正確には資料のように取り出す感じで思い出すので、いらない時は圧縮ファイルみたいな感じで別置きしてるけど。

 

「で、作ったやつは基本的に残ったままと」

 

「別にその後取り込んでも良いんですけどね」

 

「…ほんとに俺のスキルとそっくりだなぁ、なんだっけ?飽食者(アキヌモノ)だっけ?聞けば聞くほど俺のスキルとソックリなんだが?」

 

飽食者……手や体で触れているものをひたすらに吸収するスキルだ。取り込んだ物は魔素に分解したり、中で取っておいたりできる。ただ無限に入る訳じゃないのと代替で魔素を消費してものを作れるので、基本的に魔素に分解しているのだ。因みに基本的には学習者に制御を任せている状態で、魔素だけをひたすら取り込み続けている状態である。

 

「そうですね、俺もそう思います」

 

「なんか隠してない?」

 

「はっはっはっ……あ、職の話に戻るんですけど」

 

「お、おう……ん?」

 

「さっきも言った通り、俺はみんなの顔が見たいなぁって気持ちです」

 

誤魔化すために、敢えて続けざまに喋っていた。何とかなったようである。後から思い出されても困るが。因みにだけど、作る時に消費する魔素量と作ったものを取り込む時の魔素量はかなり量に差があるのだ。そのため取り込めばマシではあるが、全部戻ってくるという訳ではない。そして作り出せる物もかなり制限される。それこそ解析鑑定して蓄積されている物限定なのだ。そして解析鑑定していても生物は無理である。魂の器だのなんだの言ってたが、肉体も作れないとの事。だが魔物の肉の一部とかなら作れるらしい…その基準は…?

ちなみにこの権能、リムルさんは正確には使えないらしい。胃袋に全部押し込んで、必要なものは取り分けられるらしく…取り分けたところから出してるらしい。この権能、どっから生えたのかと思ったが…リムルさん曰く種族特有の固有スキルのようなものだとか何とか……俺の種族特有ってなんだよ、って思って学習者に聞いたところ……

 

《近いのは悪魔族(デーモン)等が持つの物質創造になります》

 

らしい。俺悪魔なのだろうか?そんな記憶は……いや記憶喪失でしたね俺。もしかしたら俺は悪魔なのかもしれない。しかし今は俺のスキルの話はいいのだ。

 

「…まぁ、スミレは何だかんだ資材調達部門に所属でも良さそうだな」

 

「はい!とは言っても…魔獣狩りとかが基本ですけどね。材木は私のスキルだと伐れないですし、草花の採取とかも量は難しいです」

 

「だよなぁ……まぁ材木は工事がてらゲルド達である程度賄えてるが……建築以外にも使ってるから使用量抑えたいんだよなぁ…」

 

………この街には紙がない。というのも作る体制がないのと、仕入れの目処が立ってないらしいのだ。人口は確か約1万な上に土地は開墾途中、人間とのコネクションもないので資料として使えるほど紙が流通されてないのだ。ではその代わりは何か?そう、板である。板に墨とかで文字を書くのだ。

 

「紙が出来れば子供達の勉強にも使いやすいでしょうしねぇ、寺子屋の方を様子見たりしましたけど、材木だから怪我の可能性が高いだろうし…」

 

「…え、見に行ったの?いつ?」

 

「昨日ですね、人懐っこかったので勉強の手伝いさせてもらいましたよ」

 

「ふむ…まぁさっきの意見はわかる。丸っこく削るのも手間がかかるし、木がささくれてたら刺さる可能性あるもんな」

 

紙ならば俺のスキルで作れるかもしれないが……量産出来るほどではない。そしてこれからもっと使う枚数が増えることを考えると、俺が街で1人紙工場してても使用量の方が圧倒的に増えていくだろう。因みに日にA4用紙50枚くらいが限界である。それも死ぬギリギリ一歩手前くらいでそれ。コスパが悪い!!

 

「にしても懐かれてるのね……ふむふむ、なるほど……」

 

「…リムルさん?」

 

「……何か考えてます?」

 

「……ハイド君」

 

「悪いこと考えてます?」

 

何故だかわからんが、この人と出会って5日も経ってないのによく分かっていることが何個かある。『皺が顔』『思ってたよりも精神年齢低め』『何か悪いこと考えてると人の事を君付する』である。

 

「教師にならない?」

 

「……リリナさんがやってるような?」

 

「そう!まぁ君のスキルはかなり優秀だし、子供達のウケもいいだろう!分からないこと聞かれても、即座に答えられると踏んでいる!どうかな!?」

 

どうなの?

 

《可能ですが、所謂未だ判明してないことは不可能です》

 

例えば……あれか、円周率の末桁とか宇宙の端っことか宇宙の外は何があるとかそういう感じの?

 

《そういう感じの、です》

 

「未だに判明してないこととかは無理らしいです」

 

「…今誰に確認したの……?」

 

「ならいい!子供達が聞くのは『先生恋人いるの〜!?』とかだから!」

 

この人自分の子供時代多分同じことしてたんだろうな。子供って無邪気だからね、しょうがないね。でも今やこの人も立場的には聞かれる側だもんな。

 

「…でも、うん…やってみようと思います。教師」

 

「お、以外に乗り気…子供、好きなのか?」

 

「まぁ好きっちゃ好きかもしれないですけど……なんというか、守らなきゃって気分になるので……」

 

なんでそう思うのかは分からない。見た目だけなら相当若いという事なので、記憶喪失の前は年の離れた弟が妹でもいたのだろうか?どちらにせよ見守ってあげたい気分になるのだ。

 

「あ、でも俺昨日ゴブタ君に警備隊入らないかって誘われてるんですよね」

 

「そっちも考えてるのか?」

 

「いや、何かゴブタ君滅茶苦茶必死に頼み込んできたので……」

 

「あぁ……」

 

何故か主に稽古の事を伝えてきた。何故だろう、頼み込んでた時の笑顔とは裏腹にその目からは妙に切実な何かを感じとっていた。故に彼に答えを出さないまま俺の意見優先するのも…という気分になる。

そして何故かスミレさんもちょっと遠い目をしていた。何故だろう。

 

「あぁ……それなら警備隊の稽古に混ざってくれるだけでいいよ」

 

「え、それでいいんですか?」

 

「まぁ基本的にはないだろうけど、万が一があったら子供達の身を守る為に戦闘訓練しとく必要はあるだろうし、俺からハクロウにそう伝えとくよ。授業終わって余裕ありそうなら参加する、って」

 

「じゃあそうしときます」

 

後日、俺の方からゴブタ君にそう伝えたら泣きながら喜ばれた。『これで少し楽になるっす』とか言ってたのは聞かなかったことにしてあげた。

 

「…因みにスミレは結局今まで通りなのか?」

 

「はい!お願いします!!」

 

…ついでに、スミレさんも戦闘訓練に参加するらしい。というかしていたらしい。まぁ、それはそれで楽しみである。




ユニーク
適応学習者(マナビシモノ)
権能
・解析鑑定:取り込んだものや触れたものを鑑定する。
・魔力感知:周囲の魔素を感知し、周囲の様子を認識することができる
・思考加速:知覚速度1000倍まで上昇させる
・並列演算:解析したい事象を切り離して思考可能
・蓄積:解析したものを情報として取り置く。情報は何かに転写可能
・代替:魔素を使い物体を体内で創造、排出ができる

ユニークスキル
飽食者(アキヌモノ)
権能
・吸収:触れている物を吸収することが出来る。但し肉体的に触れているもしくは自分が肉体に直接触れている物に付与して、そのものが触れている部分のどちらかとなる。この能力は調整とオンオフ可能。
・胃袋:吸収によって触れたものを収める場所、消化し自らの力とするか取っておくかは自らの意思で決めることが出来る。取っている物は吐き出すことが可能。

耐性
痛覚無効、自然影響耐性、熱変動耐性

他スキルやアーツは蓄積から自分自身に転写することで発動可能(水刃とかその辺)
という設定です。この作品だとこういうもんだと思っていただければ嬉しいです。
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